セキュリティトークンとは?新たな資金調達方法のSTOも解説

セキュリティトークン
2023-10-11 更新

株式や債券などの有価証券をブロックチェーン技術によってデジタル化したセキュリティトークンは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のようないわゆる暗号資産(仮想通貨)とは異なり、「デジタル証券」と呼ばれています。

近年、投資の選択肢を増やし、金融商品としても長期的な発展が考えられるとして、セキュリティトークンを用いた資金調達手段としてSTO(Security Token Offering)が注目され、日本でも証券会社の取り扱い件数が増えてきています。

この記事では、セキュリティトークンの特徴を詳しく解説し、そのメリットや将来性についても紹介していきます。

セキュリティトークンとは?

セキュリティトークンとは、日本語では証券トークン(証券型トークン)とも訳され、ブロックチェーン技術を利用して発行されるデジタル化された有価証券のことを指します。

ちなみに有価証券とは、株式や債券、手形や小切手など、財産的価値があるもので、譲渡によって、その所有権を簡単に移転させることができるものを指します。

明確化された改正法後のセキュリティトークン

2020年5月1日に施行された資金決済法や金融商品取引法(金商法)の改正法では、仮想通貨から「暗号資産」への呼び方の改称や暗号資産デリバティブ取引などの規制強化が盛り込まれ、様々な事項が改正されています。

セキュリティトークンについては、以前から有価証券としての規制対象であった一部権利に関して、ブロックチェーン技術に代表される分散型台帳技術を用いて「トークン化」されたものを「電子記録移転権利」と定義し、その発行や取り扱いに関する所要の規定整備を行いました。

金商法に電子記録移転権利という新たな概念を導入することにより、従来の信託受益権、集団投資スキーム持分等の二項有価証券に該当する権利については、それがトークンに表示される場合、「流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるもの」を除き、一項有価証証券として開示規制や販売・勧誘規制を適用することとなりました。

具体的には、以前に横行した悪質なICO(Initial Coin Offering)やSTO(Security Token Offering)プロジェクトによる投資家被害や、二重規制によるビジネス機会損失を防ぐために、電子記録移転権利という概念を導入し、セキュリティトークンを法律上で有価証券とみなし、金商法の規制対象とすることを明確にしました(ただし、ユーティリティトークンを発行する類のICOは引き続き資金決済法の対象)。

この改正により、セキュリティトークンを利用した取引や資金調達が金商法の対象とされ、暗号資産・ブロックチェーン関連業界ほか金融商品を取り扱う業界や不動産業界など、新たな資金調達手法の拡充を目指す企業にとって、明確な指針となったといえます。

金融商品取引法上のセキュリティトークン区分

前述の通り、金商法の対象となる有価証券には厳しい規制のかかる一項有価証券と、比較的取り扱いが容易な二項有価証券があります。

一項有価証券には、主に株や社債、投資信託など流動性の高い証券が当てはまり、これらを取り扱うためには第一種金融商品取引業者(第一種金商業者)のライセンスが必要になります。

ちなみに現在の一般的な第一種金商業者は、信託銀行・証券会社のビジネスにあたります。第一種金商業者の規制としては、発行開示義務や継続開示義務が生じるため、発行企業には厳しいガバナンスが要求されることが大きな特徴です。

次に二項有価証券は、ファンド、合同会社の社員権、通常の信託受益権など流動性の低い権利が当てはまります。これはクラウドファンディング事業者やVC(ベンチャーキャピタル)といった第二種金融商品取引業者(第二種金商業者)が取り扱うものになります。第二種金商業者のライセンスの取得には、発行開示や継続開示義務などが原則ありません。

改正法は、ブロックチェーン上で発行されるセキュリティトークンがどの類型の有価証券と同等の規制を受けるべきかを整理したものになります。

ブロックチェーン技術を用いて発行された有価証券は、二項有価証券に当てはまる金融商品を発行した場合においても、技術的には高い流動性を有することになるため、投資家保護の観点から一項有価証券相当となり、その規制は第一種金商業者のライセンスが必要になる厳しい規制を課すものとなりました。

他方、ブロックチェーン技術を用いた有価証券の中でも流通性等を勘案し、取得者制限や譲渡制限を技術的に行うことで、電子記録移転権利から除かれる権利として、適用除外電子記録移転権利が設けられました。

具体的には特定投資家向けの投資事業有限責任組合(LPS)のトークン化などがこれに当てはまり、これらの取り扱いは二項有価証券となりライセンスは第二種金商業者でよく、原則として発行・継続開示の義務はなく、また自己資本規制も受けないとしました。

セキュリティトークンを使ったSTOも可能

改正法によりセキュリティトークンが金商法の対象になったことから、セキュリティトークン発行による資金調達、すなわちSTOは第一種金商業者のライセンスがあれば法律的に可能になりました。

STOは、証券発行のコストが下げられ、上場(IPO)や社債発行などができない中小企業や、個人でもセキュリティトークンを発行できるなど、資金調達の幅が広がることになります。また、投資家にとっても法律が整備されたことで、安心して投資ができる道が開けたこととなりました。

これまで、法規制が十分でなかったこともあり、ICOなどトークンを使った資金調達の中には資金を集めることだけを目的にした詐欺的なプロジェクトも多数存在していましたが、改正法の施行により、STOによるこうした問題も解決可能になりました。

STOによる資金調達は今後ますます活性化されることが予想されます。STOを取り扱うには第一種金商業者のライセンスが必要になりましたが、それによってICOやIEOなどその他の資金調達手段よりも、有価証券と同様に厳しい規制による消費者保護のもとで、結果として安全性が担保されることになりました。

関連コラム:「新たな資金調達方法STOとは?ICOとの違いや仕組みを解説

セキュリティトークンの利点と課題

セキュリティトークンはブロックチェーンを利用して発行するという点が、これまでの紙の有価証券を電子化することと異なります。

例えば、株式のみならず、債券や受益証券、集団投資スキームなどの金融商品ほか、不動産、アートなど様々な資産をデジタル化する手段として用いることができます。さらに、トークン化されたセキュリティトークンは、ブロックチェーン上で管理・移転できるようになるため、通常の有価証券とは異なり土日祝日も関係なく24時間いつでも取引が可能なのも大きな特徴です。

しかし、課題も少なくありません。セキュリティトークンは、国や地域によっては法規制が整っていない場合があります。

また、セキュリティトークンの定義はあるものの、それらの資産の評価方法や資産の保有者と実質的な所有者の間の権利関係など、解決すべき法的問題も多く存在しており、そもそも、セキュリティトークンや、その仕組みを理解することが難しいという課題もあります。

また、セキュリティトークンにおいては、その取引に関してブロックチェーン技術のスケーラビリティやプライバシー保護といった問題も多く関わってきます。すなわちブロックチェーン技術の進化もまた必要不可欠な要素となります。

セキュリティトークンの役割とその将来性

セキュリティトークンは、伝統的な資産だけでなく、これまで機関投資家にしか出資を募ることしかできなかった投資対象や、今はクラウドファンディングの対象となっている事業をトークン化し、誰でも投資できるようにすることができます。

不動産をはじめ、何らかの収益を生み出す資産を持っている個人・法人は、セキュリティトークンを発行することで資金調達ができる可能性が出てきます。

こうしたことが、セキュリティトークンが金融市場に大きな変革をもたらす可能性を秘めているといえますが、それを実現するためには様々な課題を克服する必要があります。

しかし、これらの課題に取り組むことで、より透明で効率的でアクセス可能な金融システムを構築することが可能となり、それが経済全体の発展に寄与することも考えられるでしょう。

まとめ

日本国内におけるセキュリティトークンが、資金決済法や金商法の改正法施行によって法律的にも明確なものになったことで、企業はセキュリティトークンを取り扱いやすくなりました。それにより、セキュリティトークンを活用した様々なユースケースが見られるようになり、日本でも不動産や社債などの事例が徐々に出てきています。

セキュリティトークンの取引データは、すべてブロックチェーン上に記録され分散管理されているため、ハッキングやデータの改ざんは非常に難しいこともあり、安全性の高い取引が可能になることから、従来の有価証券もセキュリティトークン化される可能性も出てくるでしょう。

ブロックチェーン技術を活用することで、セキュリティトークンは投資の小口化を実現します。金融商品の小口化は投資家の裾野を広げることにもつながり、企業やプロジェクトにとってもより資金調達がしやすくなるのは間違いないでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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