暗号資産(仮想通貨)エンジンコイン(ENJ)とは?将来性や今後を解説

エンジンコイン
将来性
2024-06-26 更新

エンジンコイン(ENJ)は、シンガポールのブロックチェーンエコシステムを開発するEnjin社によって発行された暗号資産(仮想通貨)です。Enjin社が開発するEnjinエコシステムでは、エンジンコインを利用してNFTを購入したり、反対にNFTをメルティング(溶解)してエンジンコインを獲得したりすることができます。

エンジンコインには他にどのような使い道があるのでしょうか。また、エンジンコインのプラットフォームは、他のNFTプラットフォームとどのような点が異なるのでしょうか。この記事ではエンジンコインの概要をはじめ、特徴や今後の将来性について解説します。

エンジンコイン(ENJ)とは

エンジンコイン(ENJ)を開発したEnjin社は、2009年にオーストラリア出身でコンピューターサイエンスに精通するマキシム・ブラゴフ(Maxim Blagov)氏と、カナダ出身でソフトウェア設計やセキュリティなどに精通するヴィテク・ラドムスキー(Witek Radomski)氏によって設立されました。当初はEnjin Networkというゲームコミュニティプラットフォームのサービスを提供していました。

このEnjin社が2017年にブロックチェーン業界に参入し、ERC-20トークンとしてエンジンコインという暗号資産(仮想通貨)を生み出し、Enjin Network上に基軸通貨であるエンジンコインを用いたEnjinエコシステムをローンチしました。なお、Enjin社は、2017年に実施したエンジンコインのICOにおいては、NFTという技術自体がまだ黎明期であった中にも関わらず、2300万ドル(当時のレートで約26億円)を調達します。また、ICO以外の資金調達も含めると、最終的に総額4200万ドル(約47億円)もの資金調達に成功しました。

その後、Enjin社は2018年にERC-1155規格のファンジブルトークン及びノンファンジブルトークンを発行することができる「Enjin Platform」をリリースするなど、高い専門性を披露しています。Samsung(韓国)、Microsoft(米国)、Ubisoft(フランス)、Unity(米国)、Atari(米国)といった世界的にも著名な企業との提携を果たしました。

以降、やや価格が低迷していた時期もありましたが、2023年9月にリリースした独自チェーンである「Enjin Blockchain(エンジンブロックチェーン)」によって、プロジェクトに大きな改革をもたらしました。

新たにリリースされた「Enjin Blockchain」は、元々は「Efinity(エフィニティ)」という次世代ブロックチェーンとして開発されたものです。イーサリアムベースのEnjinエコシステムでは、高い取引手数料やネットワーク速度の遅延といった問題があり、当初はNFTを用いたサービスの提供には不向きでした。Enjin社はこうした問題を解消するためにPolkadotを用いた次世代型NFTブロックチェーンとしてEfinityを開発し、ネイティブトークンであるエフィニティ(EFI:Efinity Token)を発行したのです。

その後、Enjin社はEfinityを元にして、独自ブロックチェーンである「Enjin Blockchain」をリリースします。そして、エンジンコインもイーサリアムベースのトークンから新たなEnjin Blockchainで発行されたトークンに移行させていきました。これにより、エンジンコインはより幅広い用途で用いることができるようになりました。

エンジンコインを新たなEnjin Blockchainに移行したことに加えて、10億ENJというエンジンコインの最大供給量の制限も撤廃されました。現在エンジンコインは、元となったEfinity Token(EFI)廃止のため、4 EFI:1 ENJというレートでEFIをエンジンコインに交換したり、Enjin Blockchainのバリデーター報酬として新規発行されたりしています。

Enjinエコシステムの仕組み

Enjin社が提供する一連のサービスはEnjinエコシステムと呼ばれています。

このエコシステムには、「Enjin Blockchain」を中心に、オープンソースフレームワーク「Enjin Platform」、スマートフォン向け暗号資産ウォレット「Enjin Wallet 2.0」、NFTマーケットプレイス「NFT.io」、2次元バーコードベースのNFT配布ソリューション「Beam」や、開発者向けSDKなどのツールやサービスが含まれています。

Enjinエコシステム全体の特徴として、クラウドファンディングモデルがあります。例えば、資金力の少ないゲームの製作者は、ゲーム本体をリリースするよりも前にゲームアセット(キャラクター、武器、土地など)をEnjinエコシステム内で事前に販売し、そこで得た収益を利用してゲームの開発を進めることができます。

ブロックチェーンゲーム開発者をEnjinエコシステムに誘致するために用意されているオープンソースフレームワーク「Enjin Platform」は、ブロックチェーン技術用の強力なPaaS(Platform as a Service)です。開発者はBlockchain SDK、Platform API、ウォレットデーモンといった様々なサービスを利用することができ、これによりブロックチェーンゲームやNFTプラットフォームの開発を容易に行うことができます。

また、従来のNFTにも対応しているため、ゲームに留まらず、アート作品をNFTに変換したり、音楽や物理的なコレクションをトークン化したりすることもできます。

ユーザーがEnjinエコシステムに触れることができるウォレットサービス「Enjin Wallet 2.0」は、暗号資産(仮想通貨)やNFTなどを管理することができます。このサービスの特筆すべき点として、Enjin Blockchainだけでなく、イーサリアム(ETH)、ビットコイン(BTC)、ドージコイン(DOGE)、ライトコイン(LTC)などのブロックチェーンにも対応しており、更にビットコインのSegWitにも対応している点があります。これにより、柔軟で使い勝手のよい設計となっています。

さらに、このEnjin Wallet 2.0とシームレスに接続できる「NFT.io」というマーケットプレイスも用意されています。NFT.ioでは、利用者が簡単にNFTの取引をしたり、NFTを作成・配布したりすることができます。また、NFTオークションに参加することをサポートするためのNFT専用のコミュニティが用意されるなど、これからNFTの取引をはじめる初心者からNFTに知見のある上級者まで、多くの人々に対応しています。

他にも、二次元バーコードベースのブロックチェーンアセット配布サービス「Beam」など、より多くの利用者が手軽にNFTにアクセスするための仕組みが提供されています。

エンジンブロックチェーンとは

エンジンブロックチェーン(Enjin Blockchain)は、ゲームやNFTに特化した、2023年にリリースされたブロックチェーンで、基盤となるセキュリティレイヤー「Enjin Relaychain」とNFTアプリケーションレイヤー「Enjin Matrixchain」の二層で構成されています。

このブロックチェーンはポルカドット(Polkadot:DOT)が提供しているSubstrateというフレームワークを利用して構築されており、スケーラブルでセキュリティが高く、使いやすい設計が特徴です。また、Proof of Stake(PoS)をベースにしており、プロトコルレベルでNFT(非代替性トークン)に特化した機能を持っています。

Enjin Relaychain(エンジンリレーチェーン)

Enjin Relaychain(エンジンリレーチェーン)は、Enjinエコシステムのセキュリティを確保しているブロックチェーンです。

ネットワークは「Nominated Proof of Stake(NPoS)」であるため、バリデーターによってトランザクションの承認や新しいブロックの生成が行われます。一方で、バリデーターでないユーザーであっても、「ノミネート」という仕組みによって、自身のエンジンコインをステーキングすることでネットワークの安定性を高めながら報酬を得ることができます。

さらに、エンジンリレーチェーンではガバナンスの仕組みも導入されています。この仕組みにより、プロトコル変更やアップデートに関する議論や投票を通じて、ネットワークの方向性に影響を与えることができます。

Enjin Matrixchain(エンジンマトリックスチェーン)

Enjin Matrixchain(エンジンマトリックスチェーン)は、EnjinエコシステムのNFTアセットを展開するためのブロックチェーンです。

もともとはエフィニティ(EFI:Efinity Token)を運用していたPolkadotパラチェーンのEfinityとして稼働していましたが、プロジェクトの転換により、EfinityのフォークとしてEfinity Matrixchain(エフィニティマトリックスチェーン)が展開された後、現在の名称に切り替わったという経緯があります。

Enjin Matrixchainのセキュリティは、Enjin Relaychainによって担保されている特徴があるほか、イーサリアムブロックチェーンのように、トークンを生成する機能を有していることや、ブロックチェーン自体にNFTマーケットプレイス機能が搭載されていることもポイントです。

エンジンコイン(ENJ)の将来性

エンジンコイン(ENJ)の将来性は、Enjinエコシステムの利用者増加や、NFTの広がりに大きく依存するでしょう。

EnjinエコシステムはNFT分野で最も歴史のあるプロジェクトのひとつであるものの、これまでサービスの開発の遅さが指摘されていました。近年、イーサリアムのガス代(手数料)が高騰する中で、Enjinエコシステムは、エンジンコインとエフィニティトークンという2種類の暗号資産(仮想通貨)によって手数料の低いエコシステムを構築していましたが、この仕組みを十分に活かしきることができず、ガス代の高騰に対する対策が遅れたことで、ポリゴン(MATIC)を始めとしたスケーラビリティ問題に対応した後発の暗号資産の台頭を許すことになりました。

この状況を打破すべく、2023年9月以降にEnjin Blockchainをローンチして以降、Enjinエコシステムは目覚ましい発展を遂げています。NFTを購入するためのマーケットプレイス、NFTを管理するためのウォレット、その他にもNFTを安価に購入できる手段や、NFTを手軽に作成する手段など、数多くのサービスをラインナップすることができました。

とはいえ、Enjin Blockchainについては、極めて汎用性が高いEVMネットワークではなく、Polkadot系の技術基盤で構築されています。これにより人気の高いウォレットアプリに対応していないという側面もあるため、この選択が果たして吉と出るか凶と出るかには注目が集まるところです。

また、エンジンコインの将来性については、Enjin社のプロジェクトだけでなく、ゲームやNFTというカテゴリー全体の広がりが重要な要素となっています。これまで解説してきた通り、Enjinエコシステムは、利用者に対してゲームやNFTに特化したサービスを提供しているため、これらカテゴリーの人気や注目度が下火になった場合には、同時にEnjinエコシステムの利用者も減少してしまうと考えられます。

この点に関しては、Enjin社の取り組みだけで解決できる問題ではありませんが、NFTそのものがより安価で簡単に取引できたり、NFTがより多くのサービスで利用できたりするようになれば、NFT利用者がおのずとEnjinエコシステムを選択する機会は増加するでしょう。

これまでの価格推移

2017年~2021年末までの価格動向

エンジンコイン(ENJ)は、2017年8月21日から10月31日に実施されたICOでは、1ENJあたり約3.5円(価格は当時ドル/円レートから換算)で販売されました。また、同年11月に迎えた本リリースから約2カ月間は約2.3円で推移していました。

その後、本リリースから約3か月後となる2018年1月8日、突如としてICO時点の価格から15倍ほどの約50円まで上昇します。しかし、その後約3年間は、この日の高値を超えられないまま推移していきました。

そして、後にNFT元年とも称される2021年を迎えると、エンジンコインは再び価格を上昇させます。同年1月1日の始値1ENJ=約13円からスタートして以降、急速に価格を上昇させ、2月に入っても勢いは衰えないまま軽々と過去最高値の50円を突破しました。そして、翌3月には年初から約30倍の価格である340円の高値を付けました。

それ以降も過去最高値を更新しながら、同年4月には408円をつけます。しかし、その後は1ENJ=約100~370円台を推移しながら、最終的に292円という価格で2021年を終えることとなりました。

2022年以降の価格動向

明けて2022年は、1月4日に331円という高値をつけたことで好調な滑り出しを見せたかに思えたものの、この年は結果的に最後までこの高値を超えることはありませんでした。同月21日には米国のNasdaq100指数の値下がりの影響を受け、ビットコイン(BTC)が下落すると、連鎖的にエンジンコインも240円から190円まで、20%以上も値下がりしました。

その後約3カ月間は1ENJ=約150~200円の間で推移を続けるものの、米国の政策金利の上昇から暗号資産(仮想通貨)市場全体が活気を失っていきました。また、極めつけには5月中旬、暗号資産の信頼を揺るがすテラ事件と呼ばれる騒動によって、エンジンコインは1年3カ月ぶりの水準となる約60円まで下落することとなりました。

その後も、6月には暗号資産市場全体に波及したセルシウスショックと呼ばれる事件や、11月には世界的に話題となったFTX事件と呼ばれる取引所破綻騒動もあり、エンジンコインは2022年を31円で終えることとなります。

エンジンコインが2022年の始値が1ENJ=292円という価格だったにも関わらず、年末に約10分の1にまで下落してしまった不調の要因としては以下が考えられます。まずは、「暗号資産の冬」と呼ばれるように、暗号資産市場全体が低調であった不可抗力的要因が挙げられます。一方で、Enjin社としてもイーサリアムのガス代(手数料)高騰への対処が遅れた結果、この問題を解決できるPolygon(MATIC)などのレイヤー2ソリューションに注目が流れてしまったことも不調に拍車をかけたと考えられます。

2023年に入ると、米国の政策金利上昇に対する楽観的な見方の広がりにより暗号資産市場全体が上向きました。また、NFTの注目がやや再熱したこと、さらにはタイミングよくEnjin Wallet 2.0のiOS版サービスを提供できたことなどが重なった結果、年初の始値である1ENJ=31円から約2カ月半の間には、約70円まで上昇します。

しかし、結果的にはこの時の価格が2023年の最高値となりました。3月以降は年初の勢いを失い、9月はエンジンブロックチェーンという大きなイベントがあったものの、翌月10月にやや勢いを取り戻した程度であり、プロジェクトの目覚ましい発展を価格に反映することはできませんでした。

2024年は、42円の始値を付けたエンジンコインですが、年初にビットコイン現物ETFが承認されたことで活気づいた暗号資産市場の波に乗ることはできず、2月上旬には一時30円も見えてくるほど低迷します。

しかし、2月下旬になると、エンジンコインも承認後のビットコイン現物ETFが好調に推移したことで訪れた第2波に乗ることに成功し、一気に80円まで価格を上昇させることに成功しました。

エンジンコインは、依然として2021年12月に記録した過去最高値水準である500円台を目指す展開にはなっていません。しかし、Enjinエコシステムでは新規サービスが続々と導入されているなど、エコシステムは拡大傾向にあるため、この先巻き返しに成功できるかが試されているところです。

まとめ

エンジンコインは、シンガポールのEnjin社によって発行され、NFT関連のエコシステムを構築するEnjinエコシステムにおける基軸通貨として機能するERC-20規格の暗号資産(仮想通貨)です。

Enjinエコシステムは、最古のNFTプロジェクトのひとつです。しかし、ゲームで使用されるアイテムの購入などが主な使い道であり、流行のアート作品のNFTには対応できていなかったり、イーサリアムのガス代(手数料)高騰の影響を大きく受けたりしたことで、より安価かつ広範囲でNFTを取引できる他サービスに追い上げられてきてしまった過去があります。

対して、Enjin社はこれまで開発の遅さを指摘されているものの、開発の方向性自体は一貫しています。イーサリアムネットワークのガス代(手数料)高騰に対するソリューションも予定されており、今後正式リリースが予定される「NFT.io」では、アート作品の取引も可能となるため、より広範囲のNFTユーザーを巻き込むことができるようになりそうです。

さらに、使い勝手の良いウォレットの提供なども行っており、Enjinエコシステムにおける数々のサービスをシームレスに使えるようになる計画が進められていることからも、エンジンコインは今後の巻き返しの可能性にも注目が集まる暗号資産といえるでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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