メタバースとは何か? 暗号資産(仮想通貨)とブロックチェーンが重要な役割
Meta(旧Facebook)のCEOマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は2021年7月22日、今後5年以内に同社は「ソーシャルメディア企業」から「メタバース企業」へ移行すること明らかにしました。
以来、各国のニュースサイトで「メタバース」というワードが飛び交うようになり、瞬く間に世界中で注目を浴びるキーワードになりました。
メタバースとは、ソーシャルメディアの延長線上にある先進的なコミュニティの形であり世界観です。実はかなり古くからあるSF的な概念だったのですが、IT技術が発達し、ブロックチェーン技術等、昨今のデジタル技術の革新により、その実現性が高まってきています。メタバースの実現には、暗号資産(仮想通貨)とブロックチェーン技術が必須であり、重要な役割を果たすともいわれています。
この記事では、メタバースとは何か、またなぜ注目されているのかを解説し、今後の暗号資産とメタバースの関係やその実現性について考察します。

メタバースとは?

メタバース(Metaverse)とは、メタ(meta-)と宇宙(universe)を組み合わせた造語です。SF作家のニール・スティーヴンスン(Neal Stephenson)氏が1992年に発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」に登場するインターネット上の仮想世界をメタバースと呼んだことから、それが転じてネット上に登場するその後の先進的な仮想空間サービスを指す総称として用いられるようになりました。
SFの世界からスタートしたメタバースには、実は明確な定義はありません。一説として2003年に登場したリンデンラボが開発し一世を風靡した仮想空間サービス「セカンドライフ(Second Life)」が最もその概念に近い世界初のメタバースであるという意見もあります。しかし、古くはまだメタバースという言葉はなかった1986年にルーカスアーツ(ルーカスフィルム・ゲームズの前身)がパソコン通信時代に開発した、グラフィカルコミュニティプラットフォーム「ハビタット(Habitat)」をメタバースの元祖であると見る意見も少なくありません。
メタバースと呼ばれるものは、ユーザー同士がアバターによる交流や商業活動等、コミュニケーションを主目的に活用されているものが多く、その時々の技術を応用し、その時代の最先端技術を駆使した仮想空間サービスとして提供されているものがほとんどです。
現在は、そこにバーチャルリアリティ(VR)の概念や拡張現実(AR)の要素が加わり、さらにブロックチェーン技術や暗号資産(仮想通貨)・NFT(ノンファンジブルトークン)まで応用され、SFの世界だった理想のメタバースの実現が、より現実味を帯びてきています。
メタバースへのブロックチェーンの活用

元祖メタバースの「セカンドライフ」では、ユーザー間でデジタル資産のやり取りができたことから、外部サービスを利用して法定通貨をやり取りすることで、セカンドライフ内でデジタル資産を渡すといった取引が可能でした。セカンドライフの土地を売る不動産業者も現れました。
しかし、これらはあくまでもユーザーによる外部サービスを応用した第三者によるサービスであったことから、お金を払ってもセカンドライフ内での受け渡しが行われない等、詐欺も少なくありませんでした。当時のメタバースには、こうした状況を追跡するような仕組みがありませんでした。
ブロックチェーンの概念や暗号資産(仮想通貨)も存在していなかったために、これらを解決する方法はなかったのです。
しかし、ブロックチェーンやNFTといった技術が登場したことで、いよいよ理想のメタバースが実現できるのではないかという気運が高まりつつあります。そうした流れの中でザッカーバーグ氏の発言や、メタバースの開発に投資するといった投資家の動きが相まって、ここにきてメタバースがより注目されるようになりました。
ブロックチェーン技術を応用したNFTは、アートやゲーム内のアイテムといった資産に作者や所有者の情報を追記することができるデジタル資産のことを指します。
メタバースにおける創造のアイテムをNFT化することで、これらは外部サービスであっても安心安全に取引ができるようになります。第三者が運営するNFTマーケットプレイスであっても、ブロックチェーンにより発行されたNFTであれば安心して売買できるでしょう。
同時にメタバース内通貨も暗号資産にすることで、外部の暗号資産交換業者を介して安全にやり取りすることができるようになるでしょう。
メタバースへのブロックチェーン技術の導入は、アバターによる交流をそのままビジネスに応用できたり、メタバース内のクリエイティブな活動に対する対価として暗号資産が支払われたりといった経済活動をも可能にするでしょう。
メタバースが注目される理由

Meta(旧Facebook)は2021年10月、今後5年間に欧州連合(EU)圏内で高度なスキルを持つ人材1万人程度を採用し、メタバースの構築に取り組むことを発表しました。同社は7月にメタバースのプロダクトチームの立ち上げを表明し、9月にはメタバース構築に5000万ドルを拠出しています。
また、Facebookは同社が販売するVR用ヘッドセットを使った、リモートワーク用の新たなVRアプリの試験版を公開する等、自分のアバターをバーチャル会議に参加させることができる環境の提供を推進しています。
2021年になってこうした個々の要素が、いよいよメタバースによって集約される兆しが見えてきました。理想のメタバース実現の可能性は、まだ誰にもわかりませんが、Meta(旧Facebook)の動きは注目せざるを得ないでしょう。
また、2021年になってNFTによるアートが高額で取引される等、NFTの存在感も増しています。NFTの急速な盛り上がりはバブルであるという意見もありますが、こうした流れがNFT関連やメタバース関連への投資を加速させているのも事実です。メタバースの開発にとっては、好都合のタイミングになりました。
メタバースの課題・懸念事項

Meta(旧Facebook)等が目指すメタバースは、仮想空間を中心に展開されるコミュニティをベースとし、その先に広がるであろう仮想空間ビジネスです。
これまでの仮想空間のやり取りは、危険性もはらんでいましたが、それらはブロックチェーン技術によってセキュリティの面での安全性は確保できます。
こうした仮想空間内の安全性は、仮想空間ビジネスを円滑に進める上で重要なファクターです。デジタルデータによるやり取りを安心安全に行える空間は、インターネットビジネスをさらに一歩先へと進ませることができるでしょう。
NFTによる取引やアバター同士のリアルなコミュニケーションは、まさに現実社会と遜色のないプラットフォームを提供することができます。
しかし、これらは課題がないわけではありません。新たなメタバースは、まったく新しいグローバル社会を構築することになるでしょう。メタバース内におけるビジネスは、いったいどこの国の法律に従えばよいのでしょうか。メタバース内のエコシステムは、大きくなる一方で法律の整備等、まだ誰にも予期できていない課題をはらんでいます。
アバターによるコミュニケーションは、コミュニティを円滑にできる一方で、現在の技術ではまだまだ参加障壁も高く、暗号資産(仮想通貨)を扱う知識や機材等も必要になります。技術的な面においても、誕生したばかりの技術も少なくありません。そういう意味では、暗号資産以上に法律等の整備は難しいでしょう。
メタバースの実現と普及は、こうした課題をいかに克服するかにかかっています。
代表的なメタバースプラットフォーム

メタバースは大きく分けて、ハビタットやセカンドライフのようにブロックチェーン技術のない時代から存在していたものと、ブロックチェーン技術誕生後に登場したものに分けることができるでしょう。
古くは、前述のセカンドライフです。ユーザーが3Dモデルのオブジェクトを構築できる仮想空間サービスでした。自分で作ったオブジェクトはセカンドライフ内でのみ売買することができました。
2015年には「Decentraland」というその名前が示すとおり分散型で、イーサリアム(ETH)ブロックチェーンベースのメタバースが誕生しました。DecentralandはLANDと呼ばれるNFTの土地を基盤とする仮想空間にアバターとして参加することができます。
2019年に誕生したばかりの新進気鋭のメタバース「Cryptovoxels」はVRブラウザを搭載したヘッドセットにも対応しています。Cryptovoxelsもまた、Decentralandと同様イーサリアムブロックチェーンベースのメタバースです。
まとめ

ここまで解説してきたように、メタバース自身は決して新しい概念ではありません。
しかし、メタバースの世界観の理想型は、SF小説や映画の世界でした。小説や映画ではブロックチェーンこそ語られていませんが、こうした世界を実現するにはブロックチェーンが必須であることは現時点の我々には想像に難くありません。
理想のメタバースを構築するには、ブロックチェーン技術やNFTは必須です。また、同時にVR技術等も含めてハードウェアのスペックも重要な要素です。さらにはそうした環境を円滑に運用できる高速な通信技術も必要不可欠です。そう考えると、いよいよ環境は揃ったといえるのではないでしょうか。環境が、概念に追いついたともいえます。
これまでは小説や映画の絵空事であった世界すら、現在の技術によって実現できる可能性が見えてきたわけです。こうしたメタバースの進化は我々の個人的なコミュニケーションを充実させるだけでなく、ビジネス上でも有益なものであるとして注目されるようになったのです。もちろん、まだまだ技術開発が必要な要素は少なくありませんが、大手企業や投資家が動き始めたことで、その実現性は急速に高まったといえるのではないでしょうか。
NFTについて興味を持たれた方は「NFT(ノンファンジブルトークン)とは?暗号資産(仮想通貨)との違いは?」もご参照ください。
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