暗号資産(仮想通貨)のマイニングにかかる電気代はいくら?
暗号資産(仮想通貨)を手に入れる方法のひとつに「マイニング(採掘)」があります。マイニングは、「ブロックチェーンに新しい取引データをつなげる時に、内容に間違いや不正がないかを膨大な計算によって検証し、その検証の報酬として新しく発行される暗号資産を受け取る」ことです。
マイニングは成功報酬として暗号資産を受け取ることができますが、マイニングをするには高性能なコンピューターで膨大な計算をする必要があります。また、コンピューターを長時間稼働させるため電気代もかかってしまいます。
この記事では暗号資産のマイニングにかかる電気代やその他の費用について解説します。
暗号資産(仮想通貨)のマイニングにかかる費用
マイニングは、ブロックチェーンに新しい取引情報(トランザクション)を記録することで、報酬を得ることができます。ただし、そのためにはブロックチェーンが出題する難しい計算問題を誰よりも早く解かなければなりません。
マイニングを行うためにかかる費用は、次の2点が大きく占めています。
・計算処理能力の高い高性能なコンピューターの購入代金
・マイニングマシンにかかる電気代
コンピューターの購入代金
実際にマイニングを行うには、計算処理能力の高い高性能なコンピューターが必要です。マイニングには、専門的な知識と準備が必要でハードルが高いと思われがちですが、マイニングソフトウェアをインストールし、報酬を受け取る専用のウォレットを作成することで、報酬を獲得できるとは限らないものの、誰でも参加できます。
マイニングは従来のパソコンでも可能ですが、通常はより計算能力の高いグラフィックボード(GPU)を搭載した高性能パソコン(GPUマイニングマシン)等が必要です。GPUマイニングマシンの購入には、2023年4月現在で10万~40万円程度の費用がかかります。
ただし、現在はGPUマイニングでは計算が追いつかず、他のマイナーとの競争に勝てない状況です。そのため、GPUマイニングマシンよりも計算処理能力の高いASICマイニングマシンと呼ばれるマイニング専用のコンピューターが主流になっています。費用としては、ASICマイニングマシンは計算処理能力や消費電力の特性によって30万~70万円程度、中に百数十万円もする高級なものになっています。
また、その他のマシンとして、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路FPGAを搭載したマイニングマシンも増えつつあります。
FPGAマイニングマシンはGPUマイニングマシンとASICマシンの中間的な性能で、GPUマイニングよりエネルギー効率が高く、ブロックチェーンの仕様変更にも柔軟な対応ができるため人気となっています。
マイニングマシンにかかる電気代
マイニングマシンは計算をする際に大量のエネルギーを消費しますが、計算処理能力が高いマイニングマシンほど消費電力は大きく、より電気代がかかります。
また、マイニングマシンは計算速度を上げたり稼働時間を増やしたりすることで、かかる電気代が増加します。ただし、マイニングでどれだけ電気代がかかったとしても、得られるマイニング報酬は一定額のため、暗号資産のマイニングはコスト管理のために電気代を把握しておくことが重要です。
マイニングにかかる電気代の目安
マイニングでは電気代を把握しておく必要があります。計算方法について理解しておきましょう。
電気代を計算する方法
マイニングマシンは、種類によって消費電力に大きな差が見られるため、ビットコインのマイニングにかかる電気代は、マイニングの場所(電気料金)やマシンの性能によって変わってきます。マイニングにかかる電気代は、以下の通りです。
「消費電力量(kWh)×電力量料金(円/kWh)×稼働時間」
ちなみに日本における電気代の目安は、「公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会」が定めた単価を基準に計算をします。現在の電気代は、2022年7月に1kWhあたり27円(税込)から31円(税込)に改定されたため、2023年4月現在の1kWhあたりの電力量料金は31円(税込)で計算するのが慣例です。
たとえば、消費電力300W(0.3kW)のマイニングマシンの場合、1日にかかる電気代は、「0.3kW×31円×24時間=223円2銭」です。1か月の電気代は30日換算で6,696円となります。
これが高性能なASICマイニングマシンになると、消費電力が4000W(4kW)にもなるマシンが見られますが、仮にこうしたマシンを1か月連続で稼働させると「4KW×31円×24時間×30日=89,280円」にもなってしまいます。
マイニングの電気代を節約するコツ
マイニングは高性能なマイニングマシンで計算するほど多くの電気を消費します。日本の1時間あたりの電力量料金31円(税込)は、決して安いものではありません。マイニングにかかる電気代は少しでも工夫を凝らして節約したいところです。
消費電力の少ないマシンを選ぶ
マイニングにかかる電気代は使用するマシンの消費電力によって変わりますが、計算性能は消費電力に比例して高くなります。電気代を抑えたい人は、消費電力の少ないマシンを選択することで電気代を抑えられます。
消費電力はGPUマイニングマシンよりもASICマイニングマシンのほうが高い傾向にありますが、同タイプのマイニングマシンでは高性能でありながら消費電力が少ないものもあります。その場合は、マシンの購入価格が高くなる傾向にあります。
ちなみにFPGAマイニングマシンは、ASICほど計算処理能力は高くありませんが、消費電力が圧倒的に少ないという特徴を持っています。
このように、マイニングマシンの計算処理能力、消費電力、ハードウェア価格は、相関関係にあります。電気代を取るか処理速度を取るかは、マシンの購入価格とも相談をしながら、バランスよく選択することが大切になります。
ポイントはマイニングマシンの計算能力を示すハッシュレート(後述)あたりの消費電力がより小さいマシンを選ぶのがコツです。
電気の契約プランを見直す
マイニングマシンは長時間稼働させるため、1kWhあたりの電力量料金の価格差により電気代も大きく左右されます。
電気代の計算では、日本の平均値として1時間あたりの電力量料金を31円(税込)として計算しましたが、実際の電気料金は電力会社によっても異なるほか、最近はガスや携帯電話など他のインフラとセットにすることで割引を受けることができるサービスも充実しています。電力会社の中には、暗号資産(仮想通貨)マイニングに特化したマイニング専用の電気料金プランを用意している会社もあります。
マイニングをする際には電気料金のプランを見直し、より安いプランに変更するのも節約になります。
再生可能エネルギーを利用する
太陽光発電や風力発電など、いわゆる再生可能エネルギーを利用できる地域に住んでいる人は、再生可能エネルギーを利用することで通常の電気料金よりも安く済む可能性もあります。
ケンブリッジ大学のビットコイン電力消費指数(CBECI)によると、ビットコインのマイニングで消費される世界の電力使用量は、年間約106tWhといわれています。これはオランダの消費電力とほぼ同じ水準ともいわれています。
化石燃料を使った発電による電力消費は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させると問題になっているため、ビットコインのマイニングで消費される電力使用量は一つの環境問題です。積極的に再生可能エネルギーを利用するのは良い取り組みでしょう。
電気代の安い地域に引っ越す
電気料金は日本国内でも地域によって異なり、価格差があります。マイニングを本格的になりわいとしている方は、電気代が安い地域を調べて引っ越すという手もあります。マイニング事業を展開している海外企業の中には、より電気代の安い国に移転するという動きもあるほどです。
日本と比べて電気代が安い国は少なくありません。本格的に暗号資産のマイニングで収益を上げたい人は、海外移住も視野に入れても良いのではないでしょうか。
今からマイニングを始めて儲かるか
マイニングが可能なPoWを採用する暗号資産(仮想通貨)は、市場価格が上がるとマイニングによる報酬も実質的に価格が上昇するため、より多くの人がマイニングに参加するようになります。
その結果、マイニングを行う「マイナー(採掘者)」間の競争が激化し、マイニングに必要な計算処理能力が高まるため、より多くの電気を消費することになります。
ビットコインのマイニングをする際に必要な計算処理能力を示す値に、ハッシュレートという数値があります。
ハッシュレートとは、ビットコインをマイニングする際に1秒間に行う演算回数、採掘速度を示す数値です。単位はH/s(ハッシュ)です。
1秒間に演算を1回行うことを1H/sといいます。現在、ビットコインに必要なハッシュレートは、100EH/s(エクサハッシュ)~130EH/s程度といわれています。
ちなみに、E(エクサ)はK(キロ)、M(メガ)、G(ギガ)、T(テラ)、P(ペタ)と続く単位の1つ上の単位で、1EH/sは1秒間に100京回の演算ができる計算能力を表しています。ビットコインのマイニングに必要な100EH/sは、演算回数1万京回になります。
ハッシュレートの上昇は、より多くのマイナーがマイニングに参加していることを意味します。つまりビットコインの価格が上昇し、人気が高まることでマイニングに参加するマイナーも増え、おのずとハッシュレートも上がります。
ビットコインのハッシュレートは、ビットコインが過去最高の価格に上昇した2019年ごろより上がっており、その頃より100EH/sを超えることが多くなりました。
つまり、ビットコインでマイニング報酬を得るには、現在は100EH/sを超える計算処理能力のあるマイニングマシンを所有するマイナーでなければ、報酬を得ることができないという意味でもあります。
大雑把に見て、ASICマイニングマシンのハッシュレートは、機種によって異なりますが、比較的簡単に手に入れることができるASICチップ搭載のマイニングマシンのハッシュレートは、15TH/s程度です。
また、平均的なGPUマイニングマシンのハッシュレートは、例えば4枚のGPUを搭載したマイニングマシンのハッシュレートは、140MH/s(1枚あたり35MH/s)程度です。
つまり、個人がマイニングに参加して報酬を得るには、ビットコインの現時点のハッシュレートを100EH/sと仮定すると、100EH/sは100000TH/sですので15TH/sのASICマイニングマシンが6,666台以上必要になります。35MH/sのGPUマイニングマシンでは、天文学的な台数分のマシンが必要になることを意味します。
これは、個人がマイニングに参加して報酬を得るのはまず無理だといえる数字です。仮に15TH/sのASICマイニングマシンが6,666台以上用意できたとしても、電気代だけで1日490万円を超えてしまうことになります。これにマシンの購入代金と設置場所の家賃、オペレーターの数を考えると、ほぼ不可能です。
これができるのは、電気代が限りなく安く、そして広大な土地と電力が余っている地域(国)に事業所を構える企業ぐらいでしょう。
関連コラム:「ASIC、マイニングとは?詳細を解説」
マイニングプールに参加する
すでにビットコインのマイニングは、個人のマイナーでは太刀打ちできない状況になっています。現在、マイニングは個人で行うのではなく、マイナーが集まって集団で協力してマイニングを行う「マイニングプール」が主流です。
マイニングプールでは、複数のマイナーが協力してブロックチェーンのネットワークに参加します。マイナーは自身のハッシュレートを持ち寄って集団でマイニングを行い、それによって得られた報酬をマイニングプールの貢献度によって各マイナーに分配する仕組みです。
マイニングプールに参加することで、個人でマイニングを行うよりも、より高いハッシュレートを維持し、より多くのブロックをマイニングすることができるようになります。それによって、個人でマイニングするよりもマイニングに成功する確率が高まり、報酬も得やすくなるというメリットが生まれます。
また、個人でマイニングを行うにはより高性能なマイニングマシンを用意する必要がありましたが、マイニングプールは家庭にある一般のパソコンでマイニングに参加できます。
ただしマイニングプールにはデメリットもあります。それは、みんなで報酬を分配するため一人あたりの報酬が少なくなることです。
その他に「クラウドマイニング」のサービスを利用するという方法もあります。
クラウドマイニングは、自身でマイニングマシンを持たずにマイニングを代行するクラウドマイニング型のサービスを提供する企業に、利用料を支払ってマイニングする方法です。こうしたサービスを使ってもマイニングプールに参加できます。
マイニングプールについてより詳しく知りたい方は「ビットコインのマイニングプールとは?」もご参照ください。
マイニング海外事情
ビットコインのマイニングは、世界中で行われています。
中国は長年にわたってビットコインのマイニングで世界をリードしてきましたが、最近では政府が規制を強化し、2021年には全面的にマイニングが禁止となり、多くのマイナーが海外に移転するなどマイニング状況は変化しています。
タイでは、電気代が安く、政府がマイニングに対して積極的な姿勢を示しているため、多くのマイナーが集まりました。それまでの中国のマイナーもタイに流れるなど、タイのマイニングは大盛況となりました。
2023年になってからは、ロシアでもビットコインのマイニングは盛況です。ロシアでマイニングに使われた電力は1GWに達し、世界第2位に浮上しています。
一方で、米国やカナダなどでもマイニングは盛んであり、特に米国は電気代の安い地域にマイニング事業者が集中しています。米国とカナダは、世界の暗号資産(仮想通貨)マイニングのハッシュパワーの15%〜20%を占めており、それに対してロシア、カザフスタン、北欧諸国が続いています。
米国とカナダの電力は、他国と比べて決して安価ではありませんが、すでに使わなくなった転用可能な未利用電力やエネルギーインフラが多く国内に存在するため、多くのマイナーが集まり、そうした電力を活用したマイニングが盛んに行われています。
米国ではマイニング電気代が課税対象に!?
米国のジョー・バイデン政権は、2024年度予算で暗号資産マイニングの電気使用量に対して段階的な30%課税を提案しています。
この提案が、将来的に実現するかどうかは現在のところ不明ですが、今後、予算が成立し提案が可決されることで、暗号資産マイニングの電気使用量に30%の税金が3年間にわたって段階的に適用されることになります。この提案は、暗号資産マイニングの環境への影響に関する懸念の高まりに対処することを目的としています。
まとめ
ビットコインのマイニングに個人で参加することは非常に難しくなっています。これからマイニングに参加してみたい方は、マイニングプールやクラウドマイニング等の方法を検討すると良いでしょう。PoWを採用したビットコイン以外の比較的競争の少ない暗号資産(仮想通貨)のマイニングに参加してみるのも良いかも知れません。
なお、日本ではマイニングによって報酬を得た場合は、会社員など給与所得者は暗号資産の売買なども含めて年間20万円を超えるなど金額によっては所得税(雑所得)の課税対象となり確定申告を行う必要があります。
給与所得者以外の個人事業主の場合は、基礎控除額の48万円を上回る利益が発生していると、確定申告を必要とします。扶養されている方(学生や主婦)の場合も、扶養控除額以上の利益が出ていると課税対象となる可能性に注意しましょう。また、法人で運用した場合は、事業所得に該当します。
ちなみにマイニングによって取得した暗号資産の取得価格は、マイニング時点の価格(時価)になります。機材購入費やマイニングに要した電気代等の費用については経費として計上できる可能性もあります。詳しくは、国税庁のWEBページ等で確定申告が必要になるかどうかを確認するようにしましょう。
ビットコインのマイニングについてより詳しく知りたい方は「ビットコインのマイニング(採掘)とは? 個人でのやり方や仕組みを解説」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
関連記事
-
ビットコインアドレスの仕組みとは?利用時に注意すべきポイント
ビットコインを受け取ったり送ったりするためには、「ビットコインアドレス」を通じたデータのやりとりが必要になります。今回は、ビットコインアドレスを取得して、ビットコインを送受信する方法やその際の注意点などを詳しく解説していきます。
-
暗号資産を安全管理!ウォレットにはどのような種類がある?
ビットコイン(BTC)を購入後の保管の仕方は大きく分けて2通りあります。暗号資産交換業者のウォレットに預けておく方法と、自分で用意したウォレットを利用する方法です。本記事では、初心者にとって使いやすいウォレットを解説します。
-
レイヤー0ブロックチェーンとは?レイヤー1、レイヤー2との違いを解説
ブロックチェーン技術のアーキテクチャー(構造・構成)について語るときに、レイヤー1、レイヤー2という用語が使われます。近年では、さらに重要な概念としてレイヤー0(Layer0)という用語使われるようになりました。この記事ではレイヤー0について、レイヤー1やレイヤー2との違いも含めて詳しく解説していきます。
-
暗号資産(仮想通貨)の基幹技術である分散型台帳技術(DLT)とは?
分散型台帳技術(DLT)は暗号資産(仮想通貨)の基幹技術です。当記事では、DLTはどのような仕組みなのか、暗号資産とDLTの関係も含めて、詳しくご紹介します。
-
コンセンサスアルゴリズムとは?ブロックチェーンで使われる代表的な種類を解説
コンセンサスアルゴリズムは、暗号資産(仮想通貨)の基盤技術となるブロックチェーンがブロックを追加する際のルールとなるコンセンサス(合意)形成を行うアルゴリズム(方法)のことを指します。本記事では、代表的なコンセンサスアルゴリズムの種類や仕組みについて詳しく解説します。
-
イーサリアムとビットコインの違いは?特徴や仕組みから解説
イーサリアム(ETH)はビットコイン(BTC)と目的や用途が大きく違なり、プラットフォームとしての利用が想定されています。イーサリアム独自の特徴を理解して、情報収集を進めていきましょう。
-
ビットコインの仕組みについて初心者にもわかりやすく解説!
取引を始めるには、最初に仮想通貨の仕組みについて知っておくことが大切です。今回は「最初の仮想通貨」と呼ばれるビットコインを例にして、仮想通貨の基礎となっている「ブロックチェーン技術」や具体的な取引方法などを解説します。
-
ブロックチェーンのトリレンマとは?DAOでの新たな問題も解説
革新的な可能性を秘めているブロックチェーン技術は、「分散性」「セキュリティ」「スケーラビリティ」の3つの要素から成り立っているとされています。この記事では、ブロックチェーンやDAOのトリレンマについて詳しく解説します。
今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン