保有資産を証明するプルーフ・オブ・リザーブとは?

プルーフ・オブ・リザーブ
2023-04-26 更新

2022年は、暗号資産交換業者大手の破綻によって暗号資産(仮想通貨)業界全体に激震が走り、市場にも影響が及びました。

一社の経営破綻は、資産の保有報告に不正が認められるなど、ずさんな経営手法が招いたものでした。市場は個社の問題というよりも業界全体に共通する問題、リスクと捉えられ、暗号資産全体の信用が失われてしまうような結果になってしまいました。

そうした中、暗号資産交換業者は失われた信用を取り戻すための一つの解として、自社の保有資産を証明するためにプルーフ・オブ・リザーブという手法を採用する動きが活発になってきました。この記事では、話題のプルーフ・オブ・リザーブ(Proof of Reserve)について解説していきます。

プルーフ・オブ・リザーブとは?

プルーフ・オブ・リザーブ(Proof of Reserve)は、暗号資産(仮想通貨)を保持・管理するカストディアン(資産管理保全主体)が顧客から預かっている資産の額と同額かそれ以上を保有していることを、証明する必要があるという考え方であり、また第三者が実施する独立した監査手順によって、資産の保有状況が検証される作業そのものを指します。

具体的には、暗号証明、パブリックウォレットの所有権の確認、資産の保有量を証明するための第三者による定期的な監査によって検証可能な監査手順そのものをプルーフ・オブ・リザーブといいます。

プルーフ・オブ・リザーブによって暗号資産交換業者を始めとするカストディアンは、顧客の預金よりもカストディアンが保有する実際の資産が上回っていることを示すことで、顧客が安心して取引できる環境を提供できるようになります。

注目された背景

プルーフ・オブ・リザーブは、2022年11月に海外の大手暗号資産交換業社FTXが経営破綻したことで注目されるようになりました。

銀行や証券会社など既存の金融機関は政府当局によって規制されており、金融機関が預かる顧客の資産が危険にさらされないように、年次報告でどれだけの資産を保有しているか報告するように義務化されています。

その一方で、日本国外の暗号資産交換業者や暗号資産を取り扱うカストディアンは、政府によってそういった規制がされていない場合もあるため、資産の保有報告は事業者によってまちまちになっています。(日本国内の暗号資産交換業者は金融庁での登録義務があり、厳しい規制が課されています。詳細は「日本の暗号資産交換業者での必要性」の項を参照)

そうした状況下で、暗号資産交換業者FTXは、実際に保有していた資産の価値が不透明なことが指摘され、さらにずさんな経営が明らかになったことで最終的に支払能力や顧客資産管理方法の問題へと発展し、2022年11月に経営破綻しました。

その余波を受けて、世間では暗号資産交換業者を始め暗号資産を取り扱う事業者や各プロジェクトに対して資産の透明性への要求が高まり、カストディアンが実際に保有する資産の監査方法について注目が集まるようになりました。

プルーフ・オブ・リザーブの概要

プルーフ・オブ・リザーブは、カストディアンが保有している残高が実際の資産によって裏付けされていることを確認するために用いられます。そのために、監査を行う第三者は、顧客がカストディアンに預けている額を検証しなければなりません。そのために使われている技術が「マークルツリー」というものです。マークルツリーではデータが暗号化されるために個人情報も守られています。

カストディアンは、保持しているすべての残高の匿名化されたスナップショット(ある時点での資産データ)を取得して、データをマークルツリー上に集約します。

ちなみにマークルツリーとは、暗号理論および計算機科学においてファイルのような大きなデータを要約した結果を格納するツリー構造の一種で、主に大きなデータの要約と検証を行う際に使用されます。その計算にはハッシュ関数が利用されていることから、ハッシュ木とも呼ばれており、一台または複数台のコンピューターで保存・処理・転送される任意のデータの検証処理に利用できる手法です。マークルツリーのデータ構造はハッシュリストとハッシュチェーンの組み合わせでできており、ハッシュ値を照合することでデータが正しいことを検証できます。

同時に、プルーフ・オブ・リザーブにおいて監査を行う第三者は、公に検証可能な残高を持つオンチェーンアドレスの所有権を証明するために、暗号資産交換業者を始めとするカストディアンによって生成されたデジタル署名を収集します。

監査を行う第三者は、これら顧客の残高とマークルツリーのデータを照合して、実際の資産が顧客の残高を超えるか一致するかを比較・検証します。プルーフ・オブ・リザーブでは、関連する他のデータに加えられた変更はマークルツリーに影響するため、改ざんがあればすぐに明らかになります。

ちなみに、カストディアンによってはマークルツリーなどの暗号化作業を行わずに、スナップショットリストを公開して、カストディアンが公開鍵に紐付いた秘密鍵にアクセスできることを根拠に、それをプルーフ・オブ・リザーブとしている場合もあります。

また、暗号資産交換業者によっては、顧客自身がデータの一部をマークルツリーと比較することで自身の残高がマークルツリーに含まれていることを独自に検証することができるツールを提供するなど、現時点においてプルーフ・オブ・リザーブの監査手順は統一化されていません。マークルツリーを生成するためのスナップショットは定期的に行われますが、その頻度も異なります。カストディアンが採用するプルーフ・オブ・リザーブによって、監査する方法や検証する方法がそれぞれ異なるということも理解しておいてください。

プルーフ・オブ・リザーブが注目される理由

これまで顧客は、暗号資産交換業者を始めカストディアンからの財務報告を信じるしか、経営状況を知る方法はありませんでした。しかし、FTXの破綻以来、カストディアンの一方的な財務報告は信用を失ってしまいました。

それによってカストディアンは、経営状況の透明化、保有する資産の証明が一つの売りになりつつあり、一部の暗号資産交換業者が積極的にプルーフ・オブ・リザーブを採用し、その実施を宣告し、カストディアンの財務報告の信用を取り戻すようになりました。

つまり、暗号資産交換業者はプルーフ・オブ・リザーブなど今後採用する監査方法によって新たな信用を手に入れなければならない時期にきているといえます。

暗号資産交換業者のみならず顧客の資産を取り扱うカストディアンは、その事業規模の大小に関わらず、経営状況の透明性の提供、オンチェーンの自らの行動を証明する責任を今後より一層期待されることになりました。

プルーフ・オブ・リザーブは、暗号資産等の貸し手が保有する担保よりも多くのお金を貸し出さないことも保証し、万が一のことが起きた際に貸し手が全額補償されるような仕組みをとなるなど、カストディアンが顧客の資金を危険にさらすような金融取引に従事しないことを保証したり、不正な財務報告と資産の勝手な流用を行わないよう経営状況を透明化したりできる手法といわれていることから、今、こうして注目されるようになりました。

日本の暗号資産交換業者での必要性

日本の暗号資産交換業者は金融庁での登録義務があり、そのために厳しい規制が課されています。

その中には顧客資産を分別管理し、ハッキングなどによるリスクを減らすためにコールドウォレットに保管することなどが求められています。

実際に、FTXが破綻した場合でも、FTX Japanでは、顧客資産が守られており、2023年1月現在で100%以上の準備金を保有していることが発表されました。プルーフ・オブ・リザーブが求められているのは、海外の暗号資産交換業者であり、日本の金融庁に登録されている暗号資産交換業者ではそれほど必要はないかもしれません。

DMM Bitcoinも金融庁登録の暗号資産交換業者であり、お客様の資産は法令に則り分別管理と信託保全によって管理されています。お客様には安心して取引いただける環境を提供しています。

プルーフ・オブ・リザーブの今後の役割

ここまでプルーフ・オブ・リザーブについてその概要を解説してきましたが、プルーフ・オブ・リザーブを採用することが暗号資産交換業者の透明性を完全に証明するものとは限らないということも理解しておいてください。

プルーフ・オブ・リザーブは監査する第三者が大きな役割を担いますが、その第三者を指名することができるのはカストディアン自身です。監査人がどこまで第三者として振る舞えるかは、非常に大きな要素になるといえるでしょう。監査人とカストディアン間の共謀リスクを最小化するためには、有能かつ独立した第三者の存在が必須です。

また、仮にカストディアンがプルーフ・オブ・リザーブの監査のために資金を借用した場合に、借用していないことを調べることはできません。それと同様にプルーフ・オブ・リザーブ以降に、カストディアンが鍵を紛失したり、ハッキングによって資金が盗まれたりする可能性を回避できません。

現時点において、カストディアンの経営の透明性を提供できる有効な手段の一つがプルーフ・オブ・リザーブではありますが、カストディアンがプルーフ・オブ・リザーブを採用していないから危険だということでもありません。

プルーフ・オブ・リザーブ自身の透明性も重要であることから、今後はプロダクトのオープンソース化などより洗練された手法が求められ、さらなる進化と標準化が期待される分野です。今後も、プルーフ・オブ・リザーブの監査手順については、様々な試行錯誤は必要不可欠であるといえるでしょう。

まとめ

カストディアンは、プルーフ・オブ・リザーブの採用や実施のみならず、失われた信用を取り戻すために、信頼できる独立した第三者による監査方法を確立し、自身の残高確認、保有する資産の証明を定期的かつ頻繁に実施し、これらの課題が解決あるいは軽減できるように努力していくことは必須でしょう。

そうした努力の積み重ねが顧客との信頼関係を強固なものにし、既存の金融期間以上に頼りになる、安心して取引ができる暗号資産(仮想通貨)市場の形成につながるものになっていくことでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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