GameFiとは? ブロックチェーンゲームによる収益化
ブロックチェーンゲームが話題になったことで「NFT」が注目されるようになり、NFTを始めとするトークンの利用方法がゲームで発展したことで「Play-to-Earn(プレイ・トゥ・アーン)」という新しいブロックチェーンゲームのジャンルが誕生しました。Play-to-Earnによってゲームは、プレイヤーが遊ぶことでトークン報酬が得られるなどブロックチェーンゲームによる収益化が可能になりました。
こうしたブロックチェーンゲームのビジネスモデルを、ゲーム(Game)と金融(Finance)を組み合わせた造語で「GameFi(ゲームファイ)」と呼んでいます。国内外問わず注目を集めているPlay-to-Earnは、GameFiの一ジャンルです。
この記事では、ブロックチェーン技術によるビジネスモデルの一つであるGameFiについて詳しく解説します。新しいビジネスの可能性を秘めたGameFiを、これまでの事例も簡単に交えて紹介します。
GameFiとは?
ゲーム(Game)と金融(Finance)を組み合わせた造語「GameFi(ゲームファイ)」は、その名が示す通り、コンピューターゲームの金融化を意味する新しい言葉です。
GameFiは、基本的にはブロックチェーンゲームによってプレイヤーが収益を上げることができるビジネスモデルを指します。昨今、話題になっているゲームを遊ぶことでトークンによる報酬が得られるPlay-to-Earnという新しいジャンルのブロックチェーンゲームは、GameFiの一つです。
また、プレイヤーがゲーム内で所有するNFTを活用し、ゲームキャラクターを育成しながら繁殖等によって新たなNFTを得るタイプのいわゆる育成・繁殖系ブロックチェーンゲームも、GameFiの一つです。
実はGameFiには明確な定義や条件はありません。簡単に説明するとGameFiは、ブロックチェーンゲームを遊ぶことでトークンによる何らかの報酬が得られるゲーム全般を指します。ただし、トークンを賭けるようなギャンブルゲームのようなものはGameFiには含まれません。あくまでもトークンをベースにしたエコシステムによる収益性のあるゲームのみ、GameFiに分類されます。
初めてGameFiという言葉を用いたのは、シンガポールを拠点とするブロックチェーンによるグローバルゲームパブリッシャーMixMarvelの共同創設者マリー・マー氏です。
2019年11月に中国で開催されたカンファレンス「Wuzhen World Blockchain Conference」にて、「GameFi - The Path of Technology-driven Innovation in the Game Industry.」というタイトルの講演にて、「GameFiとは革新的な金融とビジネスのゲーミフィケーションを創造することを意味するMixMarvelの新コンセプト」と自社の方針を解説したのがGameFiの起源だといわれています。
GameFiという言葉が一躍有名になったのは、DeFi界隈で定評のあるyearn.finance(ヤーン・ファイナンス)の創業者アンドレ・クロニエ氏が2020年9月にTwitterで、「ゲーミフィケーションを金融政策に応用することは、私にとって非常にエキサイティングなことだ。これまで私たちはTradFiをクローニングしてきたが、今後はGameFiに移行する」とつぶやいたことから、一気に広まりました。
それ以来、GameFiは話題のキーワードとして注目されるようになりました。
GameFiと従来のゲームとの違い
GameFiが一躍有名になったのは、Play-to-Earnゲーム「アクシーインフィニティ(Axie Infinity)」というブロックチェーンゲームが大ヒットしたことが発端です。
アクシーインフィニティは、2018年にベトナムのゲームスタジオが開発したゲームです。アクシーインフィニティを1日遊んで得られる報酬額が、フィリピン、インドネシア、ベネズエラなど新興国での1日当たりの平均賃金(約30ドル)を超えたことで、瞬く間に大ヒットとなりました。
就業機会が乏しい新興国では、こうしてアクシーインフィニティが新たな収入を獲得する機会となり、プレイヤーを爆発的に増やすことになりました。まさに、遊ぶことで報酬が得られるPlay-to-Earnが確立された最初のゲームです。
アクシーインフィニティのヒットにより、GameFi=Play-to-Earnと思われがちですが、GameFiはその限りではありません。
プレイヤーがゲームを遊ぶことで報酬が得られる方法は様々です。アイデア次第でPlay-to-Earn以外にもさらに多くのGameFiジャンルのブロックチェーンゲームが登場するでしょう。
昨今ではPlay-to-Earnをヒントに、NFTスニーカーを購入しリアルに歩くことで収益を上げることができるMove-to-Earnなど、ゲームというよりは従来のツールをゲーミフィケーション化した○○-to-Earnという新しいジャンルのGameFiが登場し話題になっています。
このようにGameFiは従来のゲームとは異なり、あらゆる方法でNFTあるいはその他のトークンにより収益化が図れるゲームになっています。
GameFiの仕組み
GameFiのゲームは、決済用トークンとは別にNFTがゲームキャラクターやアイテムとして使用されることがほとんどです。また決済用途以外のゲーム用トークンが発行されることもしばしばです。
こうした構造の中で、NFTはゲーム外のマーケットプレイスやユーザー間で売買が可能であることから、NFTによる取引にて収益を上げることができたり、あるいは他のトークンに価値を持たせたりすることで収益化が図れるものもあります。
さらには、メタバースや仮想空間などでよくある土地をNFT化するという概念によって、不動産運用ができるといった収益方法もあります。
こうしたゲーム内で希少性のあるデジタルアセットの所有権を活用して、資産を形成、取引を行うことができる仕組みが、GameFiそのものの仕組みです。
Play-to-Earn
Play-to-EarnはGameFiの代表的な仕組みの一つです。プレイヤーは設定されたゲームプレイの目的を達成することで報酬を受け取ることができます。報酬は、通常、スマートコントラクトによって管理されているネイティブトークンが支払われます。
アクシーインフィニティの例では、イーサリアム(ETH)ベースのネイティブトークン「AXS(Axie Infinity Shards)」と「SLP(Smooth Love Potion)」の2種類がゲーム上で流通しています。
ゲームは、Axie(アクシー)というNFTモンスターを手に入れて、それを育てたり、繁殖させたり、さらには集めたり、またアクシーを使って他のプレイヤーとバトルをしたりして、ゲームを進めていきます。
アクシーインフィニティでは、アクシーをバトルさせ勝利することでトークンを得たり、繁殖させて増やしたアクシーを売却したり、様々な方法で収益を稼ぐことが可能です。アクシーを強化するには、報酬として受け取ったトークンを消費する必要があるなど、トークンがゲームを盛り上げる要素にもなっています(育成ルールやトークン活用方法は変わることがあります)。
GameFiは、希少なデジタル資産の所有権を活用するという概念が仕組みの中心にあります。
NFTは、ゲーム内のアイテムを含むデジタルおよび物理的なあらゆる種類の資産を表すことができます。プレイヤーはユニークな資産をNFTとして所有することで、経済的機会を活用できます。
例えばNFTによる育成ゲームでは、プレイヤーはNFTで表現された二つのキャラクターを繁殖させて、三つ目のキャラクターを作成できます。プレイヤーはこうしたGameFiの特徴を活用し、新たに作成したNFTを販売したり、他のプレイヤーと交換したりすることができるようになりました。
GameFiではキャラクターやアイテムをNFTで表現することで、ゲームの外のあらゆるNFTマーケットにて販売することが可能になったわけです。
また、NFTによる土地の所有者は、物理的な世界とほぼ同じ方法で土地を収益化できます。所有している土地を売買するだけでなく、土地の上に収益を生むようなアトラクション(スマートコントラクト)を開発したり、人に貸し出してレンタル料による収益を上げたりすることも可能です。
ゲームによっては、バーチャルショップ、コンサート会場など土地を収益化するための様々な体験を土地の上に構築し、他のプレイヤーに新たなゲーム体験を提供することで収益を上げているものもあります。
このように現実の社会と同等の収益構造をデジタルの世界に構築できるのがGameFiの特徴の一つでもあります。
様々なタイプのゲームの登場
GameFiには、具体例として以下の種類のゲームタイプがあります。
育成型ゲーム
育成型ゲームは、ブロックチェーンゲームの元祖ともいえるゲームの一つです。ゲームとしても歴史あるオーソドックスなタイプのゲームです。ゲームはキャラクターを育成することが目的ですが、キャラクターをNFT化することで、繁殖等をさせ新たなキャラクターを生み出すことでキャラクターを資産化できます。また育成したキャラクターそのものも含め、新たに生まれるキャラクターのレアリティ(希少性)をベースに資産の価値を形成し、収益構造をゲーム要素として楽しみます。
ゲームを遊ぶことで報酬は増え、報酬を活用することにより、保有するNFTの価値を自ら高めることができるのがこのタイプのゲームの特徴です。
対戦型ゲーム
プレイヤーはNFTキャラクターを使用し、他のプレイヤーと対戦することがゲームの目的です。ゲームは、1対1の対戦もあればマルチプレイヤータイプの対戦型ゲームもあります。
ゲームのキャラクターは、戦士タイプのものや、戦車などのような乗り物タイプのものなど、ゲームによって異なります。ゲームは、対戦相手に勝つために自身のキャラクターを強化することが目的の一つです。キャラクターを強化するための武器やアイテムもまたNFTであり、手に入れたNFTを組み合わせることでキャラクターを強化していきます。
対戦型NFTゲームでは、強化したキャラクターNFTを売って利益を上げることもできます。また、強化するためのNFTも売買の対象になります。ゲームをプレイすることで、より多くのNFTを手に入れることができ、戦うことでより有利になるなどのゲーム要素があります。
また、賞金が出る大会を開催しているゲームも多く、プレイヤーはそうした大会に出場し勝利することで賞金や賞品を報酬として得ることもできます。ゲームによっては、eスポーツにも対応しており、高額な賞金のかかった世界レベルの大会が開催されるものもあり、大会による収益性を図るゲームは少なくありません。
トレーディングカード型ゲーム
NFTカードをコレクションするタイプのトレーディングカード型ゲームも登場しています。基本はトレーディングカードで、カードにレアリティがあり、希少性の高いNFTカードを入手することで、カード自体を売買し利益を上げることもできます。
また、スポーツ選手カードのようなトレーディングカード型ゲームでは、コレクションを使って選手を自由に組み合わせて自分のチームを作り、チーム同士を対戦させるタイプのゲームもあります。こうしたゲームでは、カードの希少性のみならず、対戦型ゲームとして大会等で収益を上げることができるものもあります。
メタバース型ゲーム
メタバースでは、アバターやアイテム、土地など、様々なものをNFT化することで、手に入れたアバターを着飾るアイテムを売買したり、それ自身を作り他のユーザーに売ったりすることができるものがあります。また、保有する土地を売買したり、レンタルしたりすることで利益を得ることもできます。それ以外にも、土地に構築する建物を売買したり、その土地の上で遊べるコンテンツを提供したりして収益を得するなど、様々な収益モデルが構築できるタイプのメタバース型ゲームも多く登場しています。
元々メタバースでは新しいNFTやコンテンツを作成することで利益を上げることができましたが、GameFiにより、より遊んで収益が得られる要素が拡大しています。
GameFiの将来性は? 今後と課題
GameFiの発展により「GameFiローンチパッド」という仕組みも誕生しています。
GameFiローンチパッド
ローンチパッドとは、新規上場予定の暗号資産(仮想通貨)をいち早く入手することができるサービスです。簡単に説明すると、暗号資産の分野ではまだ取引が行われていないプロジェクトに投資し、上場予定の暗号資産を上場前に購入することができるサービスです。IEOなどの資金調達方法もそれにあたります。
GameFiローンチパッドは、文字通り、GameFi版のローンチパッドサービスです。つまり、公開前のブロックチェーンゲームのトークンやNFTをいち早く手に入れられるサービスです。
GameFiの代表格であるアクシーインフィニティやステップン(STEPN)などの人気NFTでは、大ヒットしてしまってからは普通の人では手に入れられないほど価値が高騰してしまうケースが多く見られました。GameFiローンチパッドは、そうしたことを避け、ゲーム公開前にNFT等を手に入れることができます。
ローンチパッドと似たような仕組みにエアドロップという方法で新規上場前トークンを入手する仕組みもありますが、GameFiローンチパッドは、いうなればブロックチェーンゲームへの投資です。優秀なブロックチェーンゲームプロジェクトと思われるものに、あらかじめ投資し、先にそのゲームのNFTやトークンを入手するというものです。
GameFiローンチパッドによって、プロジェクトはブロックチェーンゲームに特化したインキュベーターとローンチパッドのエコシステムで資金調達し、またそこに集まった投資家やゲームファンをコミュニティ化し、ゲームを一緒に構築していくようなパートナーのような関係性を築くことが可能になります。GameFiローンチパッドにより、よりスムーズに将来有望なブロックチェーンゲームやGameFiが誕生することが期待されています。
GameFiの課題
GameFiの課題は、常に手数料とトランザクションの処理能力といったブロックチェーンそのもののスケーラビリティ問題がつきまとっています。
特にイーサリアムをベースとするGameFiは、他のブロックチェーンサービスと同様、人気が高まれば高まるほどそれが顕著化します。現在は、イーサリアム互換の他のブロックチェーンに移行したりなど、それぞれが対応に追われている状況です。
また、人気NFTゲームの中には、NFTへの投資が過熱したブームと連動してNFTが高騰し、純粋にゲームを楽しみたいプレイヤーが初期費用を用意できずにゲームを遊ぶことすらできない状況に陥ることもしばしばです。
特に、土地を購入して何かを行うメタバースのようなGameFiでは、土地の購入にも莫大な費用がかかることも多く、投資家以外が参加できないものも少なくありません。
GameFiは、プレイヤーがゲームをプレイすることで収益化が可能な画期的なゲームである一方で、収益の面ばかりが先行し、本当にゲームを楽しんでいるプレイヤーが皆無のものがあったり、また実際のゲーム部分が面白くなかったりするというもの見受けられます。
また、初期段階で特定の暗号資産が必要になることや、暗号資産をやり取りするための知識が必要なゲームも多く、まだまだ一般のゲーマーが参加するにはハードルが高いものも多く、そうした課題の解決も待たれています。
期待が大きなジャンルの反面、こうした課題を解決した誰もが参加することができるブロックチェーンゲームの登場が待たれているのも事実です。
まとめ
ブロックチェーンゲームを始めとするGameFiは、収益化が望める反面、収益性を上げるための努力として、アイテムを購入したり、土地を購入するなど事前に投資したり、あらかじめ課金しなければならない要素も多数あります。気がつけば課金のしすぎで、収益どころか大幅な赤字を抱えるなど、いわゆるビジネス同等のリスクがあることも忘れてはなりません。
「今、○○のゲームのNFTが熱い」といった情報にも気をつけてください。特にNFTやトークンの価値は、誰かが保証してくれたものではありません。
また、NFTは価値が高騰することもあれば、予期せぬ出来事でその価値が下落することもあります。中には、ハッキングに合い、ゲームバランスを崩し、NFTが暴落するばかりか、ゲームそのものの存続が危うくなるケースも見られます。そうしたリスクがあることも知っておいてください。
さらに、NFTや暗号資産(仮想通貨)による収益化は、国によっては法の整備も完全ではありません。収益によって税金が発生するなど、そうした知識も必要不可欠のジャンルのゲームです。
GameFiは、先進的かつ非常に面白いジャンルではあり、その可能性は注目に値しますが、リスクがゼロではないことも常に理解しておきましょう。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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