暗号資産(仮想通貨)市場に影響を与えるFOMCとは?

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FOMC
2023-02-08 更新

暗号資産(仮想通貨)市場に大きな影響を与える要素として、アメリカの金融政策が挙げられます。特に日本の金融政策会合にあたるFOMC(米連邦公開市場委員会)の動向は暗号資産関係のメディアでも度々取り上げられ、ビットコイン(BTC)の価格動向の行方を知るための手段の一つとされることがあります。

本記事では、FOMCについて、その仕組みや暗号資産市場に影響を与える要因について解説します。

FOMCとは

FOMCとは、Federal Open Market Committee(米連邦公開市場委員会)の略で、アメリカの金融政策を決定する会合であり、重要機関の一つです。アメリカには、FRS(Federal Reserve System:米連邦準備制度)という中央銀行にあたる組織があります。連邦政府が設立した組織で、この組織の構成要素としてあるのがFOMCです。

主な役割は、景況判断や政策金利について方針を発表するというものです。特に政策金利であるFFレート(Federal Funds Rate)の誘導目標水準を決定することが重要です。世界一の経済大国である米国の政策金利の動向は、世界の金融市場に影響を大きく与えるからです。

FOMCの委員は全部で12人います。FRSの理事会であるFRB(Federal Reserve Banks)の理事7人ニューヨーク連銀総裁と地区連銀総裁4人で構成され、通常は年に8回開催されます。地区連銀総裁の4人は、ニューヨーク連銀以外の11人が一年ごとに順番に交代していきます。

事前に内容は予想されるものの、予想から外れることで大きく株式や金融市場に影響を与えることもあり、市場のアナリストやトレーダーからも動向が注目されています。

米国の「中銀」、FRSとFRBについて

FOMCと同じく、FRSを構成する要素としてFRBがあります。日本ではFRBのことをアメリカの中銀と呼ぶことが多いですが、正確には中銀はFRSだといえるでしょう。FRBはFRSのうちの重要組織の一つとしての理事会です。

実際に公式ウェブサイトではFRSを「Central Bank」と表示されており、その下の重要機関としてFRBや12の連銀、FOMCが並んでいます。

FRBは7人の理事で構成されます。理事は大統領が指名し、上院の承認が必要です。FRBは12の地区連銀の運営を監督することと、消費者や各地域の声を中銀に届ける役割を持ちます。2022年10月現在、FRBトップの議長にはジェローム・パウエル氏が就いています。また、FRB理事の任期は14年で、議長と副議長の任期は4年です。

FRBはワシントンD.C.に置かれ、経済金融情勢の分析や地区連銀業務の規制監督を行います。また決済システムの安全性と効率性向上、消費者保護とコミュニティ開発に取り組むことに責任を持ちます。その中で金融政策の実施を行うのがFOMC で、FOMCが公開市場操作(オペレーション)の政策を決定するのに対して、FRBは支払い準備率の変更や地区連銀が申請する公定歩合の変更を認可します。公開市場操作とは、米国だけでなく、各国や地域の中銀が民間金融機関との間で行う有価証券の売買を行うことです。売買を通じて金融市場の資金調を増減させることで調整を行うものです。

特に新型コロナウイルスによるパンデミックが発生した2021年には、中銀が有価証券を積極的に購入するなどして市中に通貨を供給する「金融緩和」を行いました。一方で、2022年に入ってからは、アメリカは金利を引き上げることで金融引き締めをおこなっています。2022年6月のCPIは、40年来の上昇率とされる前年同月比9.1%を記録するほどインフレが起きました

FRSはFRBと12の連邦準備銀行(地区連銀)で構成されており、日本の日銀などと比べて分権的で複雑な仕組みとなっています。

ちなみに、よく報道ではFRBやFOMC、FRSなどをまとめて指す「Fed」という言葉が使われることがあります。Fedは金融政策の主体を指す言葉として使われますが、どの構成要素を指すかは状況によって異なります。

FOMCの内容

1年に8回開催されるFOMCの会合後には、声明文と議長による定例記者会見が開かれます。そして会合の3週間後には市場が注目する議事要旨が発表されます。ただ、緊急時には臨時会合や電話会議が開かれることがあります。

1、3、6、9、12月の会合では、参加者が向こう数年の年末時点の国内総生産、失業率、個人消費支出(PCE)、政策金利などの予想値を含む、「経済見通し(Summary of Economic Projection)」が発表されます。

前述したように、最も重要なFOMCの役割は、FFレート(Federal Funds Rate)の誘導目標水準を決定することによる公開市場操作です。FFレートとは、市中銀行がアメリカの中央銀行に預け入れる無利息の準備預金の過不足を調整する時に、無担保で相互に資金を貸し借りする際に適用される金利、つまり政策金利のことです。

金融緩和を行う場合は、FFレートを引き下げ(利下げ)、市場にお金を流通させます。インフレなどが進んでいる際は、FFレートを引き上げる(利上げ)ことで金融引き締めを行います。

一方で、FRSの金融政策は、「完全雇用の実現」と「物価の安定」、「長期金利」、「適度な長期金利」です。ただし、物価が安定していれば長期金利も適度に保たれるという認識のもと、「完全雇用の実現」と「物価の安定」の2点がFRSの目的とされています。これはデュアルマンデート(完全雇用の達成と物価の安定の2つ)と呼ばれます。

金融政策の決定では、雇用統計と消費者物価指数(CPI)が重要視されます。先進国の多くの国は、金融政策の目的として「物価の安定」のみのシングルマンデートですが、アメリカにはこれに加えて、雇用の最大化を掲げています。

そのため、FOMCの金融政策と同時に、アメリカの雇用統計やCPIが発表されると、数字を受けて相場が上下することがあります。

2022年9月に行われたFOMCでは、3会合連続でFFレートの0.75%の引き上げを実施しました。連続で金利を引き上げている中でもまだまだインフレを抑制できていないために、今後も金融引き締め政策を維持することが示されました。

FOMC議事要旨によると、高インフレが長引けば、物価上昇がコントロールできなくなるという意見が出たとされています。2022年9月時点に公表された政策金利の見通しでは、2023年に政策金利は4.6%で頭打ちになるとされています。

FOMCが金融市場に与える影響

FFレートが変更されると、短期金利や中長期金利、為替や株価が変化し、実体経済に影響を与えることになります。そして世界最大の金融大国であるアメリカの金利動向が世界経済にも影響を与えていきます。

例えば金利が上昇すると、金融機関は利子が高くなるために中銀からお金が借りにくくなります。そのために企業や個人にも通貨が流通しづらくなり、企業株価の下落に繋がります。

反対に金利が下がると、金融機関はお金を借りやすくなり、企業や個人へのお金も供給しやすくなります。

特に2022年のインフレ時には金利を大幅に引き上げることで引き締めをはかり、株式が軒並み下落しました。

FFレートが上昇すると、短期・中長期金利が上昇し、ドル高や外需の減少、株式が下落することで、資産効果の消費が落ち込みます。2022年のアメリカ政府はこうした効果を期待して、記録的な利上げを断行しました。

一方で、マーケットがFOMCの決定を織り込み済みであることもあり、FOMC後に金利を上げたとしても株価が大幅反発することもあります。

FOMCが暗号資産(仮想通貨)市場に与える影響

それでは、暗号資産(仮想通貨)市場に関して、FOMCの政策決定はどのように関係してくるのでしょうか。

一つは、暗号資産がリスク資産との相関性が高まっていることが注目点として挙げられます。相関性が高まると、リスク資産である株式などと同様の影響を受け、利上げによって株式が下落すると、暗号資産も同様に下落基調になります。

実際に2022年はFOMC後にリスク資産と同様の動きを見せています。DMM Bitcoinのマーケットレポート「FOMC通過後に買われたBTC(ビットコイン)、三角保ち合いブレイクなるか?」からもわかるように、2022年7月には、FOMCが市場の予想通りの利上げを決めたことと、パウエル議長が利上げペースを緩めることを示唆したことで、利上げ幅縮小を期待した買いが入りました。同様に、ビットコインも日足ベースで上昇したことがわかります。

さらに、「CPIを通過したBTC(ビットコイン) 過去の動きからは1週間は上目線!?」のレポートにあるように、過去の騰落率を参考にすると、CPI発表後のビットコインは1週間後までは同じ方向に動くことが読み取れます。

一方で、過去には暗号資産市場とリスク資産の相関性が低かった時期もあるため、必ずしもリスク資産と同様の動きになるとは限りません。

まとめ

世界最大の金融大国であるアメリカの金融政策は世界市場に大きな影響を与えます。特にリスク資産や為替といった実体経済に影響が大きいFFレートの水準を決めるFOMCの発表内容によって、暗号資産(仮想通貨)市場にも影響は波及していきます。

今後のFFレートの見通しを示したドットチャートと呼ばれるものが、FRBの公式サイトで示されています。ドットチャートはFOMCメンバーそれぞれが予想し、レートの水準を点で示したものです。毎年3、6、9、12月に公表されます。

2022年9月に発表されたドットチャートでは、2023年中は4.25〜4.50ポイントと予想するメンバーが5人、4.50〜4.75ポイントが5人、4.75〜5.00ポイントが5人と高水準で予想が固まっています。2024年の予想では高水準で推移すると予想するメンバーもいるものの、より低い金利になると予測する向きもあるようです。

今後の金利予想によって、株式といったリスク資産の状況が大きく左右される可能性があります。世界経済の動きに注目することで、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など暗号資産価格の変動に関しても注視していくのがいいでしょう。

アメリカと暗号資産の関係については「アメリカ政治と暗号資産(仮想通貨)、大統領選とどう関係する?」もご参照ください。

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