暗号資産(仮想通貨)におけるスナップショットとは?過去の事例や注意点を紹介
暗号資産(仮想通貨)について調べていると、時々スナップショットという言葉を耳にすることがあります。
スナップショットといわれて真っ先に思い浮かべるのは、日常のひとコマを切り取り撮影したスナップ写真ではないでしょうか。暗号資産で使われるスナップショットという言葉は、それとは少し意味が異なります。
ある瞬間のひとコマを切り取るという意味では、暗号資産のスナップショットもスナップ写真に似ていますが、暗号資産のスナップショットは、スナップショットの対象となる暗号資産のその地点のすべてのアドレスの暗号資産保有状況等を記録することを指します。
スナップショットで記録したデータは、参照することでいつでもその時点の暗号資産の保有者や保有量等を確認することができるのです。
では、なぜ暗号資産はスナップショットを行うのでしょうか?
この記事では、暗号資産のスナップショットの目的について、これまでにスナップショットを実施したことのある暗号資産の具体的な実例をあげながら詳しく解説していきます。
暗号資産(仮想通貨)におけるスナップショットとは?
暗号資産(仮想通貨)のスナップショットは、暗号資産の発行者や開発グループが暗号資産保有者に対して何かの権利を付与する際に、その権利者を確定するために行います。
スナップショットでは、既存のすべてのアドレスと取引、手数料、残高、メタデータなど関連データを含むブロックチェーンの台帳全体の内容が記録されます。それによって、記録されたデータを参照することで、いつでもスナップショット時点の暗号資産の保有者(ウォレットアドレス)や保有量など、様々なことがわかるようになります。
スナップショットによって付与される権利は、暗号資産やその時々によって異なりますが、暗号資産保有者に対して何かを実行したい場合は、スナップショットが最も有効かつ公平な手段になります。スナップショットは何かしらの権利が付与される権利者を確定するイベントと考えていいでしょう。
通常、スナップショットが行われるタイミングは、暗号資産の発行者らがブロックチェーンのブロック高で指定します。スナップショットを行うブロック高をあらかじめ設定し、設定したブロック高にブロックチェーンが実際に到達した時点でスナップショットが実行されます。
ちなみにブロック高というのは、ブロックチェーンの最初のブロック(ジェネシスブロック)を起点に、そのブロックから何番目のブロックにあたるかを指します。
暗号資産のスナップショット実施日は、予定日としておおよその日が発表されることが多く、実際に発表される際は「スナップショットは○月□日頃になります」と曖昧な表現になります。また、実施される時刻については、さらに不確定な要素です。
その理由は、スナップショットが実行されるのがブロック高によって決定することに由来します。ブロックチェーンのブロック高は、暗号資産の取引が承認されるタイミングでひとつずつカウントされて増えていきます。ビットコイン(BTC)であれば、約10分に1回という間隔で取引が承認されてブロックがひとつ増えますが、ブロックが追加されるタイミングは取引量によって多少前後するため、スナップショットに設定されているブロック高にブロックチェーンが到達するのは、あくまでもおおよその時間でしか推測できません。
なぜスナップショットが行われるのか
では、どのようなときにスナップショットが行われるのでしょうか?
スナップショットは、基本的に新たに暗号資産(仮想通貨)が配布される際に行われることがほとんどです。すでに暗号資産を保有している人に対して、「何らかの事情」で新しい暗号資産が配布される場合に、その保有者を決定するためにスナップショットが行われます。
「何らかの事情」というのは、暗号資産やその時々によってまちまちだからです。
たとえば、暗号資産はハードフォークをすることで新しいブロックチェーンや暗号資産が誕生する際もスナップショットが行われることがあります。ハードフォークする際に誕生する新しい暗号資産の配布先を決定するためです。
また、ハードフォークではなく、保有している暗号資産を発行するブロックチェーンが、新規プロジェクトを立ち上げて新しい暗号資産を発行するような場合も、保有者に対して新たな暗号資産が配布されることがあります。こうした場合も、スナップショットで権利者を確定します。新規プロジェクトは、サイドチェーンのこともあれば、DeFiのようなサービスの場合もあります。
暗号資産の新規発行以外にも、エアドロップといってキャンペーンの一環で暗号資産が配られるイベントがありますが、このときエアドロップの条件として「当該暗号資産を保有していること」といった条件が設定されている場合があります。この保有状況を把握するためにもスナップショットは行われます。ただし、エアドロップでのスナップショットは、暗号資産の発行者ではなく、暗号資産交換業者などそのキャンペーンの主催者が行うこともあります。その場合は、交換業者内など主催者側が対象とするウォレットに暗号資産を保有していることが権利の対象になります。
暗号資産のスナップショットは、新たに暗号資産を配布する以外にもごくまれにブロックチェーンの課題解決や新規機能提案等を議決する際の投票権の獲得にも実施されることがあります。ブロックチェーンの中には、保有する暗号資産の量によってブロックチェーンの将来を決定する投票権が与えられるものも多く存在します。そうした暗号資産では、議案によってはスナップショットを実施し、投票権が付与されることもあります。
スナップショットに関する注意点
暗号資産(仮想通貨)のスナップショットは、どんな暗号資産でも行われるというようなものではありません。また、新しい暗号資産が誕生するからということで、必ずスナップショットが行われるとも限りません。
スナップショットについては、暗号資産のニュース等を気にとめておきましょう。すでに暗号資産を保有している場合は、自身が利用している暗号資産交換業者からのお知らせやニュースをチェックするのもいいと思います。
もしも自分が保有している暗号資産でスナップショットが行われることになった場合は、まずスナップショットの実施予定日を確認しておくことが大切です。スナップショットの実施予定日は前述した通りおおよその日時であることから、少なくとも予定日の前後数日は注意しておきましょう。また、発表されている日時が海外時間の場合もあるので気をつけましょう。
スナップショットによって何らかの権利が与えられる場合、スナップショットが実施されるまでは暗号資産を確実に保有しておかなければなりません。スナップショット時の権利確定の条件として、暗号資産の保有量も条件のひとつになっていることもありますので、そこもしっかりと確認しておきましょう。スナップショット時に暗号資産を保有していたかどうかは大切な条件です。スナップショットが実際に行われたかどうかも、最後まで確実に確認しておきましょう。スナップショット後であれば、保有している暗号資産を売却しても権利は確定しているので問題はありません。
ちなみにスナップショットは、あくまでも権利確定のために実行されるものです。実際に新しい暗号資産が配布されるのはスナップショット時ではなく、その後になります。
また、暗号資産のスナップショットによる新規暗号資産の配布は、暗号資産交換業者によってもその対応が異なります。新規暗号資産については、それまでに取り扱いのない暗号資産になることがほとんどのため、暗号資産交換業者が取り扱わないこともあります。その点にも注意しておきましょう。
暗号資産がスナップショットを実施する場合は、多くはブロックチェーン関連のアップデートなどが含まれていたり、また新しい暗号資産が誕生したりするようなタイミングですので、少なからずその暗号資産の市場に対して影響があります。スナップショットの前後は暗号資産の価格が不安定な状況になることが多いと認識しておいたほうがよいでしょう。
暗号資産交換業者によっては、スナップショット予定日の前後は、該当する暗号資産の入出庫や取引が制限されることもあります。いずれにしても、スナップショットが実施される暗号資産を保有している場合は、この時期は余裕を持って取引を行うようにしましょう。
これまでのスナップショット事例
これまでスナップショットを実施したことがある暗号資産(仮想通貨)といえば、有名なところではビットコインキャッシュ(BCH)やネム(XEM)が有名です。
ビットコインキャッシュは、ビットコインから分裂をして誕生した暗号資産です。そのためハードフォーク時にスナップショットを残し、ビットコインと同量のビットコインキャッシュがビットコイン保有者に対して配布されました。
また、ビットコインキャッシュは、ビットコインキャッシュの仕様に関して、Bitcoin ABCとBitcoin SVという団体がそれぞれ独立したアップデート仕様を提案し、意見が対立したことから、2018年11月に2度目の分裂が起こり、その結果、Bitcoin ABCとBitcoin SVによる2つのブロックチェーンが誕生することになってしまいました。
ハードフォーク後は、Bitcoin ABCの暗号資産をビットコインキャッシュとし、Bitcoin SVの暗号資産をビットコインSVとし、それぞれ独立した暗号資産として流通するようになりました。このときも、スナップショットは行われています。
ネム(XEM)は、バージョン2となるSymbolと呼ばれるプロジェクトを立ち上げ、大型アップデートを実施し、新たなブロックチェーンをローンチしました。ローンチの際にSymbolは新たな暗号資産ジム(XYM)を誕生させています。
このジム(XYM)は、それまでネム(XEM)を100XEM以上保有していた保有者に対して発行されることになり、そのスナップショットを2021年3月12日(13時26分34秒)に実施しました。
ネム(XEM)のスナップショットでは、自身のウォレットでネム(XEM)を保有している人は、オプトインという方法でネム(XEM)と同等のジム(XYM)を受け取ることができました。また、暗号資産交換業者にネム(XEM)を保有していた人は、Symbolに対応する交換業者においては、特に何も手続きを必要とせず、ジム(XYM)を受け取ることができました。
なお、DMM Bitcoinではネム(XEM)をレバレッジ取引の取扱銘柄として採用していることから、Symbol(XYM)につきまして、当社レバレッジ取引の取扱銘柄として採用すべく、法令諸制度において必要とされる社内審査及び関係団体等への取扱申請手続き等、また、取引システムへの銘柄追加に関わる機能追加等を実施してまいります。
参考リンク:
「ネム(XEM)大型アップデートに伴うスナップショット完了のお知らせ」
最近話題のスナップショット
最近では、リップル社の投資部門が出資するフレアネットワーク(FlareNetworks)が、リップル(XRP)の保有者に対して、自社プロジェクトのネイティブトークン「Sparkトークン(FLR)」をエアドロップする計画があると発表し、話題になりました。
フレアネットワークは、分散化されかつスケーリングが可能なスマートコントラクト・ネットワークを構築することができます。現在、XRPの分散型台帳XRP Ledger上にスマートコントラクト機能の実装を目指しています。フレアネットワークでは、円滑な運用のために、Sparkトークン(FLR)とSongBirdトークン(SGB)の2種類のトークンが発行され使用されます。
2020年8月10日にフレアネットワークは、XRPの保有者に対し、1:1の割合でSparkトークン(FLR)を付与するエアドロップを実施することを発表しています。その後、同様にSongBirdトークン(SGB)のエアドロップも決定しています。
すでにエアドロップ対象者については、2020年12月時点でXRPを保有していた利用者を対象にすることが決定しており、スナップショットが行われました。
なお、DMM Bitcoinを始めとする日本国内の交換業者連合に関しては、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と金融庁が2023年6月12日までにFLRの各交換業者への上場を承認した場合、フレア財団はFLRとSGBの両方を配布するとしています。
DMM Bitcoinでは、お客様に不利益が発生しない形での対応を検討しておりますことをご案内いたします。
参考リンク:
「Sparkトークン(FLR)及びSongbirdトークン(SGB)への対応方針のお知らせ」
まとめ
自身の保有する暗号資産(仮想通貨)のスナップショットについては、情報の取りこぼしがないように注意していきましょう。特に、スナップショットが行われる日時や暗号資産の保有量などの条件も要確認です。スナップショットが実施されたかどうかの確認も重要です。スナップショットが終了するまでは、権利確定の条件を確実に保持するようにしましょう。
また、暗号資産によっては何もせずに権利を取得できるものもあれば、保有のみならず権利を主張する作業が必要な場合もあります。さらには暗号資産交換業者によっては対応しないこともあります。暗号資産のスナップショットについては、暗号資産交換業者からのお知らせ等もしっかりと確認をしておきましょう。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
関連記事
-
ビットコインアドレスの仕組みとは?利用時に注意すべきポイント
ビットコイン(BTC)を受け取ったり送ったりするためには、「ビットコインアドレス」を通じたデータのやりとりが必要になります。今回は、ビットコインアドレスを取得して、ビットコインを送受信する方法やその際の注意点などを詳しく解説していきます。
-
暗号資産を安全管理!ウォレットにはどのような種類がある?
ビットコイン(BTC)を購入後の保管の仕方は大きく分けて2通りあります。暗号資産交換業者のウォレットに預けておく方法と、自分で用意したウォレットを利用する方法です。本記事では、初心者にとって使いやすいウォレットを解説します。
-
レイヤー0ブロックチェーンとは?レイヤー1、レイヤー2との違いを解説
ブロックチェーン技術のアーキテクチャー(構造・構成)について語るときに、レイヤー1、レイヤー2という用語が使われます。近年では、さらに重要な概念としてレイヤー0(Layer0)という用語使われるようになりました。この記事ではレイヤー0について、レイヤー1やレイヤー2との違いも含めて詳しく解説していきます。
-
暗号資産(仮想通貨)の基幹技術である分散型台帳技術(DLT)とは?
分散型台帳技術(DLT)は暗号資産(仮想通貨)の基幹技術です。当記事では、DLTはどのような仕組みなのか、暗号資産とDLTの関係も含めて、詳しくご紹介します。
-
コンセンサスアルゴリズムとは?ブロックチェーンで使われる代表的な種類を解説
コンセンサスアルゴリズムは、暗号資産(仮想通貨)の基盤技術となるブロックチェーンがブロックを追加する際のルールとなるコンセンサス(合意)形成を行うアルゴリズム(方法)のことを指します。本記事では、代表的なコンセンサスアルゴリズムの種類や仕組みについて詳しく解説します。
-
イーサリアムとビットコインの違いは?特徴や仕組みから解説
イーサリアム(ETH)はビットコイン(BTC)と目的や用途が大きく違なり、プラットフォームとしての利用が想定されています。イーサリアム独自の特徴を理解して、情報収集を進めていきましょう。
-
ビットコインの仕組みについて初心者にもわかりやすく解説!
取引を始めるには、最初に仮想通貨の仕組みについて知っておくことが大切です。今回は「最初の仮想通貨」と呼ばれるビットコインを例にして、仮想通貨の基礎となっている「ブロックチェーン技術」や具体的な取引方法などを解説します。
-
ブロックチェーンのトリレンマとは?DAOでの新たな問題も解説
革新的な可能性を秘めているブロックチェーン技術は、「分散性」「セキュリティ」「スケーラビリティ」の3つの要素から成り立っているとされています。この記事では、ブロックチェーンやDAOのトリレンマについて詳しく解説します。
今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン