ビットコイン市場と金利、国債の関係について解説
世界経済において、金利や国債の動向は、景気や株式市場、為替相場など金融市場に大きな影響を及ぼすといわれています。特に世界最大の経済大国であるアメリカの長期金利は、様々な市場に影響を与え、良い影響もあれば、悪い影響を及ぼすこともあります。近年はビットコイン(BTC)市場においてもその影響は波及し、金利との影響からの価格分析もみられるようになりました。
この記事では、金利・国債とは何か、特に大きな影響力のあるアメリカの長期金利も含めて解説し、ビットコイン市場と金利、国債の関係について詳しく説明していきます。

国債と金利で金融市場を予測できる

私たちが普段聞く「金利」とは、銀行の預金金利や住宅ローン金利など身近なものですが、投資においては長期国債の利回りという考え方が使われます。これは、投資金額に対する利益の割合を示すものです。
例えば、100万円を投資した場合の利回りが1%としたら、1年後には101万円となり、売却すれば1万円の利益になります。
特に日本では、10年間で償還される国債の利回りが最も一般的な金利です。国債は、株式と同様に、平日毎日、債券市場で機関投資家や金融機関によって取引されています。
金利(長期国債利回り)が重要な理由は、利回りの変動を見ることで金融市場のさまざまな変化を予測できるからです。
世界経済では、金利や国債の動きが、景気や株式市場、為替相場に影響を与えます。例えば、金利が上がると、銀行などの金融機関が貸し出し金利を高くすることがあり、消費者や企業の借り入れコストが上がって、景気に悪い影響が出ることがあります。
金利が上がると、企業の借金コストが増えて業績が悪くなると予想されるため、株価が下がる可能性があります。その結果、投資家にとってリスクが高まります。
金利の上昇は株価の下落、反対に金利の下落は株価の上昇といったようにシーソーのような関係にあります。

また、ビットコイン市場に機関投資家の参入が増えたことにより、ビットコイン相場と株式市場の相関性が高まっています。そのため、金利はビットコインの価格変動にも影響を与えるようになってきており、無視できない要因になっています。
投資家が重要視するアメリカの長期金利
金利には長期金利と短期金利があります。両者の違いは期間です。
・長期金利:1年以上の金融資産の金利
・短期金利:1年未満の金融資産の金利
世界各国に国債はありますが、投資家が最も重要視するのはアメリカの長期金利です。
アメリカの長期金利は、長期債券(長期国債)の利回りのことを指し、一般に10年債利回りが指標とされています。
長期金利は市場の予想や期待が反映されています。10年債利回りであれば、今後10年の金融市場の動きを先取りして変化していることを示します。そのため、投資家や専門家は長期国債である10年国債に注目します。
特に、経済大国であるアメリカの金利が世界経済に大きな影響を与えるため、投資家が最も重要視するようになりました。
国債は市場で売買され、その価格は需要と供給によって変動します。国債の価格が上がると利回りが下がり、逆に価格が下がると利回りが上がります。
アメリカの長期金利は、経済情勢やインフレ期待などにもよっても変動します。
2023年3月現在、アメリカの長期金利は3.7%前後で推移しており、コロナ禍前より高い水準です。
前述したように、長期金利と株価はシーソー関係にあります。ただし、この関係は必ずしも一定ではありません。
長期金利と株価が同時に上昇したり、下降したりすることもあります。その理由は長期金利の上昇が景気回復やインフレ予想を示す場合や長期金利の下降が景気悪化やデフレ予想を示す場合などに起きるといわれています。
つまり、長期金利と株価の関係は複雑であり、経済や政策など様々な要因に影響されます。これは、株価だけでなくビットコイン市場にも当てはまります。この傾向を理解しておくことが大切です。
金利とリスク資産、ビットコインとの関係

世界経済において、一般的には金利が上昇すると、リスク資産が売られ、安全資産(米ドルや金など)が買われる傾向があるといわれています。これは、金利が上昇すると借り入れコストが高くなり、投資家のリスク許容度が低下するためです。リスク許容度が低下すると、投資家はより安全な資産へと投資をシフトしようとする傾向があります。
ちなみに、リスク資産とは、株式や高利回り債券、不動産投資、新興市場通貨といった、投資した元本が保証されていない資産を指し、収益を期待できる一方で損失を被る可能性もあります。また、これらの資産は、安全資産に対してリスクが高いとされます。
ビットコインを始めとする暗号資産(仮想通貨)もまた、価格変動が激しく元本が保証されていないためリスク資産の一種と考えられています。
一方、安全資産とはリスクが低いとされる資産で、米国債や金、先進国の政府債券などがこれに該当します。投資家は不確実性が高まると、リスクを避けるために安全資産に資金を移動させることが一般的です。
アメリカの長期金利が上昇すると、株式などのリスク資産は売られ、米ドルや金などの安全資産が買われる傾向がありますが、この場合、暗号資産もリスク資産として売られる可能性が高まります。
一方で、アメリカの長期金利が下落すると、リスク資産が買われ、安全資産が売られる傾向があり、暗号資産もリスク資産として買われる可能性が高くなります。
他のリスク資産とは異なる動きをするビットコイン
ビットコインはリスク資産ではありますが、他のリスク資産とは異なる特徴を持っています。
例えば、ビットコインはインフレを回避する「インフレヘッジ」やデジタルゴールドとしての需要があり、アメリカの長期金利に対して株式などとは異なる独自の反応を示すことがあります。2020年頃からは機関投資家や個人投資家の参入状況や規制動向なども異なる特徴でしょう。
インフレヘッジとは、インフレ(物価の上昇)によって購買力が低下するリスクを回避するための投資手法です。インフレヘッジには、金(ゴールド)や不動産などの実物資産やビットコインが含まれます。
金(ゴールド)がこの地球上で採掘できる量が限られていることや、きわめて劣化しにくい性質であるように、デジタルゴールドとは、金に近い性質を持ち、価値の保存手段として機能するデジタル資産のことを指します。
ビットコインは発行量が限られ、また中央銀行や政府などの介入を受けないため、インフレが原因で通貨価値が下落するリスクが低いことから、インフレヘッジやデジタルゴールドとしての需要が高まっているとみられています。
ただし、ビットコインはインフレヘッジやデジタルゴールドとしても完璧ではないことも理解しておく必要があります。アメリカの長期金利とビットコインの関係はそう単純ではなく、市場環境や投資家心理によっても変化することを考慮する必要があるからです。
例えば、2022年3月には米国債利回りで、10年金利が上昇したにもかかわらず、ビットコインの価格は、1BTCあたり600万円近くまで上昇したことがありました。
ビットコイン以外の暗号資産(仮想通貨)はどう動くのか

ビットコイン以外の暗号資産についても、金利が上がったからといって、「リスク資産として下落する」というように、一概にいえず、ビットコインと同様にアメリカの長期金利と逆相関になることもあります。暗号資産はそれぞれ特徴や価格決定要因が異なるため、一様には動かないことを覚えておきましょう。
例えば、イーサリアム(ETH)はスマートコントラクトや分散型アプリケーション(DApps)のプラットフォームとして需要が高まっており、人気のアプリケーションの登場によって、価格が上昇するなど、金利の影響を受けにくいことがあります。
また、リップル(XRP)は国際送金や決済サービスに利用されており、金融機関や規制当局との関係性が重要な要素です。金利の影響よりもリップル自身の需要の高まり等により、独自の価格変動が起きることがあります。
高金利だった2023年3月には、アメリカの証券取引委員会との訴訟問題に関して、リップル側に好影響と見られる要素が出てきたことで、リップルがそのほかの暗号資産よりも強い上昇をみせ、10ヶ月ぶりの高値となりました。
まとめ

金利とリスク資産の間には、金利が上がれば、株価が下がるといったように、シーソーのような関係があると言われます。ビットコインもこのリスク資産に分類されます。
しかし、長期金利と株式、ビットコインの関係は複雑であり、経済や政策など様々な要因に影響されるため、単純に金利と価格の変動だけではなく、「何故そのような動きをしたか」という背景も考える必要があるといえるでしょう。
暗号資産(仮想通貨)については、暗号資産に関する法的な規制やセキュリティの問題も多く、そうした規制の動向によっても価格が変化することを理解する必要があります。
特にビットコインとそれぞれの投資指標の相関関係は、逆相関関係にあったと思えば突然何らかの要因で正の相関関係になることも少なくありません。その関係性は、現時点においてはそういう傾向にあるといった場の雰囲気を感じ取る経験則が重要です。
ビットコインを始め暗号資産に投資する場合は、あくまでも自己責任で行うことが大切です。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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