暗号資産(仮想通貨)に保証はあるか?知っておきたい日本の法律
2023年に入り、アメリカで比較的大規模な銀行が3行立て続けに経営破綻をしたことを受けて、世界は金融危機に向かうのではないかという心配が広がりました。また、破綻した銀行が暗号資産(仮想通貨)業界とも関係が深かったことから、暗号資産業界にも不安が広がっています。
幸い、この件は米国の連邦準備制度理事会(FRB)が「全ての預金者を完全に保護する」との声明を発表し、早急に事態の収拾を図ったことから収束に向かいましたが、銀行への信用度は大きく低下しました。
こういった状況の中、暗号資産の保証はどうなっているのでしょうか。
この記事では、そんな不安を解消するために暗号資産の取引における顧客保護について詳しく解説します。
暗号資産(仮想通貨)に保証制度はあるのか?
銀行にはペイオフという預金保険制度があります。
預金保険制度は、万が一金融機関が破綻した場合に、預金者等の保護や資金決済の履行の確保を図ることによって、信用秩序を維持することを目的としています。
預金保険制度により、当座預金や利息の付かない普通預金等(決済用預金)は、全額戻ってきます。また、定期預金や利息の付く普通預金等は、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保証されています。
ただし、FX/CFD取引をはじめとした特定の金融商品はペイオフの対象ではなく、全額信託保全(信託分別管理)される仕組みとなっています。
証券会社が破綻し、かつ全額信託保全でも顧客の資産が返還できなくなった場合、投資者保護基金により顧客の資産が1,000万円まで補償される制度があります。証券会社は、金融商品取引法により、投資者保護基金への加入が義務付けられており、全ての証券会社が投資者保護基金に加入しています。
暗号資産(仮想通貨)においては銀行のようなペイオフ制度はありませんが、顧客資産の保全に関する法の整備は進んでおり、金融庁に登録された暗号資産交換業者では、顧客の資産(法定通貨および暗号資産)と事業者の自己保有資産は分別管理が義務づけられています。
また、これを受けて暗号資産交換業者は分別管理について各社体制強化に取り組んでいます。
暗号資産(仮想通貨)に関する日本の法律は?
保証に絡んで、日本の法律についても確認しておきましょう。
日本の金融行政の優れた点は、ほぼすべての金融サービスを金融庁が単独で監督しているところにあります。たとえばアメリカでは、銀行は米連邦準備制度理事会(FRB)、証券は米証券取引委員会(SEC)というように担当する機関が分かれています。また、その区分が重複するような領域もあります。
一方、日本では、銀行、証券、保険、暗号資産(仮想通貨)取引のすべての領域において、監督官庁は金融庁に一任されています。金融関連に関しては金融庁が単独で担うため、業務の重複がなく、諸外国に対して比較的素早く対応を進めることができる仕組みがあります。
日本では、暗号資産に関する顧客保護と暗号資産交換業者への管理を目的とする法的整備を、比較的早くから金融庁が進めてきました。
暗号資産に関する法律は、「資金決済に関する法律(資金決済法)」および「金融商品取引法(金商法)」にて対応しており、金融庁はこれまでに三度の改正法案を提出し、法案は国会にて可決されています。ちなみに資金決済法の一度目の改正案は2017年4月1日に、二度目は2020年5月1日、三度目は2023年6月1日にそれぞれ施行されてきました。
こうした金融庁の取り組みは世界的に見ても早い対応であり、日本の暗号資産に関する法の整備は他国に比べて進んでいると評価されています。
暗号資産交換業者登録制度の導入
2017年に改正された資金決済法により、暗号資産交換業者に対して登録制が導入され、利用者保護のためのルールに関する規定の整備がなされました。
この改正法により、暗号資産交換業者は金融庁・財務局に登録することが義務付けられ、マネーロンダリング防止やテロ資金供与対策として、登録業者に本人確認義務が課されました。
さらに登録業者の条件として、資本金1,000万円以上の株式会社であり純資産がマイナスでないこと、コンプライアンス体制や財務基盤が万全で暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制が整っていること、顧客から預かった利用者財産(法定通貨および暗号資産)と事業者の自己保有資産の分別管理義務などが求められました。
参考コラム:
「暗号資産(仮想通貨)規制の動向は?各国政府の動きを解説」
さらに続く暗号資産(仮想通貨)に関する日本の法的整備の拡充
2017年の資金決済法改正後も、暗号資産(仮想通貨)に関する日本の法的整備は進められました。
日本政府は2019年3月15日、暗号資産のルール明確化と制度整備を目的とした資金決済法および金融商品取引法(金商法)の改正案を閣議決定しました。
政府の改正案では、法令上の仮想通貨の呼称を「暗号資産」に変更するほか、暗号資産をコールドウォレット等で管理することの義務化、暗号資産カストディ業務に対する規制の追加、暗号資産交換業の業務に関する規制の強化、収益分配を受ける権利が付与されたICOトークンは金商法対象であることの明確化などが盛り込まれました。
そして2020年5月1日、二度目の改正資金決済法が施行されました。
暗号資産サービスが急速に普及する中で、投資家や利用者保護を目的に改正され、暗号資産のウォレットサービスなど、カストディ業務を行う業者も暗号資産交換業者としての登録が必要になりました。
同時に、暗号資産を用いた新たなサービスに対応するため、金融商品取引法(金商法)の改正も行われ、ICOに関して投資的性格を持つものと、そうでないものが明確に分けられました。
投資的性格をもつICOはSTO(Security Token Offering)として金商法のもとで規制されることになりました。
STOで発行されるトークンは有価証券として発行され、投資に関する規制が適用されます。
また、以前は暗号資産デリバティブ取引に関しては法規制が及んでいませんでしたが、金商法上の金融商品として暗号資産が追加されたことで、暗号資産に関する店頭デリバティブ取引またはその媒介、取次、代理を業務とする場合には、第一種金融商品取引業者の登録が必要になりました。
さらに、暗号資産交換業者の運用ルールが定義され、暗号資産の証拠金取引の倍率(レバレッジ)を上限2倍とすること、総預かり資産額のうちコールドウォレットに保管する額を95%以上とすることなどが含まれました。
具体的には、利用者の暗号資産に対応する秘密鍵を、できるだけ外部のインターネットに接続されていないウォレット(ソフトウェアやコールドウォレット)で管理すること。日々の運用への対応のために必要最小限(総預かり資産額の5%以下)の暗号資産の秘密鍵をインターネットに接続されたウォレット(ホットウォレット)で管理する場合には、同種同量以上の暗号資産(履行保証暗号資産)を自己の暗号資産として保有し秘密鍵をコールドウォレットで管理することが義務づけられ、利用者の暗号資産および履行保証暗号資産に対して、優先弁済権を持って利用者の資産を保護していくことが義務づけられました。
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このため、ホットウォレット保管部分の暗号資産が滅失するような場合があっても、当社の自己資産である履行保証暗号資産をもって充当することが可能です。
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まとめ
以上が、暗号資産(仮想通貨)に関する日本の法律と、金融庁に登録されている暗号資産交換業者の暗号資産に関する利用者保護に向けた取り組みです。
暗号資産における保証制度は、いわゆるペイオフではありませんが、それと同等かそれ以上の保証制度はすでに整備されているといえるでしょう。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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