暗号資産(仮想通貨)のクロスチェーンブリッジとは?仕組みも解説

クロスブリッジ
2023-02-08 更新

数多くあるブロックチェーンは、それぞれ相互運用性がありません。ビットコイン(BTC)はビットコインブロックチェーン上でしか使えず、イーサリアム(ETH)はイーサリアムブロックチェーンでしか利用できず、それぞれ連携していないことが問題とされていました。この問題を解決するとして注目されているのがクロスチェーンブリッジです。

それぞれのブロックチェーンが発展、普及するにつれて、異なるブロックチェーン上にある暗号資産(仮想通貨)を移動させたいとする需要が高まるにつれて注目されるクロスチェーンブリッジについて解説します。

クロスチェーンブリッジとは

異なるブロックチェーン同士は通常、直接交換できません。それぞれに異なるルールをもち、取引を検証する際に用いられるコンセンサス・アルゴリズムも異なるためです。日本円しか持っていない日本人がアメリカで米ドルを両替しないとお金として使えないという状況を考えてもらうとわかりやすいでしょう。

通常、交換する場合は、暗号資産交換業者といった第三者を介して、取引する必要があります。暗号資産(仮想通貨)が誕生した当初はビットコインやイーサリアムといった少数の暗号資産しか利用がありませんでしたが、特に2021年頃からビットコインやイーサリアム以外の多くのブロックチェーンが注目され、それぞれのブロックチェーン間の資産の移動が課題の焦点となってきました。

そうしたことから、ブロックチェーンブリッジとも呼ばれるクロスチェーンブリッジは、ビットコインとイーサリアムなど、異なるブロックチェーンを「橋」のように結びつけ、特定のブロックチェーン上にある暗号資産を他のブロックチェーンで利用できるように開発されました。

さらに、異なるブロックチェーンで稼働できることで、複数のプラットフォームでDApps(分散型アプリケーション)を稼働できるようにもなります。クロスチェーンブリッジが普及することで、様々な開発者が協力することが容易になり、ユーザーがより使いやすいサービスが構築されることにもつながるでしょう。

特に最近では、イーサリアムでの取引需要が急増したことで送付遅延や手数料高騰といった課題を解決するために登場した、より安価で高速なブロックチェーンネットワークに接続するために用いられることが多いようです。

ある調査によると、アルトコインの強気相場が起こった2021年4月ごろからクロスチェーンブリッジを使った取引が活発化しました。主にイーサリアムと互換性のあるブロックチェーンネットワークが増加したことやイーサリアム以外のブロックチェーンによる分散型アプリや分散型金融サービスの増加による影響が大きいとされています。

クロスチェーンブリッジの種類

イーサリアム財団は、クロスチェーンブリッジをトラステッドブリッジとトラストレスブリッジの2種類に分類しています。

トラステッドブリッジとは、中央集権的に事業体や特定のコミュニティなどによってクロスチェーンブリッジが運用されているものです。運用側を信頼する必要があり、資産の管理権限はユーザー側にはありません。

トラステッドブリッジでは、ラップドトークンという技術が代表的です。ラップドトークンで人気が高いトークンであるラップドビットコイン(wBTC)は、海外の暗号資産交換業者が発行しており、イーサリアムの発行規格であるERC-20で作成されたビットコインのステーブルコインです。

ユーザーは自身が保有するビットコインを預け入れることで、イーサリアム上で使えるラップドビットコインを手にいれることができます。ビットコインの価格に連動するようにプログラムされていますが、イーサリアムブロックチェーンを使っているために、イーサリアムベースの分散型金融(DeFi)のサービスで利用できます。第三者を介して、異なるブロックチェーンのトークンを手にいれるため、暗号資産交換業者を介した取引と類似しているといえるでしょう。

一方のトラストレスブリッジは、スマートコントラクトとアルゴリズムを利用して取引を運用します。トラストテッドブリッジでは管理・運用側のセキュリティレベルに依存しますが、トラストレスブリッジとは関係なく、ブロックチェーンのセキュリティに依存します。ユーザーは自分自身で資産を管理することになります。

ちなみに、トラストレスブリッジでは、ブロックチェーンからブロックチェーンに暗号資産を移動する際に、暗号資産を移動させているわけではありません。実際には2段階に分かれた取引が行われています。

最初は元のブロックチェーンA上でスマートコントラクトを実行し、該当の暗号資産を預け入れてロックします。次に同価値の新規トークンを受け取り側のブロックチェーンBで発行。ロックした暗号資産を戻すときにはブロックチェーンBで発行した暗号資産をバーン(焼却:暗号資産を永久に流通から取り除くこと)するというプロセスによって重複して価値が生まれないようになっています。

代表的なクロスチェーンブリッジプラットフォーム

代表的なクロスチェーンブリッジプラットフォームは、イーサリアム以外にもいくつか存在します。

アバランチ

スマートコントラクトプラットフォームであるアバランチ(AVAX)もクロスチェーンブリッジ「アバランチ・ブリッジ」を採用しています。

アバランチでは設計当初からイーサリアムとの互換性が組み込まれており、イーサリアム上で構築されたアプリケーションをアバランチで動かすことができます。当初はERC-20トークンのみの対応でしたが、2022年6月からはビットコインにも対応しました。

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ポルカドット

ポルカドット(DOT)は、クロスチェーンブリッジプラットフォームとして注目を集めるブロックチェーンです。リレーチェーンとパラチェーンという独自の仕組みを取り入れることで、異なるブロックチェーン同士を繋げています。

ビットコインとのクロスチェーンブリッジも稼働しており、ビットコインをポルカドットのブロックチェーンにロックしてPolkaBTCとしてトークン化し、1PolkaBTC=1BTCで発行しています。PolkaBTCを保有することで分散型取引所(DEX)といった分散型金融(DeFi)へ参加できるようになります。

ポリゴン

ポリゴン(MATIC)はイーサリアムブロックチェーン向けのクロスチェーンブリッジプラットフォームです。イーサリアムはNFT(ノンファンジブルトークン)などの人気が高まることでネットワークが混雑します。そうした問題を解決するために、ポリゴンは イーサリアムとイーサリアムのサイドチェーン技術であるPlasma(プラズマ)、およびプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)を応用した独立チェーンによって取引を処理します。トークンだけでなく、NFTをイーサリアムからポリゴンにブリッジできるため、手数料の高騰が抑えられ、処理も早くできることで人気を集めています。

多くのブロックチェーンプロジェクトでブリッジが提供されていますが、2022年11月末時点ではイーサリアムブリッジのトータル・バリュー・ロックド(TVL)で最も20億ドルを超えてトップとなっています。TVLはプロジェクトに預けられている暗号資産の量で、金額が大きいほど注目や人気が高いと判断できます。

脆弱性でハッキングのリスクも

手数料が高騰するスケーラビリティ問題やビットコインの相互運用性が高まるクロスチェーンブリッジですが、2022年には分散型金融(DeFi)プロジェクトなどでクロスチェーンを狙ったハッキングが相次ぎました。

2022年10月に発表されたレポートによると、DeFiにおける不正流出の50%はクロスチェーンブリッジで発生しているとの調査も出ています。2年間で25億ドル以上が盗まれており、レンディングサービスの7億1800万ドル、分散型取引所の3億6200万ドルという金額と比べてもブリッジから流出した金額の大きさがわかります。

ハッカーが狙ったのはクロスチェーンブリッジの脆弱性です。クロスチェーンブリッジは構築自体と、構築後のコード監査も複雑であるとされます。さらにDeFiやNFTなどの注目が高まるにつれて、スマートコントラクトにロックされた巨額の資金もハッカーに狙われる要因となったと考えられます。

2022年2月には著名ブリッジのワームホールがハッキングを受けて、ソラナ(SOL)とイーサリアムのブリッジから12万ETHが不正流出しました。ワームホールはソラナブロックチェーンとイーサリアムのトークンを交換するために用いられているプロトコルです。ワームホールはwETHというラップドトークンを発行しており、ハッカーは、発行プロセスの脆弱性を狙ったとされています。

2022年3月にハッキングが発生したローニンブリッジでは、バリデーションノードが管理する秘密鍵へのアクセスがハッキングされ、バリデータが管理する過半数の秘密鍵が利用されて約6億ドル相当の暗号資産が流出しました。

さらに2022年10月には、海外の暗号資産交換業者バイナンスが提供するブロックチェーンBNBチェーンでのクロスチェーンブリッジがハッキングされ、1億ドル相当が不正流出しました。

以上のように、クロスチェーンブリッジはブロックチェーンエコシステムの利便性を高める一方で、ハッカーの攻撃対象として急激に注目されていることも認識しておいた方がいいでしょう。

まとめ

クロスチェーンブリッジはDeFiやNFTといった新しい技術でビットコイン以外の暗号資産(仮想通貨)が注目される中で利用が高まっています。

これまではビットコインしか保有してこなかったユーザーが、保有するビットコインを利用してイーサリアム基盤のサービスを使えるようになったり、安価な手数料で分散型金融のサービスを使えるようになったりなるなど、今後異なるブロックチェーン間の暗号資産を移動させることに大きく貢献するでしょう。

一方で、人気の高まりによって資金が集まり、ハッカーなど狙われやすくなっていることも事実です。

そのため、設計が不十分な場合にリスクが高まります。クロスチェーンブリッジを利用する前にセキュリティに関して評価する必要があるでしょう。

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