注目度が高まるアジアの暗号資産(仮想通貨)事情

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2023-12-13 更新

2023年になって中国・香港が突然個人投資家の暗号資産(仮想通貨)の取引を解禁したり、グローバルに事業を展開する海外の暗号資産交換業者がアジア太平洋への進出を発表したりするなど、暗号資産に関する大きな動きが目立つようになってきました。また、ブロックチェーンゲームに関する新しい動きが見られるなど、アジア圏における暗号資産関連の動向が注目を集めています。

この記事では、そんな暗号資産やブロックチェーンに関する注目のアジアの話題をまとめ解説します。

香港が暗号資産(仮想通貨)の個人取引を解禁

2023年になって香港が暗号資産(仮想通貨)の個人取引を解禁するために免許制度を導入するという報道があり、香港を始めアジア全般の暗号資産・ブロックチェーンに対する動向が、世界中から注目を集めています。

中国は2017年9月に暗号資産の取引を規制し、暗号資産交換業の運営やICOなど暗号資産による資金調達を禁止しています。

中国国内では、暗号資産の取引を規制する以前から資本管理が行われており、中国の資金流出による人民元安をくい止めるために、中国政府は資本管理に乗り出しています。

一方で香港は現在、中華人民共和国香港特別行政区として「一国二制度」で統治され、特別行政区(SAR)政府として中国とは別の制度が適用されています。中国では暗号資産取引が禁止されていますが、香港では2018年から機関投資家らプロのみに暗号資産の売買が許可されています。

さらに2022年10月に香港政府は、これまでの政策を転換して暗号資産の中心地になるという目標を掲げ、ビットコイン(BTC)やイーサ(ETH)など暗号資産(仮想通貨)の取引を個人投資家に認める計画を発表しました。

そして2023年6月1日、香港は暗号資産サービス事業者のライセンス制度を始動し、香港証券先物委員会(SFC)がライセンス申請の受付を始めました。

これを受けて、香港では新たなライセンス制度のもとで、SFCがライセンスを付与した暗号資産交換業者においては、個人投資家の暗号資産取引が下半期(7〜12月)にも解禁される予定となっています。

香港は、こうした法的な環境を整備することで、暗号資産に関する取引ハブを築こうとしています。

香港のライセンス制度

香港におけるライセンス取得は、暗号資産交換業者は500万香港ドル(8,900万円相当)以上の資本金、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金調達の防止対策、実務経験を持つ役員の起用などが要件です。

逆に免許申請をしない業者は、香港からの撤退を準備しなければなりません。香港当局によると、新制度には始動後すぐに80社以上の企業が参入に関心を示しており、特に暗号資産関連サービスが全面的に禁止されている中国本土企業が新たな活路として香港へ進出する動きが目立っていると分析しています。

香港メディアの報道によりますと、中国国有不動産大手、緑地集団傘下の金融子会社が香港でライセンス申請を予定しています。また、中国ネット保険大手などが設立したインターネット専業銀行は、免許を取得した企業と提携して個人向けサービスを始めることを表明しています。

こうした香港の暗号資産に関する動向は、中国における新たな機会が誕生するとして大きな注目を集めています。

具体的な規制内容

香港は暗号資産交換業者規制を施行し、個人投資家にも暗号資産取引を認めますが、ライセンス制を導入するなどして投資家保護の徹底を目指します。

暗号資産取引に関する具体的なルールは、個人投資家が取引できる銘柄は時価総額が高く、独立した最低2つの指数に含まれていることを条件に含み、過去12カ月間に不正な記録がないことが要求されます。

ステーブルコインに関しては、現在、中国全土において個人投資家による購入が許可されていないため、新しい規制を待つ必要があります。

またライセンスを受けた暗号資産交換業者であっても、金利や貸借のサービスを提供することは不可、かつエアドロップ(無料配布)などを含む特定の銘柄の取引に関連した「ギフト」を与えることもできません。

香港の包括的な暗号資産規制は、同じビジネス、同じリスクには同じルールを適用するという原則に基づき、投資家保護やリスク管理を実現することを目指しています。

香港の新しい規制については、これから中国が暗号資産を認可するかどうかの試金石になる可能性があるとみる専門家もいて、注目度が高まっています。

暗号資産(仮想通貨)取引に対する世界的な動向

日本においては、世界に先駆けて早い段階から暗号資産取引に関する法の整備が進んでいますが、世界的には特に米国の暗号資産取引は、以前よりその環境の整備の遅れが課題となっています。

2022年11月には、ずさんな経営が明るみに出た暗号資産交換業者最大手が経営破綻し、その影響による波紋が世界に広がったことから、それをきっかけに各国の政府が摘発や規制強化に動いたことが記憶に新しいところです。

米国は暗号資産取引について明文化されたルールなどがないにも関わらず、米証券取引委員会(SEC)が個々の暗号資産交換業者や暗号資産関連企業に対する訴追が続いています。業界では曖昧なルールの下で摘発が相次ぐ事態となり、訴追自体も問題視されてきました。

こうした曖昧なルールが暗号資産の信用低下につながると、業界自身にも危機感が強まっており、規制など取引環境の整備を求める声が大きく、今回の香港の動向は世界的にも歓迎されています。

これまでも、日本を始め韓国やシンガポールなどがルール作りをリードしてきたことから、アジアは米国や中国などから規制等によって追いやられた大手業者の受け皿となる動きも見られました。今回の香港の動きは、さらにアジア圏が注目される要因になるでしょう。

注目度の高いアジアのWeb3・ブロックチェーン事情

次世代型インターネットの新潮流として話題になって久しいWeb3は、期待が膨らむ一方で、その具体的な仕様やユースケースが見えず、理想論ばかりが掲げられ実現性は難しいとする懐疑的な意見も少なくありません。

話題になった当初よりも投資面においてはやや消極的になりつつありますが、具体的な案が示されている分野においては、その注目度は相変わらず高いものになっています。特にアジア圏においては、より活発な動きも見られます。

香港のWeb3開発推進タスクフォース

Web3関連においても香港政府は、2023年6月30日にWeb3開発推進タスクフォースの設立を発表しました。ちなみに、タスクフォースというのは、特定のテーマに取り組むために組織される専門グループのことです。

香港の財務長官が委員長を務めるこのタスクフォースは、主要政府高官や金融規制当局が参加し、関連市場セクターの専門家15人の非公式メンバーで構成されます。

財務長官は、暗号資産を含むWeb3を支えるブロックチェーン技術には、仲介の排除、安全性、透明性、低コストの特徴があると説明し、こうした技術が今後の金融、貿易、事業運営、さらには日常生活における多くの課題を解決する可能性があると明言しています。

香港のWeb3開発推進タスクフォースは、適切な規制と発展促進のバランスを前提に、革新的な探求を先導・推進し、より多くの新しいアプリケーションモデルを創造し、一流の企業と才能ある人材を集め、繁栄するエコシステムを構築することに努めるとしています。

財務長官は、「このタスクフォースには、各分野のリーダーや専門家が集まっており、彼らの貴重なアドバイスが、香港をWeb3のハブへと発展させる一助になると信じています」と述べています。

シンガポールの中央銀行による投資

また、シンガポールの中央銀行にあたるシンガポール金融管理局(MAS)は2023年8月7日、Web3分野も対象となる金融分野のテクノロジーとイノベーションに最大1億5,000万シンガポールドル(160億円相当)を拠出し、投資することを発表しました。

MASによる投資は、イノベーションの加速と強化を目指す「金融セクター技術革新スキーム(FSTI 3.0)」という計画に基づき、3年間にわたり実施されます。

FSTIは、人工知能(AI)・データ分析(AIDA)や規制テクノロジーなどにおける高度な機能の開発や導入についても支援していきます。

MASは、すでに支援してきたプロジェクトとして、持続可能な金融や、国際的な決済連携、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のデジタル・シンガポールドルの実現を目指すProject Orchid(プロジェクト・オーキッド)を挙げています。

プロジェクト・オーキッドは、2022年秋には、消費者にデジタル・シンガポールドルのクーポンを発行する実証実験を実施しています。

MASは2023年今年6月に、CBDC、トークン化された銀行預金、ステーブルコインなどで使用できる共通プロトコルの設計書を発表しました。プロトコルの試験運用にはEコマース大手Amazonや、東南アジア最大手銀行DBSなども参加しています。

注目されるベトナムのベンチャー企業

2018年にベトナムのゲームスタジオSky Mavisが開発したブロックチェーンゲーム「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」は、プレイすることで暗号資産が取得できる「Play to Earn」の草分け的存在です。

近隣のフィリピンなど新興国ではアクシー・インフィニティで生活費を稼ぐユーザーも現れ、その成功で多くの後発サービスが続いたことで知られています。

アクシー・インフィニティのブームにより、Play-to-Earnというジャンルが確立され、それに刺激されて、歩くことや行動することで収益が得られるMove-to-Earn、学ぶことで収益が得られるLearn-to-Earnなど多数のアプリが登場するなど、ブロックチェーンゲームの可能性を拡大することにも貢献しました。

こうしたブロックチェーンゲームの新しいアイデアは、特にアジアで誕生することが多く、俄然アジア諸国が注目されています。

ブロックチェーンゲームの今後

Dapps(分散型アプリ)に関する総合情報サイトDappRadarのレポートによれば、ブロックチェーンゲーム、Web3ゲーム業界にとってアジアは重要な存在となっているといいます。

アジア市場には、世界のビデオゲームプレイヤーの55%を占める17億人以上のゲーマーが存在し、すでにゲーマー数とゲーム収益の大半を占め、ブロックチェーン技術に対する高い関心を示しているとレポートは分析しています。

日本や韓国、中国などアジア地域は世界のゲーム収益の過半数を抱えており、長年にわたって世界のゲーム市場の原動力になっています。

レポートでは日本と韓国のゲーム企業は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのNFT関連特許やスクウェア・エニックスのブロックチェーンゲーム参入の発表を例に、ゲーム業界でのブロックチェーン技術の採用をリードしていると指摘しています。

実際に日本のゲーム業界がブロックチェーン利用に本格的に取り組み始めているニュースが近年増加しています。ニュースリリースによれば、2023年後半から2024年前半にかけては、一般になじみが深いキャラクターを使ったブロックチェーンゲームが、日本の大手ゲーム会社からリリースされる予定となっています。

ブロックチェーンゲームの世界は、Web3技術が社会に浸透していくのに伴い、ブロックチェーンゲームがリアルな世界と融合するなど、ゲームの概念自体も広がっていくという専門家の意見も聞かれます。

ブロックチェーンゲームは、ゲーム企業がキャラクターの知的財産権(IP)を保持しつつ、そのIPを利用したゲーム開発を個人にも許可可能な新しい利用法が考えられるほか、その先にはアジアを始め日本の豊富な知的財産権の所有による優位性にも期待が高まっています。

まとめ

ブロックチェーンゲームは、ゲーム内で獲得したアイテムやキャラクターをデジタル資産(NFT)としてゲームの外でもやり取りできるのが特徴です。また、ゲーム内で使用される通貨は暗号資産(仮想通貨)とも相性がよく、ゲーム内の通貨がデジタル資産になるなど、ブロックチェーンや暗号資産との親和性の高さは以前から語られています。

こうしたブロックチェーンゲームの特性を生かしたゲームが今後アジアから多数登場する予定であり、また香港の個人投資家の暗号資産取引解禁も含めて、市場はどう発展していくのか、その注目度は高く、ますますアジアの暗号資産関連の動向から目が離せなくなるのではないでしょうか。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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