NFTで儲かった税金の計算方法は?確定申告についても紹介
ツイートやアート作品、ゲームなど、様々なデジタルデータにノンファンジブルトークン(NFT)が使われ、高額な取引が報じられています。
NFTの取引プラットフォームも数多く出ていますが、実際にNFTを購入や販売など取引によって利益が生じた場合は税金を納める必要が出てきます。本記事では、NFTに関する取引で課税されるケースや税金の計算方法や確定申告について説明します。
※本稿をご覧いただく方へのご注意
この記事では、国税庁WEBサイト「タックスアンサー(よくある税の質問)」などに掲載されている、暗号資産、NFTおよび確定申告に関連する情報を参照元としており、記載内容は一般的な解説となります。税務の詳細に関しては、必ず税務署または税理士へご相談ください。
NFT取引の課税方針
NFTとは、ブロックチェーンを使うことで、特定のデジタルデータに唯一性を担保する技術のことです。デジタルアートやデジタル上のファッションアイテムなどに使われています。特にアートと融合したNFTアートは作品が何十億円という高値で取引される事例が出ています。
NFTは国内外のマーケットプレイスで誰でも取引が可能で、取引で利益が出た場合には、税金を納める必要があります。
NFTマーケットプレイスを介した取引で得た利益には、雑所得や事業所得、譲渡所得などの所得税が課されます。所得税は各所得を合算して計算する「総合課税」です。他の所得区分と合算した合計額(1000円未満は切り捨て)に対して課税されるため、NFT取引のみに課税されるわけではないことに注意しましょう。
所得税は所得金額に応じて税率が決定される累進課税となっており、税率は下記のとおり5〜45%の7段階で定められています。
所得税の課税率 | ||
---|---|---|
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
税額の計算方法は以下の通りです。
「課税される所得金額 × 税率 - 控除額 = 基準所得税額」
また、地方自治体ごとの個人住民税(市町村民税・道府県民税)についても覚えておきましょう。住民税は1月1日時点で該当市区町村に住所がある方に対して課される税金です。所得税の計算で算出した額に一律10%が住民税として課されます。給与所得者は会社などが代わりに納付しています。原則として個人事業主なども所得税の確定申告をすれば住民税の申告は不要です。
関連コラム:
「NFT(ノンファンジブルトークン)とは?暗号資産(仮想通貨)との違いは?」
NFT取引で収める税金の事例
NFTの売買は比較的新しい取引方法です。そのために、どういった取引がどのように課税されるのかは判断が難しいでしょう。現時点では、日本の国税庁が2023年1月に公表した、NFTに関する税務上の取り扱いのFAQ集が最も具体的な指針となります。
FAQ集では、所得税・法人税関係、相続税・贈与税関係、源泉所得税関係、消費税関係についてまとめられています。
特にこれまで不透明だった、盗難にあった場合の税務上の取り扱いについても公表しました。それぞれについて詳しくみてみましょう。
所得税関係
NFT取引で利益を得た場合は、主に所得税の課税対象です。どのような条件で課税されるのかをFAQ集を元に解説します。
NFTを作成し有償で譲渡した場合
クリエイターが個人でNFTを作成し、NFTマーケットプレイスで第三者に有償で譲渡した場合、その取引で得た利益は所得税の雑所得として計算します。
雑所得の金額は以下の計算式で求めます。
雑所得の金額 = NFTの譲渡収入 ― NFTに係る必要経費
譲渡収入をマーケットプレイス内で流通するトークンで受け取った場合には、そのトークンの時価を譲渡収入とします。
必要経費とは、譲渡収入に必要な売上原価の金額や販売費、一般管理費の金額のことです。売上原価は、NFTを組成するために要した費用で、デジタルアート自体の制作費用は含まれません。また、雑所得の金額が赤字の場合でも他所得との損益通算はできないとのことです。
法人に関して、デジタルアートを販売して利益を得た場合には法人税の課税対象になります。
NFTを作成し、無償で贈与した場合
クリエイターが個人でNFTを作成し、知人に無償で譲渡した場合には所得税は課税されません。新たな利益を得たとはみなされないためです。
ただし、贈与税や相続税の課税対象にはなります。価額は個別に評価されます。
法人の場合には無償で譲渡したとしても課税対象です。事業年度の益金に算入する金額は譲渡時の時価で計算します。
日本非居住者がNFTを作成し、日本において有償で譲渡した場合
海外在住で日本非居住者が、日本のNFTマーケットプレイスでNFTを売却した場合は、日本の所得税の課税対象にはなりません。デザイナーやクリエイターが自身の作品をNFT化した場合、著作物を閲覧する権利を譲渡したという解釈となり、国内源泉所得に該当しないためです。
購入したNFTを第三者に有償で譲渡した場合
クリエイターやアーティストなどからNFTアートを購入した後、そのNFTアートをNFTマーケットプレイスで第三者に有償で譲渡して利益を得た場合は、譲渡所得に区分され課税対象となります。ただし、NFTの譲渡が棚卸資産か準棚卸資産の譲渡として、継続的に行われる場合は事業所得に区分されることがあるようです。「棚卸資産か準棚卸資産」の定義については、FAQ集の中では明らかにされていません。こちらは税理士や税務署に問い合わせるのがいいでしょう。
譲渡所得の金額は次の式で計算します。
譲渡所得の金額 = NFTの転売収入―NFTの取得費―NFTの譲渡費用―特別控除額
譲渡所得は総合課税に分類され、特別控除額は50万円です。利益が50万円以下の場合はその金額まで控除されます。
FAQ集には、「譲渡所得の金額が赤字となった場合は、他の所得との損益通算が可能」とあります。ただし、これには条件があり、NFTが趣味や娯楽、保養、鑑賞の目的で所有する場合は損益通算の対象にはならないと明記されました。
NFTが盗まれた場合
FAQ集で国税庁から公表された内容で、ハッキングなどでNFTが盗まれた場合の取り扱いについて初めて示されました。
NFTマーケットプレイスなどで購入したNFTアートが不正アクセスによって消失した場合の取り扱いは、以下の2つとなります。どちらかに該当すれば、支払う税金を減らせる可能性があります。
1)盗難にあったNFTが生活に通常必要でない資産や事業用資産に該当せず、かつ、そのNFTの消失が、盗難等に該当する場合は雑損控除の対象
2)NFTが事業用資産等に該当する場合には、損失を事業所得か雑所得の金額を計算して必要経費に算入
つまりNFTが生活に必要なものか、事業用資産ということが証明でき、盗難にあったことも同様に証明できれば、税金の救済措置を受けられます。
「生活に通常必要でない資産」とは
FAQ集によると、「生活に通常必要でない資産」というのは、以下の3点です。
① 競走馬その他射こう的行為の手段となる動産
② 主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産
③ 貴金属、書画、美術工芸品などで 30 万円を超える動産
上記のうち、①と③はNFTとは関係がなく、検討すべきなのは②の「主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産」でしょう。ただし、2023年1月現在で、NFTマーケットプレイスなどで購入するNFTはほとんどが趣味や娯楽、鑑賞といった目的のもののために、「生活に通常必要でない資産」に該当すると考えられます。一般的なNFTトレーダーにとってはハードルが高い条件と言えそうです。
ご自身が保有するNFTが「生活に通常必要でない資産」に該当するかは税理士、または税務署にお問い合わせいただくのがいいでしょう。
事業用資産に該当するか
事業用資産等とは、「棚卸資産又は業務の用に供される資産(繰延資産のうち必要経費に算入されていない部分を含みます。)及び山林」と定義されています。棚卸資産に関して具体的な内容は示されてはいません。
消費税について
事業者がNFTを制作し、日本の消費者に有償で販売した場合、事業者には消費税が課されます。事業者でなく、会社員などの給与所得者であっても、反復、継続、独立して行われていると判断されれば、事業取引に該当します。
制作者ではなく、購入したNFTを日本国内の第三者に販売する場合も、事業者として対価を得た場合は消費税が課されます。
ただし、基準期間の課税売上高が1000万円未満の場合は免税となる可能性があります。
確定申告の方法
NFT取引における確定申告では、損益計算によって利益額や損失額を算出しなければなりません。
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得とそれに対する所得税額を自ら計算・申告して納税する手続きです。確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日まで。それぞれの日付が土日や祝日、休日に当たる場合は翌日にずれます。
確定申告は、所得を得ているすべての人が行うものですが、会社員などの給与所得者は毎月の給料から所得税が天引きされ、年末調整で所得税額の計算および過不足精算が行われるため、基本的に確定申告は不要です。ただし、NFTの取引で得た所得が20万円を超えた場合は確定申告を行う必要があります。
用意するもの
NFTの取引は暗号資産(仮想通貨)によって行われるため、暗号資産の取引における損益計算も必要です。暗号資産に関してはDMM Bitcoinをはじめとした暗号資産交換業者から取引履歴をダウンロードできます。
その取引履歴を元に損益計算ソフトや国税庁が提供している暗号資産の計算書などを使うのが良いでしょう。
しかし、2023年1月現在は、NFT取引が可能なプラットフォームでは、暗号資産のようなデータが提供されていないことが多いため、取引履歴をご自身で管理する必要があります。年末までに保有しているNFTの数量などを記録しておきましょう。
管理・記録しておくべき内容は以下の通りです。
- 取引日時
- 購入・販売したNFTの種類や数量
- 送金手数料
- 支払いや受け取った暗号資産の種類と数量
- 取引相手の名称
NFTの税金を支払わないと罰金の可能性
確定申告をせずに税金を納めないと、ペナルティがあります。
ペナルティには「無申告加算税」「延滞税」「重加算税」などがあります。必要以上に税金を納めることになるため、取引で利益を得た場合には確定申告を必ず行い、納税しましょう。
「無申告加算税」は、税務署から調査され、期日が過ぎた後に確定申告した場合に課される可能性があるものです。納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となります。申告期限が過ぎてから、税務署に調査される前に自主的に確定申告をした場合には5%に軽減されます。
「延滞税」は期限までに税金を納付していない場合に課税されます。納めるべき税額が不足していた場合にも延滞税は発生します。税額は納付期限から完納するまでの日数に応じて計算されます。
「重加算税」は、納税者が帳簿の改ざんや虚偽の記載など、税金計算に関する事実を隠蔽した場合に課される税金です。重加算税は35〜40%と高い税率が掛けられています。
悪質な行為と見做されれば税金だけでなく刑事罰が科される可能性があるため、確定申告は必ず行うようにしましょう。
まとめ
アートやトレーディングカード、音楽、ゲームといった幅広い分野に広がっているNFTですが、取引によって利益が出ている場合は納税する必要があります。
2023年1月に国税庁からFAQ集が出されましたが、NFTの納税に関してはまだ不透明な部分も多いのが事実です。
税務署や税理士などに相談した上で納税するのがいいでしょう。
参考:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525-2.htm
https://www.aerial-p.com/media/nft-tax.html
「事例でわかる! NFT・暗号資産の税務」泉 絢也、藤本剛平 著、中央経済社
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/0022012-080.pdf
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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