DeFiで注目のアバランチ(Avalanche)とは?今後の将来性についても解説
分散型金融(DeFi)で注目されているのがアバランチ(Avalanche)というプラットフォームです。プラットフォーム上で利用される暗号資産(仮想通貨)であるAVAXのパブリックセールでは5時間で4200万ドルの資金調達を達成しました。
アバランチもスマートコントラクトが導入されており、新たなトークンを作成したり、DAppsを立ち上げたりすることが可能です。この記事ではアバランチについて解説し、今後の将来性についても説明していきます。
アバランチ(Avalanche)とは
アバランチは、2020年9月にメインネットをローンチした、分散型金融のプラットフォームを目指すパブリックブロックチェーンです。AVAXという暗号資産(仮想通貨)が、アバランチプラットフォームを利用する際の手数料やステーキング報酬になります。
元米コーネル大学准教授のEmin Gün Sirer氏を中心として、ニューヨークに拠点を持つAVA Labs,Incが開発を主導しています。プラットフォーム上にはすでに多くのプロダクトが作成されています。
これまでに著名ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が投資するなど、多くの投資企業に注目されています。
アバランチが注目と人気を集めているのは、高いスケーラビリティと分散性、相互運用性を実現させている点です。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など多くのブロックチェーンは、処理能力を超えた取引が殺到することで「スケーラビリティ問題」が発生します。スケーラビリティ問題が起きることで取引手数料が高騰したり、送金遅延につながったりします。しかしアバランチの処理能力はクレジットカード大手のVisaと同等で、秒間で45,000トランザクションを処理することが可能です。イーサリアムが秒間15トランザクションであることを考慮すると、大きく凌駕していることがわかるでしょう。
DeFiは多くがイーサリアム基盤で作られてきましたが、人気が高まるにつれてイーサリアム上での処理が増加し、スケーラビリティ問題に遭遇しています。
アバランチと同様に高速に処理できるブロックチェーンプラットフォームはありますが、そのほかのプラットフォームは、大手企業が中央集権的に運営しており、ネットワークの分散性がありません。
アバランチの仕組み
ビットコインなどのブロックチェーンでは、ノードが全て同じデータを保有することで安全性を高めてネットワークを構成しています。少数のノードが不正を行った場合にも、他のノードが安全性を維持できるためです。しかし、この場合には検証に時間がかかり、スケーラビリティが問題になります。
アバランチでは、全てのノードが全てのデータを同期する必要がない「アバランチコンセンサス(Avalanche Consensus」というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
アバランチコンセンサスでは、全てではなくても、十分な数のノードが承認作業を行えば耐改ざん性は保たれるという考えで構成されています。例えばビットコインでは10,000のノードが承認作業を行うのに対して、アバランチでは1,000で良いという認識です。
これによって、分散性とネットワークの堅牢性を確保すると同時に処理性能を向上、低コストで過剰な処理を抑制することで環境にも優しいブロックチェーンを目指しています。
また、アバランチはプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)のネットワーク方式を採用しており、コンセンサスに参加するバリデーターや、バリデーターに対して委任を行うデリデーターは、ネットワークにネイティブトークンのAVAXをステーキングすることで、報酬を得られます。
アバランチのブロックチェーン
アバランチのブロックチェーンは、エクスチェンジ・チェーン(X-Chain)、プラットフォーム・チェーン(P-Chain)、コントラクト・チェーン(C-Chain)という3つのチェーンで構成されます。この3つのブロックチェーンは、「プライマリーネットワーク」というバリデーターによって管理されています。
通常であれば一つのブロックチェーンにまとめられている機能が分割されることで、それぞれの機能ごとに特化したアルゴリズムを採用するなどして、ネットワークを効率的に利用できます。
X-Chainはデジタル資産を作成・取引するためのプラットフォームです。「日本国民だけが取引できる」や「◯月◯日までは送付できない」など、独自のルールを規定できます。取引手数料はAVAXで支払われます。
P-Chainはバリデーターの調整やサブネットの追跡・作成が可能です。サブネットはカスタマイズ可能な独自のブロックチェーンを構築できるアバランチに搭載されている仕組みです。このサブネットでは、ユースケースに合わせて、パブリック型やプライベート型を選択できます。
C-Chainはイーサリアム仮想マシン(EVM)のインスタンスを実装しており、分散型アプリケーション(DApps)のスマートコントラクトを作成します。EVMはイーサリアムのプログラムを実行する処理環境です。これに対応することで、イーサリアム基盤のDAppsをアバランチで対応させることが可能です。またERC-20トークンやERC-721などの規格に沿った暗号資産やNFTを作成することもできます。
サブネットとは
アバランチにはX、P、Cチェーンに加えて、サブネットと呼ばれる拡張性とカスタマイズ性に優れたブロックチェーンを作成する機能があります。
サブネットはアバランチの一部のノードによって構成されるネットワークで、そのネットワーク内でブロックチェーンを作成します。サブネットはアバランチのセキュリティやスピード、コミュニティを継承した上で、他のアプリケーションのネットワークが急増するなどといった事象に影響されずに構築できます。ネットワークが混雑せずに取引手数料の高騰などを防ぐことができるのです。
さらに独自の手数料体系やAVAXの代わりとなるトークンをサブネットで作成できます。こうした独自ネットワークに特定のバリデーターのみが参加できるようなプライベートサブネットを作成できるなど、カスタマイズ性に優れています。
アバランチのユースケース
アバランチのC-Chainでは、イーサリアムとの互換性が組み込まれています。スマートコントラクト言語「Solidity」が利用できるため、イーサリアム上で構築されたzDAppsは、簡単な調整を行うことにより、アバランチで稼働させることができます。
イーサリアムではスケーラビリティ問題が課題となっているため、より高速で使いやすい環境を求めてアバランチでもDAppsを稼働させているプロジェクトも出てきています。
「オラクル」の代表的サービス「チェーンリンク」や、レンディングプラットフォームの「AAVE」、分散型取引所(DEX)の「スシスワップ」など、イーサリアムエコシステムで著名なプロジェクトもアバランチに対応しています。
また、他にも最近注目の「Play-to-Earn(遊んで稼ぐ)」ゲームなども開発されています。ユーザーはアバランチの低い手数料や高いスケーラビリティを利用することができる一方で、開発者にとってはそれが理由でユーザー数の増加を期待することができます。実際にアバランチもゲーム分野への支援を行うことを表明しています。
2021年以降人気が高まっているNFTに関しても、アバランチで発行することができます。イーサリアムネットワークでNFTを利用する場合、取引手数料高騰の影響を強く受けてしまいます。その点、アバランチもNFTに対応しているうえ、手数料はイーサリアムよりもはるかに安価で済むため、注目が高まっています。
アバランチの将来性
分散型金融のプラットフォームとして成長を続けるアバランチは今後、どのように進んでいくのでしょうか。
ユーザー数などが順調に推移
アバランチは全プラットフォームの中でもTVL(トータル・バリュー・ロックド)で上位に位置しています。暗号資産(仮想通貨)市場が低迷していた2022年6月には、過去2ヶ月と比較してAVAXのTVLは35%増加しました。イーサリアムの10%、競合のBNBチェーンの14%に比べると、アバランチに投資家が多くの資産をロックしていることから期待が高いことがわかります。
暗号資産市場が低迷した2022年から2023年にはAVAXも他の暗号資産と同様にパフォーマンスを落としてしまったものの、2024年以降は盛り返し、ポリゴン(MATIC)のような大手プラットフォームに比肩する水準まで回復しました。
ハッカソンや支援プログラムも積極的
アバランチは、開発者向けの助成金事業やハッカソン、アンバサダープログラムを積極的に行なっており、幅広い開発や参加者の増加が見込めます。
Avalanche Multiverse(アバランチマルチバース)は、最大2億9000万ドルに上るインセンティブを含むプログラムで、サブネット機能を含むアバランチプラットフォームの拡張を加速することを狙いとしています。このプログラムは、ブロックチェーンゲーム、DeFi、NFT、機関向けアプリケーションなど、幅広い新しいエコシステムのサポートを求めています。
もう一つの支援プログラムであるBlizzard Fund(ブリザードファンド)は、2億ドル以上の資金を管理し、アバランチのオープンなブロックチェーンおよび周辺エコシステムの開発を促進するインセンティブを提供しています。このファンドはアバランチ財団とAva Labs、そして業界の大手投資家たちの協業によって設立されました。
今後はサブネットを利用してKYC(本人確認)機能を備えたブロックチェーンの構築やセキュリティトークンの発行、流動性提供、自己主権型アイデンティティなどの新しいユースケースの開発を支援する予定です。
多くの暗号資産との互換性
2022年6月にはビットコインをそのままアバランチ上のDeFiで利用できる新機能を開始しました。ビットコイン保有者は、自分のポートフォリオにBTCを維持しながら、アバランチ上のDeFiエコシステムを活用し、様々なプロトコルが提供する収益や利回りサービスにアクセス出来ます。その他、XRPにも対応する予定を発表するなど、イーサリアムだけでなく、幅広い銘柄への互換性が見込まれます。
まとめ
アバランチは高いスケーラビリティと分散性を両立させています。DeFiが盛り上がるにつれてイーサリアムで発生するスケーラビリティ問題を解決できる可能性を持つことから「イーサリアムキラー」とも呼ばれ、期待されています。
多くのインセンティブプログラムなどによって開発者を支援していることからも今後の展開が楽しみです。
アバランチ自体の使いやすさも向上しています。2022年3月には「コアウォレット」をローンチしました。ブラウザ拡張機能として利用できることや、ウォレット内でビットコインを直接利用できるようにするなど利便性を高めています。
ゲームやDeFiなどの利用が増えるにつれて、ますますアバランチの重要性が増していくことが予想されるでしょう。
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