暗号資産(仮想通貨)のホワイトペーパーとは?書かれている内容について解説
暗号資産(仮想通貨)を買ってみたい、暗号資産プロジェクトに投資してみたいと思ったときに、どの暗号資産を選べばよいかわからないということはないでしょうか。
そのようなときに参考になるのが、暗号資産プロジェクトの事業計画書的な役割をはたす「ホワイトペーパー」の存在です。ホワイトペーパーは、投資の判断材料の1つになる重要な情報です。
この記事では、暗号資産のホワイトペーパーとはどういうものなのか、投資家にとってどのような役に立つのかを詳しく解説します。
暗号資産(仮想通貨)のホワイトペーパーとは?
ホワイトペーパーとは、一般的には特定の製品やサービスの機能を解説している文書などを指しますが、暗号資産(仮想通貨)においては、暗号資産プロジェクトにおいて、そのプロジェクトの目的や概要、技術的な詳細、ビジネスモデル、トークンなどについて記載されたドキュメントのことをいい、多くの場合は英語で記載されています。
また、よくある例としては、プロジェクト考案者が、ICO(Initial Coin Offering)やIEO(Initial Exchange Offering)により資金調達を行う際に、自身のプロジェクトの内容について詳しく説明したホワイトペーパーを発行し、投資家に対してトークンの購入を促す目的などに使用されることもあります。
暗号資産(仮想通貨)の数だけホワイトペーパーはある
ホワイトペーパーは英語で記載されていることがほとんどであり、その上、技術的なパートは難解であるため敬遠されがちですが、そのプロジェクトの想定している流通規模や目的を実現させるためのロードマップなども記載されていることから、その暗号資産に投資すべきブロックチェーンプロジェクトかどうかを選ぶ際の判断材料のひとつになります。
そのため、株式に投資する際に投資先の企業の財務諸表や決算報告書を読むように、暗号資産に投資をする際はホワイトペーパーに目を通すのが基本です。
なお、暗号資産におけるホワイトペーパーの多くは、広く一般に公開されています。まずは参考に代表的な暗号資産のホワイトペーパーを読んでみるとよいでしょう。
ホワイトペーパーの読み解き方
暗号資産(仮想通貨)のホワイトペーパーには、そのプロジェクトがどのような背景から生まれたのか、どのような利点を持っているのか、どのような技術を採用しているのか、誰がどのようにして開発をしているのかなど、そのプロジェクトに関する様々な情報が書かれています。
しかし、ホワイトペーパーには書式に決まりはないので、逆に大事な要素が書かれていないものも少なくありません。
大事な要素としては、暗号資産は誰が発行をするのか、発行上限はあるのか、誰にとって価値のあるものなのか、拠点はどこにあるのか、プロジェクトの意義とは何なのか、どうやって価値を実現しプロジェクトを維持していくのかなどが重要になります。
特に、発行主体が誰なのか、どこにプロジェクトの拠点があるのかという情報が不明瞭なホワイトペーパーは詐欺の可能性もないとはいえませんので気をつけましょう。
また、ホワイトペーパーに記載されている内容が全て正しいとも限りません。中にはすべてが夢のような理想で、技術的に実現する可能性が低いプロジェクトもあります。投資をする際には、ホワイトペーパーを読む以外にも十分なリサーチを行うことも必要です。
ビットコインのホワイトペーパーを読んでみる
ビットコイン(BTC)は2008年にサトシ・ナカモトによってインターネット上に公開された、たった9ページで記載された英語の論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン:P2P電子通貨システム)」をきっかけに誕生しました。
このその論文こそがビットコインのホワイトペーパーです。ビットコインのホワイトペーパーも一般公開されており、誰でも読むことができます。
ビットコインについては、論文を公表したサトシ・ナカモトがビットコインの考案者と考えられていますが、その素性は明らかにされていません。サトシ・ナカモトは日本人の名前に聞こえますが、その国籍も個人であるのかもグループなのかも不明です。
サトシ・ナカモトは、金融機関といった信頼できる第三者機関を必要としない電子決済システムを構築する目的で、ビットコインを考案しました。論文の中では、ビットコイン取引を支えるブロックチェーン技術の仕組みが詳しく解説されています。
現在、ビットコインの論文は、bitcoin.orgにて日本語を含む43の言語に翻訳されて公開されています(オリジナルの英語も含む)。
イーサリアムのホワイトペーパーを読んでみる
ビットコインに次ぐ時価総額を誇るイーサリアム(ETH)のホワイトペーパーは、考案者のヴィタリック・ブテリン氏によって2014年に公開されました。
イーサリアムは、ビットコインにはない「スマートコントラクト」と呼ばれる機能が付与され、ビットコインとの差別化をはかっています。ホワイトペーパーでは、そのスマートコントラクトの仕組みについても解説されています。
イーサリアムは、スマートコントラクトにより契約を自動化します。この自動化により第三者の認証が不要になるほか、情報の透明性が高まるといったメリットがあるなど、DAppsと呼ばれる分散型アプリケーションの世界を作り、ブロックチェーンの実用性を高めました。
イーサリアムのホワイトペーパーも現在は日本語版がウェブにて公開されています。
ICO、IEOのホワイトペーパー
ICO(Initial Coin Offering)やIEO(Initial Exchange Offering)による資金調達では、暗号資産発行元はより魅力的なホワイトペーパーの公開に努め、世界中の投資家から資金を募ります。
ちなみに、ICOとは資金調達をしたい企業や事業プロジェクトが、独自の暗号資産(トークン)を発行、販売して資金を調達する手段・プロセスのことを指します。また、IEOは企業や事業プロジェクトが発行するトークンを暗号資産交換業者が販売し、投資家に購入してもらうことで資金調達ができる仕組みです。ICOとは異なり、トークンの販売を暗号資産交換業者が仲介して行うことから、暗号資産交換業者が信頼できると判断したプロジェクトのトークンのみが販売されるため、IEOはICOと比較して詐欺被害に遭う可能性が低くなることが期待されます。
ICO、IEOのホワイトペーパーに書かれている内容は、まずプロジェクトの理念や目的がしっかりと書かれていることが大前提です。その目的や仕組み、どのような技術を採用しているのか、そして目論見などが記載されており、その実現性についても明確である必要があります。
セキュリティに関する情報や投資家向けの情報、暗号資産の発行と配分の方法、調達資金の使用用途などが明確であればあるほど将来性が高まります。いうなれば事業計画書のようなものです。
逆にこうした項目が明確でない場合、そのプロジェクトは危険であると判断することも大切です。
最新macOS内にもビットコインのホワイトペーパーが記載されていた?
2023年になって、突然、ビットコインのホワイトペーパーが注目を集めることになったエピソードがありました。
2017年以降にリリースされたmacOSに、何者かによってビットコインのホワイトペーパーが隠されていたことが発覚したのです。
最初の発見は、Josh D氏(@schwa23)の2020年11月28日のTwitterの投稿にさかのぼります。
Josh D氏のツイートは「なぜ私のMacにはVirtual Scanner IIというイメージキャプチャデバイスがあるのでしょうか?」という問いかけでした。またイメージフォルダ内には、ペイントされた看板のjpeg写真と、奇妙なことに、ビットコインのホワイトペーパーのPDFも保存されているというものでした。
その後、2021年4月12日にApple サポートコミュニティでも「Virtual Scanner II in Image Capture」という書き込みがあり、このファイルは何なのか?という問い合わせがありました。
これらは当時それほど話題にならなかったようなのですが、2023年4月になって、この2つの書き込みについて語ったあるブログ記事が世界に拡散され、一気に話題になったのです。
なお、こうした報道が世界的に話題になったあと、米アップル社は2023年4月に開発者向けOSの修正版である「macOS 13.4 Ventura beta3」をリリースしたことで、そのバージョン以降はビットコインのホワイトペーパーが削除されたようです。
まとめ
暗号資産(仮想通貨)のホワイトペーパーは英語で書かれている場合が圧倒的に多いため、日本人にとってはなじみにくいものというのも否めません。
しかし、ホワイトペーパーはプロジェクトの情報が記載された重要な書類ですので、投資の前に一度は目を通しておきたいものです。英文を読んで理解できないときは、手かがりとして翻訳サービスを利用するのもいいかもしれません。
また、少なくとも記載された内容を理解できるよう、日本語訳を最初から用意しているプロジェクトだけにターゲットに絞ってみるのも1つの方法です。
ただし、ホワイトペーパーに記載されている内容が明確でも、それが必ずしも実現するとは限らないことも理解しておきましょう。ホワイトペーパーは参考にはなりますが、投資はあくまでも自己判断が必要なことには変わりはありません。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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