イーロン・マスク氏の行動から見る暗号資産(仮想通貨)の動向

イーロン・マスク
仮想通貨
2023-05-31 更新

世界で最も多くの資産を持つ個人資産家の一人として有名なイーロン・マスク氏は、財界を始め、あらゆるビジネスの分野で注目される人物です。

イーロン・マスク氏は、ツイッターなどSNSを駆使して、世間に対して様々なことをつぶやき発言していることでも有名です。その発言は、あらゆるモノ・コトに対して影響を与えています。

暗号資産(仮想通貨)分野に関しても例外ではなく、イーロン・マスク氏はビットコイン(BTC)にも関心を寄せています。そして、その発言は暗号資産市場にも影響を与えていると見られています。

この記事では、イーロン・マスク氏が暗号資産に対して与える影響力と暗号資産市場の動向についてまとめていきます。

暗号資産(仮想通貨)業界におけるイーロン・マスク氏の存在感

米国の電気自動車企業テスラや航空宇宙メーカーのスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(通称スペースX)など複数の有名企業のCEOを兼任するイーロン・マスク氏は、今や世界的な資産家であり、その一挙一動に誰もが注目している屈指の経済人です。

イーロン・マスク氏の行動や言動は、今やあらゆるモノやコトに影響を与えるとまでいわれています。暗号資産(仮想通貨)業界も例外ではありません。最近では2022年10月27日、イーロン・マスク氏が440億ドル(6兆4400億円相当)でツイッターを買収したことを受け、同氏が「好きな暗号資産の一つ」として公言していたドージコイン(DOGE)が急騰しました。

過去には2021年1月に、イーロン・マスク氏が自身のツイッターアカウントのプロフィールに「#bitcoin₿」と追記したことでビットコインが急騰したこともありました。

イーロン・マスク氏がツイッター上で発言をしたり行動を示したりすることが、世間の何かに影響を及ぼしており、もはやイーロン・マスク砲とまでメディアが揶揄するほどになった有名な現象です。どうやら、それはビットコインを始めとする暗号資産市場も例外ではなさそうです。

イーロン・マスク氏はどのような人物なのか

イーロン・リーヴ・マスク(Elon Reeve Musk)氏は、1971年6月28日生まれの南アフリカ共和国プレトリア出身のエンジニアであり、起業家です。

実業家の父とモデルの母の間に生まれたイーロン・マスク氏は、10歳でコンピューターの魅力に目覚めました。すでに、12歳で自身が開発したコンピューターゲーム「Blaster」のソースコードを出版社に売却しています。

18歳のときに母親の出身国であるカナダに移住したイーロン・マスク氏は、1990年にクイーンズ大学に入学しました。大学に在学中には、弟のキンバル・マスク氏と一緒に、自分たちが会いたい実業家に電話をかけてランチに誘うということを始めました。ランチ作戦が功を奏し、イーロン・マスク氏はノヴァ・スコシア銀行にてインターンをする機会を得ています。

イーロン・マスク氏は、米国の「やる気さえあれば何でもできる」という精神と、最新のテクノロジーへの憧れから米国への移住を常々考えていたといいます。

1991年には米国のペンシルベニア大学ウォートン校へ進むための奨学金を受けます。イーロン・マスク氏は、同大学で経済学と物理学の学士を取得。クリーン・エネルギーや宇宙の分野に興味があったイーロン・マスク氏は、1994年にシリコンバレーでエネルギー関連とロケット関連の二つのスタートアップでインターンシップを体験します。

また、1995年には高エネルギー物理学を学ぶためにスタンフォード大学の大学院へ進学しました。スタンフォード大学への進学は、電気自動車用のバッテリーを作るためだったといいます。

しかし、世の中の関心がインターネットに向かったことで、イーロン・マスク氏もその方針を転換し、インターネットビジネスに目が向いていきます。

イーロン・マスク氏は、大学院を休学して弟のキンバル・マスク氏とグレッグ・クーリ氏の3人でZip2を共同設立し、地図や道路案内、電話帳などを備えたオンラインによるシティガイドを開発しました。

Zip2は1999年にコンパック(現ヒューレット・パッカード)に現金3億700万ドル(430億円相当)で買収され、イーロン・マスク氏は7パーセントの株式で2200万ドル(30億円相当)を受け取りました。

その後、イーロン・マスク氏はオンライン金融サービスと電子メール決済の企業X.comを共同設立します。

X.comは、同社よりも人気のあったコンフィニティ社の送金サービスであるペイパルと競争を避けるためにコンフィニティ社と合併します。コンフィニティ社から改名したペイパルは、2002年にイーベイに15億ドル(2100億円相当)で買収されました。ペイパルの筆頭株主だったイーロン・マスク氏は、1億7580万ドル(200億円相当)を受け取っています。

イーロン・マスク氏は、ペイパル売却で得た1億7580万ドル(200億円相当)を元手にスペースX、テスラ、ボーリング・カンパニー、OpenAIを共同設立しました。

イーロン・マスク氏はPayPalの成功を皮切りに、電気自動車、宇宙開発、太陽光発電などの分野で立て続けに成功を収め、世界一の資産家になりました。スティーブ・ジョブズ以来の天才とも呼ばれ、2023年2月現在、スペースX、テスラ、ツイッター社のCEOを兼任しています。

また、イーロン・マスク氏は世界一の資産家で有名ですが、2022年にテスラの株価が65%下落したことで一気に史上最大の2000億ドル(28兆円相当)の資産額を失い、「もっとも個人資産を失った人」としてギネス世界記録に認定されたことでも有名です。ただし、それでもイーロン・マスク氏は、世界第2位の資産家(2023年2月現在)であることには変わりはありません。

イーロン・マスク氏は暗号資産(仮想通貨)に影響力を持つのか?

イーロン・マスク氏は暗号資産(仮想通貨)に強い関心を持っているのは事実です。しばしばツイッター等自身のSNSアカウントで、暗号資産関連の発言をしています。そうした発言や行動などが、これまでに何度も暗号資産市場に影響を及ぼしてきました。

具体的には、前述のように自身のプロフィールに「#bitcoin₿」と追記したことでその後にビットコインは急騰しています。その逆に2021年6月4日には「#bitcoin₿ 💔 (割れたハートの絵文字)」と謎のツイートをしたことで、ビットコインの市場価格を下落させたこともありました。

また、イーロン・マスク氏は、ドージコインなどいわゆるミームコインに対する関心が強いことでも有名です。

ミームコインとは、インターネット上で広く愛されているミーム(ジョーク)に影響を受け開発された暗号資産のことを指します。ミームという言葉は、インターネット・ミーム(Internet meme)というインターネットを通じて人から人へと、通常は模倣として拡がっていく行動・コンセプト・メディアのことを指す言葉に由来しています。

ミームコインは、通貨としての機能性よりもコミュニティを重視している傾向にあり、多くのミームコインには独自のコミュニティが設立されており、そうした中から誕生してくるものがほとんどです。

そのため、イーロン・マスク氏のような著名人の発言にコミュニティが反応することで、価格にも影響が及んでいるのかもしれません。

イーロン・マスク氏とビットコイン

イーロン・マスク氏はプロフィールへのビットコインの追記以外にも、多くの影響をビットコイン市場に与えてきました。

2021年2月8日、イーロン・マスク氏が率いるテスラは、15億ドル分(当時1600億円相当)のビットコインを購入したことを発表しました。また、テスラ製品の購入時の決済手段としてビットコインを導入することも公表しています。

この発表を受けてビットコインは、上昇トレンドを加速させて当時4万8000ドル(625万円相当)を初めて突破します。

ビットコインはこの時期を機に好調を維持するも、テスラが5月12日に急遽ビットコイン決済の受入れ中止を発表したことにより、市場は一転して急落していきます。

一時期は5万ドル(650万円相当)台で推移していたビットコインの価格は、わずか1週間で3万ドル(390万円相当)台まで下落してしまいました。

7月21日、とあるカンファレンスに出席したイーロン・マスク氏は、ビットコインには肯定的であると発言し、自身もビットコインを保有していることを明かすと、再びビットコインは急騰します。

その後、ビットコインは11月まで上昇トレンドが続き、一時は6万ドル(780万円相当)を突破します。

ビットコインは好調を維持し、2022年に入っても5万ドル(650万円相当)を超える価格で推移。3月は6万ドル(780万円相当)前後まで上昇するも、その後は大きな下落が続き、8月末には3万ドル(390万円相当)を切り2万ドル(260万円相当)台まで価格を落としました。

暗号資産市場全体が冷え込んでいく中で、テスラはその後、2022年7月に決算発表にてビットコインの減損が4-6月(第2四半期)決算に影響したことを明らかにし、購入したビットコインの約75%を法定通貨に転換したと説明しています。

テスラは2021年2月に購入した15億ドル(当時1600億円相当)分のビットコインについて、同年4月に保有分の10%を売却していたことも明らかにしました。

このことについてイーロン・マスク氏は、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)に関連した不確実性を踏まえ、手元現金を最大化させるためにビットコインを売却したと説明しています。

テスラによる売却が明らかになった後、ビットコインは一時下落し2万3000ドル(260万円相当)を下回る値を付けることとなりました。

イーロン・マスク氏の発言には慎重に

世間は、イーロン・マスク氏のツイッター買収劇で、買収する、しない等の発言から、かなり翻弄されてきた印象があります。買収後も組織改革等でも世論をも巻き込み、炎上騒ぎになることもしばしばあります。

昨今は、イーロン・マスク氏の発言は衝動的であることが指摘されるようになり、その発言の真意がどこにあるのか、経済界から投資家、一般人も含めて、とても慎重の行動を取りつつもあるようです。

イーロン・マスク氏は2018年8月7日、ツイッターにてテスラを1株当たり420ドル(6万円相当)で非公開化するために「資金を確保した」とつぶやきました。それを受けて株式市場では、テスラ株は急騰します。しかし、実際にはその買収が実現しないとなると株価は一変して下落します。テスラの株主は多額の損失を被ったと主張し、株式非公開化計画を巡って一部の株主らによる集団訴訟へと発展したこともありました。

株式非公開化発言に関してイーロン・マスク氏は「悪意はなかった。株主のために正しいことをしようとしていた」と述べました。

米カリフォルニア州の連邦地裁は、被告であるテスラやイーロン・マスク氏が連邦証券法に違反したとする原告側の主張を退ける評決を下し、一審ではイーロン・マスク氏側が全面的に勝利しました。米メディアの報道によれば、陪審員らは原告側がイーロン・マスク氏のツイートによって損害を被ったことを証明できなかったとの判断を示したといいます。

しかし、その後に米証券取引委員会(SEC)も「可能性のある資金源と交渉さえしていなかった」として証券詐欺の疑いで訴えを起こしています。SECの訴えに関してテスラとイーロン・マスク氏は両者それぞれ2000万ドル(22億円相当)を支払うことで和解に至っています。

まとめ

イーロン・マスク氏は、ビットコインなど暗号資産を支持する立場を変わらず維持し続けていることをしばしば公言しており、2022年6月には買収を進めてきたツイッターについて、暗号資産(仮想通貨)決済を導入するという見解を表明します。

こうしたイーロン・マスク氏の発言は、良いことも悪いことも含めてなんらかの影響を与えてきたのは事実です。イーロン・マスク氏の発言や行動から、暗号資産市場はたびたび影響を受け、一時期ではありますがなんらかの変動がこれまではありました。

そういう意味では、これまでのように、これからも一挙一動を見逃すことはできない人物であることは確かではないでしょうか。

ただし、それがすべて投資に関して良い方向に動くとは限らないことにも注意が必要です。そこだけは、必ず念頭に置いておきましょう。

イーロン・マスク氏の発言に一喜一憂するのではなく、そのほかのニュースやご自身の分析を踏まえ、暗号資産に関する投資は、あくまでも自己責任で行うことが大切です。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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