DEX(分散型取引所)の基盤、自動マーケットメイカー(AMM)とは?

自動マーケットメイカー(AMM)
2023-03-29 更新

暗号資産(仮想通貨)業界で注目を集めるDeFi(分散型金融)分野で、話題になっているサービスにDEX(分散型取引所)があります。DEXは、スマートコントラクトによって自動で特定の暗号資産やトークンの交換ができる分散型の取引所です。

このDEXを実現させるために使用されている技術の一つが「Automated Market Makers(AMM)」です。日本語では「自動マーケットメイカー」と訳されます。AMMは、イーサリアム(ETH)などのブロックチェーン上に構築されたスマートコントラクトです。

本記事ではDEXの基盤となる、自動マーケットメイカーについて解説します。

自動マーケットメイカー(AMM)とは?

DeFi分野で話題のDEXは、スマートコントラクトによって自動で特定の暗号資産(仮想通貨)やトークンの交換ができる分散型の取引所です。

自動マーケットメイカー(AMM)は、イーサリアムなどのブロックチェーン上に構築されたスマートコントラクトで、自動化されたアルゴリズム取引によって特定の市場に流動性を提供するプロトコルです。

AMMは、DEXのコア技術として自律的に機能するマーケットメイカーとして働き、中央集権的な管理者不在のまま分散型の取引所サービスを提供します。ちなみにDEXと対照的に、企業など中央集権的に管理をする暗号資産交換業者をCEX(中央集権型取引所)と呼びます。金融庁に登録されている国内の暗号資産交換業者はCEXであり、DMM BitcoinもCEXに分類される暗号資産交換業者です。

マーケットメイカーとは

暗号資産に限らず金融商品市場において、常時特定の資産の売り買い両方の気配(価格と上限個数)を示す取引の仲介役(値付け役)を担う第三者をマーケットメイカーといい、投資家の注文に約定を保証することをマーケットメイクといいます。

マーケットメイクは金融商品の流動化が目的です。マーケットメイカーが市場の買い手と売り手の交渉の場を促進させることで取引の流動化に関与し、マーケットメイカーを介してすべての注文が執行されます。

通常CEXでは、暗号資産交換業者などが第三者としてマーケットメイカーを担っています。

AMMはDEX基盤プロトコルの主流

DEXは取引の方式により、大きく分けてオーダーブック(取引板)形式とAMM(自動マーケットメイカー)形式に分類されます。すべてのDEXがAMMを採用しているわけではありません。

オーダーブック形式のDEXでは、売買注文はオフチェーン(ブロックチェーン外)で行われ、決済のみがオンチェーン(ブロックチェーン内)で行われます。オーダーブックをオフチェーンで取引することで処理が高速化し、取引処理の手数料負担を軽減する等のメリットがありますが、オーダーブック形式では「リレイヤー」と呼ばれる第三者による管理が必要です(つまり自動化されていません)。また、オーダーブック形式のDEXが取引所として機能するためには、多数の市場参加者や高い流動性が不可欠になります。

そこで登場したのが、AMM形式によるDEXです。AMM形式では、スマートコントラクトによって一定の既定ルールに従って自動でマーケットメイクをするプロトコル(AMM)を採用しています。

AMM形式では、注文マッチングシステムとオーダーブックをAMMと呼ばれる自律プロトコルに置き換えます。AMMは、マーケットメイカーの役割を自動化することにより、仲介者や第三者に頼らずに、自律的に市場に流動性を提供し取引を執行できます。AMM形式によるDEXでは、売買注文のマッチングはオンチェーン上で行われ、同時に決済もオンチェーンで行われます。

AMMはシステムが自動で動いているため、新規プロジェクトの暗号資産やトークンを簡単にDEXに上場させ、流動性を得ることができることが利点です。2020年のDeFiブームはAMM形式のDEXが牽引し、DEXの取引高の多くはAMM形式が占めるほど人気となりました。

AMMの仕組み

AMMの概念自体は新しいものではなく、90年代には既に金融市場に存在していました。しかし、それらのAMMは中央集権的にコンピューターによってシステム化された自動マーケットメイキング機能でした。一方のDEXのAMMは、スマートコントラクトを使ってデジタル資産の価格を定義し、流動性を提供します。

AMM形式がオーダーブック形式のDEXと大きく異なる点の一つは取引相手です。オーダーブック形式では売り手と買い手同士がトレードを行い取引が成立しますが、AMM形式のDEXではトレーダーは流動性プールを相手にトレードを行います。

流動性プールとは、資産(流動性)が貯められているスマートコントラクトです。流動性プールにはあらかじめ2種以上の暗号資産やトークン(プロトコルによりトークンの種類数は異なります)が預けられています。AMM形式のDEXでは、トレーダーは、このプールに自分が売りたいトークンを預け入れ、このプールから自分が欲しいトークンを引き出していくような仕組みになっており、トレーダーは対人ではなくこの流動性プールを相手に取引を実行するのが大きな特徴です。

AMM形式のDEXにおけるトレードのレートは、あらかじめ決定されている数式に従って決定されるため、DEX外部での市場価格とは無関係です。また、レート決定の数式はプロトコルごとに異なります。

流動性プールと流動性マイニング

AMM形式のDEXでは、トレーダーは対人ではなく流動性プールを相手にトレードを実行すると述べましたが、この流動性は自動的かつ自然には貯まりません。そこには流動性を提供する役割を果たす、流動性提供者(流動性プロバイダー)が必ず存在します。逆にいえば、流動性プロバイダーがいなければ、AMM形式のDEXは機能しません。

そこでAMM形式のDEXは、流動性プロバイダーに対して自身の資産をプロトコルに預けることで、それに見合う報酬を提供します。つまりAMMの流動性プールは、流動性プロバイダーにインセンティブを与えることで、その流動性の確保に成功しています。

こうした流動性を提供することにより様々な報酬を受け取ることができる仕組みを総じて「流動性マイニング」と呼んでいます。流動性マイニングの仕組みや報酬の種類はプロトコルによって異なります。

報酬の種類

AMMの報酬にはいくつか種類がありますが、基本的には手数料報酬およびガバナンストークンの報酬が流動性プロバイダーのインセンティブになっています。

AMM形式の最も一般的な報酬は、手数料報酬です。DEXを利用するトレーダーは、取引毎に一定の手数料をプロトコルへ支払います。支払われた手数料は、流動性プロバイダー間で報酬として山分けされる仕組みになっています。多くのプロトコルで、手数料は流動性プロバイダーの主な収入源です。

DEXによっては、流動性プロバイダーに対してガバナンストークンや流動性トークンを報酬として発行するものもあります。ガバナンストークンや流動性トークンは、そのDEXプロジェクトにおける投票権のようなもので、プロジェクトの方向性やプロトコルへの変更点などに対する意思決定権を持ちます。

プロトコルの投票権を持つことは、プロジェクトの将来を決定する力を保有していることにもなります。DEXによってはガバナンストークンや流動性トークンをステークすることによりさらなる報酬がもらえるなど、プロジェクトの持続性につながる多種多様な報酬が存在します。

ガバナンストークンや流動性トークンの中には、異なるプロトコル間のコンポーザビリティ(相互運用性)といった仕組みによって、ガバナンストークンや流動性トークンを受け入れる他のプロトコルの流動性プールに再投資することで、より多くの報酬を受け取ることができるDEXも存在します。そのようなDEXでは、流動性プロバイダーに再びステークして得た報酬を最大化し還元することできるため(イールドファーミングと呼ばれます)、より注目されています。

AMMのメリットとデメリット、その将来性

AMMのメリットは、プール内で自動的にレート計算が行われるため取引までの決定スピードが速いことです。流動性プロバイダーが報酬として手数料を受け取ることができたり、イールドファーミングができたりすることも長所でしょう。

一方ではデメリットとして、流動性プールのリスクとなるインパーマネントロスがあげられます。

インパーマネントロスとは、流動性プールにトークンを預けた後に、流動性を提供した通貨ペアに価格変動が発生すると必ず発生する損失です(資産が値上がりしても値下がりしても、どちらでも損失となります)。

AMMでは、通貨ペアの割合は必ず1:1になるようになっているため、どちらかの価値が変動した場合、AMMの仕組みにより常に1:1に自動で調整されます。そのため、プロトコルに流動性を提供した場合に比べて、流動性を提供せずに資産をホールドしたままのほうが結果として得だったという損失が発生するリスクを抱えています。

ただしインパーマネントロスについては、変動した価格比が元に戻る可能性もあり、流動性を提供することで手数料収入も得られるため、一概に損失が大きくなるともいえない面もあります。流動性プロバイダーとして流動性を提供する場合は、しっかりとインパーマネントロスを含めて損益計算をすることが大切です。

DEXには管理者や仲介者がいないため、サポートを一切受けることができないこともデメリットです。ウォレットの秘密鍵を紛失したり、自分のウォレットや秘密鍵をハッキングされたりすると、自己責任で対応しないとならないことも理解しておきましょう。

まとめ

DeFiの注目が高まったことにより、DEXの利用者も増加し始めています。その重要技術としてAMMは話題となっています。

AMMは、マーケットメイカーの役割を自動化することにより、仲介者や第三者に頼らずに、自律的に市場に流動性を提供し取引を執行できます。新規プロジェクトの暗号資産(仮想通貨)やトークンを簡単にDEXに上場させ、流動性を得ることができます。

ただし、インパーマネントロスなど損失のリスクのほか、サポートなどがないというリスクも認識しておく必要があるでしょう。投資をする際には、メリットやデメリットを把握したうえで自己責任においてDEXやAMMを利用することを心がけましょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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