スポーツファントークンのチリーズ(Chiliz/CHZ)とは?将来性についても解説
チリーズ(Chiliz:CHZ)は「ファントークン」を発行する多国籍企業であり、同社が提供するファントークンプラットフォーム上で取引される暗号資産(仮想通貨)です。サッカーやバスケットボール、アメリカンフットボールなどの海外著名チームが、ファントークンを介したファンとの新しい取り組みとして次々とチリーズに関わっています。
ブロックチェーンを使ったファントークンを導入するのは、従来のファンサービスとはどのように異なるのでしょうか。この記事ではチリーズの特徴や今後の将来性について解説します。

チリーズとは

チリーズは、スポーツやエンターテイメント団体に対して、ブロックチェーンをベースとしたファンエンゲージメントプラットフォーム「Socios.com」のほか、スポーツクラブの公式ファントークンを取引できる暗号資産取引所「Chiliz Exchange」を提供しています。Socios.comはチリーズのブロックチェーン上に構築され、ユーザーはチリーズの独自暗号資産(仮想通貨)であるCHZを使ってファントークンを入手できます。
現在はF Cバルセロナやユベントス、パリ・サンジェルマン、ASローマといった世界的に有名なスポーツクラブの公式ファントークンを購入できます。ファントークンを保有することで、トークン自体の取引が可能なだけでなく、スポーツチームの意思決定に関われるようになることが、これまでのファンとチームとの関係の大きな違いです。
スポーツやエンターテイメント分野に暗号資産を取り入れることで、スポーツクラブや選手、ファンの交流を活発化すると同時に、スポーツクラブの新たな収益源になると期待されています。
チリーズの仕組み

チリーズで重要なのが、ファントークンを軸にした経済圏です。
ファントークンとは、各スポーツクラブが発行する暗号資産(仮想通貨)です。ファントークンはSocios.com上で入手できるほか、Chiliz Exchangeで取引できます。
ファントークンを保有することで、チームの限定グッズなどを手に入れられるほかに、各チームが定めた投票イベント、例えばユニフォームデザインを決める投票などに参加できます。1トークンだけでも投票権はありますが、枚数が多いほど大きな影響力を持つことができます。ファンを中心としたクラブチームの意思決定を、ファントークンがサポートする仕組みが世界中のクラブで採用しています。
従来のファンクラブの会費とは異なり、期限の定めなく保有できることやファントークン自体が売買可能で、価格も変動することなどがファントークンの特徴です。
サッカーだけでなく、NBAやNFL、NHL、格闘技やレーシング、eスポーツなど幅広いジャンルで導入されています。クラブ側はファントークンを販売することで、新たな収益源にできる可能性があるでしょう。
Chiliz Exchangeで取引できるファントークンは全てCHZとペアになっているため、ファントークンを購入するにはCHZが必要です。
CHZやファントークンを入手するためには、「トークンハント」というサービスもあります。トークンハントはSocios.com内の機能で、スマートフォンの位置情報システムを使ってCHZやファントークンを無料で手に入れることができます。起動すると地図が表示され、特定の場所に近づくとトークンが入手できる仕組みになっています。入手したトークンはSocios.com内のウォレットに保管されます。
Socios.comのアプリでは、ファントークンを入手するだけでなく、お気に入りのチームを登録したり、試合スケジュールを確認したりできます。そして試合結果を予想することでポイントを獲得できます。
ファントークンの投票は全て、「プルーフ・オブ・オーソリティ(Proof of Authority:PoA)」のサイドチェーン上で実行されます。PoAはビットコイン(BTC)のコンセンサスアルゴリズムであるプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)で行われるマイニング(採掘)を必要としません。マイニングでは大量の電力を使うことが環境面から問題であるとする声がありますが、PoAではPoWで行われるマイニングがないため、ビットコインと比較して環境面に配慮したプラットフォームといえるでしょう。
CHZの最大発行数量は88億8888万8888CHZと決まっており、2018年時点ですべて生成されました。チリーズは定期的にCHZをバーン(焼却)することで流通量を減少させ、希少価値を高めています。CHZは定期的なバーンによる流通量の減少と、スポーツクラブやファンの参入が増加することで、CHZ経済圏が強化されると期待されています。
チリーズの将来性

チリーズの将来性はファントークンの広がりが重要です。
チリーズのファントークンは、これまでに海外の有名サッカークラブが取り入れています。サッカーの他にもモータースポーツやバスケットボール、テニスからeスポーツまでさまざまな種目でも取り扱われています。今後も提携チーム数や幅広いスポーツやエンターテイメント業界に採用されることで、ファンが集まるプラットフォームとなることが期待されるでしょう。参入数が多くなることはCHZ保有者にプラスの影響がもたらされ、さらにプラットフォームの人気も高まるという好循環が生まれるかもしれません。
現在、Socios.comのパートナー数は25カ国150チーム以上です。2022年6月にはインドネシアのプロサッカーチームが加わるなど、アジア圏にも広がりを見せています。2022年7月現在で、167カ国、150万人以上のユーザーがファントークンを所有しています。
最近では著名選手が給与の一部をファントークンで受け取ったことが話題になりました。
2021年8月にサッカー・アルゼンチン代表のリオネル・メッシ選手が、パリ・サンジェルマンへの移籍で、契約金の一部をファントークンで受け取ったことが報じられました。こうしたイベントも影響したのか、2022年7月末現在ではChiliz Exchangeでパリ・サンジェルマンのファントークンが1トークンあたりの価格で、最も価格が高くなっています。今後も有名選手が関わることでトークンの人気が高まり、価格への影響が出る可能性もあるでしょう。
プラットフォーム自体の開発も着々と進んでいます。
2022年5月に新ブロックチェーンの「CHILIZ CHAIN 2.0」のテストネット「Scoville(スコヴィル)」が、フェーズ2『JALAPENO(ハラペーニョ)』に入りました。このフェーズでは、分散型取引所がテストネット上で公開されました。こうした開発の進捗具合はファントークンの価格推移にも好影響を与えています。2022年5月には、暗号資産市場全体が落ち込む中、「ハラペーニョ」のテストネット開始後にパリ・サンジェルマンやユベントスといった著名チームのファントークンが急騰しました。
CHILIZ CHAIN 2.0(CC2)は2022年第4四半期にメインネットのローンチが予定されています。メインネットのローンチまでには、ファントークンやCHZのクロスチェーンブリッジのほか、CHZのステーキング機能などが予定されています。CC2でNFTの作成機能やPlay-to-Earn(プレイ・トゥ・アーン:遊んで稼ぐ)ゲームを構築するといった新たな展開が予告されています。今後の開発状況も見逃せないでしょう。
これまでの価格推移

チリーズに大きな価格変動が起こったのは、企業との提携が発表されたときです。
チリーズは海外の大手暗号資産交換業者に上場した2019年9月から2020年末までは、0.004〜0.025ドルの狭いレンジで推移していました。2021年1月にはACミランと提携、2021年2月に入ると、日本の暗号資産交換業者との提携が発表されて高騰しました。2021年3月には0.31ドルと急騰しました。海外で複数の暗号資産交換業者に相次いで上場したことで流動性が高まり、期待感から価格が高騰したと考えられます。
さらにアメリカの主要スポーツクラブのファントークン発行を目的として、ニューヨークにオフィスを開設したことも期待感を後押ししました。
この時期は暗号資産業界全体が盛り上がった時期でもあったことも関係しているでしょう。
まとめ

チリーズはファントークンを介して、スポーツとエンターテイメント業界にファンとの新しい関係を築こうとしています。欧米の著名スポーツクラブから、アジアのクラブチーム、格闘技やeスポーツまで、すでに25カ国150チーム以上がファントークンを発行しています(2022年7月現在)。
ファントークンを保有することで、限定特典を受け取れるだけでなく、ユニフォームデザインの決定やスタジアムの名称決定に関われたりするなど、クラブチームの意思決定に関わるチャンスが生まれます。
今後ますます多くのスポーツ選手が、ファントークンで給与を受け取る可能性が広がれば、経済圏も拡大していくことが期待されます。
ただ、2022年7月現在で、日本チームとの提携はされていません。規制面での整理が進められていく必要があるでしょう。
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