暗号資産(仮想通貨)メイカー(MKR)とは?将来性や今後を解説
メイカー(Maker)は、ダイというステーブルコインを発行できるDeFiプロジェクトの総称です。米ドルとのペッグ(連動)を目指しているダイは、1DAI≒1米ドルになるように調整されています。ユーザーはメイカープロトコル内にあるVault(スマートコントラクト)にイーサリアム(ETH)やUSDCなど担保資産となる暗号資産(仮想通貨)を預け入れることで、ステーブルコインであるダイを生成することができるユニークなプロジェクトです。
この記事では、メイカーの特徴と仕組みを解説します。他のブロックチェーンやステーブルコインと比較してどこが違うのか、何が優れているのか、その将来性についても紹介したいと思います。

メイカー(MKR)とはどんな暗号資産?

冒頭にも記載したとおり、メイカー(Maker)は、ダイというステーブルコインを発行できるDeFiプロジェクトの総称です。米ドルとペッグするダイを発行・管理し、同時にレンディングプラットフォームを提供します。ダイは1DAI≒1ドルになるように調整されます。また、メイカーはプロジェクトと同名の暗号資産(仮想通貨)メイカー(MKR)をネイティブトークンとして持ちます。メイカー(MKR)は、ダイの発行には欠かせないトークンで、プロジェクト上のガバナンストークンとしても利用されます。
メイカー(Maker)の経緯
メイカーは開発当初、MakerDAOという名称でスタートしたイーサリアムブロックチェーン上のオープンソースプロジェクトでした。MakerDAOは、2014年にデンマークの起業家ルーン・クリステンセン氏によって設立されました。
2015年より本格的に開発が始まったMakerDAOプロジェクトは、イーサリアムなどの暗号資産を担保にして米ドルにペッグされたステーブルコインを発行できる自律分散型組織を目指します。2017年12月には最初のMakerDAO公式ホワイトペーパーが発行され、イーサリアムを担保にダイを発行できるステーブルコインシステムを発表しました。
その名が示す通り、自律分散型組織DAOによって運営されるMakerDAOは、メイカー財団(Maker Foundation)という組織が開発や普及活動を行い、金融サービスをDAOによって分散的に運営することを目標に開発を進めてきました。
このMakerDAOの運営に用いられたのがガバナンストークンのメイカー(MKR)です。メイカー(MKR)保有量に応じてMakerDAOにおける意思決定の影響力を持ち、メイカープロジェクトのロードマップなどを策定できます。開発の中心的集団であるメイカー財団は、ガバナンスを維持するために多くのメイカー(MKR)を保有しながら開発をリードしてきましたが、ある程度軌道に乗ったところで、本当の意味での自律分散型組織を実現させるために、将来的にはメイカー財団を解散させることを決定していました。
2019年10月以前と2019年11月以降のダイ
ステーブルコインのダイは、2019年11月以降のダイとそれ以前のダイで大きく異なります。
2019年10月までのMakerDAOは、ETHのみを担保資産にダイを発行できました。イーサリアムをVaultと呼ばれるスマートコントラクト機能を持ったプログラムに担保として預け入れることで、それに見合ったダイが発行されるという仕組みです。
2019年11月になってMakerDAOは、イーサリアム以外にもベーシックアテンショントークン(BAT)が担保資産に加えられました。それによってMakerDAOは、複数の暗号資産を担保にダイが発行できるプラットフォームになりました。
イーサリアムのみを担保としていた際は、ダイの価格はイーサリアムの価格変動の影響を強く受けていました。しかし、複数の暗号資産を担保にできるようになったことで、特定の暗号資産の価格変動の影響を受けにくくなり、そのリスクを減らすことに成功しました。
ちなみにイーサリアムのみを担保に発行されたダイは、単一担保(Single-Collateral)のダイといい、サイ(SAI)またはSCD(Single Collateral Dai)と表記します。一方で、複数の暗号資産を担保に発行されるようになった2019年11月以降のものを正式にダイ(DAI)と呼ぶようになり、それまでのサイとは区別するようになりました。これらは複数担保(Multi-Collateral)のダイなので、MCD(Multi Collateral Dai)と表記されることもあります。
なお、MakerDAOが単一担保から複数担保に移行したことにより、サイは使用されなくなり、複数担保のダイが市場に流通する正式なダイということになりました。
こうしてメイカー財団を中心に開発を続けてきたMakerDAOは、プロジェクトの自律分散組織化を目的に、2021年5月3日にメイカー財団の運営資金をすべてMakerDAOプロコトルに返納し、2022年1月に当初の予定通り財団は解散しました。それを機に、これまでのMakerDAOはプロジェクト自身をメイカーと呼び、プロトコルをメイカープロトコルと表記しています。
そして現在、メイカープロトコルと呼ばれるダイのステーブルコインシステムは、ガバナンストークンのメイカー(MKR)保有者によって承認されたイーサリアムベースの資産を新たに担保として受け入れるようになり、さらに多くの担保によってダイを発行できるプロトコルになりました。
メイカープロトコルの仕組み

ステーブルコインは、その価値を裏付けする担保により「法定通貨担保型」「暗号資産担保型」「無担保型(アルゴリズム型)」の3タイプの種類に分けることができます。
メイカープロトコルによって発行されるステーブルコインのダイは、このうちの暗号資産担保型に該当します。
多くのステーブルコインは法定通貨担保型に該当し、中でも米ドルを担保に発行されるものがほとんどです。その理由は、法定通貨は安定した資産であるため、それを担保にすることでステーブルコインの価格も安定させることが比較的容易だからです。
その一方で、メイカープロトコルが選択した暗号資産担保型のステーブルコインは、価格変動の激しい暗号資産を担保にしているため、発行されるステーブルコインの価格を安定させるのは難しいとされてきました。しかし、メイカープロトコルは前述の通り複数の暗号資産に対応した暗号資産担保型ステーブルコインを実現させたことで、それを克服しています。
ダイは、暗号資産交換業者などから購入できます。しかしメイカーでは、ユーザーはメイカープロトコル内にあるVault(スマートコントラクト)に担保資産を預け入れることでダイを生成することもできます。
また、Vaultに預け入れた担保資産はいつでも引き出すことが可能です。ただし、引き出す際にはStability Fee(安定化手数料)という手数料が発生します。Stability Feeは、ダイの価格を安定させるために必要な仕組みで、ダイの需要と供給を鑑みて変動します。例えば、ダイの需要が急激に低下した場合はStability Feeを高く設定することで売り圧力を減らすことが可能です。
1DAI≒1米ドルのダイは、購入や生成のみならず、単に決済の支払手段として受け取ることもでき、他の暗号資産や法定通貨と同様に、誰かに送金したり、商品やサービスの支払いに使用したりできます。また、メイカープロトコルの機能を通じて、レンディングプラットフォームに貯蓄として預けることもできます。
メイカー(MKR)のガバナンストークンとしての役割
メイカープロトコルのもう一つのネイティブトークンであるメイカー(MKR)は、プラットフォーム上のDAOを介してメイカープロトコルのガバナンスなどに利用できます。
メイカー(MKR)はガバナンストークンの役割として、自律分散型組織における意思決定に用いられます。メイカー(MKR)の保有量に応じてプロジェクトに対する影響力が変動する仕組みとなっており、ガバナンスに参加したい場合はまず保有することが重要になります。
メイカー(MKR)のガバナンストークンの役割には、ガバナンス投票とエグゼクティブ投票の2種類の用途があります。ガバナンス投票は、エグゼクティブ投票が行われる前にコミュニティの意見のコンセンサスを得るために実施される投票です。また、エグゼクティブ投票は、システムの状態の変更を承認する(または承認しない)ために行われる投票です。エグゼクティブ投票の事例には、新たに受け入れられた担保タイプのリスクパラメーター(担保となるトークン)を承認するための投票などがあります。
このように、メイカー(MKR)トークンを保有するユーザーは、プロジェクトの方向性を決める重要事項を決定するためのガバナンスに参加できます。
また、メイカー(MKR)はユーティリティトークンとしても機能し、ダイの担保資産を引き出す際に発生するStability Feeの支払いに使用することも可能です。複数担保型への移行後はStability Feeはダイでも支払うことができるようになったため、あまりその需要は多くはありませんが、利用することは可能です。
メイカー(MKR)の今後や将来性は?

メイカープロトコルが目指すのは、新たな金融市場の形成でありDeFiの普及です。そのためには基軸通貨となるステーブルコインが必要だという考えのもとにダイは発行されています。
また、DeFiで使用されるステーブルコインが、法定通貨担保型ステーブルコインのような中央集権など特定の発行者が存在するものを担保にすることは、自律分散型組織としては本末転倒です。ダイはあくまでも自律分散型組織として、その担保を暗号資産(仮想通貨)にすることにこだわっています。
当初は、メイカー財団がMakerDAOの運営をリードしてきましたが、財団が解散した今は、メイカー(MKR)保有者によって全ての意思決定が行われており、すでに自律分散型組織として、まさに自律したプロトコルへと前進しました。ステーブルコインであるダイの発行・管理には大きな影響力を持つ中央集権的な主体はまったく存在しなくなりました。
ロードマップ
ステーブルコインのダイは、銀行口座を持てない非銀行利用者層向けの銀行業務の代替、すなわち金融包摂の課題解決の一翼を担うプロジェクトとしても期待されています。世界のどこに居ても変わらぬ価値の貯蓄を可能とするプロトコルの一つとして、その存在感は大きいものになりつつあります。
さらには、今後予定されている大きなアップデートとしては、ダイの担保資産に暗号資産だけでなく現実世界の資産を追加するための開発も行われています。具体的には、現実世界の不動産を担保にダイが発行できるようになる予定です。
担保資産に現実世界の資産が追加されることで、ダイの価格はより安定することが期待されています。ダイを通して、リアルとバーチャルの融合が進む可能性も高まるのではないでしょうか。
まとめ

ステーブルコインの確立は、国境や為替の影響を受けづらい国際送金手段としての役割や、金融包摂の手段としての役割、暗号資産(仮想通貨)の抱える課題を解決する役割など、そのすべての役割が期待されています。
はたしてメイカープロトコルは、ステーブルコインとして本当は安定した価値を維持し続けることができるのでしょうか。メイカープロトコルの将来、メイカー(MKR)やプロジェクトの将来性は、今後ダイが安定した価値を維持できるのかにかかっているといえるでしょう。
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