レイヤー0ブロックチェーンとは?レイヤー1、レイヤー2との違いを解説
近年は、重要な概念としてレイヤー0ブロックチェーンという用語を耳にするようになりました。では、レイヤー0とはどういう概念なのでしょうか。
この記事では、レイヤー0について、レイヤー1やレイヤー2との違いも含めて詳しく解説していきます。
レイヤー0ブロックチェーンとは何か?
ブロックチェーン技術は機能やサービスなどその役割によりブロックチェーンの構造を階層的なレイヤー層に分類できます。レイヤー層を理解することで、ブロックチェーンが果たす役割と将来性が明確になり、その知識を深めることが可能になります。
ブロックチェーンにおけるレイヤー層は、これまでレイヤー1~レイヤー2の2段階に分類するのが一般的でした。しかし最近は、レイヤー0と呼ばれるブロックチェーン技術が注目されるようになっています。
ブロックチェーンのレイヤー層
では、レイヤー0ブロックチェーンとは何かについて、以下にレイヤー0~レイヤー2について簡単に解説します。
レイヤー0
レイヤー0は、「相互運用性(インターオペラビリティ)」を主な特徴としており、異なるブロックチェーンを相互に接続し、連携させるためのプロトコルやインフラを提供します。これにより、異なるブロックチェーン間で情報や価値の交換がスムーズに行えるようになります。
レイヤー0の例としてはコスモス(ATOM)やポルカドット(DOT)があります。
レイヤー1
レイヤー1は、独自のネットワークとプロトコルを持つ基本的なブロックチェーンを指します。このレイヤーにはトランザクションの承認やブロックの生成を行うコンセンサスアルゴリズムが実装されており、スマートコントラクトの仕組みが動作します。
代表的な例として、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などが挙げられます。これらのブロックチェーンは、独自のネットワーク上でトランザクションの検証やブロック生成を行い、さまざまなユースケースをサポートしています。
レイヤー2
レイヤー2は、レイヤー1ブロックチェーンのスケーラビリティやプライバシー保護など、メインブロックチェーンの課題を解決する機能を提供する技術です。
レイヤー2技術は、メインブロックチェーン上で処理を行わないため、ブロックチェーン本体のシステム処理に負荷をかけずにトランザクション処理が可能になります。メインブロックチェーン以外(オフチェーン)で実行する技術であるため、レイヤー1に対してレイヤー2と呼ばれるようになりました。セカンドレイヤーともいいます。
レイヤー2は、レイヤー1ブロックチェーンの機能の一部として動作するのが特徴です。ポリゴン(MATIC)やアービトラム(ARB)が代表例として挙げられます。
機能 | ユースケース | |
---|---|---|
レイヤー0 | レイヤー1ブロックチェーンを複数構築する ための基盤 |
コスモス、ポルカドットなど |
レイヤー1 | ブロックチェーンの基盤 | ビットコインやイーサリアムなど |
レイヤー2 | トランザクション速度を向上させ スケーラビリティ問題を解決する |
ポリゴンやアービトラムなど |
なぜレイヤー0ブロックチェーンは誕生したのか
ビットコインやイーサリアムなどのパブリックブロックチェーンに欠かせない要素として、「スケーラビリティ」「セキュリティ」「分散性」の3つの要素があります。
- スケーラビリティ:トランザクションなど処理能力の拡張性
- セキュリティ:ネットワークの安全性
- 分散性:ノード等ネットワーク参加者がどれだけ分散しているか
これらの3要素はブロックチェーンには欠かせないものですが、同時にすべてを満たすのは難しいとされています。これを「ブロックチェーンのトリレンマ」と呼びます。3つの要素のうち2つを満たすと、残りの1つが犠牲になることが多いため、これはブロックチェーンの大きな課題となっています。
たとえばビットコインのようにセキュリティと分散性を重視するとトランザクション処理速度が遅くなりスケーラビリティが犠牲になります。これは、分散化によってネットワークの同期に時間がかかり、セキュリティを高めるための検証にも時間を要するからです。
一方、スケーラビリティと分散性を重視すると、取引を十分に検証できずセキュリティが犠牲になってしまう可能性があります。
また、セキュリティとスケーラビリティを優先すると、分散性が犠牲になり中央集権的なネットワークになりやすく、ブロックチェーンそのものの非中央集権的特徴が薄れてしまいます。
こうした状況を解決するために誕生した技術がレイヤー0ブロックチェーンです。レイヤー0のプロジェクトごとに、具体的な解決方法は異なりますが、相互運用性と拡張性を提供することが目指されているのが共通しています。
レイヤー0による解決が期待されるブロックチェーンの課題
レイヤー0が解決するのは「ブロックチェーンのトリレンマ」だけではありません。「インターオペラビリティ(相互運用性)」と「ユーザビリティ(開発の柔軟性と操作性)」といった開発者の課題解決を目指しています。
インターオペラビリティ(相互運用性)
ブロックチェーンの相互運用性とは、2つ以上のブロックチェーンが互いに通信してリソースを共有する機能です。異なるブロックチェーン上に作られた分散型アプリケーション間で互いに通信が可能な状態を「相互運用性がある」といいます。
従来のブロックチェーンの多くは、独自プロトコルにより設計されているため、異なるブロックチェーン上で開発されたアプリケーションは互いに通信することができず、サービスや機能は分離され、それぞれが孤立した状態になっていました。
その後、クロスチェーンブリッジという技術により、複数チェーンの統合や異なるチェーン間で通信やトークンの転送を行う手段が生まれたものの、セキュリティに課題があり、実際にハッキング被害が生じたケースも存在します。また、クロスチェーンブリッジは運用に手間がかかる側面もあり、よりスムーズな相互運用性が求められるようになりました。
後述するように、ポルカドットというレイヤー0プロジェクトではリレーチェーンという仕組みを使うことでセキュリティや相互運用性の問題を解決しています。
ユーザビリティ(開発の柔軟性と操作性)
ブロックチェーンにおけるユーザビリティとは、システムやアプリケーションを使いやすくする要素を指します。
従来、DAppsを複数のブロックチェーンで動作するように設計するには、ブロックチェーンごとに個別のDAppsを開発する必要がありました。
レイヤー0ではこのユーザビリティの課題に対し、ソフトウェア開発キット(SDK)と、開発者の目的に合わせてブロックチェーンをカスタマイズしやすくすることで柔軟性と操作性が向上しています。
前述したインターオペラビリティと似た課題ですが、ユーザビリティはブロックチェーン開発前、もしくは開発中における課題であるのに対して、インターオペラビリティは開発後の課題といえるでしょう。
レイヤー0の機能
レイヤー0ブロックチェーンはプロジェクトやプロトコルごとに大きく異なりますが、一般的にはいくつかの共通した役割を持っています。
まずは、レイヤー0はレイヤー1ブロックチェーンを構築するための基盤を提供しています。この基盤により、複数のレイヤー1ブロックチェーンが相互に通信しやすくなります。
さらに、異なるブロックチェーン間でトークンとデータの転送を可能にするクロスチェーン転送プロトコルが実装されていることも特徴のひとつです。
こうした構成要素を持つレイヤー0ブロックチェーンを使うことで、開発者は要件に合わせたカスタムブロックチェーンを作成できます。
このような構成要素を持つレイヤー0ブロックチェーンを利用することで、要件に合わせた最適なプロジェクトを構築することができます。
注目される代表的なレイヤー0ブロックチェーン
最近では、レイヤー0ブロックチェーンの必要性と利点が開発者に理解され、これを導入したケースも徐々に増えています。
また、レイヤー0ブロックチェーンは新規に開発が進められているものばかりではなく、これまでレイヤー1として開発が進められてきたブロックチェーンの中に、レイヤー0の仕組みや機能を実装し、現在はレイヤー0ブロックチェーンとして認識されているブロックチェーンも少なくありません。
以下で紹介する代表的なブロックチェーンも、そうしたブロックチェーンの1つです。
コスモス(ATOM)
コスモスは、異なるブロックチェーン間の相互運用性とスケーラビリティを向上させることを目指したオープンソースプロジェクトで、2019年にメインネットがローンチされました。
このプロジェクトは、「インターネット・オブ・ブロックチェーンズ」を実現することを目標に掲げ、Tendermint Inc.の共同創立者であるジェイ・クワン氏やエーサム・ブッフマン氏を中心に開発されました。
コスモスでは、「ゾーン」と呼ばれる独自の分散型ブロックチェーンを開発者が作成することができます。これらのゾーンは、Cosmos Hubを介して相互に接続され、互いに通信します。Cosmos Hubは、ゾーン間のトランザクションを中継し、ネットワーク全体のセキュリティを向上させる役割を担っています。これにより、各ゾーンは独自の機能を持ちながらも、相互運用性を確保することが可能です。
さらに、コスモスはIBC(Inter-Blockchain Communication)プロトコルを使用して、異なるブロックチェーン間でのトークンとデータの転送を実現しています。IBCプロトコルは、ブロックチェーン間の通信を標準化し、互いに異なる技術スタックを持つブロックチェーンでもシームレスにデータを交換できるようにします。
開発者はCosmos SDKというブロックチェーンフレームワークを提供することで、簡単にカスタムブロックチェーンを構築できます。
コスモスは、このような革新的な技術を提供することで、レイヤー1のブロックチェーンが直面するスケーラビリティや相互運用性の課題を効果的に解決しています。
関連記事:
「暗号資産(仮想通貨)コスモス(ATOM)とは?将来性や特徴を解説」
ポルカドット(DOT)
ポルカドットは、2020年にメインネットがローンチした、異なるブロックチェーン同士を接続することを目指すオープンソースプロジェクトです。ユーザー自身がデータをコントロールできるような分散型のウェブ世界を実現することを目的に、イーサリアムの共同創立者であるギャビン・ウッド氏が中心となって開発されています。
ポルカドットでは、開発者は「パラチェーン」と呼ばれる独自の分散型ネットワークを立ち上げることができます。これらのパラチェーンは、メインチェーンである「リレーチェーン」を介して相互に接続されており、リレーチェーンのセキュリティ機能を利用して高い安全性を確保します。リレーチェーンの一元的なセキュリティを利用することで、各パラチェーンは独自のセキュリティ対策を省略でき、効率的かつ安全な運用が可能です。
また、ポルカドットはシャーディングを使用し、トランザクション処理をより効率的に処理しています。
このように、リレーチェーンやパラチェーンといったレイヤー0ブロックチェーンの仕組みを提供することでレイヤー1の課題を解決しています。
関連記事:
「暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)とは?将来性や今後を解説」
まとめ
レイヤー0ブロックチェーンは、その設計方法によっては、相互運用性やスケーラビリティなどの課題に対処できる可能性がある一方で、同様の目標を達成することを目的とした多くの競合ソリューションがすでに多数存在しています。現在開発されているレイヤー0ブロックチェーンのどれが主流になるかはまだ誰にもわかりません。
また、スケーラビリティや相互運用性とった課題の解決は、ブロックチェーンの長期的な持続可能性には不可欠な要素です。
レイヤー0の完成を待たずに、従来の主要レイヤー1ブロックチェーンシステムが最終的にスケーラビリティを向上させる可能性や、近年人気の高まるレイヤー2のようなスケーリングソリューションがブロックチェーンの議題解決に向けた今後の主流となるかもしれません。
どれも実現するまでには、まだまだ時間が必要なことは確かですが、レイヤー0を含め、開発者による様々なアプローチによって、ブロックチェーンがより多くのユーザーにとって使いやすいものになるよう進んでいることも、またひとつの事実です。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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