ガバナンストークンとは?特徴や仕組みを解説

ガバナンストークン
2023-05-31 更新

暗号資産(仮想通貨)には様々な種類がありますが、トークンという言葉をご存じでしょうか。

近年、DeFi(分散型金融)プロジェクトやDAO(自律分散型組織)で、特定の組織を運用するための仕組みに「ガバナンストークン」が採用されていることが話題になっています。

ガバナンストークンは、保有することで組織の運営に関わることが可能であることから注目を集めています。

この記事では、ガバナンストークンとは何かについて解説します。また、その他のトークンとの違いや、そのメリットやデメリットなどについても詳しく紹介します。

ガバナンストークンとは何か?

トークンは様々な分野で使用される言葉ですが、広義においては明確な定義があるわけではなく、その文脈によって意味が異なります。

暗号資産(仮想通貨)におけるトークンとは、既存の暗号資産プラットフォーム(ビットコインやイーサリアム、シンボルなど)のシステムを間借りする形で存在する資産で、独自のブロックチェーンを持たない暗号資産を指します。

厳密にいえば、ビットコイン(BTC)やイーサ(ETH)もそれぞれのブロックチェーンで発行されるネイティブトークンなのですが、トークンといったときには一般的に既存のブロックチェーン上で発行された暗号資産を意味します。

トークンはネイティブトークンと異なり、中央集権的で多くの場合において発行者が存在し、発行者によって発行枚数などを自由に決めることができる性質を持つのが大きな特徴です。

また、暗号資産におけるトークンには様々な種類があり、その用途や機能によって分類されます。代表的なところでは、NFT(ノンファンジブルトークン)やユーティリティトークン、セキュリティトークンなどがありますが、ガバナンストークンはユーティリティトークンの一つとして分類できます。

ガバナンストークンの特徴

トークンの中で、トークンを保有することにより特定のサービスやコミュニティを利用する権利や機能が得られる実用性のあるものをユーティリティトークンといいます。

何らかの実用性のあるトークン全般をユーティリティトークンと呼んでいますが、ユーティリティトークンの実用範囲は広く、アイデア次第で様々な用途に利用されます。

実用性があるトークンという意味で、ガバナンストークンもまたユーティリティトークンの一つですが、実用性の中でも組織運営に関する権利に特化したトークンをガバナンストークンといいます。

DeFiやDAOなどの分散的組織では、プロジェクトを管理する中央集権的な組織がありません。そのため、プロジェクト内の意思決定をトークン保有者に付与します。中央集権的な意味合いで発行されたユーティリティトークンやその他のトークンとは異なり、ガバナンストークンを用いることで特定組織において非中央集権的な役割を持たせることが可能です。

特定の主体にプロジェクトの意思決定権を持たせずに、ガバナンストークン保有者による分散型ガバナンスモデルは、トークン保有者とプロジェクト双方の利益を一致させるのに役立つと期待されています。

例えば、ガバナンストークンを発行するプロジェクトなど特定組織は、プロジェクトやネットワーク運用の方針をガバナンストークン保有者による投票で決定します。ガバナンストークン保有者は、プロジェクトの方向性を決めるなど、組織の重要事項を決定する際のガバナンス(組織の統治)に参加し、投票する権利を有します。

ガバナンストークンの権限には、トークン保有者がプロジェクトの健全な運営に関心を持つように、組織のマネジメント的な役割やプロジェクトの方向性を決定するプロトコルの仕様を変更する権限が含まれることも少なくありません。

プロジェクトは、投票によって意思決定するため、運営者による不正や開発者との癒着を防ぐこともできます。投票の権利はトークン保有量に比例して重み付けされることが多いほか、投票の流れや結果については、ブロックチェーンによって公平に誰でも閲覧できるため、組織運営の透明性を証明できます。

ガバナンストークンの仕組み

ガバナンストークンによって、DAOやDeFiを始めとするブロックチェーンプロジェクトは、どのように分散型ガバナンスを実現しているのでしょうか。

多くの場合、ガバナンストークンはブロックチェーンプロジェクトを支持するアクティブなコミュニティや支持者への忠誠と貢献に対して授与していきます。

同時にプロジェクトの発展や様々な問題を解決するために、ガバナンストークンを利用して保有者による投票が行われます。一般的に、投票はスマートコントラクトを介して行われ、その結果に基づきプロジェクト開発が進行し、機能的なものは自動的に実装されるものもあります。

このように、プロジェクトを発展させたいユーザーがガバナンストークンを保有し、投票することで意思を示し、自らプロジェクトの方向性を決めることができるのが分散型ガバナンスモデルの根幹となる仕組みです。

ガバナンストークンによる投票は、1トークンにつき1回の投票ができるものもあれば、保有量に応じたなんらかの計算式によって投票数を決定するものなど、プロジェクトによって仕様はまちまちです。中には他人に投票権を委任し、代わりに投票してもらうことができるものなどもあります。

ガバナンストークンの中には、投票権のみならずプロジェクトの持続性を高めるために、トークン保有者にブロックチェーンにおける取引手数料の一部を分配するなどインセンティブ付きのものや、トークン保有者だけが参加できるコミュニティやゲーム等の特典付きトークンも登場しています。

また、暗号資産の貸し借りができるDeFiプロジェクトでは、ガバナンストークンを保有することで、DeFi内の取引手数料の割引を受けることができるなど、サービスを利用するほど得する仕組みを持つものもあります。

こうした仕組みは、ガバナンストークンの長期的な保有を促しやすくプロジェクト自体の持続性にも貢献するなど、プロジェクトがガバナンストークンを採用することで様々な効果が生まれます。

株式との違い

組織への影響度合 意思決定 発行主体
ガバナンストークン 支配可能な範囲が限定 代表者なし プロジェクト
株式 実質的な支配権に相当 組織上層部 株式会社

ガバナンストークンは、従来の組織における株式に近い存在でもあります。トークンを保有することで投票権のみならず報酬や特典といった優待を受けられるガバナンストークンは、いうなれば株式における株主に対する配当や優待と考えるとわかりやすいかもしれません。

しかし、ガバナンストークンが株式と違うのは、株式は企業に対する実質的な支配権に相当しますが、ガバナンストークンは投票によりプロジェクトの方向性やプロトコルの仕様が決定できるなど、支配が可能な範囲が限定されています。

従来の株式会社の場合、意思決定は会社を代表する組織の上層部で行われます。しかし、ガバナンストークンを採用する組織には組織を統率する代表者が存在しません。また、株式の発行者は株式会社でなければなりませんが、ガバナンストークンの発行はプロジェクトごとに行われ、株式会社である必要はありません。また法律的にも現時点においては、ガバナンストークンは株式ではないとされています。

ガバナンストークンの利点と課題

ガバナンストークンは、中央集権的なガバナンスにしばしば見られる、発行者とトークン保有者の利害の不一致を解消することができる点が大きなメリットです。ガバナンストークンによる分散型ガバナンスは、その経営権をガバナンストークン保有者によるコミュニティに委ね、ユーザーとプロジェクト自体の利害を一致させることができます。

また、アクティブで協力的、かつ緊密なコミュニティをプロジェクト自体に構築できることもメリットとして挙げられるでしょう。

ガバナンストークン保有者は、投票することでプロジェクトを改善する権利、アイデアを提案できる権利が得られ、公正でより公平な意思決定のための環境を築くことができます。より多くのガバナンストークンを保有することで、自分の推奨するプロジェクトの将来を決定することもできるわけです。

ガバナンストークンを採用する多くのプロジェクトは、ガバナンストークンの発行上限を設定しています。発行上限のあるガバナンストークンは、需要が高まるほどトークンの価値が上昇しやすく、サービスが継続されることで長期的に価値が増すことが期待されるため、ガバナンストークン自身が資産になる可能性が高くなります。

ガバナンストークンの課題

ガバナンストークンの最大の課題は、大口投資家問題です。例えば、ガバナンストークンを保有している大口投資家が、そのガバナンストークンの全体供給量のかなりの部分を保有している場合、投票プロセスを自分たちに有利になるようにすることも可能です。

こうした課題はプロジェクト自体を中央集権化させてしまうため、ガバナンストークンの本来の特徴を潰してしまいます。

プロジェクトは、あらかじめ権利が分散する仕組みを設けておかなければ、大口投資家の意見による意思決定がなされ、民主制の根本が崩れてしまう可能性もあることを忘れてはなりません。

また、ガバナンストークンが公平かつ広範に分配されたとしても、多数決が常にプロジェクトにとって最善である保証はありません。ガバナンストークン保有者が、コミュニティを犠牲にして創業チームや大口投資家のために投票するケースもあり得ることも念頭に置く必要があるでしょう。

ガバナンストークンの今後や将来性は?

暗号資産プロジェクトから誕生したガバナンストークンの仕組みは、分散型組織を実現し、プロジェクトの持続性を高められることから、今後より多くの分野で活用される可能性があります。特にWeb3(ウェブスリー)などの分野では、ガバナンストークンが分散型インターネットの構築に貢献できることが予想されます。

また、DeFiとDAOが勢いを増すにつれて、他の分野でも分散型ガバナンスモデルを採用される可能性があります。現にブロックチェーンゲームなどのジャンルでもガバナンストークンが登場しています。

ガバナンストークンは、分散型システムにおいて問題が発生したときに、投票によってそれを解決し進化し続けることができ、ガバナンストークンの仕組み自身もガバナンストークンによる投票によって更新できる可能性があります。

最大の課題である大口投資家問題については、票を委任する新しい方法などが開発されることで投票プロセスを強化する方法が模索されています。期待値が大きく注目されている分野だけに、新しい技術の誕生が期待できる分野でもあります。

ガバナンストークンは資産になる可能性があり、従来の組織における株式に近い存在でもあります。ガバナンストークンを保有することで組織の運営に関わることができる上に報酬が分配される可能性があることから、一部の規制当局によってこれらが証券(セキュリティトークン)と見なされる可能性もないとはいいきれません。その場合、ガバナンストークンは厳しい規制の対象となり、トークンの機能にも影響が及ぶ可能性があります。

まとめ

暗号資産(仮想通貨)の歴史からすれば、ガバナンストークンはまだまだ開発の初期段階にあります。それでも、ガバナンストークンを採用するDAOやDeFiプロジェクトのいくつかは、すでに急成長を成し遂げ、実績を上げながら非中央集権的な組織の運営を実現し始めています。

今後、ガバナンストークンがコミュニティやプロジェクト支持者のメンバー間で比較的均等に分配される限り、分散型ガバナンスによる組織は、運営主体が常にユーザーとコミュニティの中心に置かれ、自律した組織としてさらに拡大し続ける可能性は大いにあるのではないでしょうか。

実際には様々な課題はありますが、このジャンルはWeb3と同様に分散型の新しい仕組みを開発しながら課題を解決し続ける限り、社会における大きなイノベーションとなる可能性はなくならないでしょう。ガバナンストークンを採用することで、より活気のある分散型エコシステムの構築ができるようになるかもしれません。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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