ビットコインはデジタルゴールドとなる可能性はあるか
数ある暗号資産(仮想通貨)の中で、最も時価総額が高く暗号資産の代名詞的な存在のビットコイン(BTC)は、よく実際の金(ゴールド)の資産価値になぞられて「デジタルゴールド」と呼ばれます。
この記事では、ビットコインがなぜデジタルゴールドと呼ばれるようになったのか、本当にデジタルゴールドになり得るのかを、ビットコインの特性と実際のゴールドを比べながら、その可能性について考察します。
デジタルゴールドと呼ばれる理由
まず、デジタルゴールドと呼ばれる理由として以下の類似性が挙げられます。
- インフレヘッジ
- 資産の逃避先
- 希少性
- 採掘コストが高い
- 世界中で取引可能
- 偽造不可能
- 分割しても価値は普遍
- 劣化しない
世界の金融情勢や経済状況の影響を受けにくいことがわかってきたビットコインは、ここにきて機関投資家らがゴールドと同様にビットコインをインフレヘッジとして資産ポートフォリオに組み込むような動きも見られるようになってきました。
また、ビットコインは金融機関等を介さずに資産の移転が可能なことから、国家の経済不況や法定通貨の価値低下といった状況下において資産の逃避先としても注目を集めています。これもビットコインがゴールドと似ているポイントです。
現物資産として歴史が長いゴールドは、その埋蔵量は少なく、これ以上大幅に増えることがないため、その価値は人気が高まることで上昇します。
ビットコインも発行総量の上限が2,100万BTCと決まっており、それ以上は一切発行されないことから、希少性もゴールドと似ています。世間でのビットコインの需要や人気が高まれば高まるほど、その価値は上昇します。
採掘コストが高いというのも共通項です。これは、ビットコインがゴールドに寄せているということもありますが、現在、新規発行されるビットコインをマイニング(採掘)によって手に入れるには、計算能力の高いコンピュータと膨大な電力を必要とするため、高コストになっています。ゴールドもまた、少ない鉱脈から新たに採掘するにはコストがかかります。将来的に採掘できなくなる点も共通しています。
ビットコインもゴールドも経済的な交換手段(流通手段)として機能します。ゴールドは世界中に取引市場があり、いつでも世界各国の法定通貨と交換することが可能です。ビットコインもまた、暗号資産交換業者を介して世界中で法定通貨と交換が可能です。
紙幣やコインは偽造されてしまいますが、ビットコインやゴールドは偽造することができません。この点もゴールドとの共通点といえます。偽物のゴールド製品もありますが、物理的に本物のゴールドを作り出すことはできません。
ゴールドは小さな単位に分割しても価値は変わりません。アクセサリーや少量単位の形に加工されることもありますが、ゴールドは目方で取引されているため、その価値は普遍的です。ビットコインもまた小数点以下8桁まで分割することができますが、その価値は普遍的です。
また、どちらも劣化しないという点も重要な共通点です。ビットコインは、デジタルデータなので、法定通貨の紙幣や硬貨のように劣化したり欠損したりすることがありません。
このようにビットコインは、ゴールドの性質に似ているところがあることから、デジタルゴールドと呼ばれるようになったのです。
昨今の新型コロナウイルスによる感染症の拡大から世界経済全体が不安定になり、ビットコインは実際にゴールドによく似た値動きを見せる局面も増えたことから、ますますデジタルゴールドとしての側面に注目が集まるようになりました。
資産価値として認められたビットコイン
ビットコインは国や金融機関のような中央管理者がいないことが特徴ですが、しかしそれは価値を保証する後ろ盾がないことを意味します。世間の人気とともにビットコインの価値は上昇しましたが、実際にはその価値を担保するものはビットコインには一切ありません。法定通貨は国がその価値を保証していますが、ビットコインは利用者の支持だけがその価値の後ろ盾です。
こうした価値の保証がないビットコインを揶揄し、現在の価値を懐疑的に見る人も少なくありません。しかし、それは金やプラチナ等も同じことです。骨董品やアート作品も、価値の裏付けとなるものはありません。世の中には市場での人気を裏付けに価値が担保されているものも多く存在するのも事実です。
また、国がその価値を保証する法定通貨であっても、国力がなく経済状況が不安定な国によっては、その価値を担保することができないケースも少なくありません。
逆に国や企業の裏付けがないからこそ、ビットコインの価値は証券や債券等、一般的な金融商品とは異なり、あまり世界の金融情勢や経済状況の影響を受けることもなく、ビットコイン独特の価格変動を見せるようになったといえます。
他の金融商品とは異なるビットコインの価格変動が認知されるようになってからは、なおさらビットコインとゴールドの値動きの相関性に注目が集まるようになりました。両者は世界の金融情勢の影響を受けにくいという反インフレ特性も共通していることから、ゴールドと同様にビットコインもまた資産防衛の運用先の資産として認知されるようになりました。こうして、今ではビットコイン=デジタルゴールドと評されるようになったわけです。
今では、自国の法定通貨の1つにビットコインを採用する国も登場しています。人口約650万人の中米の国エルサルバドルです。エルサルバドルは、内戦が続き国内の経済状況が悪化し、自国通貨が崩壊しました。そのため、法定通貨には米ドルが採用されていました。そこで、2021年9月7日に新たにビットコインを米ドルに併せて自国の法定通貨の1つに加えました。
ビットコインを法定通貨に採用することは、国際社会においてはマクロ経済、金融、法的に多くの問題を引き起こす可能性があることも指摘されていますが、自国通貨の弱い国家においてはメリットもあるようです。
エルサルバドル政府は、ビットコインの法定通貨化は、金融包摂を加速し、経済を活性化させ、雇用機会を開拓することが目的であると説明しています。自国の抱える多くの問題を解決するには、第三者に支配されていないビットコインが適しているといいます。
新たな資産クラス(コモディティ)になり得るのか?
機関投資家らが、ゴールド同様にインフレヘッジとして資産ポートフォリオにビットコインを組み込むようなってきた理由の一つが、世界の金融情勢や経済状況の影響を受けにくいことでした。
金融機関等を介さずに資産の移転が可能なビットコインは、国家の経済不況や法定通貨の価値低下といった状況下において強いのは前述したとおりです。
またコロナ禍における世界経済の停滞に加えて、各国政府が大規模な財政政策を導入し、金融緩和の継続や拡大を行っていることも大きく影響しているといわれています。
ドルや円といった法定通貨は、中央銀行や政府の財政政策をもって発行量を調整しますが、ビットコインは基本的に発掘量の上限が決まっています。そのため、特定の国家の金融政策や財政政策による影響を受けることもありません。
深刻な通貨危機にある南米アルゼンチンやインフレ傾向にあるエジプトやメキシコ等では、自国の法定通貨よりもビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)が安全であると考えられるようになり、ビットコインの取引量が急増しています。これらの国では、ビットコインは投資目的ではなく、明らかに資産であるという考え方が強くなっています。
また、機関投資家ら金融業界においては、ビットコインを新たな資産クラス(コモディティ)として期待しています。長い間、投資の面としてビットコインETFの実現が期待されてきました。ETFは、証券取引所に上場している投資信託を指します。上場した投資信託は、株の売買と同様に証券会社を通じても取引ができるようになります。
投資信託は機関投資家から運用の専門家が、一般投資家らから集めた資金の投資・運用対象とする金融商品です。ビットコインETFが米国にて許可されたことで、多くの投資家がビットコインに投資するようになります。
2021年になり、幾度となく過去最高値を更新してきたビットコインは、コモディティとして認められつつあるのではないでしょうか。
まとめ
米国の上場企業や機関投資家がビットコイン市場への参入を公言するようになり、また実際に参入を決定したという報道が多く見られるようになりました。2021年になってから、米国大手企業がインフレ対策の資産運用にビットコインを購入した、あるいは大量保有しているといった発表が相次ぎました。
しかし、大口取引が主の大手企業や機関投資家の参入は、よい面ばかりではありません。今後の経済状況によっては、保有中のビットコインが売られる可能性があることも忘れてはいけません。その場合は、取引高も多いため、ビットコインの価格にも大きく影響します。
国家によるビットコインの法定通貨化等も、その行く末や、それによって世界経済がどう変わっていくのかも含めて、まだ安定したものではありません。それに併せて各国はビットコインへの対応、法律等も変えてくることでしょう。ビットコインによる市場の変化については、さらなる観察が必要です。
また、世界の金融状況の影響を受けない反面、逆にビットコインは、どこかで暗号資産(仮想通貨)にハッキング等の被害が生じるなど、暗号資産ならではの事情による影響を受けやすいことも明確です。予期せぬ出来事で価格が大きく変動してしまうこともあります。
一方で、開発以来続いているビットコインの技術革新は日進月歩です。ビットコインをより便利にする技術は、決済手段等ビットコインの利用機会を拡大するものです。こうした技術を見極めるのは難しいかもしれませんが、確実に利用機会は拡大するでしょう。
ビットコインがデジタルゴールドたる所以は、すでにその価値はゴールドと同様にコモディティであると判断する人が増えたからと見ることもできます。ビットコインをデジタルゴールドとするならば、一時的な価格変動に一喜一憂するのは得策ではないでしょう。
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