Layer0(レイヤー0)ブロックチェーンとは?レイヤー1、レイヤー2との違いを解説

Layer0(レイヤーゼロ)
2023-08-16 更新

ブロックチェーン技術のアーキテクチャー(構造・構成)について語るときに、よくレイヤー1、レイヤー2という用語が使われます。これらは、ブロックチェーンの概念を理解する上では重要な用語です。

近年は、さらに重要な概念としてレイヤー0(Layer0)という用語も耳にするようになりました。では、レイヤー0とはどういう概念なのでしょうか。

この記事では、レイヤー0について、レイヤー1やレイヤー2との違いも含めて詳しく解説していきます。

レイヤー0ブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーン技術は機能やサービスなどその役割によりブロックチェーンの構造を階層的なレイヤー層に分類できます。レイヤー層を理解することで、ブロックチェーンが果たす役割と将来性が明確になり、その知識を深めることが可能になります。

ブロックチェーンにおけるレイヤー層は、これまでレイヤー1~レイヤー3の三段階に分類するのが一般的でした。しかし最近は、レイヤー0と呼ばれるブロックチェーン技術が注目されるようになっています。

ブロックチェーンのレイヤー層

では、レイヤー0ブロックチェーンとは何かについて、以下にレイヤー0~レイヤー3について簡単に解説します。

Layer0

レイヤー0は、レイヤー1ブロックチェーンをカスタマイズして提供する基盤やシステムです。

レイヤー0を使うことで、後述するようなレイヤー1ブロックチェーンの課題を解決できます。文脈によってレイヤー0は、ブロックチェーンネットワークを構成するノード同士が通信するための物理的な接続を担当するネットワークの物理層を指すこともありますが、ここでいうレイヤー0は基盤技術であるブロックチェーンそのものを指します。

レイヤー0ブロックチェーンの例としてはポルカドット(DOT)やアバランチ(AVAX)があります。

Layer1

レイヤー1は、ブロックチェーンの基盤となる技術です。取引を検証し、確定する役割を持ちます。また、開発者が分散型アプリケーション(DApps)を構築するために使用する基盤となります。

レイヤー1上では、トランザクションの承認やブロックの生成などを行うコンセンサスアルゴリズムやスマートコントラクトの仕組みが構築され、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)がユースケースとして挙げられます。

Layer2

レイヤー2は、レイヤー1ブロックチェーンのスケーラビリティやプライバシー保護などメインブロックチェーンの課題を解決する機能を提供する技術です。

レイヤー2技術は、メインブロックチェーン上で処理を行わないため、ブロックチェーン本体のシステム処理に負荷をかけずに高速な処理が可能になります。メインブロックチェーン以外(オフチェーン)で実行する技術であるため、レイヤー1に対してレイヤー2と呼ばれるようになりました。セカンドレイヤーともいいます。

レイヤー2は、レイヤー1ブロックチェーンの機能の一部として動作するのが特徴です。プラズマやライトニングネットワークがユースケースとして挙げられます。

Layer3

レイヤー3は、DeFi(分散型金融)、ブロックチェーンゲーム、ウォレット、その他のDAppsを含むブロックチェーンベースのアプリケーション層のことです。

メインブロックチェーンのスマートコントラクト等で構築したアプリケーションやサービスを開発するための技術など、サービスやアプリケーションそのものを指します。

機能 ユースケース
レイヤー0 レイヤー1ブロックチェーンを複数構築する
ための基盤
アバランチ、ポルカドット
など
レイヤー1 ブロックチェーンの基盤 ビットコインやイーサリアム
など
レイヤー2 トランザクション速度を向上させ
スケーラビリティ問題を解決する
プラズマ、ライトニング
ネットワークなど
レイヤー3 ブロックチェーンを使った
アプリケーションの構築
DeFi、ブロックチェーンゲーム、
分散型ストレージなど

なぜレイヤー0ブロックチェーンは誕生したのか

ビットコインやイーサリアムなどのパブリックブロックチェーンに欠かせない要素として、「スケーラビリティ」「セキュリティ」「分散性」の3つの要素があります。

スケーラビリティ:トランザクションなど処理能力の拡張性

セキュリティ:ネットワークの安全性

分散性:ノード等ネットワーク参加者がどれだけ分散しているか

これらの3つの要素はブロックチェーンには欠かせない要素ですが、この3つの要素は、どれか2つを満足させると残りの1つはその犠牲となる「ブロックチェーンのトリレンマ」と称される関係にあり、ブロックチェーンの課題となっています。

たとえばビットコインのようにセキュリティと分散性を重視するとトランザクション処理速度が遅くなりスケーラビリティが犠牲になってしまいます。コンピューターが分散していることでネットワークが同期する時間がかかり、セキュリティを重視することで検証にも時間を費やしてしまうためです。

一方、スケーラビリティと分散性を重視すると、取引を十分に検証できずセキュリティが犠牲になってしまう可能性があります。

また、セキュリティとスケーラビリティを優先すると、分散性が犠牲になり中央集権的なネットワークになりやすく、ブロックチェーンそのものの非中央集権的特徴が薄れてしまいます。

こうした状況を解決するために誕生した技術がレイヤー0ブロックチェーンです。具体的にどのように解決するのかはレイヤー0のプロジェクトごとによって異なっています。

レイヤー0による解決が期待されるブロックチェーンの課題

レイヤー0が解決するのは「ブロックチェーンのトリレンマ」だけではありません。「インターオペラビリティ(相互運用性)」と「ユーザビリティ(開発の柔軟性と操作性)」といった開発者の課題解決を目指しています。

インターオペラビリティ(相互運用性)

ブロックチェーンの相互運用性とは、2つ以上のブロックチェーンが互いに通信してリソースを共有する機能です。異なるブロックチェーン上に作られた分散型アプリケーション間で互いに通信が可能な状態を「相互運用性がある」といいます。

従来のブロックチェーンの多くは、独自プロトコルにより設計されているため、異なるブロックチェーン上で開発されたアプリケーションは互いに通信することができず、サービスや機能は分離され、それぞれが孤立した状態になっていました。

その後、クロスチェーンブリッジという技術により、複数チェーンの統合や異なるチェーン間で通信やトークンの転送を行う手段が生まれたものの、セキュリティに課題があり、実際にハッキング被害が生じたケースも存在します。また、クロスチェーンブリッジは運用に手間がかかる側面もあり、よりスムーズな相互運用性が求められるようになりました。

後述するように、ポルカドットというレイヤー0プロジェクトではリレーチェーンという仕組みを使うことでセキュリティや相互運用性の問題を解決しています。

ユーザビリティ(開発の柔軟性と操作性)

ブロックチェーンにおけるユーザビリティとは、開発の柔軟性と操作性を指します。

従来のブロックチェーンでは、1つのDAppsを複数のブロックチェーンで動作するように設計することは、ブロックチェーンの数だけDAppsを開発する必要がありました。

しかし、ブロックチェーンで多くのDAppsが開発されるようになると、DAppsを展開しようとする開発者にとってはあるブロックチェーンの仕様から他のブロックチェーンの仕様に簡単に変更できる柔軟性や操作性が重視されるようになりました。

レイヤー0ではこのユーザビリティの課題に対し、ソフトウェア開発キット(SDK)と、開発者の目的に合わせたブロックチェーンをカスタマイズしやすくすることで柔軟性と操作性が向上しています。

前述したインターオペラビリティと似た課題ですが、ユーザビリティはブロックチェーン開発前、もしくは開発中における課題であるのに対して、インターオペラビリティは開発後の課題といえるでしょう。

レイヤー0の機能

レイヤー0ブロックチェーン、レイヤー0はプロジェクトやプロトコルごとに大きく異なりますが、一般的にはレイヤー1ブロックチェーンを構築するための基盤となり、レイヤー1ブロックチェーンからのトランザクションデータをバックアップする機能を持ちます。

さらにその他の機能として、異なるブロックチェーン間でトークンとデータの転送を可能にするクロスチェーン転送プロトコルが実装されていることも特徴の1つです。

こうした構成要素を持つレイヤー0ブロックチェーンを使うことで、開発者は要件に合わせたカスタムブロックチェーンを作成できます。

また、レイヤー0ブロックチェーンは汎用性が高く、レイヤー1ブロックチェーンソリューションだけでなく、従来のブロックチェーンにも急増しているレイヤー2スケーリングソリューションとも同時に互換性を保つことができます。

注目される代表的なレイヤー0ブロックチェーン

最近では、レイヤー0ブロックチェーンの必要性と利点が開発者に理解され、導入されるケースが徐々に増えています。

また、レイヤー0ブロックチェーンは新規に開発が進められているものばかりではなく、これまでレイヤー1として開発が進められてきたブロックチェーンの中に、レイヤー0の仕組みや機能を実装し、現在はレイヤー0ブロックチェーンとして認識されているブロックチェーンも少なくありません。

ここに紹介する代表的なブロックチェーンも、そうしたブロックチェーンの1つです。

アバランチ(AVAX)

アバランチは、2020年9月にメインネットをローンチした、分散型金融(DeFi)のプラットフォームを目指すパブリックブロックチェーンです。元米コーネル大学准教授のEmin Gün Sirer氏を中心に、ニューヨークに拠点を持つAVA Labs,Incが開発を主導しています。

アバランチのブロックチェーンは、X-Chain(エクスチェンジ・チェーン)、P-Chain(プラットフォーム・チェーン)、C-Chain(コントラクト・チェーン)という3つのチェーンで構成されています。これら3つのチェーンは、エコシステム内の主要な機能を扱うために特別に構成されており、低レイテンシーと高スループットを目指しながらセキュリティを強化することを目的としています。

X-Chainはアセットの作成と取引に、P-Chainはバリデーターとサブネットの調整に、C-Chainはスマートコントラクトの作成に使用されます。

さらにアバランチは、アバランチの柔軟な構造により高速かつ安価なクロスチェーンスワップが可能になっています。このように、カスタマイズ性の高いプロックチェーンを提供しているため、レイヤー0ブロックチェーンに分類されます。

関連記事:「DeFiで注目のアバランチ(Avalanche)とは 今後の将来性についても解説

ポルカドット(DOT)

ポルカドットは、2020年にメインネットがローンチした、異なるブロックチェーン同士を接続することができるオープンソースプロジェクトで、ユーザー自身がデータをコントロールできるような分散型のウェブ世界を実現することを目的に、イーサリアムの共同創立者であるギャビン・ウッド氏が中心となって開発されたブロックチェーンです。

ポルカドットでは、開発者が「パラチェーン」と呼ばれる本格的な分散型ネットワークを立ち上げることができます。さらに、パラチェーンはリレーチェーンと呼ばれるメインチェーンを介して相互接続されており、リレーチェーンのセキュリティ機能をパラチェーンが利用することが可能です。

またブロックチェーンやその他の種類のデータベースを分割する方法であるシャーディングを使用し、トランザクション処理をより効率的に処理することができます。

リレーチェーンやパラチェーンといったレイヤー0ブロックチェーンの仕組みを提供することでレイヤー1の課題を解決しています。

関連記事:「暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)とは?将来性や今後を解説

まとめ

レイヤー0ブロックチェーンは、その設計方法によっては、相互運用性やスケーラビリティなどの課題に対処できる可能性がある一方で、同様の目標を達成することを目的とした多くの競合ソリューションがすでに多数存在しており、現在開発されているレイヤー0ブロックチェーンのどれが主流になるかはまだ誰にもわかりません。

また、スケーラビリティや相互運用性とった課題の解決は、ブロックチェーンの長期的な持続可能性には不可欠な要素です。

レイヤー0の完成を待たずに、従来の主要レイヤー1ブロックチェーンシステムが最終的にスケーラビリティを向上させる可能性や、近年人気の高まるレイヤー2のようなスケーリングソリューションがブロックチェーンの議題解決に向けた今後の主流となるかもしれません。

どれも実現するまでには、まだまだ時間が必要なことは確かですが、レイヤー0を含め、開発者による様々なアプローチによって、ブロックチェーンがより多くのユーザーにとって使いやすいものになるよう進んでいることも、またひとつの事実です。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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