ビットコイン高騰は「バブル」なのか?最高値更新の理由と今後
2008年の世界経済全体にわたる金融危機をきっかけに誕生したビットコイン(BTC)は公開当初は、第三者を介さない安価な海外送金や、デジタル通貨として買い物等の決済に利用することが目的でした。しかし、市場での人気や世界的な経済情勢などから、改ざんできない特性を持つビットコインの価値は大きく変動するようになっていきました。さらに、ビットコインの核となるブロックチェーン技術が注目されるようになった近年は、投資や投機の対象という印象がますます強くなっています。
こうした理由からビットコインの価格は急騰し、史上最高値を更新しては突然下落するなど乱高下を繰り返してきました。ビットコイン価格の高騰は「バブル」ではないかと、その価値をいまだに疑問視する人もいます。しかし、本当にバブルなのでしょうか?
今回の記事では、これまでバブルとされた価格変動の歴史を分析しながら、ビットコインのこれからについて考えてみたいと思います。
ビットコインバブルとは? これまでの経緯を解説
ビットコインはこれまでに数回、バブルとされる急騰を繰り返しています。過去の流れを振り返ってみましょう。
2011年のバブル
ビットコインの最初の「バブル」ではないかとされているのが、2011年5月頃です。
一月前の4月には1BTC=80円ほどでビットコインの価格は推移していましたが、大手メディアの米タイム誌に特集されたことで注目度や期待値が急激に高まり、1BTC=2,000円付近まで急騰しました。
しかし、同年11月には200円付近まで暴落しました。当時は流動性も低く、投機的な動きによって急激に価格が変動しました。また、同時期には当時のビットコイン取引の多くを扱っていた暗号資産交換業者のマウントゴックスでハッキングも起きており、これも下落の原因になったと思われます。
2013年のバブル
次のバブル期は2013年に訪れます。いくつかの複合要因で価格が膨らんだとされていますが、最も代表的な要因は「キプロス危機(キプロスショック)」です。
キプロス危機とは、2013年3月16日に地中海東部の島国キプロスが国家経営破綻の危機に陥り、同国の法定通貨・およびユーロの信認が揺らいだ金融危機のことです。キプロスの主要銀行でのペイオフが実施される可能性が高まり(実際には実施されませんでした)、これを恐れた預金者の多くが、ビットコインを資金の逃避先に選びました。これにより、ビットコインは3月末に1BTC=9,900円以上まで上昇します。また、4月には1BTC=25,000円超となり、当時としての史上最高値を記録しました。
キプロス危機後も、中国の大手検索サイトがビットコイン決済を採用したことが話題となるなど、ビットコインの知名度は世界中で高まり、人気上昇と共に価格も一時1BTC=12万円超までに成長しました。
しかし、2014年になって、マウントゴックス(Mt.GOX)社が何者かによって再びハッキングされ、当時の市場価格にして430億円相当のビットコインが流出するという事件が不安材料となり、価格は1BTC=15,000円程度まで下落してしまいます。
関連コラム:
「マウントゴックス事件とは?ビットコインが消失した事件の全貌を知る」
2017年のバブル
「ビットコインバブル」として多く知られているのが2017年末に当時の過去最高値を記録したバブルです。
2017年前半、ビットコインは1BTC=10万円台に戻し、2013年の最高値を次々と更新します。8月には1BTC=50万円に届く勢いをみせました。その後、特に12月に入ってからは急伸し、100万円も優に超えて1BTC=200万円台を記録します。最高値を大幅に更新したことで、この時の大幅な価格上昇が特にバブルの様相をみせていました。この当時は、ビットコインによる資産が1億円を超える「億り人(おくりびと)」と呼ばれる人々が多数誕生しました。
当時は「ICO(Initial Coin Offering)」と呼ばれる資金調達方法が注目を集めました。プロジェクトの骨格となるホワイトペーパーも存在しない暗号資産が大量に生まれるほど過熱し、詐欺プロジェクトも多く存在しました。トークンの購入にイーサリアム(ETH)やビットコインが指定されたことも需要の高まりを後押ししたといえるでしょう。
しかし、2018年初頭に暗号資産交換業者がハッキング事件により被害を被ったのを期にビットコイン価格の下落基調が鮮明になります。年初には1BTC=100万円台を維持していたものの、下落傾向は続き、12月末には1BTC=40万円前後にまで落ち込みました。2016年後半から始まったビットコインの上昇傾向は2018年に終わり、これをビットコインのバブル崩壊と分析する人も少なくありませんでした。
2018年後半から2019年前半は、ビットコイン低迷期でした。価格は一時1BTC=30万円台後半を底にして、40万円台~60万円台を推移、その価値を維持し続けます。
2019年5月にはビットコインが1BTC=100万円近くまで急騰することが度々ありました。6月になって1BTC=100万円超が現実になると、その後は100万円前後を推移し続けます。
しかし、2020年に入ると新型コロナウイルス感染症拡大の影響による世界的な経済不安から、株式や暗号資産(仮想通貨)などの金融資産が大暴落しました。ビットコインの価格も、1BTC=60万円台に下落しました。
2021年のバブル
2021年は5月から7月にかけて最高値付近にあった6万ドル(約700万円)から、短期間で3万ドル(約350万円)へと50%も急落しています。
当時は分散型金融(DeFi)やNFTなどの新たな技術や、そしてイーロン・マスク氏が支持したドージコインなど、アルトコインが注目を集めました。しかし、アルトコインの中には、2017年当時のICOブームのように、実態が不明なプロジェクトも多くありました。
さらに、新型コロナウイルスに対する経済対策で各国が金融緩和を行った結果として、資金がリスクマネーである暗号資産業界に流れたことや、機関投資家の流入の影響もあり過熱感があったものとみられます。
そうした状況の中で、イーロン・マスク氏が電気自動車テスラのビットコインによる購入を認めない方針をTwitter(現X)で発信したことをきっかけに下落が続きました。
その後は、5月から7月の約2カ月間、1 BTC=350~400万円で推移した後、一転して価格は上昇し、11月には当時の過去最高値となる770万円まで到達しましたが、再度下落に転じ、翌年1月には400万円まで逆戻りしたことで再びバブル崩壊とも評される状況を迎えました。
2024年のバブル
2024年3月には大手テクノロジー会社の株が急伸し、インフレが加速している様相に加えてビットコインが1,000万円の大台に乗るなど最高値を更新したことによって、「バブルの特徴を示しつつある」と報道されました。
2024年1月にはビットコイン現物ETF(上場投資信託)が米国で承認されたことがきっかけとなり、大量の資金が流入したことでビットコインが6日間で最高値を4回更新するなど、市場に高揚感が高まっていたことがバブルと受け止められたようです。
実際に、その後、1日で10%も下落を見せるなど急落したことでも過熱気味だったことが証明されました。
当時は2ヶ月ほど前からビットコイン現物ETFへの資金流入が続いていたことが報じられており、投資家のセンチメントも最高潮を迎えていました。さらに、2024年はミームコインへの注目が急速に高まり、資金が流れていたことが過熱要因として挙げられるでしょう。
しかし、5月には一旦ETFへの流入が鈍化していることが伝わると資金が市場から流出し、ビットコインも800万円台まで価格を下落させることになりました。
ビットコインバブル発生の要因
このように、ビットコインは急騰と急落を繰り返しています。その要因を分析すると、急騰の要因としては以下の点が挙げられそうです。
- 注目度や期待値の急激な高まり
- 新技術への注目
- アルトコインのブーム
2011年の大手メディアからの報道や、2013年の逃避資産としてビットコインへの注目などにより価格が急騰しています。2024年のビットコイン現物ETFへの資金流入も、新たに注目が高まった結果といえるでしょう。さらに分散型金融やNFTといった新技術、そしてミームコインといったアルトコインへの過熱状況も高騰要因と考えられそうです。
一方で、こうした過熱感が高まったところにハッキングといったセキュリティリスクや、大手企業の否定的な発言などビットコインの普及を妨げる内容が広がると売りが強まりました。
今後もバブルが訪れたり、暴落したりする可能性はあるかもしれません。ただ、バブルだったかどうかは下落した後にしかわかりません。
そのため、価格変動による損失を防ぐためにも自身の取引ルールを徹底することや余剰資金で取引するなど、ご自身でリスクを抑えた取引を行うことも重要でしょう。
ビットコインの投資環境は安全なのか?
これまでに、急激な価格上昇をみせていたことからビットコインへの投資には警告を発しているトレーダーやアナリストも多くいました。
特に、2017年以前のビットコインはボラティリティ(価格変動率)が一段と激しかったことから、投資や投機の対象という印象が強いものでした。常に価値が変動するビットコインは、投資家にとってとても魅力的なものにも見え、さらに様々な業者や投資家が参入するようになりました。しかし、法整備のない段階では投資家保護の概念もままならず、リスクが大きな金融商品になっていました。
しかし、その後、特に日本国内においては、2017年に施行された改正資金決済法により暗号資産が法的に定義されて「暗号資産交換業」は登録制となるなど、法の整備が行われるようになりました。
また、金融機能に対する信頼性の向上と投資家保護を目的に、ルール明確化と制度整備を組み込んだ資金決済法および金融商品取引法(金商法)の改正も2020年5月に実施されています。この改正により、証拠金取引(レバレッジ取引)の倍率規制をはじめ、業者に対する様々な義務が新しく追加されました。
こうした背景から、ビットコインを始めとする暗号資産の取引環境は大きく変化しており、特に2020年以降の暗号資産の取引環境は、それ以前の市場とは異なるものです。
2017年以前と現在で大きく異なる点は、法整備によって以前よりも安心・安全な取引市場になったとの評価によって、ビットコインの価格高騰が再度起きるようになったことです。
また、ビットコインには4年に1度発生する半減期ごとに最高値を更新するサイクルがあるとされています。しかし、この最高値に至る上昇幅は年々減少しており、過去のような急激な過熱は薄れてきているのが現状です。
まとめ
ビットコインはボラティリティの大きさやスケーラビリティ問題から、決済手段としての利用が投資・投機的なものに取って代わられるといった歴史をたどってきました。しかし、日進月歩の技術開発により、ビットコインの多くの課題は解決する方向に動いています。こうした技術により、ビットコインが決済手段の一つとして普及する可能性は、より高くなっていくのではないでしょうか。
ビットコインをより便利にする技術関連の革新は、決済手段としてのビットコインの立ち位置を拡大するものです。ビットコインがバブルなのか、そうでないのかは、簡単な話ではありません。もちろん、楽観視はできないのですが、よく見かける「ビットコインはバブルである」といった意見や「ビットコインは崩壊する」といった断定的な意見には根拠がないことも知っておきましょう。あくまでもビットコインへの投資は、無理のない範囲で、自分自身の判断で行うことが大切であるということは、今後も変わりません。
今後、ビットコインを始めとする暗号資産やブロックチェーンなどの技術について、どのようなものが主流になっていくかを見極めるのは難しいかもしれませんが、より注目すべきはビットコインそのものの利便性とユースケースだといえるのではないでしょうか。
ビットコインの価格変動や売買のタイミングについて興味を持った方は、「ビットコインの買い時を見極めよう!チャートの見方や分析のしかた」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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