クリプトウィンター(暗号資産冬の時代)とは?弱気相場の歴史を解説
暗号資産(仮想通貨)市場が低調な時を表す言葉で「クリプトウィンター」または「暗号資産冬の時代(仮想通貨冬の時代)」というものがあります。特にビットコイン(BTC)の値動きを見てみると、ある一定の周期で、この「クリプトウィンター」という言葉が使われていることが分かります。
この記事では、「クリプトウィンター」について解説します。低調な相場の時の投資家動向を踏まえることで、今後の投資戦略にも役立つでしょう。
クリプトウィンター(暗号資産冬の時代)とは
実際に「クリプトウィンター(暗号資産冬の時代)」という言葉に明確な定義がある訳ではありませんが、主にビットコインの価格が大きく下落し、低迷が長引き回復しない時期に投資家や業界関係者の間で使われます。
クリプトウィンターではビットコインに引きずられてアルトコインも軒並み下落します。
これまでの傾向では、ビットコインで4年に一度行われる「半減期」のサイクルに合わせて起きています。マイニング(採掘)報酬が半分になる半減期サイクル中には、それまでの最高値を更新した後に価格が大きく下落しています。最高値を更新した後の安値圏を推移する動きはその他の価格低迷期よりも長引く傾向があり、こうした時期の弱気相場のことを「クリプトウィンター」といえるでしょう。特に2018年には低調な相場が1年ほど続きました。歴史的にクリプトウィンターの底値は史上最高値から75〜85%ほど下落しています。
実際に、これまでに2018年、2022年の価格低迷時に投資家や業界関係者から「クリプトウィンター」だとの発言がありました。
「冬の時代」が起きる要因
クリプトウィンターは半減期ごとに起きていますが、いくつかの複合要因が引き金になっていることがあります。
一つが、世界経済に大きな影響を与えるアメリカ政府や中国政府の政策といったマクロ要因です。次には、大規模なハッキングや時価総額の高い暗号資産プロジェクトが崩壊するといったことが挙げられます。
2018年から続いたクリプトウィンターでは、大手暗号資産交換業者でのハッキングや中国人民銀行の副総裁が暗号資産関連サービスに厳しい態度を示しました。
2022年のクリプトウィンターでは、アメリカ政府の金融引き締めによって株価を押し下げ、暗号資産価格にも影響が出ました。さらに一時は時価総額4兆円にもなったアルゴリズム型ステーブルコインのテラUSD(現テラクラシックUSD)が急落し、ドルとの価値連動が崩壊したことで、市場全体に売りが広がりアメリカ政府の政策と相まって相場低迷が起きました。
具体的に各年代でどのような理由で市場が冷え込んだのかをみてみましょう。
2014〜2015年の「冬の時代」
2012年11月に初めて半減期を迎えたこの時代は、まだ市場参入者が少なかったこともあったのか「クリプトウィンター」という用語は言及されませんでした。ただ、半減期後の下落幅や長期の弱気相場ということを考えると、この時期も「クリプトウィンター」といえるでしょう。実際に、著名暗号資産(仮想通貨)アナリストの中には、過去の相場を振り返るツイッターなどで、この時期をクリプトウィンターだと発信している人もいます。
下落のきっかけは、2013年12月にあった中国の金融機関におけるビットコイン取引禁止令や、2014年2月に当時世界最大の暗号資産交換業者であったマウントゴックス(Mt.Gox)が経営破綻したことがきっかけでした。2014年1月ごろには1BTC=10万円ほどで推移していましたが、2014年2月には、1BTC=1万円台まで下がり、同年9月ごろまでは2万円台を低迷しました。
その後は、イーサリアム(ETH)や暗号資産交換業者、ウォレットプロバイダーの発展によって徐々に相場が回復し、2016年7月の半減期を迎えました。
(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/btc-jpy)
2018〜2019年の「冬の時代」
2016年7月に2回目の半減期を過ぎたこのサイクルでは「暗号資産(仮想通貨)バブル」と表現されるほど、急速にビットコイン価格が上昇し、その後、暴落したことで知られています。
当時は、2017年12月に記録した1BTC=220万円ほどから2018年12月には38万円ほどへと大きく下落しました。
メディアではビットコインの「死亡記事」が増加するなど、バブルが弾けたことや、各社が暗号資産広告サービスを停止するなどして、暗号資産に関する信用が低下しました。このサイクルでは2020年3月に新型コロナウイルスに起因した株式など、暗号資産を含む全資産が下落した「コロナショック」も起きました。
しかし、2020年5月に3回目の半減期を迎えたことや分散型金融(DeFi)がブームとなった「DeFiの夏」現象、暗号資産関連企業以外が参入したことなどによって、相場は同年12月にかけて急速に上昇しました。
(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/btc-jpy)
2022年の「冬の時代」
2022年は新型コロナウイルスの経済対策として行われたアメリカの量的緩和の縮小を受けて、下落基調で始まりました。
2021年11月に約760万円付近で史上最高値をつけたビットコインが、2022年6月には250万円付近まで下落。それまで、米ドル建で、前半減期サイクルで記録した最高値がサポートレベルとして機能していたのが、ビットコインとイーサリアムで前サイクルの最高値を割り込むという史上初めての事態が発生しました。これによって、市場参加者の大部分が含み損となり、特に2021年〜2022年に参入した投資家は全て含み損となりました。こうしたことから、米国の資産運用企業などは、このサイクルのクリプトウィンターは2022年6月から始まったと指摘しています。
クリプトウィンターの根本要因としては、米国の政策金利引き上げ、長期金利の大幅上昇でしょう。過去には日本市場の影響が大きかった暗号資産(仮想通貨)相場ですが、ベンチャーキャピタルや機関投資家が北米を中心に拡大したことで、アメリカの動きが大きく影響しました。
さらに、前述したテラUSDが2022年5月に崩壊したことが引き金となりビットコインは急落しました。7月には相場低迷に伴った暗号資産レンディング企業セルシウス・ネットワークが倒産。相場低迷で損失を被り、追加担保の差し入れや融資元への返済ができなくなったことで、暗号資産ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタルが破綻しました。さらにスリー・アローズ・キャピタルに融資していた、ボイジャーデジタルも倒産するなど連鎖的に負の影響が生じました。
暗号資産市場全体の低迷を受けて、海外の暗号資産交換業者が次々に人員を削減するなど、業界全体が冷え込みました。
(https://bitcoin.dmm.com/trade_chart_rate_list/btc-jpy)
「冬の時代」の投資動向
クリプトウィンターの時には投資家はどのような動きをしているのでしょうか。過去の動向をみると、一つには相場下落を買いのチャンスだとみて、ビットコインを買い増ししていることが挙げられます。
調査会社ディアによると、クリプトウィンターの最中にあった2018年8月は1000〜1万BTCを保有する大口のビットコインアドレスが全体流通量の20%ほどでしたが、9ヶ月後の2019年5月には26%を占めるまで増加しました。特に2018年12月に記録した底値の際に、このビットコインアドレスの急増がありました。
2022年のクリプトウィンターでは1BTCを保有する小口投資家が増加しました。2022年8月1日には89万1346アドレスと1BTC以上を持つウォレット数が過去最高を記録しました。価格低迷期を買いのチャンスだと捉え、長期目線で投資をしていることが挙げられます。
一方で、2022年のクリプトウィンターでは10BTC以上、100BTC以上、1000BTC以上を保有する大口のウォレット数は減少傾向にあります。ビットコインに限らず、金や株価などが軒並み下落するなかで、短期的に利回りを提供する短期国債などに投資家が流れている状況と関係しているかもしれません。以前よりも暗号資産市場が成長したために、取引を頻繁に行う投資家の動きと捉えられるでしょう。
もう一つ重要なのが、200週移動平均線(WMA)がサポートとなっていることです。ビットコインは歴史的にクリプトウィンターの際にも200 WMAがサポートとして反発しました。投資家は戦略として、200WMAを重要ラインとみているようです。
ただし、買いのチャンスやサポートが機能するといっても、下落がどこまで続くかは実際のところ分かりません。さらなる下落が起きることを想定することも重要です。200WMAも2020年3月のコロナショックの際には最大で28%ほど割り込んだことがあります。
まとめ
2022年8月末時点では、今回のクリプトウィンターがいつ終わるかは分かりません。暗号資産(仮想通貨)に限らず、世界全体の景気に影響を与えているアメリカの金融引き締めや、2024年に予定されるビットコイン半減期までは回復しないという見方もあります。
ただし、暗号資産相場は、これまでの傾向を見ると、クリプトウィンターを乗り越えて成長してきています。戦争や新型コロナウイルスといった、予期できない問題など多くの要因があるために、一概に同じ傾向が繰り返されるとは言えませんが、過去の下落要因を知ることで投資にも活かすことができるでしょう。
これまでは「冬の時代」を乗り越えるために新しい技術が生まれてきました。2021年から2022年に人気が高まったノンファンジブルトークン(NFT)は前回のクリプトウィンターの時期に生まれたものです。今後もアメリカのビットコイン現物ETF承認への期待やメタバースといった新しいトレンドも出てきています。クリプトウィンターを抜けて春を迎えるにはこうした新しい要因も必要でしょう。
ビットコインに関する価格急落について詳しくお知りになりたい方は「ビットコイン暴落の歴史とその理由は?今後の価格変動への対応」をご参照ください。
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