ビットコイン高騰は「バブル」なのか?最高値更新の理由と今後
2008年の世界経済全体にわたる金融危機をきっかけに誕生したビットコイン(BTC)は、国家・銀行・企業などのような中央管理者が存在しないのが大きな特徴です。公開当初は、第三者を介さずに安価に海外送金ができたり、買い物等の決済に使えたり、デジタル通貨として利用することが目的でした。しかし、市場の人気や世界的な経済情勢などから、ビットコインの価値は大きく変動するようになり、また、ビットコインの核となるブロックチェーン技術が注目されるようになった近年は、投資や投機の対象という印象が強くなっています。
そうした人気からビットコインの価格は急騰し、公開以来の高値を更新しては突然下落するなど乱高下を繰り返してきました。ビットコイン価格の高騰は「バブル」ではないかと、その価値をいまだに疑問視する人もいます。しかし、本当にその価値はバブルなのでしょうか?
今回の記事では、ビットコインのこれまでの価格変動の歴史と、過去の最高値更新の理由を分析しながら、ビットコインのこれからについて考えてみたいと思います。

ビットコイン高騰は「バブル」? これまでの経緯を解説

ビットコインと法定通貨の交換レートが初めて提示されたのは、暗号資産交換所の前身となる、いわゆるマーケットプレイス「New Liberty Standard」が設立された2009年10月のことでした。最初の交換レートは、1ドル=1,309.03BTCでした。1BTCは、わずか0.0076セント相当です。日本円にして1円以下です。この価格は、当時のビットコインのマイニング(採掘)にかかった電気料金から算出されました。この頃は、まだ開発者グループメンバーやエンジニア間でしか取引がなかったといいます。
世界経済は、2013年3月16日にキプロスが国家経営破綻の危機に陥り、同国の法定通貨・およびユーロの信認が揺らぐという金融危機を迎えました。キプロスは、主要銀行でのペイオフが実施される可能性が高まり(実際には実施されませんでした)、預金が目減りするのを恐れた預金者が、その多くの資金の逃避先にビットコインを選んだことから、ビットコインは3月末に1BTC=9,900円以上まで上昇。4月には1BTC=2万5,000円超となり、当時としての史上最高値を記録しました。
キプロス危機後も、中国の大手検索サイトがビットコイン決済を採用したことが話題となるなど、ビットコインの知名度は世界中で高まり、人気上昇と共に価格も一時1BTC=12万円超までに成長しました。
しかし、2014年になって、当時、世界最大級の取引所であったマウントゴックス(Mt.GOX)社が何者かによってハッキングされ、当時の市場価格にして430億円相当のビットコインが流出するという事件が不安材料となり、価格は1BTC=1万5,000円程度まで下落してしまいます。
その後、ビットコインの仕組みに不備がなかったことがわかると、ビットコインの価格は1BTC=4万円台まで戻すも、2015年前半までは下落傾向に転じていました。
一時期は1BTC=2万円台になるも、2014年から2015年にかけては、世界中に暗号資産交換所が誕生するなど好材料も増え、2015年後半からビットコインの価格はゆっくりと上昇傾向を示すようになり、2016年後半からそのピッチが急加速しました。
2017年前半、ビットコインは1BTC=10万円台に戻し、2013年の最高値を次々と更新、8月には1BTC=50万円に届く勢いを見せました。その後、特に12月に入ってからは急伸して、100万円も優に超えて1BTC=200万円台を記録し、最高値を大幅に更新。この当時、ビットコインによる資産が1億円を超える「億り人(おくりびと)」と呼ばれる人々が多数誕生しました。
しかし、2018年になってすぐに暗号資産交換所がハッキング事件により被害を被ったのを期にビットコイン価格の下落基調が鮮明になり、年初には1BTC=100万円台を維持していたものの、下落傾向は続き、12月末には1BTC=40万円前後にまで落ち込みました。2016年後半から始まったビットコインの上昇傾向は2018年に終わり、これをビットコインのバブル崩壊と分析する人も少なくありませんでした。
2018年後半から2019年前半は、ビットコイン低迷期でした。価格は一時1BTC=30万円台後半を底にして、40万円台~60万円台を推移、その価値を維持し続けます。
2019年5月になってビットコインは、1BTC=100万円近くまで急騰することが度々ありました。6月になって1BTC=100万円超が現実になると、その後は100万円前後を推移し続けます。
しかし、2020年に入ると新型コロナウイルス感染症拡大の影響による世界的な経済不安から、株式や暗号資産(仮想通貨)などの金融資産が大暴落しました。ビットコインの価格も、1BTC=60万円台に下落しました。
その後、ビットコインは2020年5月に3回目の半減期を迎え、それを機に再び上昇傾向を見せて、1BTC=100万円近くまで戻します。そして、またもやビットコインは100万円前後の推移を続けます。
そうした状況が突如変わったのが、2020年の夏頃でした。ビットコインの価格は1BTC=100万円前後から、120万円、150万円と上昇するようになり、秋には200万円近くにまで上昇することがありました。
ビットコインは2020年12月に1BTC=230万円超の高値を付け、2017年12月に記録した過去最高値を3年ぶりに更新しました。
2021年に入ってからもビットコインの勢いは留まらず、価格は1BTC=300万円台、400万円台と高値を更新し続けました。2021年4月には、一時1BTC=690万円台を記録しています。
二度目の高騰再来 前回とは違う点は?

こうしてビットコインは、2017年と2020年後半から2021年にかけて、過去の高値を大幅に更新するような高騰時期を二度迎えています。
2017年以前のビットコインは、ボラティリティ(価格変動率)が一段と激しかったことから、投資や投機の対象という印象が強いものでした。常に価値が変動するビットコインは、投資家にとってとても魅力的なものにも見え、さらに様々な業者や投資家が参入するようになりました。投資家保護の概念もままならないリスクが大きな金融商品になっていました。
しかし、その後、特に日本国内においては、2017年に施行された改正資金決済法により暗号資産が法的に定義されて「暗号資産交換業」は登録制となり、法の整備が行われ厳しく規制されるようになりました。
また、さらなる暗号資産のルール明確化と制度整備を目的とした資金決済法および金融商品取引法(金商法)の改正を2020年5月にも施行しています。新たな改正法は、金融機能に対する信頼性の向上と投資家保護を目的としています。証拠金取引(レバレッジ取引)の倍率規制をはじめ、業者に対する様々な義務が新しく追加されました。
こうした背景から、ビットコインを始めとする暗号資産の取引環境は大きく変化しており、特に2020年からの暗号資産の取引環境は、それ以前の市場とは異なるものです。
2017年以前と現在で大きく異なる点は、より安心・安全な取引市場に成長した上での取引によって、ビットコインの価格高騰が再来したことです。これは、取引市場を提供する交換業者や参加する投資家も含めて、以前とは全く違った状況であるといっていいでしょう。
機関投資家の参入

ビットコイン誕生以来10数年の歳月を経て、関連するブロックチェーン技術も日進月歩で進化し続けてきました。人気上昇によりビットコインは決済処理が遅いなどのスケーラビリティ問題等も顕著になり、課題として抱えてきましたが、そうした課題も技術の進化により解決に向かっています。また、セキュリティ面においても安心安全な環境が整うなど、社会的にも決済手段や送付手段の方法の一つとして認められつつあります。
2020年後半から2021年に入って、こうしたビットコインの背景により、多くの米国上場企業や機関投資家がビットコイン市場への参入を公言しはじめました。この時期、複数の米国大手企業、投資銀行、資産運用会社等がビットコインを大量購入した、あるいは大量保有しているといった発表が相次ぎました。
2017年来のビットコイン価格急騰の背景には、以前にはなかったこうした機関投資家の本格的参入が理由の一つとして挙げられています。
エルサルバドルが自国法定通貨にビットコインを採用

2021年6月、人口約650万人の中米の国エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、自国の法定通貨にビットコインを採用する法案を提案し、賛成多数で可決したことを発表しました。このニュースは、世界中で大きく話題になりました。
エルサルバドルは、内戦が続き自国通貨が崩壊しました。そのため、法定通貨には米ドルが採用されており、今回は新たに法定通貨の一つとしてビットコインが加わったのです。大統領は、ビットコインの法定通貨化は「国と世界を結びつけ、経済発展を図ること」が目的であると強調します。これまで通り、米ドルが法定通貨であり続けることを約束し、ビットコインはあくまでもそれを補完するものであるとしています。
エルサルバドル政府はビットコインの法定通貨化の目的は、金融包摂を加速し、経済を活性化させ、雇用機会を開拓することにあると説明します。金融包摂とは、経済活動に必要な金融サービスを、差別なく、すべて人々が利用できるようにする社会的取り組みを意味します。中米には、銀行口座等を持てない人々も多く、スマートフォンと政府が用意したウォレットアプリさえあれば誰でもこうした金融サービスを利用することができるようになるメリットもあります。
内戦後エルサルバドルは、自国での就労機会が少なく、多くは米国をはじめ海外における労働、雇用機会に依存しています。海外で働く国民は、自国の家族に対して高い手数料を企業に払ってお金を送金しています。送金手数料は、最大で50%にもなる悪質な業者も存在します。海外からの送金金額が国内総生産(GDP)の16%~20%にも及ぶエルサルバドルは、こうした状況にも手数料が安価なビットコインは有効な手段であると考えたようです。
エルサルバドル政府の思惑通りに自国にビットコインが普及するかどうかは不明ですが、自国の抱える多くの問題を解決するには、第三者に支配されていないビットコインは適しているともいえます。一方で価値が大幅に変動するビットコインを法定通貨に加えるのは、そう簡単ではないはずです。
実際に国際機関からも慎重な意見が相次いでいます。中米経済統合銀行(CABEI)は、エルサルバドルを技術面で支援する意向を示しています。しかし、世界銀行は「エルサルバドル政府から支援の要請はあったが、手助けはできない」と表明しました。
暗号資産を法定通貨に採用することは、国際社会においてはマクロ経済、金融、法的に多くの問題を引き起こす可能性も否めません。
エルサルバドルがビットコインを法定通貨に採用するというニュースは、好材料としてビットコインの価格を一時上昇させました。しかし、エルサルバドルが実際に法定通貨としてビットコインの採用を開始した2021年9月7日には、それを不安視する意見も少なくなく、エルサルバドルの多くの国民も不安があるという意見も聞かれました。こうした不安材料もあってビットコイン価格は1BTC=500万円台後半から400万円台後半へと100万円近く急落しました。これはイーサリアム(ETH)などアルトコインにも影響しました。
しかし、その後、ビットコインの価格は回復しています。
エルサルバドル政府はビットコインの法定通貨化実施後に追加で200BTCを購入しています。当時の購入額は約22億円に相当しました。エルサルバドルはその後もビットコイン保有量を増やしており、2021年9月末時点では合計で700BTCになりました。こうした流れが、好材料となったという見方もあります。
今回の事案も含めて、国家による暗号資産の経済的利用は、そう単純ではないことが理解できます。国家レベルでのビットコイン参入案件は、より慎重な分析が必要になるでしょう。
関連リンク
「法定通貨とは?暗号資産(仮想通貨)との違いは?」
将来、ビットコインはどうなる?

投資信託は、運用の専門家が株式や債券等に投資・運用する金融商品の一つです。ビットコインETFが実現することで、より多くの投資家がビットコインに投資するようになります。
ETFの審査は厳しく、ビットコインETFの申請はいずれも「価格操作が行われるのではないか」という懸念や、暗号資産取引における「詐欺的で操作的な行為および慣行」への懸念が払拭できていないことが否決理由でしたが、規制の整備などが進み、米国当局も認可しました。
そのため、ビットコインETFが承認されたことで、ビットコインの信用度はさらに高まり、価格にも反映されていくかもしれません。
楽観的な意見
これまでのビットコインは、金融商品という視点からは投資家からは資産クラスとして見なされていなかったことも事実です。
ビットコインETFの承認によって機関投資家がビットコインへ投資する可能性が、今まで以上に高まります。これまで以上の暗号資産市場の活性化が見込まれるでしょう。これは、暗号資産が他の金融商品と肩を並べ、資産クラスとして見込まれつつあること、本格的な金融商品になることを意味します。
また、投資家自身のブロックチェーンや暗号資産に関する技術の理解度も高まりつつある昨今は、単なるボラティリティの激しさのみに一喜一憂していた時代とは異なるものとしてビットコインが認知され始めていると分析する人も少なくありません。
悲観的な意見
ビットコインへの機関投資家らの参入は、市場にとって新しいきっかけにはなりましたが、今後どのような展開を繰り広げるのかは、機関投資家や大手企業の動向に注目し続ける必要があると見る意見も多くあります。
機関投資家は、大口の取引がメインです。投資家の売りポジジョン、買いポジションの変化は、ビットコインの価格に大きく影響を与えます。
2021年の機関投資家らの参入は、インフレ対策や新型コロナウイルス感染症の蔓延による世界経済の混乱からの逃避先としてビットコインを購入していると分析する意見もあります。今後の経済状況によっては、保有されているビットコインが売られる可能性があることも忘れてはなりません。
人気電気自動車メーカーのCEOが、販売する自動車をビットコインで購入できるようにすると発言したり、ビットコインを購入したというニュースが流れたりしたことで、ビットコイン価格が一時高騰したこともありました。反対に「ビットコインによる自動車の購入は見送る」との方針転換を発表すると、それをきっかけに価格は暴落しています。まさにこういったことがビットコインの価格変動の根幹であると見る意見も少なくありません。
また、日本では資金決済法にて定義される暗号資産は、機関投資家が投資対象とする有価証券と同等には位置づけられていないため、投資しづらい側面があることも指摘されています。日本の機関投資家にとっては法的な枠組みがないため、暗号資産の保有は会計上の問題も多く残っており、日本における機関投資家の参入については、難しいのではないかという意見もあります。
まとめ

ビットコインはボラティリティの大きさやスケーラビリティの問題から、決済手段としての利用が投資・投機的なものに取って代わられるといった歴史をたどってきました。しかし、日進月歩の技術開発により、ビットコインの多くの課題は解決する方向に動いています。こうした技術により、ビットコインが決済手段の一つとして普及する可能性は、より高くなっていくのではないでしょうか。
ビットコインをより便利にする技術関連の革新は、決済手段としてのビットコインの立ち位置を拡大するものです。ビットコインがバブルなのか、そうでないのかは、そんなに簡単な話ではありません。もちろん、楽観視はできないのですが、よく見かける「ビットコインはバブルである」といった意見や「ビットコインは崩壊する」といった断定的な意見には根拠がないことも知っておきましょう。あくまでもビットコインへの投資は、無理のない範囲で、自分自身の判断で行うことが大切であるということは、今後も代わりはありません。
今後、ビットコインを始めとする暗号資産やブロックチェーンなどの技術について、どのようなものが主流になっていくかを見極めるのは難しいかもしれませんが、より注目すべきはビットコインそのものの利便性とユースケースだといえるのではないでしょうか。
ビットコインの価格変動や売買のタイミングについて興味を持った方は、「ビットコインの買い時を見極めよう!チャートの見方や分析のしかた」もご参照ください。
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