暗号資産(仮想通貨)で寄付を募るメリットとは何か?事例による動向を解説

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2023-12-13 更新

ロシアによる侵攻を受けるウクライナに対して、国際的な支援の手段として暗号資産(仮想通貨)を活用した募金活動が一定の成果を上げ、世界的に注目を集めています。また、米大統領選でも暗号資産の寄付の動きが出てくるなど、暗号資産による寄付が話題になっています。

この記事では、暗号資産による寄付を活用した世界の動きを暗号資産のユースケースとして解説します。

暗号資産(仮想通貨)による寄付の事例とは?

ロシアによる侵攻を受けるウクライナへの国際的支援

2022年2月、ロシアによる侵攻を受けるウクライナへの国際的な支援の手段として、暗号資産(仮想通貨)を使用した寄付が、世界的に注目を集めました。

同年6月には暗号資産で約7,000万ドル(95億円相当)の寄付が集まり、食料や装備品などの購入に使われたことは有名です。

この寄付集めを主導したのは、ウクライナ最大の暗号資産交換業を運営するマイケル・チョバニアン氏でした。

チョバニアン氏は、侵攻が始まった数日後から、寄付された暗号資産を使い防弾チョッキやヘルメット、ライフル銃用のスコープ、兵士用の食料キットなど兵士向けの装備品を購入したといいます。チョバニアン氏は、このとき他国の暗号資産交換業者の口座を介して米国の会社とも資金のやり取りができたことを後日談としてメディアに対して報告しています。

チョバニアン氏は、ロシア軍に包囲された都市では、現金は略奪される恐れがあるため、役に立たなかったといいます。その一方で、地元の商店には暗号資産で代金を支払い、人々に食料を届けたそうです。

米調査会社によると、ウクライナは2021年時点での暗号資産の普及度で、ベトナム、インド、パキスタンに続く世界第4位の国であり、暗号資産は身近な投資や決済手段だったといいます。

チョバニアン氏は、以前からウクライナの銀行は破綻が続き、銀行が信用を失い不安視される中で注目されたのが暗号資産だったと述べています。

暗号資産による寄付の最大のメリットは送金スピードです。ウクライナの銀行を介して国際送金すると7日ほどかかりますが、暗号資産の送金は国際送金よりも早いです。その機動力によって戦争の始まった直後から前線に物資を届けることができ、これが多くの人命を救ったとチョバニアン氏は述べました。チョバニアン氏は、戦時下で暗号資産の決済の速さのメリットを実感したとメディアに語っています。

国連UNHCRがステーブルコインでウクライナ難民支援

暗号資産ステラルーメン(XLM)の開発を行うステラ開発財団(SDF)は2022年12月、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との提携を発表しました。

ロシアのウクライナ侵攻により影響を受けたウクライナ人を対象に、ステラルーメン上で発行される米ステーブルコインUSDCoin(USDC)を配布する現金給付支援試験プログラムを実施するとしました。

対象者へ送付されるUSDCは、ドルやユーロ、現地通貨へ交換して、国際送金ネットワーク「マネーグラム(MoneyGram)」の拠点で引き出しが可能となりました。ちなみに、ウクライナには、マネーグラムの拠点は4,500か所あるそうです。

このプロジェクトは、キーウ(キエフ)、リヴィウ、ヴィニツィアの3都市において試験的に実施されました。プロジェクトは、ブロックチェーンベースのステーブルコインを採用することで価値移転記録(トレーサビリティ)を確保でき、人道支援組織の透明性の向上と適切な説明責任への対応につながったそうです。

また、支援者には銀行口座やクレジットカードがなくとも資金を受け取ることができる利点があり、戦時下など非常事態におけるその効果は絶大であると関係者は述べています。

このプロジェクトを受けて、「2023年パリ・ブロックチェーン・ウィーク」は、UNHCRに対し、ブロックチェーン技術を利用した同プロジェクトに対して「ベスト・インパクト・プロジェクト賞」を授与して評価しました。

米大統領選候補者がビットコインによる寄付金受け入れを発表し話題に

2023年5月、米国の大統領候補で、民主党指名争いに出馬表明したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏がマイアミで開催されたビットコイン2023カンファレンスにて、選挙活動への寄付として暗号資産ビットコイン(BTC)を受け付けることを発表し話題になりました。

ジョン・F・ケネディ元大統領の甥であるケネディ氏は、民主主義の観点からビットコインを支持する姿勢を示しています。

ケネディ氏は、暗号資産について具体的な方針として「自己管理型ウォレットにビットコインを保管する権利」「ブロックチェーンノードを自宅で運用する権利」「業界に依存しないエネルギー規制」「米国が暗号資産技術のハブであり続けること」「暗号資産規制の管轄権およびガバナンスの整備」を掲げています。

そして大統領に選出された暁には、ビットコインを保有したり利用したりする権利が不可侵であることを保証するとしました。

また、ケネディ氏はコンセンサスアルゴリズムにプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)を採用する暗号資産の環境負荷を認め、環境に配慮したエネルギー技術を普及させていくことを奨励する一方で、議論すべきことの焦点をぼかすためや、暗号資産業界を弱体化させる口実に環境負荷を持ち出すべきではないとも述べました。

現政権は、暗号資産マイニング企業に対してマイニングに使用する電力コストの30%に相当する税金を課す内容などを含んだ「デジタル資産マイニングエネルギー消費税(DAME税)」を提案していますが、ケネディ氏はこの課税案に対しても"悪いアイデアである"と反対しています。

現政府および証券取引委員会(SEC)が暗号資産セクターに対して敵対的な姿勢を強めている状況を指摘し、自身が大統領になれば、暗号資産企業にとってよりよい政策環境を整備することができることを強調しました。

こうした発言などから、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、暗号資産業界からの支持を集め、ビットコインで多くの寄付を集める可能性もあるとして注目されています。

暗号資産(仮想通貨)による寄付の歴史は古い

暗号資産(仮想通貨)による寄付の実例は意外と古く、事例が多くあります。

古くは2015年4月にネパールで発生したネパール大地震の被災者に対して行われたビットコインによるダイレクト募金が有名です。

当時、「ビットコイン難民」で画像検索をすると表示されるネパールの被災者の写真を介した形での寄付が行われました。

被災者は自身のビットコインアドレスをQRコードで示した写真を掲載し、世界中からビットコインを直接送付してもらうという形で寄付を募りました。暗号資産による寄付は、被災者の名前や住所がわからなくても、暗号資産を保有していればダイレクトに募金ができるというメリットがあり、それまでの通貨ではできなかった新しい寄付の方法を確立しました。ビットコインによる寄付は、海外送金にかかるような高額な手数料を支払うことなく、24時間、世界中のどこからでも短時間で寄付ができることが画期的であり、すぐに話題になりました。

日本においては、2018年7月に発生した西日本豪雨災害「平成30年7月豪雨」の際に、グローバル展開する暗号資産交換業者が被災地支援のため暗号資産による寄付を募りました。その結果、141万ドル相当(1億5,800万円相当)の寄付金が集まり、日本の被災地の現地サポーターなどを介して被災地支援・被災者援助が行われました。

2019年4月、フランス・パリの代表的な建築物の一つであるノートルダム大聖堂が火災により焼失した際に、復興費用として、いくつかの団体が暗号資産による寄付を募ったことも記憶に新しいです。

また、2019年に国連児童機関(ユニセフ)はユニセフ暗号資産基金(UNICEF Cryptocurrency Fund)を設立しました。

ユニセフは同基金を通じて、暗号資産(ビットコインまたはイーサリアム)による寄付の受け入れと預かり、受け取った暗号資産を助成金などの支払いに利用しています。国連組織が暗号資産による寄付を受け入れ、暗号資産を利用して援助活動を行うのは、同基金が初めての試みでした。

ユニセフ暗号資産基金への最初の寄付は、フランスのユニセフを介してイーサリアム財団が行っています。財団からの寄付は、ユニセフイノベーション基金の助成金や、ユニセフとITU(国際電気通信連合)が取れ組むGIGAイニシアチブが展開する世界中の学校にインターネット環境を構築するプロジェクトに割り当てられました。

大きなきっかけは新型コロナウイルス感染症の拡大対策

そのほかでは、2019年から2020年にかけての新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的なパンデミックの状況下で、各国にて暗号資産による寄付が行われました。

また、ブロックチェーン・暗号資産関連企業が感染症対策支援として世界中にマスクを配布するといった動きも数多く見られました。

2020年3月にはイタリアの赤十字が、医療インフラ整備のために暗号資産での寄付を募るキャンペーンを始めたところ、目標金額1万ユーロの寄付をわずか3、4日で達成しました。そして、さらなる医療体制拡大のため、追加の寄付募集を行ったこともありました。

イタリアは当時、最初にパンデミックが起きた中国・武漢よりも、コロナウイルスによる致死率が高く、医療崩壊の危機にありました。集めた寄付は医療設備の充実に充てられ、余剰分は医療スタッフのケアに使ったといいます。

その後、感染者が1000人を超えたオランダの赤十字も、イタリアに続き暗号資産の寄付を受け付けています。

同じく2020年3月、米リップル社は新型コロナウイルスの拡散防止を目的に、米国Tipping Point Communityの新型コロナウイルス緊急対応基金とSilicon Valley Community Foundation(SVCF)の新型コロナウイルス地域対応基金にそれぞれ10万ドル(1100万円相当)の寄付を行い、同社公式Twitter(現X)アカウントを通じて発表しています。

暗号資産(仮想通貨)による寄付のメリットと課題

これまでの暗号資産(仮想通貨)による寄付のユースケースを見ると、暗号資産には法定通貨による寄付に比べていくつかの利便性があることがわかります。

24時間、いつでも誰でもどこからでも素早く送付することができ、膨大な手数料がかからないというメリットはとても大きなものでしょう。

また相手が銀行口座を持っていなくてもスマートフォンなど暗号資産ウォレット(アドレス)さえあれば誰でも寄付を受け取ることが出来ることもメリットの一つです。

暗号資産は、基本的にその取引(トランザクション)の記録が全てブロックチェーン上に書き込まれ、誰もが閲覧できる透明性を持っていることから、寄付の使用用途を明確にすることができます。

しかし、その一方で寄付には暗号資産に対する多少の知識を必要とし、暗号資産を寄付するには暗号資産交換業者にてアカウントを作成しなければなりません。

また、受け取る側も受け取り用にウォレット(アドレス)が必要であり、寄付を利用するには暗号資産による決済手段や、現地で利用できる通貨に換金が可能であることが重要な条件となります。

さらには、アドレスを間違えるなど誤送金があった場合には取り消すことができないなど、暗号資産による寄付には、こうしたデメリットもあります。

まとめ

暗号資産(仮想通貨)に関する知識があれば、暗号資産による寄付は比較的手軽に行うことができますが、その反面、グローバルな規模で展開されているため詐欺被害などにあう可能性も否定できません。どのような団体が寄付を募っているのかは、今一度しっかりと確認したい項目です。

暗号資産による寄付に関しては、自己責任が伴うことを常に念頭に置きましょう。

寄付を募る側、寄付をする側、そして寄付を受け取る側も、こうしたメリットとデメリットを踏まえることができれば、今後、暗号資産が社会問題を解決する重要な要素の一つとなっていくことでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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