ビットコインの流通量とは?発行量との違いや価格との関係を解説
暗号資産(仮想通貨)の中でも突出して高い知名度を誇るビットコインは、時価総額(暗号資産の価格×発行数量)においても圧倒的な規模を誇っています。しかしながら、流通量に的を絞って比べてみると、必ずしもそうではありません。ここではビットコインの流通量の実態や、価格との関係などについて解説します。
ビットコインの流通量とは
流通量とは、すでに発行されて実際に市場に出回って売買されたり、投資家が保有したりしている暗号資産の数量を意味します。つまり、世の中に出回っている暗号資産の実際の数です。ビットコインの流通量は、2021年5月時点で約1450万BTCとするデータがあります。
これに対し、2021年5月時点のビットコインの発行総量(総発行数量)は、1870万BTCほどです。数値からも分かるように、「流通量=発行数量」ではないということが重要です。
この理由は、ビットコインを保管しているウォレットの秘密鍵を紛失してしまったり、保有者が死亡してしまったりしたために引き出せなくなったものがあるためです。そのため、発行されている量よりも実際に出回っている量は少ないのです。
この流通量と発行量の違いは、投資基準の一つである時価総額の計算に影響が出てくるほか、ビットコインの「クジラ」と呼ばれる大口投資家や機関投資家が、資産を大量移動させた際にどれだけ売り圧力や買い圧力がかかるのかを測る際にも影響します。そのため、流通量の把握は投資家やアナリストの間で度々議論の的になっています。
ちなみに、暗号資産全体の時価総額(暗号資産の価格×発行数量)ではダントツでトップのビットコインは、発行総量では40〜50位で推移しています。(2021年5月現在)。各暗号資産の発行総量は開発者が独自に定めています。そのため、「流通量が多いから注目の暗号資産だ」とは簡単には言えません。さらにビットコインとは異なり、発行量に上限がないものもあります。
ビットコインの流通量と価格の関係
流通量は価格にも影響を与えます。流通量が多ければ多いほど、それだけ希少性という点で魅力が薄れてしまうためです。例えばもし無限に発行が行われればインフレが起き、資産価格が暴落する恐れがあります。その点、ビットコインは2,100万BTCという上限を設けて設計されています。実際に、新型コロナウイルスでの経済対策として、米国では大量の紙幣が印刷されていますが、これによって米ドルの価値が下落し、希少性の高いビットコイン価格が上昇する相関関係があると指摘するアナリストもいます。
流通量は大小だけでなく、増加速度も価格に影響します。需要量よりも多く、早く供給されれば、これもインフレにつながります。
ビットコインは、その点を考慮した設計が成されています。マイニング(採掘)を通じて発行量が増えていく仕組みになっているものの、半減期というスキームを用いて意図的に発行スピードをコントロールしているのです。
半減期とは、約4年ごとにマイニング報酬を半減する(半額に引き下げる)という措置です。2009年にビットコインが誕生した時点で、マイニング報酬は50BTCでした。しかし、それから3度(2012年と2016年、2020年)にわたって半減期を迎えており、2021年5月時点のマイニング報酬は6.25BTCとなっています。
マイニング報酬が半額になると、発行量の伸びは鈍化します。その結果、すぐに発行総量の上限まで達してしまったり、いたずらに流通量が増えたりし、ビットコインの価値が大きく下がってしまうことを防げることになります。
今後も半減期は4年ごとに設けられており、次は2024年の予定です。マイニング報酬がビットコインの最小取引単位である1satoshi以下になるまで半減期は続けられ、2140年頃には総発行量の上限である2,100万BTCに到達する見通しです。
このようにビットコインは、半減期を迎えるたびに新規発行と流通量の拡大が抑制されます。もともと発行総量に上限があるうえ、このようにして希少性が確保されることから、半減期に差しかかるとビットコインの価値がさらに上昇する可能性が考えられます。
つまり、市場における価値(暗号資産の価格)は、足元の流通量やその今後の見通しと密接な関係にあると言えるわけです。
「消失した」ビットコイン
デジタル上の資産であるビットコインに何らかの理由でアクセスできなくなって「消失」してしまったため、前述したように、発行総量と流通量は異なります。この理由にはいくつかありますが、大きくは次のようなものが考えられます。
- 秘密鍵やパスワードの紛失
- ビットコイン保有者の突然の死亡
- ハードウェアの故障や紛失
こうしたものは特にビットコインが現在ほどの価値を持っていなかった黎明期に多いとされます。2021年1月にも、黎明期に入手し、長らく放置していたビットコインを久しぶりに引き出そうとしたところパスワードがわからず、250億円相当のビットコインにアクセスできないという人がアメリカで話題になりました。
ただ、こうした「消失」には、長期保有者やビットコインを考案したサトシ・ナカモトによって保有し続けられているビットコインも計算されています。この長期保有者とは、もっぱら2009〜2010年の黎明期に発行されたビットコインを保有し続けている人たちを意味し、単に売却していないだけであって、手元に秘密鍵が保管されている(=取引可能)可能性も考えられます。また、サトシ・ナカモトの保有によるものについても、すべて「消失」しているとは限りません。
2010年までビットコインは一般的にほとんど知られておらず、サトシ・ナカモト自らが一人でマイニングを手がけてきました。その際に得たのが104万BTCなのですが、そのまま保有し続けていて「消失」していないのかもしれません。そもそも、彼が実在しているのかもよくわかっておらず、この保有分については完全に闇の中にあります。
流通量からみるビットコイン需要の変化
流通量をビットコインの保有量別でみることで、ビットコインに対する投資家の変化を知ることができます。海外の暗号資産分析企業グラスノードのデータによると、10BTC以下の小規模保有者は2017年から2020年にかけて保有量が130%増加した一方で、100BTC以上の大口保有者は3%減少、1000BTC以上では7%も減少しました。
これは、ビットコインを持つ人が一部の富裕層に偏るのではなく、幅広い層に広がっていることを示しています。
一部の人が流通量の大部分を握っていれば、市場も彼らの動きによって簡単に変動してしまいます。しかし、幅広い人々が流通しているビットコインを保有しているとなれば、投資的な観点から、より安心した取引につながることが期待できそうです。
まとめ
ビットコインは、暗号資産の中で最もの時価総額が大きいものですが、世間に出回っている数を示す流通量ではベスト10にも入っていません。暗号資産ごとに1単位当たりの価格が異なることから、必ずしも流通量の規模がその価値の裏付けとなるとは限りません。
一方、流通量に着目することで、ビットコインの需要の変化を捉えることにつながります。流通量では「消失」という現象が発生することにも留意しておきましょう。
流通量が多いビットコインのこれまでの歴史について興味を持たれた方は「ビットコインの最高値は?上昇のきっかけなど過去の歴史を紹介」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
関連記事
-
暗号資産(仮想通貨)とエネルギー問題、ビットコイン価格への影響は?
暗号資産(仮想通貨)は、発行する際に、エネルギー、特に電力を大量に消費することが度々問題になっています。この記事ではビットコインに関するエネルギー問題について価格への影響とともに解説します。
-
主要国の政治経済が暗号資産(仮想通貨)に及ぼす影響
ブロックチェーンに参加している人たちが集団で管理している非中央集権型の暗号資産(仮想通貨)は、特定の国もしくはグローバルな政治経済の影響をあまり受けないような印象を抱くかもしれません。しかし、実際のところはどうなのでしょうか?本記事では、過去を振り返りながら、政治経済と暗号資産との関係性について探ってみます。
-
暗号資産(仮想通貨)の詐欺に注意!その手口を見抜くには?
2016年以降に「国民生活センター」へ報告されている暗号資産(仮想通貨)関連の詐欺やトラブルの事例を踏まえ、詐欺に遭わないための基礎知識や対策を紹介していきます。
-
暗号資産(仮想通貨)業界でも年々増加するロビー活動とは?米大統領戦で活発化
アメリカでは暗号資産(仮想通貨)に関するロビー活動(ロビイング)が活発に行われています。2023年から2024年にかけては、米大統領選前に報道も多くなりました。この記事では、ロビー活動とはどのようなものなのか、暗号資産業界でのロビー活動の動向も含めて解説します。
-
暗号資産(仮想通貨)取引に関わるリスク、サイバー攻撃について解説
暗号資産(仮想通貨)取引には様々なリスクが存在します。特に予期せぬ大規模なサイバー攻撃は大きなリスクになっています。この記事では、サイバー攻撃について詳しく解説します。
-
暗号資産(仮想通貨)で利益が出た場合の税金対策!納税額はどのように決まるのか
暗号資産(仮想通貨)を通じて得る利益に対して、どのような仕組みで税が課せられるのかをしっかり理解しておくことが重要です。今回は、ビットコインおよび仮想通貨の取引において税金が発生するタイミングや税額の計算方法、そして節税対策などについて解説します。
-
ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の確定申告方法を解説
ビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)を売買して利益が発生した場合には、翌年の一定期間内に自分で利益額を計算して確定申告し、納税する必要があります。ここでは、2023年10月現在の税制で仮想通貨の取引において、利益が発生した際に確定申告する所得の扱いや違反した時の罰則についてご紹介します。
-
19歳でイーサリアムを開発したヴィタリック・ブテリンとは
2023年9月現在で時価総額2位であるイーサリアムは発表当時、弱冠19歳だったヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が開発を主導しました。この記事では、今後のイーサリアムの行方を占うためにも最重要人物であるヴィタリック・ブテリン氏について解説します。
今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン