暗号資産(仮想通貨)業界におけるベンチャーキャピタルの貢献と影響力
成長産業や先端技術を応用した新しい事業が話題となる業界では、よくベンチャーキャピタル(VC)という言葉を耳にします。ベンチャーキャピタルとは、簡単にいうとハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)のことを指します。
ベンチャーキャピタルが注目している業界あるいは実際に投資をしている業界は、まさに成長過程にある将来を有望視された業界であるといっても過言ではありません。
この記事では、ベンチャーキャピタルはどのような会社で暗号資産(仮想通貨)業界にどう関わっているのか、実際のベンチャーキャピタルの仕事や業界への貢献度とその影響力について解説します。

ベンチャーキャピタルとは?

ベンチャーキャピタルとは、一般的に未上場の新興企業(ベンチャー企業)や初期段階の企業(スタートアップ企業)に出資し、株式を取得し、将来的にその企業が株式を公開(上場、IPO)した際に株式を売却することで、大きな値上がり益の獲得を目指す投資会社や投資ファンドのことを指します。
新興企業では、経営面や人的資源がまだまだ成長段階にあることは珍しくありません。ベンチャーキャピタルは企業や事業への出資と同時に経営コンサルティングを行い、その企業価値の向上を図ります。
企業価値が向上すると、投資先企業が他社に買収される際にも、自分たちが保有する株式を高値で売却でき、利益が得られるからです。
上場予定のない企業からは、投資先企業が配当やロイヤリティなどを分配する際に、ベンチャーキャピタルがその一部を受けることができます。
一方で、ベンチャーキャピタルによる暗号資産(仮想通貨)関連企業への投資に関しては、株式ではなく暗号資産そのものの取得が目的のこともあり、プロジェクトが完成した際の暗号資産の値上がりなどに期待し、暗号資産を売却することで値上がり益を獲得します。
暗号資産業界においても、ベンチャーキャピタルは、暗号資産やビジネスモデルの開発、新しい市場の創造、既存の暗号資産の改善にも投資という形で貢献しています。
ベンチャーキャピタルが重視するのは成長性
ベンチャーキャピタルは、自身の調査で高い成長率が見込まれる未上場企業に対し、出資の形で投資を行います。
未上場企業に出資する方法でベンチャーキャピタルが利益を得るためには、投資先企業の成長や成功を支援する必要があるため、ベンチャーキャピタルは単にお金だけではなく、経営や技術などのノウハウや人脈なども提供するなど、コンサルティングのような役割も担っています。
ベンチャーキャピタルの投資対象や条件は、ベンチャーキャピタルによって異なりますが、一般的には、投資先が優秀な経営陣であること、商品やサービスに優位性があること、商品やサービスが売れるための市場があること、株式公開の予定や暗号資産(仮想通貨)の上場見込みがある会社であることなど、投資先企業の将来性や収益性を重視します。
ベンチャーキャピタルが暗号資産関連企業に投資する目的は、暗号資産市場の拡大やイノベーションによる高い収益性を期待していると見ているからにほかなりません。
暗号資産関連企業は、ブロックチェーン技術や暗号資産の開発・運用・普及に貢献しており、ベンチャーキャピタルにとって魅力的な投資対象となっています。
暗号資産やブロックチェーン技術はまだ新しい分野であり、多くの課題や可能性があります。ベンチャーキャピタルはこれまでの経験を活かし、リスクを取って革新的なアイデアやサービスを開発するスタートアップ企業に資金や知見を提供することで、市場の成熟度や競争力を高めていく役割も担っているといっていいでしょう。
暗号資産(仮想通貨)に与えるベンチャーキャピタルの影響力

暗号資産業界において、ベンチャーキャピタルの影響力は次の点にあります。
・資金や知見を提供し、暗号資産やブロックチェーン技術の普及や発展の促進
・インフラ整備への投資で流動性や安定性向上
・リスク管理やコンプライアンスの専門知識を持つ企業に投資し、信頼性を向上
ベンチャーキャピタルは、革新的なアイデアやサービスを提供するスタートアップ企業に資金や知見を提供することで、暗号資産やブロックチェーン技術の普及や発展を促進させることができます。
さらに、暗号資産交換業者や決済プラットフォームなどのインフラ整備に投資することで、暗号資産市場の流動性や安定性を向上につながるでしょう。
同時に、暗号資産市場に関わる法律や規制の変化に対応するために、リスク管理やコンプライアンスなどの専門知識を持つスタートアップ企業に投資し、暗号資産市場の信頼性や透明性を高める役割も担っています。
このようにベンチャーキャピタルの影響力は、一社、一サービスの発展のみならず、市場全体を俯瞰し、関連する企業に対して総合的な支援が可能であるため、業界全体を発展させることができる影響力を持っているといえるでしょう。
ベンチャーキャピタルのこれまでの動向

世界では、これまでベンチャーキャピタルによって暗号資産(仮想通貨)に特化した様々なファンド(VCファンド)が設立されてきました。
VCファンドは、暗号資産交換業者や暗号資産カストディサービス、先進的な分散型金融(DeFi)プロジェクト、DAO(分散型自律組織)、ブロックチェーンゲーム、NFT等々、暗号資産における革新的なビジネスモデルやソリューションに注目し、その成長を支援し続けています。
2022年7月、暗号資産が冬の時代を迎えているのを尻目に、ベンチャーキャピタルは暗号資産やブロックチェーン技術に携わるスタートアップ企業への投資を積極化しているとロイター通信は報道しました。
暗号資産分析企業が発表したデータによると、2022年に公開されたVCプロジェクト件数は1,769件で、2021年の1364件から30%増加しています。投資総額は4兆9800億円で、2021年の4兆1700億円から19%増加しました。
投資分野別に見ると、Web3関連が36%で最も大きな割合を占め、DeFi(分散型金融)が18%、インフラ関連が17%、NFT(非代替性トークン)/GameFiが16%、CeFi(中央集権型取引所)が14%の順だったようです。
2022年始め、米国の大手ベンチャーキャピタル「Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)」は、最大で約700億円規模となる暗号資産ファンドをローンチすることを発表しました。同ファンドは、暗号資産に直接投資するもので、ビットコインやイーサリアムなどのメジャーな暗号資産だけでなく、NFTやDeFiなどの新しい分野にも注目していたといいます。
一方で、2022年11月の米国大手交換業者FTX破綻のニュースは、暗号資産市場に大きな打撃を与えており、これまでベンチャーキャピタルは暗号資産業界に何十億ドルも投資してきましたが、一部資金を引き揚げるベンチャーキャピタルも目立ってきています。
暗号資産(仮想通貨)関連企業とベンチャーキャピタルとの今後の関係性は?

ベンチャーキャピタルによる暗号資産への今後の投資や動向については、2023年になってからはまだ確定的なものはありません。
シリコンバレーで事業拡大を続けてきたファンドや銀行は、暗号資産関連のスタートアップにも積極的に投資してきましたが、その一方で株価が下落しており、2022年の前半のような勢いはなく、暗号資産関連企業に対してのみならず、全体的に資金調達が大幅減となっており、ハイテク新興企業は資金難に陥っているという報道も見られるほか、銀行そのものが破綻するというニュースも報道されています。
また、暗号資産関連企業への投資は今後、市場の拡大や規制の整備、技術の進化などによって変化していくと考えられています。
こうした規制は意義のあるWeb3ソーシャルプラットフォームとプロトコルにつながるという見方もあり、相互運用可能なアイデンティティ、オンチェーンソーシャルグラフ、暗号資産を活用したソーシャルエクスペリエンスなど、まさにWeb3の世界が実現する礎となるのではないかと予測する意見も多々あります。
まとめ

ベンチャーキャピタルを始めとする投資家たちの間には、有名な投資用語に「ピック&ショベル戦略」という言葉があります。ピック&ショベル戦略とは、直接儲かっている部分に注力するのではなく、儲かるのに必要な部分に投資する戦略のことをいいます。
ピック&ショベル戦略は、19世紀アメリカのゴールドラッシュ時代、全国から一攫千金を狙う人々が金鉱に殺到したため個々の採掘者は大して儲けられず、一番儲かったのは採掘器具を売っていた人たちだったことから、投資するなら「ショベル」に注目せよという教訓です。
暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術に関連する企業への投資もベンチャーキャピタルにとってはピック&ショベル戦略の一種で、今後Web3などを実現するためのアプリケーションを支える基礎技術として暗号資産やブロックチェーン技術は欠かせないものとして注目しており、今後もそれは変わらないというのが大方の見方です。
暗号資産関連企業とベンチャーキャピタルの関係は、今後もさらに深まっていくのは間違いないのではないでしょうか。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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