レイヤー1とレイヤー2の違いや特徴を解説!ブロックチェーンの重要技術
ブロックチェーンの技術や構造、特徴について語られる際に、「レイヤー1」、「レイヤー2(セカンドレイヤー、L2)」という用語が使われます。特にレイヤー2は従来のブロックチェーンが抱える問題を解決するために把握しておくべき重要な技術です。
レイヤー1とレイヤー2の違いや特徴を把握することで、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった主要な暗号資産(仮想通貨)だけでなく、新たに生まれたり、話題になったりする暗号資産、ブロックチェーンプロジェクトへの理解が深まるでしょう。
この記事ではレイヤー1とレイヤー2の違いについて説明します。
レイヤー1とレイヤー2の違い
まず簡単にレイヤー1とレイヤー2の違いをまとめると、レイヤー1はブロックチェーン自体のことで、ブロックチェーンの基盤層を指します。ビットコインブロックチェーンやイーサリアムブロックチェーンはレイヤー1と定義されます。
一方で、レイヤー2はそうしたビットコインやイーサリアムブロックチェーンの外(オフチェーンと呼ばれます)で取引を処理する技術の総称です。ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンを「一層目」として取り扱い、これらより上の層で処理するという認識で「レイヤー2」と表現されます。
レイヤー1、レイヤー2それぞれについて詳しく見てみましょう。
レイヤー1とは
レイヤー1はブロックチェーン自体を指しており、取引を検証し、確定する役割を持ちます。
レイヤー1上では、トランザクションの承認やブロックの生成などを行うコンセンサスアルゴリズムや、スマートコントラクトの仕組みが構築されます。レイヤー1の代表例としては、ビットコインブロックチェーンやイーサリアムブロックチェーンが挙げられるでしょう。ビットコインやイーサリアムのブロックチェーン上には「分散型アプリケーション」が構築できます。
レイヤー1の課題として挙げられるのが「スケーラビリティ問題」です。
スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンが処理できる能力以上のトランザクションが発生した際に、送付遅延や手数料が高騰する問題のことです。
例えばビットコインの場合、取引情報をまとめた「ブロック」が10分ごと生成されます。このブロックサイズは1MBと決まっており、1秒あたりで5〜10トランザクションが処理されます。
取引情報をより多く処理するためにブロックサイズを大きくすると、ブロックチェーンの分散性やセキュリティが損なわれるおそれがあり、ビットコインではブロックサイズは誕生以来変更されていません。そのために、一度に多くの処理が要求されると、処理されるのに時間がかかったり、処理を早めるために取引手数料が高騰したりする問題が発生します。
レイヤー2とは
レイヤー2が生まれた背景には、上記のようなレイヤー1のスケーラビリティ問題があります。
レイヤー2はこのスケーラビリティ問題の解決のために開発された技術なのです。
具体的には、トランザクションやスマートコントラクトの途中の処理をブロックチェーンの外(オフチェーン)で行い、最終的な取引結果のデータをレイヤー1に戻すことで、中間の処理の負担を減らしスケーラビリティ問題を解決する手法です。
レイヤー2によってレイヤー1のブロックチェーンに負荷がかからないため、処理が早くなる他に手数料の削減が見込まれます。
代表的なレイヤー2として、ビットコインではライトニングネットワーク、イーサリアムではロールアップといった技術があります。
関連記事:「暗号資産(仮想通貨)のセカンドレイヤー(レイヤー2)とは」
レイヤー1とレイヤー2の今後
NFT(非代替性トークン)や分散型金融(DeFi)といった多くのユースケースが生まれる中で、ビットコインやイーサリアムのスケーラビリティ問題は常に問題になっています。
例えば、イーサリアムでは2020年夏頃に「DeFiの夏」と呼ばれるようなブームが起きました。ブームとなった2020年のDeFiは、ほとんどがイーサリアム基盤で作られていたこともあり、トランザクションが膨大になるにつれてイーサリアムのガス代(取引手数料)が高騰しました。
また、ビットコインでも2023年5月に取引手数料が高騰しました。理由は新たに注目が集まった「ビットコインNFT」やBRC-20トークンの取引が活発になったためです。
このように日々新たな技術やブームが生まれる暗号資産業界では、レイヤー2技術の発展は重要で、常に注目を集めています。
スケーラビリティ問題は2014年ごろから広く認識されるようになり、現在、レイヤー2技術の議論や開発が活発に行われています。ビットコインではライトニングネットワーク、イーサリアムでロールアップの動きが注目されています。
ライトニングネットワーク
ビットコインのレイヤー2技術であるライトニングネットワークは、取引を外部で処理することでスケーラビリティ問題を解決する技術です。ビットコインの支払いを安全かつ、高速に実現します。
オフチェーンで取引を行うことで理論的には1秒間に数百万件もの決済が可能とされます。前述したようにビットコインは1秒間に5〜10件ほどの処理量のため、比べるとライトニングネットワークの方が大きいことがわかります。
ビットコインでは取引を検証するマイナー(採掘者)への手数料を支払いますが、ライトニングネットワークにはマイナーがいないために手数料も非常に安く抑えられます。
手数料が安いことで、1円以下のマイクロペイメント(少額支払い)の実現が可能です。具体的にはSNSでの投げ銭や募金、ユーザーへのインセンティブ報酬といったサービスなどが考えられるでしょう。
しかし、ライトニングネットワークでは取引を外部で行うため、ブロックチェーン上での取引の透明性が損なわれることが課題として指摘されています。分散処理が行われるブロックチェーンでは、取引がインターネット上に公開されていることが最も大きな特長の一つであり、その透明性が損なわれるのは問題だとする声が上がることがあります。
また、ライトニングネットワークはその仕組み上、高額取引に向いていません。ライトニングネットワークが機能するためには、多くのビットコインがライトニングネットワーク上にロックされることで流動性を高める必要があります。
関連記事:「ライトニングネットワークとは?特徴や仕組みを解説」
今後期待されるロールアップ
また、今後期待されているレイヤー2に「ロールアップ」があります。イーサリアムのレイヤー2技術である「プラズマ」から派生した技術です。
ロールアップはイーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するための技術で、トランザクションの大部分をレイヤー2にて実行し、レイヤー1では資金の移動と正当性の検証のみ行うため、レイヤー1はトランザクションを個々に処理する必要がありません。レイヤー1は、提出されたデータの正当性を検証するだけなので、トランザクション処理の負担が軽減されることになります。
データ処理の一部をレイヤー1でも行うことが、他のレイヤー2技術との違いです。そのため、ロールアップはハイブリッドなレイヤー2技術ともいわれています。
そのロールアップの中でオプティミスティック・ロールアップ(Optimistic Rollup)とzkロールアップ(zk Rollup)という技術があります。これからの暗号資産・ブロックチェーンでの中心的な技術になっていくことが期待されています。
しかし、それぞれはまだ研究・実験中の技術でもあり、課題も多く存在します。今後の展開に注目です。
関連記事:
「イーサリアムで導入が検討されているロールアップ(Rollups)とは?応用技術についても解説」
レイヤー1、レイヤー2以外のブロックチェーン
「レイヤー1」や「レイヤー2」といったように、ブロックチェーン技術は機能やサービスといった役割ごとにブロックチェーンの構造を階層的なレイヤー層に分類できます。
レイヤー1、レイヤー2の他に、レイヤー0、レイヤー3といった分類も存在します。
レイヤー0
レイヤー0はレイヤー1ブロックチェーンをカスタマイズして構築するための基盤やシステムです。
例えばレイヤー0の機能を持つブロックチェーンであるポルカドット(DOT)では、「リレーチェーン」と呼ばれるメインチェーンに、複数の「パラチェーン」が接続される仕組みを持っています。このパラチェーン上に独自のブロックチェーンを構築できます。
リレーチェーン上でセキュリティを担保することでパラチェーン上のプロジェクトはセキュリティリスクを気にすることがなく開発が可能で、パラチェーン同士のブロックチェーン間の相互運用性もあることが特徴です。
さらにブロックチェーンやデータベースを分割する方法であるシャーディングをネットワークに利用することで多くのトランザクションを並行して処理できるために、スケーラビリティ問題の解決にもつながります。
レイヤー3
レイヤー3は、DeFi(分散型金融)、ブロックチェーンゲーム、ウォレット、その他のDAppsを含むブロックチェーンベースのアプリケーション層のことです。
メインブロックチェーンのスマートコントラクト等で構築したアプリケーションやサービスを開発するための技術など、サービスやアプリケーションそのものを指します。
まとめ
レイヤー1は、ビットコインやイーサリアムといったブロックチェーンの基盤層のことです。一方で、レイヤー2は途中の取引をブロックチェーンの「外」で処理をして、最終的な取引結果をレイヤー1に戻す処理を行う技術の総称です。
ビットコインやイーサリアムといったブロックチェーンではトランザクションが集中すると処理が追いつかなくなり、送付遅延や手数料高騰といったスケーラビリティ問題が発生します。レイヤー2は、このスケーラビリティ問題を解決できると期待されています。また、スケーラビリティ問題を解決することで、マイクロペイメントへの活用なども見えてくるでしょう。
ただし、レイヤー2の技術はまだ開発・研究途上のものもあり、課題も多くあります。今後の開発が進むことで、暗号資産やブロックチェーンの発展に繋がるでしょう。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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