イーサリアムキラーとは?代表的な暗号資産(仮想通貨)を紹介

イーサリアムキラー
2022-10-26 更新

「ワールドコンピュータ」とも称されるイーサリアムは、厳密にはブロックチェーンの名称です。イーサリアム上で発行される暗号資産(仮想通貨)はイーサ(ETH)と呼ばれています。全暗号資産の中でもイーサは、ビットコイン(BTC)に次いで第2位の時価総額を誇る人気の暗号資産です(2022年8月現在)。

しかし、イーサリアムは人気が上昇するにつれて取引量が大幅に増えたことにより、ブロックチェーンの処理能力が限られていることに起因する障害が発生するようになりました。イーサリアムは手数料の高騰や取引処理の遅延などに苦しめられるようになり、世の中ではイーサリアムのこうした問題の解決を目標とした新たなブロックチェーンが開発されるようになりました。このようなイーサリアムに対抗できる新たなブロックチェーンを、世間では「イーサリアムキラー」と呼ぶようになりました。

本記事では、イーサリアムの対抗馬として誕生したイーサリアムキラーについてわかりやすく紹介していきます。

イーサリアムの対抗馬、イーサリアムキラーとは?

イーサリアムキラーとは、イーサリアムと比較して、処理能力が高い、取引手数料(ガス代)が安い、環境への配慮として電力消費が少ないなどの特徴を掲げる、イーサリアムの対抗馬として開発された競合ブロックチェーンの呼称です。ポルカドット(DOT)やカルダノ(ADA)など、すでにイーサリアムのライバルと称される複数のイーサリアムキラーブロックチェーンが誕生しています。

イーサリアムキラーは、イーサリアムと同様にスマートコントラクトによる分散型アプリケーション(DApps)を開発できるオープンソースプラットフォームです。どのイーサリアムキラーも、イーサリアムが課題として抱えているスケーラビリティ問題や高騰するガス代の問題等を、各々のアイデアで改善しています。

ライバル誕生の経緯

イーサリアムは、2013年にヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏がブロックチェーン上でスマートフォンのようにアプリケーションを動かす仕組みを作りたいという発想から、プログラムによってあらかじめ決められた処理を自動執行できるスマートコントラクトという仕組みを実装しました。

スマートコントラクトは管理者を必要とせず、プログラムによる取引を自動実行し、ブロックチェーン上にその履歴を記録できます。取引に関する契約内容や実行条件をあらかじめプログラミング言語を使って設定し、実行することが可能な機能です。

イーサリアムは、スマートコントラクトを使うことでブロックチェーン上にDAppsと呼ばれるアプリケーションを構築することができるようになりました。

ブロックチェーン上で動作するDAppsは、中央サーバーを必要とせず、分散管理によって常に稼働し続けることができます。また、履歴がブロックチェーンに記録されるため、取引の透明性を担保できます。イーサリアムは、そうした特徴が瞬く間に話題となり、ブロックチェーン上にDeFi(分散型金融)やブロックチェーンゲームなど様々なアプリが開発されるようになりました。

しかし、イーサリアムやビットコインなど初期の頃に開発されたブロックチェーンは、1秒あたりに処理できる取引の数に限りがあり、取引が集中することによって即時処理ができない状況に陥るスケーラビリティ問題を抱えています。DApps人気によりイーサリアムは、全体的に取引処理に遅延が生じるようになりました。

また、コンセンサスアルゴリズムにプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)を採用していた初期のイーサリアムは、取引を処理する際にマイナー(採掘者)に手数料を支払う必要がありました。イーサリアムのPoWでは手数料は固定されておらず、オークション形式によってマイナーがどの取引を最初に処理するかを手数料の金額から選ぶことができます。そのため、手数料を高く支払った利用者の取引ほどマイナーが処理するリストの上位に組み込まれることになり、より早く処理してもらうことができる仕組みになっていました。

こうした仕組みからイーサリアムの利用者の間で、より早く自分の取引を処理してもらおうという競争原理が働き、取引量が増えるほど手数料が高騰しやすくなる傾向がありました。

様々なDAppsが開発されるようになったイーサリアムは、年々その人気が高まり取引量も増え続けたことから、かなりの頻度で手数料が高騰し、頻繁にイーサリアム全体の取引処理に遅延が発生するなど、しばしばDAppsの動作にも影響を与えるほど大きな問題に発展するようになってしまいました。

そうした経緯から、特にDApps開発者やサービス提供者は、イーサリアムを使用し続けることに一抹の不安を抱くようになりました。そこで登場したのが、こうしたイーサリアムの抱える課題を解決することを目的としたイーサリアムキラーと呼ばれるブロックチェーン開発プロジェクトの数々です。これらのプロジェクトは、イーサリアムの課題を解決しながら、イーサリアムとの互換性を保つように設計され開発されたことから、イーサリアムに取って代わる可能性があるブロックチェーンとして、やがてイーサリアムキラーと呼ばれるようになりました。

しかし、本家のイーサリアムもそうした状況に甘んじてイーサリアムキラーの登場を傍観していたわけではありません。イーサリアムもまた自身の課題を解決するために、コンセンサスアルゴリズムをPoWからプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)へと移行したり、データベースを分割することで負荷を分散させるシャーディングという技術を開発したりするなど、従来の実行レイヤーと新たな技術を実装したコンセンサスレイヤーを統合した新生イーサリアムへと段階的にアップグレードを継続してきました。

代表的なイーサリアムキラー

イーサリアムキラーは、イーサリアムと比較して取引処理が速いほか、手数料が安いもしくは無料というのが特徴です。また、PoWとは異なるコンセンサスアルゴリズムを採用していることから、マイニングによる膨大な計算を必要とせず電力消費量も少なく環境に優しいともいわれています。

ここでは代表的なイーサリアムキラーについて、その特徴をイーサリアムや他のイーサリアムキラーと比較しながら解説していきます。

カルダノ(ADA)

カルダノはオープンソースのブロックチェーンプラットフォームプロジェクトの総称です。ネイティブトークンにエイダコイン(ADA)という暗号資産(仮想通貨)を持つカルダノは、コンセンサスアルゴリズムに数学を用いた学術研究を基盤に構築されたウロボロスという独自開発のPoSを採用しています。

カルダノはスマートコントラクトを備え、DAppsを開発できます。カルダノのスマートコントラクトは、実行後に修正が難しいイーサリアムのものとは異なる、検証可能な独自スマートコントラクトであるプルータス(Plutus)を採用しています。

イーサリアムなどのスマートコントラクトは、決済と計算を一つの台帳で行っているため、一度実行すると実行後はプログラムの修正が難しくなります。そのため、プログラム上にバグがあると大変なことになりますが、プルータスは実行後もプログラムの修正が可能です。

また、カルダノはマルチアセット台帳という機能を持ち、ネイティブトークンのエイダコインと同等の独自トークンを発行できます。これらは、単純な送受信などにおいてはスマートコントラクトが不要であるため、低コスト・高セキュリティなトークンの発行が可能です。NFT(ノンファンジブルトークン)の発行も可能です。

カルダノは、DAppsによる金融・医療保険・教育・流通・農業など、様々な分野での活用が期待されています。

ソラナ(SOL)

ソラナは、1秒間に5万トランザクションを処理できる高いスケーリング性能を持つパブリックブロックチェーンです。ネイティブトークンに暗号資産SOLを持ち、ネットワークのセキュリティ性能を高めるステーキングの仕組みを実装しています。

ソラナは、独自のコンセンサスアルゴリズムであるプルーフ・オブ・ヒストリー(PoH)を採用することで、セカンドレイヤーに頼ることなく高いスケーリング性能を実現し、全てのトランザクションをオンチェーンで処理できます。ソラナのブロックチェーンでは、0.4秒に1回の間隔でブロックが生成されています。また、手数料が安価なのも大きな特徴のひとつです。ソラナの公式サイトによると、1回の平均取引手数料は0.00025ドル程度となっています。

こうしたソラナの超高速処理性能、安価な手数料は、瞬く間に人気となり、USDCを発行するサークルや分散型オラクルのチェインリンクといった有名プロジェクトとのパートナーシップも結ばれ、エコシステムを拡大し、メインネットのローンチ後わずか1年程度で100を超えるプロジェクトがソラナに対応しています。

またソラナはCertus Oneと提携しWormholeというイーサリアムとのブリッジ機能を開発するなど、イーサリアム上に展開されているプロジェクトが容易にソラナに対応することができるようになっています。ソラナは、イーサリアムを始めとする他のチェーンとの相互運用性(インターオペラビリティ)も高まってきています。

ポルカドット(DOT)

ポルカドットは、ビットコインやイーサリアムなど異なるブロックチェーン間の相互運用が可能な点が最大の特徴であるインターオペラビリティの仕組みを持つ、異なるブロックチェーン間を接続するプロジェクトであり、併せてセキュリティ共有、スケーラビリティの向上を目指すプロトコルです。ユーザー自身がデータをコントロールできるような分散型のWeb3.0の世界を実現することを目的として開発されています。

ポルカドットは、リレーチェーンとパラチェーンという独自の仕組みにより相互運用を可能にしています。ネットワークを管理するためにネイティブトークンにDOTという暗号資産を持ち、DOT保有者にはガバナンス、ステーキング、ボンディングの3種類の役割が与えられます。

ポルカドットは、コンセンサスアルゴリズムにノミネーテッド・プルーフ・オブ・ステーク(NPoS)を採用しています。PoSの変化形のNPoSは、PoSの資産を多く持つバリデーターがブロックを承認しやすくなる中央集権化の課題を解決するために、DOTを保有するバリデーターをノミネート(指名)することで、中央集権化を防ぎます。

また、ポルカドットはブロックチェーンを開発するためのフレームワーク「サブストレート(Substrate)」を提供します。サブストレートを利用することで、開発者は自身のユースケースに最適な独自ブロックチェーンを低コストで開発することが可能です。サブストレートで開発されたブロックチェーンもまた、ポルカドットと互換性があるため、技術的にも簡単に相互接続できます。

アバランチ(AVAX)

アバランチは、DeFiの開発を目指したDApps開発プラットフォームです。ネイティブトークンに暗号資産AVAXを持ちます。

アバランチは、秒間5000トランザクションを超える処理をすることに成功しており、イーサリアムに勝るスケーリング性能を実現しています。その性能は、アバランチコンセンサスと呼ばれる仕組みにより、ノードが承認するトランザクションを一部のノードに限定するため、すべてのノードが同一のデータを常に保有する必要がなく効率よくトランザクション処理を行うことができます。それにより、複数のトランザクションの承認を並列処理できるようになり、1秒間に処理できるトランザクション数が飛躍的に向上しました。

アバランチはEVM(イーサリアム仮想マシン)との互換性があるため、イーサリアム上のプラットフォームをそのままアバランチで利用できる、相互運用性を確保しています。

さらに、独自のネットワークとしてサブネットを構成することができます。サブネットでは複数のノードによるネットワークを構成し、ネットワーク内に新たにブロックチェーンを生成できます。サブネットによるブロックチェーンは、作成者によってプライベート型や許可したノード同士で管理するなど、自由にブロックチェーンを設定できます。

ちなみにアバランチの開発を主導するAva Labsは、ビットコインを発明したサトシ・ナカモトの影響を受け発足されたTeam Rocketという匿名グループが前身です。Team Rocketというネーミングは、世界的に人気のゲーム・アニメであるポケットモンスターの主人公サトシのライバルであるロケット団に由来するというエピソードを持ちます。

ポリゴン(MATIC)

ポリゴンは、イーサリアム互換のブロックチェーンネットワークを構築・接続するためのプロトコルおよびフレームワークです。セカンドレイヤー技術により、スケーラブルなソリューションを提供し、イーサリアムに接続することでマルチチェーンイーサリアムエコシステムをサポートし、イーサリアムやその他のブロックチェーンとの相互運用を可能にします。

ポリゴンは、サイドチェーンでありながらも独自のコンセンサスアルゴリズムとネイティブトークンの暗号資産MATICを持つユニークなプロジェクトです。そのため機能的にはレイヤー1ブロックチェーンに近い使い方もできます。

技術的には、イーサリアムとイーサリアムのサイドチェーン技術Plasma(プラズマ)、およびコンセンサスアルゴリズムにPoSを応用した独立チェーンです。ポリゴンを使うことで、イーサリアムの高いセキュリティを犠牲にすることなく、ポリゴンの高速トランザクション処理と安い手数料の恩恵を受けることができるのが大きな特徴のひとつです。

イーサリアムとの互換性を持つポリゴンは、イーサリアムブロックチェーン上で開発したサービスをそのまま使用することも可能です。またポリゴンのブリッジ機能を使用することで、異なるブロックチェーンを相互に接続することを可能にし、レイヤー1とセカンドレイヤーの橋渡しとしての役割も担っています。

テゾス(XTZ)

テゾスは、イーサリアムキラーを目標として開発されたというよりは、ビットコインやイーサリアムを含めた暗号資産の持つ大きな問題であるスケーラビリティ問題やマイニングの環境問題の解決を目指し開発されたブロックチェーンです。しかし、イーサリアムと同様にDApps開発プラットフォームでもあるため、イーサリアムキラーと呼ばれることが多々あります。

テゾスは独自スマートコントラクトを実装したDApps開発プラットフォームです。ネイティブトークンに暗号資産XTZを持ちます。コンセンサスアルゴリズムには、PoSをベースとした独自のコンセンサスアルゴリズムであるリキッド・プルーフ・オブ・ステーク(LPoS)を採用しています。

LPoSは、XTZの保有量や保有期間によってブロックの承認作業を行う点ではPoSと同じですが、LPoSではXTZの保有数が少ないユーザーでも他のユーザーに自身のXTZを預けることで、間接的にブロックの承認作業に参加することができます。

テゾスが実装する独自スマートコントラクトは、実行後に修正が難しいスマートコントラクトの処理内容に誤りがないかを検証するOCaml(オーキャメル)を搭載しており、バグやエラーを事前にはじくことができる仕組みを搭載しています。これにより開発の容易さやユーザーの利便性を向上させています。

イーサリアムキラーとイーサリアムの勝負の行方は

2022年8月現在、自称他称を含め十数種のイーサリアムキラーが誕生しています。

現時点においてはイーサリアムの時価総額を超えるイーサリアムキラーの登場はありませんが、それでもDAppsプロジェクトの中には、ブロックチェーンネットワークをイーサリアムからイーサリアムキラーに移行したというものもあれば、並行して両ブロックチェーンを利用しているというものも登場しています。

イーサリアムキラーはイーサリアムとの互換性も高く、大幅な改修をすることなくイーサリアムキラーへと移行することが可能であることから、特にブロックチェーンゲームなどのように頻繁に取引が発生するアプリでは手数料が大きな問題となるため、早々にイーサリアムキラーに移行したプロジェクトも少なくありません。

一方で、前述の通り、イーサリアムもまたコンセンサスレイヤーを統合したイーサリアムによって課題の解決に向けて準備してきたことから、それを待って運用し続けてきたDAppsプロジェクトも多々あります。

また、代表的なイーサリアムキラーの仕様を見ていると、それぞれにスケーラビリティの問題や手数料高騰の問題を解決していますが、それよりもみな相互運用性に力を入れていることがわかるのではないでしょうか。イーサリアムの優位性はDeFiの預かり資産の合計金額にあるといえるでしょう。これまでのイーサリアムが築き上げてきた資産や提供されているDAppsの数々は、イーサリアムキラーにとっても無視できない存在であることは間違いありません。

いうなれば、ここからはどのブロックチェーンが伸びて行くのかは、それぞれのブロックチェーン上で開発されるDeFi、GameFi等のキラーアプリの大ヒットがその鍵を握っているともいえます。しかし、イーサリアムやイーサリアムキラーは、互いに潰し合う存在ではなく、互いに接続し合い、その利便性や暗号資産の流動性を高めていくほうが重要であるという道を選択したのではないでしょうか。少なくとも代表的なイーサリアムキラーの中には、インターオペラビリティを掲げていないブロックチェーンは皆無です。

イーサリアムの大きな問題は、PoSに移行する時期はいつになるのかということもありました。イーサリアムの大型アップデートが延期に次ぐ延期で、その実現性が見えていなかったことから、様々なイーサリアムキラーが誕生しましたが、それによってイーサリアムのみならず暗号資産が抱えてきたスケーラビリティ問題や手数料高騰問題が一挙に解決でき、またイーサリアムとの共存自体も考えられるようになってきました。そこに本家のイーサリアムもまた問題の解決に至ったということは、その共存共栄の動きはなおさら強くなるのではないでしょうか。

まとめ

これからも新しいブロックチェーンは誕生し、まだまだスケーラビリティの性能の向上や、より手数料が安くて使いやすいものも登場するでしょう。しかし、そのたびに新しいブロックチェーンは、ネイティブトークンの流動性を高めていかなければなりません。イーサリアムキラーが誕生すればするほど、後発のブロックチェーンはその作業は大変でしょう。

ユーザーからしても、DAppsを便利に使うためには手に入れやすい暗号資産(仮想通貨)のほうが利便性が高いはずですから、暗号資産の入手のしやすさもまたサービスを選択する判断材料のひとついえるのではないでしょうか。そういう意味でもイーサリアムキラーにとって、よりメジャーなブロックチェーンとの相互運用性は重要な要素になりそうです。DAppsのサービスを利用する際には、そうした部分もチェックしてみるといいかもしれません。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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