エルサルバドルのビットコイン法定通貨化は、成功か失敗か

エルサルバドル
ビットコイン
2023-03-29 更新

中南米の国エルサルバドルは、2021年9月に世界で初めて暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン(BTC)を自国の法定通貨とした国として注目されています。ビットコインの法定通貨化からすでに1年が過ぎ、エルサルバドルの思惑は、計画通りに進んだのでしょうか。

この記事では、エルサルバドルでビットコインが法定通貨となった背景やその計画、そして2022年12月末時点までの状況について詳しく解説します。

ビットコイン法施行から1年超、エルサルバドルの現在

2021年9月7日、人口約650万人の中米の小国エルサルバドルが、ナジブ・ブケレ大統領のもとで自国の法定通貨に暗号資産(仮想通貨)ビットコインを採用する「ビットコイン法」を施行し、世界中の注目を集めました。

そのビットコイン法施行からエルサルバドルはビットコインを巡り様々な事案に直面しています。

ブケレ大統領はビットコイン法以外にも、2021年11月にビットコインを核とする戦略都市「ビットコイン・シティ」の建設計画を打ち出しました。しかし、ビットコインの法定通貨化から1年を経過した2022年12月時点で、計画は暗礁に乗り上げたままです。

エルサルバドルの2022年は、早くもビットコイン法の不安定さが浮き彫りになった1年となりました。

ビットコインがエルサルバドルの法定通貨となった背景

過去に内戦が続いていたエルサルバドルは、自国通貨の導入に失敗した歴史を持ちます。自国通貨であった「コロン」は、2001年にドル化政策(Dollarization)が実施され、「米ドル」を自国の法定通貨とした経緯があります。現在、旧通貨のコロンはほとんど流通していません。

ビットコイン法施行により、エルサルバドルはこれまでの米ドルに加えて、新たにビットコインを法定通貨の一つとして加えることになったわけです。

ビットコイン法施行後のビットコイン導入の流れ

エルサルバドル政府は、ビットコイン法施行と同時に国民に公式ウォレットアプリ「Chivo(チボ)」を無料配布しました。ウォレットの導入は任意ですが、国民はChivoを自身のスマートフォンにインストールし本人確認を済ませることで、初期段階として30ドル相当のビットコインをボーナスとして受け取ることができました。

ただし、最初の30ドル相当のビットコインは直接換金できないようになっていました。ビットコインとChivoの使用を促すためのボーナスという目的だったためです。最初のビットコインは、買い物に使うか誰かに送金するかで一度使用されたもののみ、その受け手がドルに換金できる仕様でした。

Chivoは、ビットコインによる支払いの際の手数料や送金・換金の際の手数料は一切かかりません。また、エルサルバドルはビットコインとドルを交換できる「Chivoポイント」を全国200ヵ所に設けました。Chivoポイントは、24時間365日稼働し、いつでも取引を行うことが可能でした。

法定通貨にビットコインを選択した理由

エルサルバドル政府はビットコインの法定通貨化の理由について、金融包摂を加速させ、経済を活性化させ、雇用機会を開拓することにあると説明しています。金融包摂とは、経済活動に必要な金融サービスを、すべて人々が平等に利用できるようにする社会的取り組みです。

内戦後のエルサルバドルでは自国での就労機会は少なく、多くは米国をはじめ海外における労働、雇用機会に依存している状況です。また、国民はそれほど豊かではなく銀行口座を持つ人も少ない国です。

海外就労する国民は、高い手数料を払ってお金をエルサルバドルに住む家族に海外送金をしています。

ビットコインを始め暗号資産(仮想通貨)は、こうした国の金融包摂の問題を解決するために生まれました。まさにエルサルバドルの状況とビットコインの開発目的は合致しているといえます。スマートフォンとChivoのウォレットアプリがあれば、銀行口座を開設する必要もなく、安価な手数料で海外送金が可能になります。

こうした政府の思惑通りにビットコインが法定通貨としてエルサルバドル国内で普及するかどうかは未知数ですが、自国の課題解決を模索する中、第三者に支配されていないビットコインの存在はエルサルバドルにとって渡りに船でもあったのは間違いありません。

ビットコイン法定通貨化後の状況

ビットコインの法定通貨化に備えてエルサルバドル政府は直前に200BTCを購入するなど、政府によるビットコインの大量購入も話題になりました。

ビットコイン法施行後、その直後にはエルサルバドル国内のスターバックスやマクドナルドなどの店舗でビットコインを使用できることが確認されています。ビットコイン法施行当日にも政府が追加で200BTCを購入したことも明らかになりました。

ウォレットアプリのChivoは、ローンチ直後にGoogle等の配信制限によりダウンロードできない問題が発生しました。しかし、制限が解除されると、エルサルバドル国内におけるAppStore金融部門ランキングで、ダウンロード数1位を記録しています。Chivoは、3週間でエルサルバドル国民210万人に利用されているとの発表もありました。この数字は、エルサルバドルの全人口に30%ほどが利用していることを意味します。

周囲の反響は

ビットコインの法定通貨化に対して、中米経済統合銀行(CABEI)は、エルサルバドルを技術面で支援する意向を示しました。しかし、世界銀行は「エルサルバドル政府から支援の要請はあったが、手助けはできない」と公言しています。ビットコインを法定通貨に採用することは、国際社会においてはマクロ経済、金融、法的に多くの問題を引き起こす可能性があるとの懸念からです。

肝心のエルサルバドル国内では、ビットコインを法定通貨化することに反対する声も少なくありません。2022年6月に現地の商工会議所が行なった調査では、国民の約8割が反対しているとの結果が公表されました。

ブケレ大統領は、2021年8月にビットコイン信託を設立しています。ビットコイン信託は、国民がビットコイン取引を行えるようにすると共に、必要に応じてビットコインをドルへと自動かつ瞬時に交換できるようにする代替手段を提供するための仕組みです。

エルサルバドル政府は、ビットコイン法が施行された2021年9月には、合計700BTCを購入しています。また、10月末には420BTCを追加購入、同年11月時点での同国のビットコイン購入量は1,120BTC(当時6900万ドル相当)に達していました。

また、エルサルバドルは世界初となる「ビットコイン・シティ」構想を発表後、税制の優遇措置や同国の火山の地熱を活用した再生可能エネルギーによるビットコインマイニングなどで維持費を賄う計画を発表しています。

ビットコイン、その後の動向とエルサルバドルの対応

ブケレ大統領は2022年1月2日、自身のTwitterアカウントで2022年のビットコインに関する予測を公表、市場動向や自国の取り組みなど以下の6つを提示しました。

  • ビットコインの価格が10万ドル(1100万円相当)に到達する
  • エルサルバドルの他にさらに2ヵ国がビットコインを法定通貨として採用する
  • 今年の米国選挙における要点の一つとなる
  • ビットコイン・シティの建設が開始される
  • 「ボルケーノ・ボンド」への申し込みが殺到する
  • ビットコインカンファレンスで大きな発表が行われる

ちなみに「ボルケーノ・ボンド(火山債)」とは、ビットコイン債のことです。ブケレ大統領が建設を表明したビットコイン・シティの予算を確保する手段として、10億ドル相当の債券を発行予定としています。

当初ビットコイン債は、2022年3月15日~20日に発行される予定でした。しかし2022年12月現在、ビットコイン債は発行されていません。ビットコイン債発効の延期理由は、ロシアによるウクライナ侵攻とそれによるビットコイン価格への影響によるものとされています。

セラヤ財務大臣は2022年11月17日、新たにデジタル証券に関する法案を議会に提出しました。その内容は、エルサルバドル政府がビットコイン債という暗号資産(仮想通貨)債券を提供するには、同国の証券法など、20あまりの法律を改訂する必要があるというものでした。現在はウクライナ情勢や金融市況の改善を待ちながら、準備を進めている段階です。

また、ブケレ大統領は法案提出の同日、ビットコインを翌日から毎日1BTC購入していくとツイッターで宣言しています。あくまでもビットコインの法定通貨化の姿勢に関して強気の姿勢を崩していません。

しかし、2022年を振り返ってみると、ブケレ大統領の予測はほとんど外れています。さらに、エルサルバドルでのビットコインへの取り組みは世界銀行といった国際機関の反対や2022年に入って冷え込んだ暗号資産市場の状況から、順風満帆とはいえない状況でしょう。

まとめ

エルサルバドルはビットコインの法定通貨化によって、世界的な注目を集めました。

しかし、法案が施行された後も、順風満帆に行っているとは言えません。特に暗号資産(仮想通貨)市場が冷え込んでいることが大きいでしょう。

ブケレ大統領のビットコインを毎日1BTCずつ購入していくという宣言は、「ドルコスト平均法」という投資手法を実行しているものと見られています。

ドルコスト平均法とは、価格が変動する金融商品に対して常に一定金額を定期的に購入する有名な投資手法です。ドルコスト平均法による購入方法は、金融商品の平均購入単価を平準化させることができます。

現在、様々な要因で暗号資産市場の弱気相場が長期化する恐れがあるため、エルサルバドルはドルコスト平均法による投資手法に移行したと見られます。

果たして、エルサルバドルのこれまでの計画はどうなるのでしょうか。その行く末は誰にもわかりませんが、少なくともブケレ大統領を長とするエルサルバドル政府は、諦めたわけではなく、長期戦になると見込んでいるようです。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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