イーサリアムで導入が検討されているロールアップ(Rollups)とは?応用技術についても解説

ロールアップ
2023-02-08 更新

イーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンプロジェクトは、その人気が高まるにつれて取引量が大幅に増えたことにより、ブロックチェーンの処理能力が限られていることに起因するスケーラビリティ問題といった障害が多く発生するようになりました。ブロック容量いっぱいにデータが書き込まれると処理能力が追いつかず、送付遅延や手数料増加といった問題が起きてしまいます。

しかし、ブロックチェーンのメインネットワーク(レイヤー1)外で処理するとなると、ブロックチェーンの高いセキュリティの恩恵が受けられなくなってしまいます。こうした問題に悩む暗号資産やブロックチェーンは、ブロックチェーンのセキュリティの恩恵を受けながら、スケーラビリティ問題を解決するため、レイヤー2(セカンドレイヤー)という技術の開発とその導入を検討するようになりました。

このレイヤー2で使われる技術の一つに、ロールアップ(Rollups)と呼ばれる注目の技術があります。

本記事では、イーサリアムでも積極的に導入が検討されているロールアップについて詳細を説明します。また、その応用技術であるオプティミスティック・ロールアップやZKロールアップについても詳しく解説します。

暗号資産(仮想通貨)におけるロールアップ(Rollups)とは?

暗号資産(仮想通貨)におけるロールアップ(Rollups)とは、イーサリアムなどのブロックチェーンのスケーラビリティ問題を解決するためのレイヤー2技術です。

レイヤー2では、セキュリティを損なうことなく、トランザクションの一部をオフチェーン(メインネットワーク外)で処理することにより、ネットワークのトランザクション処理を向上させます。

ロールアップという呼称は、オフチェーンで処理されたトランザクションのデータをひとまとめにして巻き上げるようにメインチェーンに戻す様子から、そう呼ばれています。

元々ロールアップの技術は、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するためにイーサリアムの考案者であるヴィタリック・ブテリン氏とライトニングネットワークの開発者ジョセフ・プーン氏によって考案されたPlasma(プラズマ)という技術から派生しています。ロールアップはPlasmaほどのスケーリングの向上はありませんが、プラズマが抱える問題の回避と汎用性の向上を実現します。

技術の元になったプラズマは、データ処理の多くをレイヤー2で処理することを目指して開発されてきましたが、ロールアップはプラズマとは異なりデータ処理の一部をレイヤー2で行い、レイヤー1にも処理の一部を残してトランザクションの証明をレイヤー1で行うことが大きな違いです。そのため、ロールアップはハイブリッドなレイヤー2技術ともいわれています。

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ロールアップの特徴

ロールアップは、主にイーサリアムのネットワーク負荷上昇時のトランザクションの遅延や手数料高騰など慢性化するスケーラビリティ問題を解決する技術として語られますが、イーサリアム固有の技術ではありません。他のブロックチェーンにも有効な技術です。

オフチェーンによってスケーラビリティ問題を解決するロールアップは、同様な技術であるサイドチェーンとは異なり、レイヤー1のセキュリティと堅牢性をそのまま利用することができます。また、EVM(イーサリアム仮想マシン)のような仮想マシンの実装が可能なため、スマートコントラクトにも対応できます。

主たる特徴は、レイヤー1のメインのブロックチェーンよりも低コストかつ高速なトランザクションが可能です。ロールアップは、同様なオフチェーン処理の一手法であるステートチャネルのような最初に資金(保証金)をロック(デポジット)する必要もありません。

ロールアップの仕組み

ロールアップの仕組み自体は比較的簡素にできています。

ロールアップでは、まずユーザーはオフチェーン(レイヤー2)でトランザクションを実行します。レイヤー2で実行されたトランザクションデータは抽出され、圧縮されます。圧縮された複数のトランザクションデータは、その後まとめてレイヤー1へ提出されます。

レイヤー2より提出されたデータは、レイヤー1に構築されているスマートコントラクトによって、トランザクションデータの真正性(正当性)が検証されます。検証後、データが正当なものであればそのままレイヤー1のブロックに取り込まれます。

このように、ロールアップではトランザクションの大部分をレイヤー2にて実行し、レイヤー1では資金の移動と正当性の検証のみ行うため、レイヤー1はトランザクションを個々に処理する必要がありません。レイヤー1は、提出されたデータの正当性のみを検証するだけなので、トランザクション処理の負担が軽減されることになります。

ロールアップのコントラクトは、レイヤー1(イーサリアム)上に複数載せることも可能なため、理論上は無限に拡張することも可能です。

ロールアップは、レイヤー2のコア技術です。ロールアップの正当性を検証する方法にはいくつかあります。例えば、イーサリアムでは、オプティミスティック・ロールアップ(Optimistic Rollups)やZKロールアップ(ZK-Rollups)などがロールアップを応用した代表的なレイヤー2技術です。

オプティミスティック・ロールアップ

オプティミスティック・ロールアップでは、正当性の検証方法をレイヤー1に提出されるデータはすべて正当なものであるという楽観的な前提に基づいて検証を行います。オプティミスティックとは日本語で楽観という意味であり、まさにその名が示すような動作を行います。

まず、レイヤー1に提出されたデータのすべてのトランザクションが正当なものである場合、特に何も行わずそのままレイヤー1のブロックチェーンにトランザクションデータは取り込まれます。仮にデータに不正なトランザクションがあった場合、不正の発見者は、そのトランザクションが不正である証拠とステーク(掛け金)を一緒に提出することで、そのトランザクションを中断できます。

それによって不正の容疑をかけられたトランザクションはレイヤー1にて再度実行され、本当に不正であった場合は、不正が行われた時点まで時系列を巻き戻し、不正のなかったブロックから再開され、正しいトランザクションが提出されます。ここで不正なトランザクションを提出した人には罰金が科され、不正発見者には報酬が支払われます。逆に不正ではなかった場合は、ペナルティとして発見者がステークした掛け金は没収されることになります。

オプティミスティック・ロールアップでは、正しい不正証明を提出できる参加者(アグリゲータ)が一人以上いれば、健全に機能することができます。

オプティミスティック・ロールアップは、EVMの実装などレイヤー1で実行可能なことはすべてレイヤー2でも実行可能であるというメリットがある一方で、不正の検証期間中は資金をレイヤー1に戻せないという課題があるほか、スループット(トランザクションの処理速度)がプラズマやZKロールアップよりも低いというデメリットがあります。

ZKロールアップ

もう一つの代表的な正当性の検証方法に、ZKロールアップという方法があります。ZKロールアップには、ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proofs)という暗号学における証明技術が用いられています。ZKロールアップのZKは、ゼロ知識証明の頭文字を取ったものです。

ZKロールアップのゼロ知識証明とは、簡潔に述べると「ある人が特定の事柄を証明したいときに、機密情報を明かさずにそれを証明する」技術です。

ZKロールアップでは、レイヤー1に提出するトランザクションデータはすべて正当なものであるということをzk-SNARKsと呼ばれるゼロ知識証明を使い、ゼロ知識証明の証明結果とともにデータを提出します。

提出された証明結果は、ただちにレイヤー1のスマートコントラクトによって検証され、正当性が確認できた段階でレイヤー1のブロックにトランザクションデータが取り込まれます。取り込まれたデータの正当性は、ゼロ知識証明によって数学的に証明されているのがZKロールアップの特徴です。

このようにZKロールアップでは、オプティミスティック・ロールアップのような不正検証期間が不要であるため、レイヤー1への資金の引き出しが即時実行できるというメリットがあります。しかし、一方でゼロ知識証明は証明の計算が大変であるということと信頼のおける人による初期設定(Trusted Setup)が必要であるというデメリットがあります。

まとめ

ロールアップは、オプティミスティック・ロールアップやZKロールアップも含めて、レイヤー2技術として、ブロックチェーンが抱える問題点を解決するスケーリング・ソリューションとして注目されています。これからの暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン業界における中心的な技術になっていくのは間違いありません。

しかし、どの技術も最先端の技術であり、最新のプロジェクトでもあり、特にゼロ知識証明の分野はまだまだ研究中や実験中のものも少なくなく、それぞれに発展の余地もあれば、課題もあります。また、レイヤー2技術のみならず、サイドチェーン技術や新たに登場するブロックチェーンネットワークも含めて様々なスケーリング・ソリューションの登場が予想されます。こうした技術が、レイヤー2なのかサイドチェーンなのか、またどのような技術がベースとなって応用されているのかなど、それぞれが区別できるとよりブロックチェーンに対する理解度を深められるようになるのではないでしょうか。

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