ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の確定申告方法を解説
ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)を売買して利益が発生した場合には、翌年の一定期間内に自分で利益額を計算して確定申告し、納税する必要があります。
ここでは、2021年10月現在の税制において、暗号資産取引の利益が発生した際に確定申告する所得の扱いや違反した時の罰則についてお伝えします。

確定申告とは?

確定申告とは、毎年1月〜12月までの1年間で得たすべての所得を計算し、翌年の2月16日〜3月15日(所得税の場合)の間に国に支払う税金を申告・納税しなければいけない手続きのことをいいます。
給与所得のある会社員であれば、会社から発行された源泉徴収票が確定申告の際に必要となります。
若しくは、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の投資で得た利益を計算して、確定申告会場に行けば現地で申告用紙に記入することもできます。また、マイナンバーカードとそれを読み込むカードリーダーをお持ちであれば、自宅からでも国税庁の国税電子申告・納税システムであるe-Taxを利用してインターネットによる方法だけで申告を完了することができます。
この方法で申告するためには、マイナンバーカードとそれを読み込むカードリーダーが必要となります。
ビットコインは確定申告が必要

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の取引をした結果、利益が出た場合には確定申告が必要となります。
一般的に、会社員である場合、会社から支払われている給料は、会社から一括して税金など源泉徴収されており、会社が税務署に税金を納めているため確定申告する必要がありません。
また、株式投資では、口座開設時に特定口座を選択していれば利益が出ても自動的に20.315%(2021年11月時点)が源泉徴収で引かれており、こちらも確定申告する必要がありません。
一方、暗号資産には給料や株式投資のような源泉徴収制度が整備されていないため、投資の結果得た利益は自分でその利益額を計算して、申告する必要があります。
どのくらいの利益があったら確定申告する必要がある?
給与収入のある会社員の場合、1月〜12月までの1年間におけるビットコインや、その他のアルトコインによる投資で得た利益が20万円を超えた場合に確定申告する必要があります。
また、全く収入のない主婦の方などは利益が38万円を超えた場合、確定申告をする必要があります。
ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は雑所得扱い

所得には、「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」「雑所得」の10種類があります。
暗号資産(仮想通貨)による利益は雑所得扱いです。副業でアフィリエイトやフリマアプリで利益を出た場合も雑所得として分類されることから、これらの利益を合わせて年間で20万円以上になれば、確定申告を行わなければなりません。
また、暗号資産取引における雑所得は、以下の計算式で算出します。
総収入金額-必要経費=雑所得
総収入金額は、暗号資産を売却した時の時価、必要経費はその暗号資産を取得した時の価格です。
ビットコイン取引による雑所得で必要経費にできるもの
暗号資産による雑所得では、暗号資産を取得した時の価格以外に、必要経費にできるものがあります。
具体的には、暗号資産交換業者を利用して売買した時にかかる売買手数料や、勉強するために購入した書籍代、セミナー費用、また暗号資産の取引に関する電話料金、インターネット関連費用、暗号資産の取引を行うパソコンなどが該当する可能性があります。
インターネット関連費用や電話料金、パソコンなどは暗号資産の取引に100%使っているわけではないので、使用頻度に応じて按分します。
ビットコイン取引による雑所得にかかる税率
ビットコインなどの暗号資産の取引で得た利益から雑所得を算出したら、給与所得など、他の所得と足し合わせて税率を掛け合わせ、納税する金額を計算します。
所得税は累進課税税率となっており、暗号資産による雑所得と、給与所得などの他の所得とを足し合わせた金額が高ければ高いほど税率は高くなります。
所得税の計算表
所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円〜194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円〜329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円〜694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円〜899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円〜1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円〜3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
所得金額が194万9000円までだと税率は5%ですが、4000万円超になると税率は45%にもなります。
税率45%だと、1000万円の利益が出てもその内450万円を所得税として支払わなければなりません。
雑所得の他に課される可能性のある税金

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の投資で得た利益に対しては、雑所得以外に以下のような税金が課される可能性があります。
- 住民税
- 譲渡所得
住民税
住民税は1月1日時点で該当の市区町村に住所がある方に対して課される税金で、所得税の計算で算出した額に一律10%が住民税として課されます。
所得が4000万円超になると45%の所得税が課されるとお伝えしましたが、これに住民税10%が加算されるため、足し合わせて55%の税金を納めなければならないこととなります。
譲渡所得
ビットコインなどの暗号資産で得た利益に対しては通常雑所得扱いで計算しますが、人から譲り受けた場合や、給料の支払いとしてビットコインを得た場合などは譲渡所得で計算します。
雑所得を申告しなければならない条件は所得が20万円以上となっていますが、譲渡所得は50万円以上が条件となります。
確定申告の方法

確定申告を行う方法を具体的に説明します。
確定申告に必要な書類
確定申告をするために必要な書類は次のとおりです。
- 確定申告書類(e-Taxの場合は不要)
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- マイナンバー確認書類
- 暗号資産(仮想通貨)取引における年間取引報告書
確定申告の手順
確定申告書類は、国税庁のウェブページで作成でき、計算などもすべて自動で行うことができます。
手順として以下のとおりです。
1.国税庁のウェブページにアクセス
国税庁ウェブページの「確定申告書等作成コーナー」から「作成開始」をクリックします。

(2021年11月29日アクセス時点の国税庁ウェブページ)
2.提出方法を選択
提出方法は「e-Taxで提出」と「印刷して提出」の方法があります。e-Taxには「マイナンバーカード方式」の他に、マイナンバーが普及するまでの暫定的措置として「ID・パスワード方式」の2種類があります。
e-Taxで提出する場合は「事前準備セットアップ」をダウンロードする他、ICカードリーダライタ又はマイナンバーカード読取対応のスマートフォンを準備する必要があります。

(2021年11月29日アクセス時点の国税庁ウェブページ)
次からは「印刷して提出」の方法を解説します。
3.申告書の選択
「作成する申告書類等の選択」ページで「所得税」を選択します。

(2021年11月29日アクセス時点の国税庁ウェブページ)
4.基本情報入力
生年月日など基本情報を入力し、質問に答えます。暗号資産取引で収入が出ていれば「はい」と回答します。

(2021年11月29日アクセス時点の国税庁ウェブページ)
5.収入金額・所得金額の入力
「収入金額・所得金額の入力」の画面で雑所得の「その他」を選択し、「雑(その他)所得の入力」から各項目を埋めていきます。

(2021年11月29日アクセス時点の国税庁ウェブページ)
6.その他の項目を入力
次に給与など、暗号資産取引以外の所得を源泉徴収票に基づいて転記しましょう。
その後控除項目などを入力すれば、計算結果が表示され、申告書類が完成します。
e-Taxを利用する場合は、上記2.で「e-Taxで提出」を選択し、マイナンバーカードを読み取った後に登録情報を確認(初期設定をしていない場合は案内に従って設定を行います)して手続きを進めます。データ入力は「印刷して提出」と同様に入力します。
ビットコイン取引の申告をしなかったらどうなる?

暗号資産交換業者は国税庁から情報を求められれば、データを渡すと考えられます。さらに2021年からマイナンバー確認書類の提出が義務付けられました。そのため、これまでに取引で利益を得ているにも関わらず、申告漏れがある場合には国税庁からの監査があるかもしれません。
海外の交換業者を利用している場合も申告漏れは発見されると考えられます。国税庁は租税条約等に基づく情報交換により、海外の税務当局より情報提供を要請することができるためです。
申告漏れの罰則は?
ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の利益に対して、20万円を超える利益がある場合に確定申告をしなかった場合、以下のような罰則があります。
- 延滞税
- 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金
- 加算税
それぞれの罰則について解説します。
延滞税
定められた期日までに確定申告を行わなかった場合、納税する日までに、延滞税として7.3%〜14.6%が課されます。
納税が遅れた金額が大きければ大きいほど、期日から遅れれば遅れるほど多額の税金を支払わなければいけなくなります。
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金
脱税したことに対する税法違反として、「5年以下の懲役」又は「500万円以下の罰金」若しくはその両方の罪に処せられます。
加算税
納税しなければならないのにも関わらず、納税していないことを自己申告せずに税務署から通告を受けた場合には加算税が課されます。
確定申告したものの、その額が小さかった場合には「過少申告加算税」が、申告をしなかった場合には「無申告加算税」が、事実を隠蔽するなど悪質なケースでは「重加算税」が課されます。
過少申告加算税は10%、無申告加算税は15%、重加算税は35%〜40%の税金を追加で支払わなければなりません。
申告する金額の差異や、期日に遅れることのないよう注意が必要です。
ビットコインなどの暗号資産の確定申告は会社に知られる?
会社が副業を禁止しているなど、給与以外に収入があることを会社に知られたくない方もいらっしゃるでしょう。
確かに、暗号資産投資で利益が発生し、確定申告した際には納めるべき住民税が増えてしまうため、会社に知られてしまう可能性があります。
しかし、住民税の支払い方は給与に対して課される税金と合わせて納付する特別徴収と、給与とは別に納付する普通徴収とを選ぶことができることになっています。
確定申告時に、住民税を普通徴収の方法で納めるようにしておけば確定申告したことが会社に知られてしまうことはありません。
節税する方法

暗号資産(仮想通貨)の税金は所得が大きいと莫大な金額になる可能性があります。
納税しなければならない税金を少しでも抑えるために、節税の方法を知っておくことが大切です。
節税と脱税の違い
節税の方法についてお伝えする前に、節税と脱税の違いについて考えておきましょう。
いくら税金を安くするためとはいえ、法律に違反して脱税してしまっては、後で加算される税金がより大きなものになる可能性もありますし、最悪の場合、懲役刑に科されます。
まず、脱税は課税される条件を満たしているのにもかかわらず、故意に隠して課税を逃れようとする行為のことを指します。
例えば、売上の一部を隠したり、架空の経費を計上したりして所得を減らす行為が脱税に該当します。
一方で、節税は法律の範囲内で税負担を減らそうという行為を指します。
例えば、必要経費に計上できるものの領収書を保管しておき、適切に計上することがこれにあたります。
節税の方法
ビットコインなどの暗号資産に関する節税法としては、以下のようなものがあります。
- 暗号資産を保有し続ける
- 年末に損失が出ている暗号資産を売却する
- 毎年20万円ずつ売却する
それぞれの節税方法についてみていきましょう。
暗号資産を保有し続ける
暗号資産はどれだけ値上がりして含み益が積み上がろうと、日本円や別の暗号資産に換金しない限り課税対象となることはありません。そのため、保有し続けていれば節税になるといえます。
年末に損失が出ている暗号資産を売却する
ビットコインやアルトコインなど暗号資産の取引で得た利益や損失は、1年間の間であれば差し引きすることができます。
ある暗号資産では利益が出ているものの、別の暗号資産では損失が出ているという場合、損失の出ている暗号資産を日本円に換金することで、納税額を少なくすることができます。
毎年20万円ずつ売却する
給与所得者だと、給与以外の所得が20万円以下であれば確定申告する必要がありません。このことを利用して、毎年20万円ずつ売却することで税金の発生を抑えることができます。
この他にも利益が高額になる場合は法人化を検討することも可能です。法人化にはある程度の費用が必要ですが、事業運営のための必要経費を計上することもできます。
まとめ

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の投資は、大きな利益を得られる可能性がありますが、雑所得扱いのため、最大で55%もの税金が課されてしまいます。
暗号資産の取引で利益が出た場合、正しく確定申告をして、しっかり納税するのはもちろんですが、少しでも税負担を少なくできるよう法律の範囲内で節税に取り組むことは大切なことです。
ビットコインの取引に掛かる税金について詳しく知りたい方は「ビットコインで利益が出た場合の税金対策!納税額はどのように決まるのか」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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