ライトニングネットワークとは?特徴や仕組みを解説
ビットコイン(BTC)は以前から処理速度の遅さが課題の一つに挙げられていて、決済手段としては利用しにくいことが指摘されています。
また、ビットコインは手数料が高いことから、低額取引には向いていないともいわれ続けています。
こうした課題を解決する技術の一つとして注目されているのが、ライトニングネットワークです。
この記事では、ビットコインの抱えている課題解決につながると期待されるライトニングネットワークについて解説します。
ライトニングネットワークとは何か?
ライトニングネットワークは、ビットコインの支払いを安全かつ高速に実現するために考えられた技術です。
ビットコインでは、取引を記録する各ブロックの処理のために平均10分の時間がかかり、一度に少数の取引しか実行できません。ブロックチェーンの仕組みによる制約により、大量の取引が発生した場合、ブロックチェーンの処理を詰まらせてしまう可能性があります。
そうなると、取引の承認が遅延したり、手数料が高騰したりといった「スケーラビリティ問題」が発生します。これらのビットコインの抱えている問題を解決するために作られたのが、ライトニングネットワーク(Lightning Network)です。
ライトニングネットワークの利点
ライトニングネットワークの利点としては、次の4点が挙げられるでしょう。
・取引を高速にする(即時決済の実現)
・スケーラビリティ問題の解決
・手数料が安価
・異なるブロックチェーンでの取引が可能
ビットコインの1秒間に取引できる決済回数は7~10件程度ですが、オフチェーン(ブロックチェーン外)で取引を行うライトニングネットワークでは、理論値では1秒間に数百万件もの決済が可能といわれています。このオフチェーンで取引を行うために、ブロックチェーン全体に取引を送付する必要がなく、高速に処理でき、スケーラビリティ問題が解決します。
さらに、ライトニングネットワーク内にはマイナー(採掘者)が存在しないため、マイナーに支払うインセンティブ(報酬)が発生しません。そのために、取引手数料は非常に安く抑えられ、低コストの取引を実現します。
手数料が安価であるために、ライトニングネットワークではマイクロペイメント(少額支払い)が実現できます。例えば投げ銭など、1円以下の取引に関しても手数料の方が高額になってしまうという心配が軽減されます。
ライトニングネットワークはビットコインに限らず、ビットコインと同様の暗号学的ハッシュ関数を利用しているブロックチェーンで利用可能です。主にライトコイン(LTC)やモナコイン(MONA)が挙げられるでしょう。
また、ライトニングネットワークでは、ブロックチェーンよりもプライベートな取引が可能です。ブロックチェーンでは、すべての取引がブロックチェーンに記録され公開されるため透明性が高く、一方のライトニングネットワークでは最初と最後の取引のみがブロックチェーンに記録されるため、ライトニングネットワーク内での取引については公開されることがありません。
次は、上記のような特徴を実現する仕組みについてみていきましょう。
ライトニングネットワークの仕組み
ライトニングネットワークによって、取引が高速化するのは、ビットコインのブロックチェーンの外部(オフチェーン)で取引を処理しているためです。外部で処理することで負荷を軽減できます。
方法としては、まず、ブロックチェーンの外部(オフチェーン)に送受金者間の取引経路(チャネル)を設けます。
お互いに取引したい2者は、ライトニングネットワーク上の双方向支払いチャネルにて取引を行いますが、チャネルにはあらかじめビットコインをチャージしておく必要があります。これは現行のサービスにあるプリペイドカードのような仕組みです。
ライトニングネットワークでは、事前にビットコインを入金して、チャネルが開設できれば、2者は入金額の上限の範囲内で自由に送金が実行可能になります。
1回の取引だけではライトニングネットワークの意味はあまりありませんが、2者間で複数回送金された場合は大きな意味を持つようになります。
ライトニングネットワークのチャネルでの各取引は、その場ですぐに処理され送金が完了します。2者は、メインのブロックチェーンには一切触れずに、チャージした金額の範囲内で何度でも取引を実行することができます。
ただし、チャネルの開設と閉鎖には、実際に取引を行う2者の承認が必要(複数の署名を必要とするマルチシグ)になっており、開設と閉鎖すなわち最初と最後の送金結果だけがビットコインのブロックチェーンに記録される仕組みになっています。
ブロックチェーンであれば、途中の取引も全て検証する必要がありますが、ライトニングネットワークでは、中間の処理を省くことで負荷を軽減しています
ライトニングネットワーク上には、こうしたチャネルが多く作られており、ネットワークは「チャネルの集合体である」ともいえます。
また、ライトニングネットワーク上では仲介者を通して他者に送金できるため、チャネルが間接的につながっていれば、新たに取引を行う2者間でも改めてチャネル開設せずに間接的な送金も可能になっており、毎回チャネルを開く必要はありません。
ライトニングネットワークは、こうして各チャネルに処理を分散させることで、メインのブロックチェーンの負荷を軽減させています。
ライトニングネットワークの課題
ライトニングネットワークには多くのメリットがある一方で、以下の2点の課題があります。
・取引を行う両者がオンラインでなければいけない
・高額取引に向いていない
例えば、ライトニングネットワークはオンチェーン取引とは異なり、決済には2者間の承認が必要なため、受金者がオフラインのときは支払いができません(片方の合意がない場合、待ち時間が発生する)。ライトニングネットワークでの取引をスムーズに行うには、常に両者がオンラインである必要があり、常にチャネルを監視しておかなければなりません。
また、ライトニングネットワークは、高額な取引には向いていません。ネットワーク上には大量のチャネルがありますが、これらのチャネルを高額取引の仲介者として機能させるには、各チャネルでビットコインの高額チャージが必要になるからです。
それぞれのチャネルに参加するユーザーは、チャージしているビットコイン(ロックされているビットコイン)の量がまちまちであるため、仲介者が多くなるほど十分なチャージ料金が得られなくなる可能性が高くなります。
ライトニングネットワークにおける取引は、チャネル内での取引であれば送金者側が送金したい金額分のビットコインをチャージするだけで受金者がチャージせずにも送金可能ですが、仲介者を必要とするチャネルを超えた間接的な送金は、仲介者であっても送金金額と同等以上のビットコインがチャージされている必要があります。
ライトニングネットワークがうまく機能するには、より多くのビットコインがライトニングネットワーク上にロックされ、さらに流動性を高めていく必要があります。
しかし、ライトニングネットワークには「ロックしておく経済的インセンティブがない」ため、ロックされたビットコインの量を増やすのは難しいと指摘されることも少なくありません。
また支払いチャネルの開設と閉鎖には、メインブロックチェーンへの書き込みが含まれるため、そのときだけ通常の取引よりも手順が増え、ビットコインと同様の手数料が発生するなど、こうしたことも課題になっています。
ライトニングネットワークの今後や将来性は?
ライトニングネットワークは既存の決済技術と比較しても高い性能を持っており、世界中で企業の採用や実店舗での利用が加速しています。
ライトニングネットワークを利用した即時決済、低コストの国際送金、ゲームのマイクロリワード(報酬)や投げ銭機能として、ライトニングネットワークを統合して手数料を軽減させた仕組みも増えています。中にはTwitterと連携させて個人のツイートに対して少額のビットコインを投げ銭できるものなども登場していて、非常に興味深い分野になっています。
ライトニングネットワークでデポジットを行い、ポイントを使って有料記事を購読できるサービスも登場しています。購読だけでなく、自分で有料記事を公開してポイントを稼ぐことも可能です。
こうした機能については、ライトニングネットワークに対応したウォレットを介して参加します。日本においては、2020年5月に改正資金決済法が施行され、ウォレットのように暗号資産を預かるカストディ業務も資金決済法下の業務となり「暗号資産交換業者」としての登録が必要になりました。
ライトニングネットワークの将来は、ライトニングネットワークを使ったサービスやアプリを日本の法律に当てはめた場合、はたして法律上問題なく利用できるかどうかにもかかっています。
まとめ
ライトニングネットワークの利用者は、ライトニングネットワークにおける新しいサービスやアプリケーションが、今後日本の法律にどう対応していくのか、こうしたポイントを我々は見守っていかなければならないでしょう。
また、前述のライトニングネットワーク上にロックされているビットコインの量などいわゆる流動性の問題も含めて、ライトニングネットワーク自身の課題の解決も待たれます。
しかし、ライトニングネットワークがうまく機能することによって、ビットコインはより一層便利なものになるのは間違いなさそうです。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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