X-to-Earnとは? 特徴と将来性を解説
「アクシーインフィニティ(Axie Infinity)」というブロックチェーンゲームの大ヒットで、「Play-to-Earn」というジャンル、キーワードが世界的なバズワードとなり、一気に注目されようになりました。
ゲームをプレイすることで報酬として暗号資産(仮想通貨)やトークン収益が得られるPlay-to-Earnは、それをヒントに様々なアイデアへと発展し応用され、今では一般的な労働以外で収益を目指せる「X-to-Earn」というジャンルが確立されるまでに成長しました。この記事では、Play-to-Earnを復習しながらX-to-Earnについて解説します。
Play-to-Earnの発展系X-to-Earnとは?
ブロックチェーンゲームのカテゴリーの一つに、「Play-to-Earn(プレイ・トゥ・アーン)」というジャンルのゲームがあります。その名が示す通り「遊ぶことで収益を得る」ことが目指せるゲームです。
Play-to-Earnゲームでは、ゲームをプレイすることで報酬として暗号資産(仮想通貨)やトークン収益が得られる仕組みを持ちます。
Play-to-Earnという言葉が一躍有名になったのは、「アクシーインフィニティ(Axie Infinity)」というブロックチェーンゲームの大ヒットでした。
アクシーインフィニティは、ベトナムのゲームスタジオが2018年に開発したブロックチェーンゲームです。大ヒットの理由は、アクシーインフィニティをプレイすることで得られる1日の報酬額が、当時のフィリピン、インドネシア、ベネズエラなどの新興国での1日当たりの平均賃金(約30ドル)を超えることがあったからです。就業機会が乏しい国では、こうしてアクシーインフィニティが新たな収入を獲得する機会となって、プレイヤーを爆発的に増やすことになりました。
それ以来、Play-to-Earnというゲームジャンルは、世界中で話題になりました。
Play-to-Earnゲームでは、ゲーム中に戦闘で勝利したり、クエストのようなゲーム中にクリアすべき依頼や課題を完了したりするなど、ゲーム内の目的を達成することでトークン(NFTなど)やその他の暗号資産ベースの報酬を得ることができます。
中には手に入れたNFTをいくつか掛け合わせて新しいNFTを誕生させるなど、繁殖系のゲームもあります。
こうして手に入れた報酬はプレイヤーがゲーム内で自由に使用したり、暗号資産交換業者やNFTマーケットプレイスなどで取引したりできます。ゲーム内で構成された経済圏で手に入れた報酬によって、プレイヤーはまさに遊びながら収益を上げることができるのです。
アクシーインフィニティを始めとする初期の頃のゲームは、遊ぶことで報酬を得ることができる仕組みでしたが、アクシーインフィニティの大ヒットした以降、Play-to-Earnをヒントに、「Play」するだけではなく様々な方法で報酬を得ることができる「X-to-Earn」という概念が誕生しています。
ちなみに、X-to-Earnの「X」は、数学でいうところの変数であり「何らかの行動」が入り、Xをすることで報酬が得られるという意味です。
歩くことで報酬がもらえるSTEPN(ステップン)のMove-to-Earnが話題に
例えば、直近では「STEPN(ステップン)」という、NFTスニーカーを購入し、現実世界で歩くことや走ることで収益が得られるというMove-to-Earnという仕組みを導入し大ヒットしました。
これはどちらかというとその仕組みよりも、NFTスニーカーが突如と高騰し、手に入れることができたプレイヤーがそれを転売することで膨大な収益を上げたことから話題になりました。ステップンの当初はNFT投資の側面が大きかったかもしれません。しかし、スニーカーの価格が下落し価格が落ち着いてからのSTEPNは、実際の世界を物理的に移動する必要がある位置情報ゲームという側面から、健康的な要素が話題になり、まさにMove-to-Earnという新しいジャンルのゲームとして注目されるようになりました。
STEPNの収益構造をもう少し見てみましょう。
STEPNはゲームを始めるにあたり、必ずNFTスニーカーを手に入れる必要があります。これが一つの収益モデルです。NFTスニーカーは、ゲームを進めてレベルアップさせたり、保有する他のNFTスニーカーを掛け合わせて新しいNFTスニーカーを誕生させたりすることができます(手数料がかかります)。
またNFTスニーカーをレベルアップさせるためには、ゲームをプレイしたりすることで手に入れられるトークンが必要です。つまり、より優れたNFTスニーカーを手に入れるには、時間と労力が必要なのです。こうしたトークンも暗号資産交換業者で取引が行われています。
ゲームのルールはより複雑で、例えば手持ちのNFTスニーカーをBurn(焼却)することで、保有する他のNFTスニーカーの初期値を強化する機能あるなど、ゲーム攻略的な機能が実装されています。こうしたルールは、ゲームバランスに鑑み変更されることもあります。
さらにSTEPNのNFTスニーカーは、実際のスニーカーブランドともコラボレーションをしており、NFTスニーカー自身にも希少性やコレクション性があり、人気の度合いによって価格が上がるなど、まさにNFTコレクションの一面があります。
ほかにもいろいろなルールがありますが、こうしたルールはプレイ(歩いたり、走ったり)せずにNFTスニーカーの掛け合わせのみに執着し、NFTスニーカーを売却するのみという投資目的のユーザーを排除し、持続可能なゲームにするためであると運営は語っています。
このようにX-to-Earnゲームは、より優れたエコシステムが導入されたトークンエコノミーを持つブロックチェーンゲームであるといえます。つまり、そう単純なゲームジャンルではないということです。トークンエコノミーが不完全なゲームは、たとえ瞬間的にブームになったとしても、ゲーム全体の価値を維持できずに崩壊するでしょう。
事実、STEPNもリリース当初はNFTスニーカーが急騰し、NFTスニーカーを転売するだけで儲かるという口コミで投資目的のみのプレイヤーが集中したことによりNFTスニーカーの価格が不安定なゲームになってしまいました。利益を確定したプレイヤーがNFTスニーカーを売り尽くすことで価格が安定することなく、あっという間に下落しました。しかし、STEPNは運営側の対策もあり、今では真にゲームを楽しむプレイヤーが増えて、価格も安定し始めています。
X-to-Earnゲームにおいては、こうしたリスクがあることも忘れてはなりません。特に急騰したゲームについては、どのようなエコシステムが導入されているのか、どんなプレイヤーが遊んでいるのか、純粋にX-to-Earnを楽しんでいる人が本当にいるのかなど、常に情報収集を怠らず、注意していきたいものです。
X-to-Earnの具体例
Move-to-Earn以外にもX-to-Earnゲームは、様々なアイデアが誕生しジャンル全体で新しいゲームが増え続けています。
例えば学ぶことで収益を上げることができる「Learn-to-Earn」というジャンルが登場しています。Learn-to-Earnの「Let me Speak(レット・ミー・スピーク)」は、英単語や文法をクイズ形式で答えていきながら学び、正解することでトークンがもらえるなど、学習意欲の向上にゲームを活用するタイプの教材です。
また、睡眠の質の向上や睡眠時間を記録し、より豊かな睡眠を手に入れるための仕組みとして、「Sleep-to-Earn」という概念が登場しました。Sleep-to-Earnの「Sleep future(スリープフューチャー)」は、寝るだけで報酬を得ることができますが、睡眠の質を向上させるための寝具などと連動することで、新しいジャンルのブロックチェーンゲームを提供しています。
昨今は、ブロックチェーンゲームの発展系として、ゲーム内で自らの作品を創作する「Create-to-Earn」というジャンルが注目を集めています。元々、ブロックチェーンゲームの中には自分の描いた絵を使ってNFTカードが作れるものや、ピクセルを組み合わせてNFTアイテムを作ることができるゲームがあり、それらを他のプレイヤーに売ることができました。こうしたゲームを、今はPlay-to-Earnにならい、Create-to-Earnと呼ぶようになりました。
Create-to-Earnは、ブロックチェーンゲームの基本でもあります。また、メタバースもCreate-to-Earnの一つといえるでしょう。
車を運転することで報酬が得られる「Drive-to-Earn」というジャンルも登場しています。Drive-to-Earnの「Hivemapper(ハイブマッパー)」は、実際に車で移動して、その結果得られる位置情報などを提供することで報酬を受け取ることができます。Hivemapperは初期投資として暗号化対応ドライブレコーダーを入手し、車を運転することで、みんなで一緒により良い地図を作成するというコンセプトです。それによって地図は常に最新で、より詳細な情報を提供することができるようになります。
その他にも、食べたものの写真をアップすることで報酬が得られる「Eat-to-Earn」や、音楽を聴くことで報酬が得られる「Listen-to-Earn」などのブロックチェーンゲームが開発中、新規調達中であるという情報も聞かれます。
いずれにしろX-to-Earnは、NFTやその他のトークンと従来のツールを組み合わせたゲーミフィケーションであり、これまでのツールがブロックチェーンゲームによって収益化することができる事例であり、それを分類する方法の一つです。NFTやその他のトークンを活用したアプリケーションの延長線上のものと理解しておくとよいでしょう。
X-to-Earnの今後や将来性は?
X-to-Earnの「X」には、アイデア次第で様々な要素が入るでしょう。アイデアとそれに関連する業種、業態と暗号資産(仮想通貨)やトークンを連携させることで、あらゆる生活スタイルの報酬化が可能になります。
Move-to-Earnのようにそれによって健康が促進されることで医療費等の削減に繋ぐことができれば、社会的な貢献も可能になります。また、Sleep-to-Earnのように睡眠の質を上げたい人などを集めることで、関連する商品が売りやすくなるなど販売促進として利用することができます。
Drive-to-Earnのようにみんなで地図を作るというようなアイデアは、報酬を絡めることで従来のUGC(User Generated Contents)よりも、その実現性や正確性を高めることができるでしょう。アイデアによっては社会課題を簡単に解決できる可能性もあるのではないでしょうか。多くの協力者が必要なものやことに対して、X-to-Earnの仕組みは有用でしょう。
しかし、問題がないわけではありません。例えばPlay-to-Earnが大ヒットした際には、その裏で生活スタイルの報酬化は行動変容が伴い、労働意欲になんらかの影響を与える可能性があるのではないかという心配がありました。こうした問題は、ゲーム内のルールやエコシステムの工夫により回避可能ですが、逆にそれを使って悪意ある仕組みを提供する人たちが現れないとも限りません。こうした問題は、社会全体で監視しなければならないでしょう。
また、有益なX-to-Earnが登場したとしても投資・投機の側面ばかりが取り上げられ、過剰な投資によりサービス提供者側の意図しない相場の変動が起こり、エコシステムそのもののバランスが崩れるなどのリスクもあります。こうしたリスクは、サービス提供者のみならずプレイヤーにも影響します。X-to-Earnの仕組みは、まだまだ発展途上です。また、暗号資産と同様に法律面の整備も必要になるでしょう。特にグローバルに展開されるサービスにおいては、より多くの人たちの間で、さらなる議論が必要でしょう。
まとめ
X-to-Earnにおいては、暗号資産(仮想通貨)やトークンなどの知識は必要不可欠です。暗号資産との密接な関係性は、初心者には難しい側面があります。その仕組みはブロックチェーンゲームなので、ウォレットが必要であったり、初期段階で暗号資産が必要になったりするものも少なくありません。X-to-Earnには、様々な暗号資産、トークンが必要になりますが、それぞれどこで手に入れられるのかという知識は重要です。日本では手に入れることができない暗号資産を使用することもあるでしょう。
また前述のようにリスクが伴うことも知っておきたい知識です。特に価格が高騰しているトークンやNFTを扱うゲームについては、その価格の裏付けはどこにあるのか、一過性のブームのみで終わる可能性はないかなど、調べることが大切です。自分自身の責任において参加する覚悟も必要です。このジャンルには、絶対に儲かる、誰でも儲かるというものはないことは、忘れないようにしましょう。
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