ビットコインの価格に大きな影響を与えるクジラとは?
最近、暗号資産(仮想通貨)業界で「クジラ」という言葉を良く耳にするようになりました。特に2021年に入ってからは、「ビットコインのクジラの数が過去最多を更新」といったニュースが目にとまるようになり、その存在が注目されています。このクジラは海を泳ぐクジラではなく、ビットコイン市場(マーケット)を泳ぐクジラ、すなわちマーケットにて大口取引を行う投資家を指す業界用語で、ビットコインの大口保有者を意味します。
2020年後半頃からその数は急激に増え、市場にて大口取引が行われる機会が目立つようになり、今ではビットコインの価格に大きな影響を与えているともいわれています。
ビットコインのクジラとは、どんな存在でしょうか?市場に対してどのような影響を与えているのでしょうか?ここでは、ビットコインのクジラについて解説します。
ビットコインのクジラとは?
一般的にマーケットにおけるクジラとは、ビットコイン市場に限らず金融市場における大口投資家を指す言葉として昔から使われている業界用語です。市場によって、また扱う金融商品によって大口取引の規模は異なりますが、暗号資産(仮想通貨)界隈のビットコイン市場におけるクジラは、ビットコイン(BTC)を1000BTC以上保有する大口保有者を指すことが多いようです。1BTC=600万だとすると、約60億円と、大きな価格であるといえます。
ビットコインはすべてのトランザクション(取引)がブロックチェーンに書き込まれることから、トランザクションを追跡し分析することで、どのビットコインアドレスがどれだけのビットコインを保有しているか分かります。2021年12月14日時点で、1,000BTC以上を保有するアドレス数は2,151あります(bitinfocharts.com)。2021年になってから200を超えるクジラが誕生したことも報告されています。これは、機関投資家等の参入による大口保有者を裏付ける数字ともいわれています。2月になると、イーロン・マスク氏率いる米電気自動車メーカーのテスラが15億米ドル(約1580億円)相当のビットコインを購入したという報道もありました。また、これらをきっかけにビットコインの価格は一時的に600万円を超え、最高価格を更新しました。なお同年10月、同社は43,200ビットコインを保有していると報道されました。
テスラのビットコイン購入以外にも、米決済大手PayPal(ペイパル)の市場参入、クレジットカード会社マスターカードや米金融大手バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)が暗号資産を取り扱うといった報道が相次ぎ、暗号資産業界を賑わせています。それにあわせるようにビットコインの価格も高騰したことから、これらの大口取引案件の動きが市場価格の変動に影響を与えているのではないかという意見も聞かれるほどです。
クジラを追跡し動向を警告するアラートツール
ビットコイン市場におけるクジラの動向は無視できない存在になったことから、市場ではクジラの動向をウォッチし、大きな変化があった場合にアラートを発するサービスやツールが登場するようになりました。
暗号資産調査会社Glassnodeのようにビットコインを大口保有するビットコインアドレスを監視するサービスや、ビットコインのトランザクションをリアルタイムで監視し大口取引が行われた際にTwitterやメールによるアラートを発しその動向を追跡するサービスWhale Alert(ホエール・アラート)、またクジラの動向を可視化し市場の上昇・下降トレンドを察知するツールWhalemap(ホエールマップ)等々、クジラに関する様々なアラートツールが登場しています。
ツールによっては、ユーザーが求める情報に合わせてカスタマイズができる有料サービスもあります。これらは、あくまでも分析会社の独自調査による情報ですので、利用する場合は、自己責任で扱うようにしましょう。
クジラによる取引が市場に与えるインパクト
暗号資産(仮想通貨)の価格変動については、日頃から注意を払っている人も多いでしょう。中には大幅に変動したことを知らせるアラートツールやサービスを利用している人もいます。市場価格が大きく動いたとき、それを人によっては売るタイミングと見たり、あるいは買い増すタイミングと見たり、人それぞれ異なるでしょう。
ここで、クジラすなわち大口保有者の動向を知ることができれば、今後、その価格変動がどのような傾向にあるのかを推測できる材料になるのではないでしょうか。例えば、クジラが大量に取引を行っている場合は、しばらく価格変動が続くかもしれません。クジラの動いていない状況であれば、中長期的な不安材料にはつながらないと見て、一時的な価格変動と見ることもできます(ただし、そういった保証はありません)。
こうした価格変動要因を分析するために、クジラが一斉にポジションを保有した価格帯である「クジラ・クラスター」が注目されることがあります。前述したように、ビットコインアドレスから、クジラが購入した価格帯は知ることができます。
クジラがビットコインを安く購入した場合には、利益が出る価格帯で売却しようとします。クジラが市場を弱気だと判断した場合に、購入したポジションより上の価格で大量保有しているビットコインを一斉に手放すことがあります。そうなると価格の急落につながります。
実際に2020年3月に数日で50%ほど下落した時と、2021年2月に1日で20%ほど急落した時は同じクジラが大量売却したことが指摘されています。
一方で、クジラ・クラスターをサポートラインだと見ることもできます。プロである機関投資家が購入価格よりも下がる可能性は低いと判断したとみられるからです。また、クジラが価格を維持するために追加で購入することも考えられます。
大口保有者が増える傾向にあるビットコイン市場においては、今後はクジラの動向は無視できない存在といっていいでしょう。むしろクジラが増えれば増えるほど、その影響力は大きくなるといっても過言ではありません。
まとめ
2021年2月に入ってから上昇傾向にあったビットコインは、9日午後(日本時間)の取引で500万円を初めて突破しました。これらは、イーロン・マスク氏がTwitterのプロフィールにビットコインの絵文字を追加し、さらにテスラが15億米ドル(約1580億円)相当のビットコインを購入したという報道のタイミングでした。ブルームバーグの集計によると、ビットコインは一時7.9%上昇し、500万円超に達したといいます。ビットコインは、その後も続伸し、同年11月には一時700万円を突破しました。
暗号資産調査会社BitInfoChartの報告(2021年12月14日時点)によると、100万米ドル以上のビットコインを保有するビットコインアドレスの数は91,285 アドレスに上り、1000万米ドル以上を保有するアドレスは8,237 アドレスに到達しているといいます。ビットコインアドレスからは保有者を特定することはできませんが、大口保有者が保有するビットコインは、全体の40%を占めます。複数のビットコインアドレスに分散してビットコインを保有する投資家も存在するため、正確なビットコインの大口保有者の数を断定することはできませんが、少なくとも100万米ドル以上のビットコインを保有するビットコインアドレスがある限りは、機関投資家のような大口の投資家が存在することは間違いありません。
ビットコイン市場において、これらのクジラの数を常にウォッチすることや、また報道にあるように大手企業の暗号資産市場への参入のニュースは、今後は見過ごせない大変重要な情報といえるでしょう。
ビットコインの価格変動については、「ビットコインの価格変動を探る手がかりは?中長期相場の分析手法」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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