暗号資産(仮想通貨)トロン(TRX)とは?将来性や今後を解説

トロン
将来性
2022-07-27 更新

トロンとは

トロン(TRX)は、クリエイターが作成するコンテンツに対して正しく対価が支払われる事で、クリエイターに直接利益が還元される仕組みを目指しているプラットフォームです。この「TRONプラットフォーム」では、投げ銭モデルを採用しており、そこでの決済に暗号資産(仮想通貨)のTRXが利用されます。プラットフォーム上では、クリエイターが独自トークンを開発可能で、DApps(分散型アプリケーション)が数多く作成されています。

クリエイターに利益を還元する仕組みというと、YouTubeなどの他のプラットフォームも同様の機能があります。しかし、トロンは分散型(非中央集権型)プラットフォームを構築しています。トロンでは、プラットフォーマーに手数料を取られるような広告収入ではなく、クリエイターがユーザーから直接収入を得るモデルを構築でき、よりユーザーファーストのコンテンツを作成できます。

インターネットの分散化を目的に、過去にリップルチャイナの事務所長をしていたジャスティン・サン氏が2017年9月にTRXの管理・運営を行うトロン財団を設立し、2018年5月にトロンのメインネットを立ち上げました。2022年1月にトロン財団は解散し、コミュニティが主導する「トロンDAO」が管理・運営しています。

トロンは、2017年に行われたICOで70億円を調達したことで話題になりました。ジャスティン・サン氏はツイッターなどでの情報発信を頻繁にしているなど、暗号資産業界の著名人として知られています。

トロンの仕組み

トロンは、イーサリアム(ETH)と同様にスマートコントラクト機能をもち、DAppsの構築に多く使われています。さらに、処理能力がビットコイン(BTC)やイーサリアムに比べて高いことが特徴です。ビットコインは毎秒の処理件数が5件、イーサリアムは毎秒25件ですが、トロンは2000件と、処理性能に優れています。そのため、ステーブルコインやウォレット、ストレージ、暗号資産交換所、レンディング、流動性マイニング、クロスチェーンアプリケーション、オラクル、ソーシャルメディア、ゲームなど多様なDAppsが構築されています。

クリエイターは、上記のようなコンテンツを作成する際に、TRCというトロン独自の規格に沿ったトークンを発行し、トークンのICOを行うことによって資金を調達できます。こうした独自トークンはトロンと交換できる仕組みになっており、クリエイターが作るコンテンツが豊富になり、人気が出るほど、TRXの価格にも反映されていきます。

コンセンサスアルゴリズムにはDPoSを採用

コンセンサスアルゴリズムにはデリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク(Delegated Proof of Stake:DPoS)を採用しています。コンセンサスアルゴリズムとは、暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンがブロックを追加する際のルールのことです。暗号資産の保有量によってブロックの承認率を決定するプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)の一種であるDPoSでは、投票権を持つ人に委任(Delegate)された人がブロックを生成します。

PoSは資産を多く持つ人がブロックを承認しやすい仕組みであるため中央集権化の課題が指摘されていますが、DPoSは委任という形を取ることで、より分散化を図っています。

トロンの将来性

トロンは、2017年から2027年までの10年間で6段階の開発が進められている長期プロジェクトです。各ステージについて解説します。

【トロンの10年間のロードマップ】
Exodus(旅立ち) 2017年8月〜2018年12月
Odyssey(冒険) 2019年1月〜2020年6月
Great Voyage(大航海) 2020年7月〜2021年7月
Apollo(アポロ) 2021年8月〜2023年3月
Star Trek(スタートレック) 2023年4月〜2025年9月
Eternity(永遠) 2025年4月〜2027年9月

Exodus

ピアツーピア(P2P)の分散型ストレージに、コンテンツを無料でアップロードする機能を導入する段階です。分散型のファイル共有システムを提供することが目標でした。

Odyssey

コンテンツ制作を促進するための金銭的インセンティブを導入しました。クリエイターと消費者で構成されるコミュニティの成長を促進することを目指した段階です。コンテンツ制作の報酬は、ボットによって簡単に水増しされる可能性のあるビューやクリックではなく、投げ銭方式を導入しました。

Great Voyage

マイニングに関して、DPoSとビザンチン障害耐性(PBFT)の長所を合わせたコンセンサスアルゴリズムの開発を行い、ブロック検証時間を57秒から3秒へと短縮させました。さらに「TICP」という、異なるブロックチェーン間でのトークンの交換を可能にする仕組みを導入しました。この段階には金融機関や企業向けのブロックチェーンソリューションの開発も行われています。

Apollo

コンテンツ制作者が独自トークンを発行できるようにする仕組みを導入する段階です。

Star Trek

分散型ゲームと予測プラットフォームの実用化を目指す段階です。

Eternity

ゲーム業界のさらなる分散化を目指す最終段階です。このフェーズでは、クラウドファンディングなど、コミュニティの成長に応じて資金調達やマネタイズができるようにします。

2022年4月時点では第4段階の「Apollo」が進められています。ロードマップに示されているように、今後はオンラインゲームに関してプラットフォームの充実が図られていくようです。ジャスティン・サン氏は2021年8月にもファンドを組成し、「GameFi」プロジェクトに投資していくことを表明しています。今後、ゲームに関して市場が盛り上がっていけば、トロンにも影響が出てくるでしょう。

さらにトロンネットワーク上では、ステーブルコインとして時価総額が最大のテザー(USDT)を発行しています。2021年4月にはイーサリアムネットワーク上で発行されるUSDTを抜いて最大の発行プラットフォームとなったことが話題になりました。

今後の期待できるポイント

トロンの期待できるポイントとして、大手企業との提携でユーザー基盤が拡大する可能性があげられます。これまでにもノルウェーのソフトウェア開発企業や韓国の大手総合電機メーカー、シンガポールのシェアサイクル企業などさまざまな企業との提携を発表しています。各サービスにトロンが使われるようになれば、需要が増し、価格にも影響してくることが考えられます。

さらにステーブルコインの発行プラットフォームとして存在感を示していくことも期待できるポイントです。2022年4月には、TRXにペッグするアルゴリズム型ステーブルコインのUSDDのローンチを発表しました。ビットコインやイーサリアムといった主要な暗号資産が下落するなかで、発表を好感し、トロンの価格は十数%も上昇しました。

これまでの価格推移

トロンのこれまでの価格推移についても見てみましょう。

(TRX/JPYの価格推移)

トロンは2017年末〜2018年初頭の暗号資産バブルの時代に史上最高値を記録しました。その後は狭いレンジ内での取引が続き、2021年4月〜5月や同年11月に暗号資産市場全体が好調だった時期と合わせて上昇しました。この動きから、市場全体の動きに影響されると考えられます。

一方で、ゲームに焦点を当てているその他の暗号資産と比べると、やや動きが鈍い印象があります。2020年ごろから分散型金融(DeFi)プロジェクトが注目され、2021年にはNFTも台頭する中で、類似プロジェクトにやや押され気味の印象があります。

まとめ

トロンは中央集権型のコンテンツプラットフォーマーへの中間手数料をなくし、クリエイターに正当な対価を支払うことを目指したプラットフォームです。

DeFiやNFTといった、新たに注目されてきたプロジェクトに押され気味ですが、10年間続くロードマップでもようやく中盤に差し掛かった段階であり、今後の開発状況次第では注目が再び集まる可能性があります。

特にゲームはブロックチェーン全体においても盛り上がっていく可能性があるので、今後の動きに注目しましょう。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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