ビットコインと金(ゴールド)の関係性
発行総量に上限のあるビットコイン(BTC)は、希少性が高く、また証券等の金融資産のように世界情勢や景気・経済動向にあまり左右されない価値変動があることから、金融市場においては埋蔵量の限られた金(ゴールド)と同じカテゴリーの金融資産に分類されることも少なくありません。
数ある暗号資産(仮想通貨)の中で、最も時価総額が高いビットコインは、よく実際の金(ゴールド)の資産・機能価値になぞられて「デジタルゴールド」と呼ばれることがあります。
経済動向の影響を受けにくいとされるビットコインは、金(ゴールド)と同様に市場が不安定なときの資産の逃避先として、投資家に注目されています。
この記事では、ビットコインは金(ゴールド)のような金融資産となるデジタルゴールドになり得るのか、ビットコインの特性と実際の金(ゴールド)を比べながら、その関係性について考察します。
ビットコインと金(ゴールド)の類似点
ビットコインには発行総量が2100万BTCという上限があり、元々希少性が高くなるように設計されている点が金(ゴールド)の希少価値と似ているといわれています。
これまで人類が採掘してきた金(ゴールド)の総量は約18万トンといわれています。また、まだ採掘されていない地中の埋蔵量は約5万トンといわれていますが、現在、毎年3000トン程度の金(ゴールド)が採掘され続けていますので、10数年後には枯渇してしまうといわれています(諸説あります)。
金(ゴールド)の特徴は、再生不可能な資源であり枯渇性資源であることから、市場供給量が限られているという点です。
ビットコインは、マイニング(採掘)という方法で手に入れられる点も、金(ゴールド)の採掘を模して作られているといっていいでしょう。ただし、ビットコインのマイニングは、金(ゴールド)のように物理的に採掘をするわけではありません。あくまでも概念的なイメージです。
ビットコインは、上記のように金と似た性質を持っているのです。
ビットコインと金(ゴールド)は機能面でも共通
ビットコインと金(ゴールド)は、以下のような機能面においても共通点が多くあります。
- 経済的価値
- 決済・交換手段
- 偽造不可能
- 劣化しない
- 採掘コストが高額
まず1点目として、ビットコインも金(ゴールド)同様に経済的な価値があり、法定通貨との交換が可能です。どちらも経済的な交換手段(流通手段)として機能します。
金(ゴールド)は世界中に取引市場があり、いつでも世界各国の法定通貨と交換することができます。ビットコインを始めとする暗号資産(仮想通貨)も、暗号資産交換業者を介し世界中で現地の法定通貨と交換することができます。
2点目は、ビットコインは決済手段として他の商品やサービスと交換できることです。法定通貨と同様の交換手段の機能を持っています。
3点目は、ビットコインと金(ゴールド)はほぼ偽造不可能なことです。偽物の金製品もありますが、本物の金(ゴールド)を作り出すことはできません。この点もビットコインと金(ゴールド)の共通点といえます。
4点目は、どちらも劣化しないことです。ビットコインは、デジタルデータなので、法定通貨の紙幣等のように劣化したり欠損したりすることがありません。金(ゴールド)もまた経年劣化がありません。
最後に、新規入手する際の採掘コストが高いのも共通点です。現在、新規発行されるビットコインをマイニングによって手に入れるには、計算能力の高いコンピュータと膨大な電力を必要とするため、高コストになっています。金(ゴールド)も、少ない鉱脈から新たに採掘するにはコストがかかります。
デジタルゴールドという安全資産
上記のような理由の他に、金(ゴールド)と似た「安全資産」であるといわれる資産的価値などから、ビットコインはデジタル版の金(ゴールド)として、「デジタルゴールド」と呼ばれることがあります。
世界の金融情勢や経済状況の影響を受けにくい価値を持つビットコインは、機関投資家らが金(ゴールド)と同様にビットコインをインフレヘッジとして資産ポートフォリオに組み込むようになってきました。
国家の経済不況や法定通貨の価値低下といった状況下においてもビットコインの価格は変動しにくく、金融機関等を介さずに資産の移転が可能なことから、資産の逃避先として注目を集めているようです。ビットコインのこうした「安全資産」として機能する点は金(ゴールド)と似ている要素であるとして、デジタルゴールドと呼ばれるようになったゆえんでもあります。
現物資産としての歴史がある金(ゴールド)は埋蔵量が少なく、採掘する以外に増えることがありません。ほぼ総量が把握されているため、その希少性に人気が高まり、価格が上昇しています。
ビットコインも発行総量の上限が2100万BTCと決まっており、それ以上は一切発行されないことから、その希少性が金(ゴールド)と似ています。そのためビットコインの需要や人気が高まれば高まるほど、その価値は上昇します。
昨今の新型コロナウイルスによる感染症の拡大や、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻などから世界経済全体が不安定になっており、証券や外為市況など一般的な金融市場はしばらく乱高下が続いています。しかし、そうした金融市場とは異なる値動きをするビットコインや金(ゴールド)は、安全資産としてますます注目が集まっています。
ビットコインと金の価格は逆相関関係
価格変動の傾向として金(ゴールド)は、世界経済が不安定になることで人気が高まる傾向にあります。一方のビットコインは、金(ゴールド)とは逆相関にあり、逃避的な資産として補完的な関係性にあるといわれています。
これまでのビットコインと金(ゴールド)の共通点を踏まえると、両者の関係は正の相関となるはずですが、実際は負の相関になっています。その要因のひとつは、ビットコインの「高いボラティリティ」にあると考えられます。
安全資産としての括りで見るとすれば、運用において急変リスクを避けるために乗り換えを行っている可能性があります。例えば、ビットコインが急落した場合にビットコインを売り、金(ゴールド)を買うといった行動です。これはビットコインと金(ゴールド)間に負の相関関係を引き起こす一因になります。
2021年BTC対GOLD比較図(Investing.comより当社作成)
※XAU=GOLD(ゴールド)の通貨コード
いずれにしてもビットコインと金(ゴールド)は、世界情勢が不安定な状況下における資産防衛の運用先として認知されるようになりました。2022年に入って、ロシアのウクライナ侵攻後、株式市場等は乱高下を繰り返し、金(ゴールド)は過去最高値を記録し、ビットコインはやや低迷(横ばい)している状況が続いています。
関連コラム:
「BTC(ビットコイン)とGOLD(ゴールド)は逆相関、逃避的な資産として補完的か」
金(ゴールド)連動型の暗号資産の登場
金(ゴールド)とデジタル通貨の関係性においては、2022年になってから金(ゴールド)と連動する金連動型ステーブルコインにも注目が集まっています。
ステーブルコインは、価格変動が少なくなるように設計されたデジタル通貨の一種です。ビットコインを始めとする多くの暗号資産(仮想通貨)は、ボラティリティの高さから決済手段に利用するには非常に使いにくいことから、ステーブルコインという考え方が生まれました。
通常のステーブルコインは特定の法定通貨と価格が連動(ペッグ)する仕組みを持ちます。その価値は安定しており、連動する法定通貨の代替として機能し、決済等に利用できます。ドルとペッグするものや円とペッグするものなど、現在、様々な法定通貨と連動するステーブルコインが多数登場しています。
金(ゴールド)と連動する金連動型ステーブルコインは、金(ゴールド)の価値にペッグします。価格連動の仕組みは、発行されるステーブルコインの量と同等の金(ゴールド)を発行体もしくは第三者が保管し、ステーブルコインの価値を担保します。つまり、ステーブルコインは多くの暗号資産とは異なり、担保が価値を保証する裏付けになっているのが大きな特徴です。
現物の金(ゴールド)を担保とする金連動型ステーブルコインは2020年頃よりいくつか登場していますが、新型コロナウイルス感染症拡大やロシアによるウクライナ軍事侵攻などから世界経済全体が不安定になっており、金(ゴールド)の価格が過去最高値を更新し続けていることから、2022年に入り金連動型ステーブルコインの価値も大幅に上昇しています。中でも特に、テザーゴールド(XAUT)の時価総額は2021年1月以来4倍増、パックスゴールド(PAXG)は5倍増を記録しています。
金連動型ステーブルコインは、実際に金(ゴールド)を購入するよりも簡単で、かつ金(ゴールド)を物理的に保有する必要がないことから、金(ゴールド)の新しい投資方法の一つであるという意見も聞かれます。
ただし、金連動型ステーブルコインに対する投資にリスクがないわけではありません。なぜならば、実際に担保として金(ゴールド)が本当に保管されているかを投資家は自ら確認することができず、発行者の言葉を信じるしかないからです。そういう意味においては、金連動型ステーブルコインはどこが発行しているのか、発行者は信頼のおける団体であるかなど、見極めが必要です。今後も金連動型ステーブルコインは多数発行されることが予想されますので、こうしたリスクを念頭に置いてください。
まとめ
不安定な世界情勢が続く2022年5月現在、ビットコインはデジタルゴールドであるという意見は今も根強く残っていますが、ビットコインの価格は一時期よりも低迷しています。金融市場全体も乱高下を繰り返しているため、ビットコインの価格変動が一時的に株式と類似し、その相関性が高まっているのではないかという意見も聞かれます。しかし、金(ゴールド)は相変わらず好調であることから、前述のビットコインは金(ゴールド)とは逆相関にあるという関係性も続いています。これをどう分析するかは非常に難しい局面です。
こうした世界情勢下においては、価値に裏付けのないビットコインに今後も価格の変動が見られることは不思議ではありません。しかし、それは世界経済全体にいえることでもあります。
むしろ、こうした時期の肯定的な意見や否定的な意見は、論者の主観であると捉えることが重要です。不安定な世界情勢下における意見や価格変動に一喜一憂するのは得策ではないでしょう。根拠のない意見を鵜呑みにすること自体がハイリスクです。
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