web3(ウェブ3)とは?

ウェブ3
2022-09-07 更新

暗号資産(仮想通貨)やメタバース、NFT(ノンファンジブルトークン)など、インターネットの新しい技術やトレンドを包含する言葉である「web3(ウェブ3)」という言葉が注目を集めています。スマートフォンやSNS以上の大きなインターネットの革新であるという声もあります。

本記事ではこの新しい言葉であるweb3について、言葉が生まれた背景やサービスの種類、日本の動向などについて解説します。

web3(ウェブ3)とは

「web3」は「Web3.0」のように表記されることがあります。2022年6月現在ではどちらも同じ意味であるように解説されることもあります。しかし、厳密にはweb3とWeb3.0は異なる意味合いを持ちます。

元々、Web3.0は、「ウェブの父」として知られ、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の概念を考案したティム・バーナーズ・リー氏が2006年ごろから提唱していました。同氏によると、当時一般的であった、HTML上に書かれたウェブページ上の文章構造を読み取ることではなく、個々の単語やデータの意味を読み取るセマンティックウェブのことをWeb3.0と呼んでいました。

しかし、2022年に入って話題になっている「web3」は、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンの意味合いが強い言葉で、イーサリアム(ETH)の共同創業者であるギャビン・ウッド氏が2014年に公開したブログで注目が高まりました。ウッド氏のブログでは「Web3.0」と表記されていますが、その後、暗号資産界隈では「web3」と記述されることが多くなります。暗号資産界隈のボトムアップ的な動きを支持する人々からはわざと「w」と小文字で表記されることがあり、本記事でもその考えを踏襲して、同じ表記を用いています。

web3の定義については、新しい言葉のために、正確な共通の定義がある訳ではありませんが、主にブロックチェーンを使って、非中央集権的・分散的なサービスといった次世代インターネットを実現する考えやサービスのことであるといえるでしょう。

Web2.0時代にグーグルやフェイスブック(現メタ)などのプラットフォーマーに集約されてしまった富やデータを個人に取り戻すという思想を持っていることから、web3の非中央集権的な性格を強調した意味合いで「デジタル民主主義」と呼ぶこともあります。

ビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)やNFT、次世代の組織形態の形とされるDAO(自律分散型組織)などがweb3の主要なサービスです。

web3という言葉が生まれた経緯

web3の前にはWeb2.0とWeb1.0という区分があります。web3は1.0や2.0の問題を乗り越えるものとして認識されています。

Web1.0はインターネットが普及した初期段階で、ポータルサイトなど、情報を検索し閲覧するだけの一方通行な情報交換が主なサービスでした。こうした特徴から「トークン・エコノミー」の著者シャーミン・ヴォシュムギア氏は、主にWebページのコンテンツを読むことだけが可能であるとして、Web1.0を「Read(読む)」と表現しました。年代の定義としては、大体1995〜2005年ごろを指すとされています。EコマースもWeb1.0時代の特徴的なサービスの一つです。

Web2.0は、個人が情報発信できるようになった「Write(書く)」の時代とされます。ブログやSNSが広まり、ウィキペディアなども生まれました。年代としては、2005〜2020年です。しかし、この時代では市場がGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)といった大手テック企業による寡占状態となってしまったことで問題も生じました。

代表的な問題が、英国の政治コンサルティング企業がフェイスブックを通じて個人情報を不適切な方法で収集したことです。このデータが2016年のアメリカ大統領選挙で利用されたことで、個人のデータは中央集権的な大手企業に集約されるべきものではなく、自分自身で守るものとする風潮がアメリカを中心に起き始めます。

web3はインターネット上のプライバシーや「データは自分自身のもの」であるという「データ主権」の意識のもとに生まれました。このことから、データや資産などは自分自身が「Own(所有)」することがweb3時代の特徴だと主張されます。ただ、2022年6月現在では「Own」の定義以外にも「Join(参加)」といった異なる定義を提唱する人もいます。前述のギャビン・ウッド氏は2021年にアメリカのメディアで「Less trust, more truth(信頼は控えめに、もっと真実を)」をweb3の定義だとしています。

いずれにしても、所有や参加、真実をもたらすために必要なのが「分散化・非中央集権化」であることで、これがブロックチェーンによって可能になりました。サービスに管理者がおらず分散化・非中央集権化されることで、一部企業の寡占を防げると期待されています。さらに、これまでは個人のデータやデジタル資産はプラットフォームを跨いで利用することが不可能でしたが、ブロックチェーン上に管理されることで、一つのプラットフォームに縛られずにどこにでも持ち出すことができることも、個人にデータを取り戻すことを可能にしたと考えられています。

Web1.0 Web2.0 Web3
特徴 Read(読む) Write(書く) Own(所有する)
サービス 検索サイトやeコマース SNS 暗号資産、NFT、メタバース、DAOなど

web3時代のサービス

web3時代のサービスの特徴は、元々中央集権的に管理されていたものが非中央集権的になり、個人での所有が可能になったことです。暗号資産(仮想通貨)はその一つです。政府や銀行などが管理していた資産を各個人で管理する形を目指しています。

そのほかにも分散型金融(DeFi)は融資やトレーディングといった、従来の銀行などが担っていたものを管理者なしで可能にする仕組みも生まれました。

NFTはデジタル資産の所有権を管理することで、収益をクリエイターに還元しやすくする仕組みで、仲介者なしでデジタル資産のやり取りを可能にします。ただ、現状は中央管理者が存在するプラットフォームが主流になっています。

さらに今後注目を集めるのがDAO(自律分散型組織)です。DAOは新しい組織の形であるとされています。DAOは従来のように社長や幹部から下への命令系統で動くような組織ではなく、ある主旨やビジョンに賛同した参加者が、自律的に働くコミュニティとされています。

DAOではスマートコントラクトを使うことで、ルールが自動で執行されるようにし、メンバーには独自トークンがインセンティブとして支払われます。この独自トークンが支払われるというインセンティブが重要です。

例えば、従来のスタートアップなどではストックオプションなどがインセンティブとしてありましたが、これはサービスを提供する会社の従業員にしか権利がありませんでした。DAOは顧客にもトークンを配布することで、サービスを利用する側にもキャピタルゲインを得られる機会が生まれます。そのためにコミュニティ全体でプロジェクトを盛り上げていこうという気運が生まれやすくなることがこれまでとは大きく異なる点でしょう。従来の資本家と労働者という枠を超えた新しい組織になると期待されています。

メタバースもweb3時代の新しいサービスとされています。

これまでのバーチャル空間のサービスでは、プラットフォームを跨いで、資産の移転というのはできませんでした。しかし、暗号資産(仮想通貨)やトークンが加わることによって、バーチャル空間の中でユーザー自身が自由にコンテンツを持ち込むことが可能になり、独自の経済圏が生まれてきています。NFTなど、デジタル資産の所有が個々人にわたるようになれば、誰もが等しく参加が可能になり、非中央集権的な世界が実現できるのではないかと期待されています。

日本の動向

日本もweb3の波に乗り遅れまいと、官民ともに動いています。日本政府は2022年6月に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」で、web3を含むブロックチェーン業界の環境整備を進めていくことを盛り込みました。「ブロックチェーン技術を基盤とするNFT(非代替性トークン)やDAO(自律分散型組織)の利用等のweb3の推進に向けた環境整備の検討を進める」としており、2023年の通常国会で関連法案の提出が見込まれています。岸田総理もweb3に関して積極的な姿勢を示しており、税制改革に関しても「web3はやりましょう」との発言をしています。

政府が積極的になっているのは、人材流出が著しいという懸念があるためです。2021年にはユニコーン企業になる可能性がある日本企業がシンガポールに拠点を移し、日本法人を精算しました。海外に拠点を移したのは、web3の資金調達方法であるトークンの発行で、重い税負担があるためでした。

日経新聞の報道によると、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)で100億円分のトークンを発行して、70億円分をガバナンストークン(サービスに関する開発や運営方針に関する投票権機能を有するトークン)、残りの30億円分を投資家に売り出す場合には、ガバナンストークンはそのまま70億円の含み益となり、投資家への売り出し分は経費がほとんどゼロで売上が30億円あったとみなされます。そのため税率30%で30億円が徴収されてしまいます。

競争や変化が激しいweb3業界で、いきなり最初から重税を課されると事業に影響も大きい上に、そうした不安要素がある国の事業に投資家も資金を出そうとはしないでしょう。そのために、優秀な起業家が次々に国外に移転するという事態が発生しています。

こうした問題を解決するために、日本では税制改正が急がれています。

まとめ

ブロックチェーンを使うことで、分散化・非中央集権的な性格を持ち、これまでプラットフォーマーに独占されてきた資産やデータを、ブロックチェーン技術によって個人に取り戻そうとする動きがweb3です。代表的なサービスとしては、メタバースやNFTがあります。DAOなど今後、続々と新しいサービスが展開されていくことも期待できます。

ただ、web3自体も、既に先行企業によって独占的になりつつあるという指摘も行われています。ツイッターを創業したジャック・ドーシー氏は「web3の中心にいるのは我々ではなく、ベンチャーキャピタルとその出資者だ」として、既に中央集権的な性格を持ち始めてしまっていると批判しています。こうしたために同氏は2022年6月に「web5」を提唱しました。

web3は新しい概念であるために、分散化や非中央集権化が実際に定着するかはまだ未知数ともいえるかもしれません。それでも今後の重要な概念であることには変わらないため、しっかりと情報収集を続けると良いでしょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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