マウントゴックス事件とは?ビットコインが消失した事件の全貌を知る

マウントゴックス事件
ビットコイン
2021-10-20 更新

2014年に突如としてビットコイン(BTC)に起こった「マウントゴックス事件」は、暗号資産(仮想通貨)業界を驚愕させたかつてない大事件でした。当時、世界最大級の交換業者であったマウントゴックス(Mt.GOX)社のサーバーが何者かによってハッキングされ、同社のビットコインと預かり金の大半が流出してしまったのです。その額は、当時の市場価格にして470億円相当の被害額になりました。マウントゴックス社にビットコインを預けていた12万7000人の顧客が被害を受けました。

この事件が大打撃となり、マウントゴックス社はまもなく破綻に追い込まれました。しかし、ハッキング後にマウントゴックス社の元CEOが逮捕されるなど、異例の展開になりました。その後、事件の真相解明と被害者に対する救済は、長きにわたって行なわれています。

マウントゴックス事件は、暗号資産の安全性、信頼性を考えるきっかけにもなりました。利用者保護の観点から、日本では暗号資産に関する法の整備へとつながっています。暗号資産交換業者に金融庁の登録が必要になったのも、事件の後からです。

はたしてマウントゴックス事件とは何だったのか。この記事では、事件の全貌を解説していきます。

マウントゴックス事件とは

2014年当時、日本に会社があったマウントゴックス(Mt.GOX)社は、紛れもなく世界最大級のビットコイン交換所でした。マウントゴックス事件と呼ばれるようになった当該事件は、ハッキングが明らかになる前にいくつかの問題が起きていました。

ビットコインの出庫が突如停止

マウントゴックス社は、2014年2月7日(日本時間)に突如、ビットコインの出庫を停止し、25日にはすべての取引も停止しました。顧客にとっては、寝耳に水でした。

2月7日からの出庫停止について同社は、ビットコインに「トランザクション展性(Transaction Malleability:トランザクションIDを書き換えられてしまう脆弱性)に起因する問題が生じている」と発表し、対応を進めていると説明しました。マウントゴックス社は、この問題をビットコインコア開発メンバーらと協力していると述べました。

リリースに対して、ビットコインコミュニティではトランザクション展性の問題が起きているという説明に懐疑的な意見も見られました。しかし、同様の問題が2月11日にスロベニア共和国の暗号資産交換業者Bitstampにも起きたことから、マウントゴックス社が説明する問題は実際に発生していると認識されました。その後、Bitstampの問題は修正され、2月15日にはBitstampのビットコインの出庫は再開されます。

マウントゴックス社もまた、2月17日にはビットコインの出庫再開のめどは立ったと説明しています。しかし、実際にはそのまま再開されることなく2月25日にはすべての取引を停止しました。

そればかりか、取引停止後にマウントゴックス社はWebサイト上のコンテンツを削除し、同社のTwitterアカウントのツイートも削除しています。マウントゴックス社の当時のCEOであるマルク・カルプレス氏は、同時期にビットコイン財団の役員も辞任しました。これは、交換所を閉鎖する準備していたと見られています。

その後、マウントゴックス社は最低限のWebサイトを再開するも、カルプレス氏は日本に滞在し事態の収束を図るために奔走しているとの一点張りで、明確な状況を説明しておらず、ハッキングについてははっきりしていませんでした。

詳細な内容が語られる怪文書

その後まもなく、インターネット上に「MtGox Situation Crisis Strategy Draft」と題した怪文書が公開されました。

文書の公開については、マウントゴックス社とは無関係であるとマルク・カルプレス氏は主張するも、一連のマウントゴックスの状況が細かく記述されていました。

文書には、マウントゴックス社は以前から数年間気がつかなかったトランザクション展性に関連したハッキングによって約75万BTCを失っていることなどが記載されていました。内容の真偽については誰も確かめることはできませんが、マウントゴックス社に何かがあったことがわかる、内部事情に詳しいものでした。

民事再生手続開始で事件が公に

そして2月28日、マウントゴックス社は東京地方裁判所(東京地裁)に民事再生手続開始の申立を行います。

申立によりマウントゴックス社の財務状況が債務超過の状況にあることがわかりました。その時点でマウントゴックス社の資産総額は38億4186万6163円、流動負債総額は65億111万9371円であると説明しています。

マウントゴックス社は、流動負債の増大背景には、ビットコインの消失、預り金の消失が原因として考えられると述べています。ここで事件が公になりました。

申立では、ビットコイン消失の考えられる要因としては、ビットコインのシステムのバグを悪用した不正アクセスにより、ビットコインの送付が正常に完了しない取引が増え、また、バグを悪用した不正アクセスにより、ビットコインが不正に引き出されている可能性が高いと説明しています。

それによりマウントゴックス社は、顧客が保有する約75万BTCと自社保有分10万BTCが消失したといいます。当時の市場価格にして、470億円相当の被害額になりました。

また、顧客からの預り金を管理している金融機関の実際の預金残高が、最大で28億円相当不足していることが判明しました。

残高不足については、原因究明のためには過去の膨大な取引を調査する必要があるため、問題の原因はおろか、消失したビットコインの総数や不足している預り金の額も確定できていないと説明しました。

マウントゴックス社が全面的にビットコインの取引を停止した理由は、こうしたビットコインの消失と預り金残高の不足が発覚したことにより、平常の事業運営が困難であると判断したことによるものと述べています。

しかし、東京地裁は民事再生法適用申請を棄却し資産保全命令を出しました。4月24日、マウントゴックス社は破産手続開始を決定しています。

このようにしてマウントゴックス事件と呼ばれるようになったこの一連の出来事は、交換業者が破綻してしまったことで、ビットコインの流出事件として公なものになりました。

世界最大級の交換所マウントゴックス(Mt.GOX)

マウントゴックス社の破綻後や事件の真相について知る前に、そもそもマウントゴックス社とは何だったのか。その会社の成り立ちから、当時世界最大級のビットコイン交換業者に成長するまでを確認してみましょう。

当初からグローバル企業であったマウントゴックス社は、ジェド・マケーレブ氏によって2009年に東京で設立されました。しかし、最初はビットコインの交換業者ではなく、当時世界中で大ヒットしていたトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング(Magic:The Gathering)」の交換所を目的に設立されました。マウントゴックス(Mt.GOX)の名前の由来は、「Magic: The Gathering Online eXchange」の略称でした。

ちなみにマケーレブ氏は、リップルの共同創業者であり、暗号資産ステラ・ルーメンの創設者としても知られている、業界屈指の著名人です。

その後、マケーレブ氏は「マジック:ザ・ギャザリング」のトレーディングを行うことなく、2010年にマウントゴックス社をビットコイン交換業者へと事業転換しました。そして2011年3月に、マルク・カルプレス氏に売却。同年8月にマウントゴックス社が設立されました。マウントゴックス社は、マルク・カルプレス氏の経営下で急成長を遂げ、2013年4月には世界のビットコイン取引量の70%を占めるまでになりました。

ちなみに交換所の運営会社自体は日本にありましたが、利用者はほとんど海外からという状況でした。顧客数は当時、12万7000人いたとされますが、日本人はこの内1000人程度とのことでした。

資金繰りに懸念?犯人が判明?

マウントゴックス社が2014年に閉鎖される以前から、資金繰りについては懸念する声がありました。

2011年6月19日にマウントゴックス社はハッキングによって875万ドル以上の被害を出していました。さらに、2012年から2013年にかけて、同社が資金の払い込みのために利用していた日本や海外の口座が凍結されたり、業務を打ち切ったりされています。

さらに、ビットコインを悪用した犯罪の捜査や交換業者に対する規制が米国で強化されたタイミングでマウントゴックス社は何度か口座を凍結されています。

2013年2月には、米財務省でマネーロンダリング等の金融犯罪捜査を担当する金融犯罪捜査網(FinCEN)はビットコイン交換業者の運営について国際送金事業の登録が必要とするガイドラインを公表。それにより、米国土安全保障省はマウントゴックス社が米ドル決済に利用していたP2Pの決済システム「Dwolla」の口座を凍結しました。このとき、Dwollaに預け入れていた資金も凍結され、当時傾いていたとされる経営にさらに悪影響を及ぼしました。

マウントゴックス社は、米ドルでの業務を再開するために米国デラウェア州にて国際送金事業の登録を行い、FinCENのガイドラインに対応します。しかし、この時期のマウントゴックス社は、口座凍結などが影響し、取引の一時停止や金銭払戻しの一時停止などが頻繁に行われるようになり、金銭払戻しの遅延等が問題になっていました。

こうした状況にあったマウントゴックス社は、事件が発覚した2014年4月24日に破産手続きを行うことになります。

それから1年以上が経ち、2015年8月1日にカルプレス氏は、自身の口座のデータを改竄し残高を水増しした疑いで、私電磁的記録不正作出・同供用容疑により逮捕されました。また、同月21日には顧客からの預り金3億2100万円を着服したとして業務上横領の容疑で再逮捕、起訴されています。

しかし、この件に関してマルク・カルプレス氏側は無罪を主張し、徹底抗戦しました。カルプレス氏は2016年7月14日に、保釈保証金1000万円を納付して東京拘置所から保釈されます。

ロシア人ハッカーが逮捕

また、一連の事件とは別に2017年7月26日、米検察当局は40億ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与したとして、ビットコイン交換所BTC-eの運営者とされるロシア人のアレクサンダー・ビニック容疑者を逮捕、起訴しました。

米当局は、ビニック容疑者がハッキングによりマウントゴックス社から資金を「入手」し、BTC-eと自身がもつ別の交換業者を通じて資金洗浄した疑いで、マウントゴックス社の破綻にも関係している人物と見ています。

2019年3月、東京地裁はマルク・カルプレス氏の私電磁的記録不正作出・同供用罪に対して懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決、業務上横領については無罪の判決を出ししました。検察側は控訴せず、横領に関して無罪が確定しています。

マルク・カルプレス氏は2020年6月11日、私電磁的記録不正作出・同供用罪について控訴するも、東京高裁は控訴を棄却しています。また、2021年1月27日に最高裁がカルプレス氏の上告を棄却し、懲役2年6月、執行猶予4年が確定しました。

その結果、マルク・カルプレス氏は私電磁的記録不正作出・同供用罪以外は無罪を勝ち取る結果になりました。

当時、流出したビットコインと預り金については資金洗浄された可能性が高く、そちらの捜査についてはその後も難航しています。

<マウントゴックス事件の概略>

2009年 ジェド・マケーレブ氏が前身のマジック・ザ・ギャザリングの交換所を設立
2011年3月 マルク・カルプレス氏に事業売却
2011年6月19日 875万ドル以上のハッキング
2011年8月 Mt.Gox社を設立
2014年2月7日 ビットコインの出庫を停止
2014年2月25日 ビットコインの取引を全て停止
2014年2月28日 民事再生手続開始の申し立て(事件が公に)
2014年4月24日 破産手続きを開始
2015年8月1日 カルプレス元CEOが逮捕される
2017年7月26日 マウントゴックス社をハッキングした容疑でロシア人男性が逮捕
2018年6月22日 破産手続きを民事再生法手続きに移行
2019年3月15日 カルプレス氏の業務上横領に無罪判決

事件による暗号資産市場の変化

当時、事件の全貌が知らされないまま、ビットコインや預り金の流出と最大規模の交換所の閉鎖のみが大きく報道され、事件の本質が正しく語られなかったことからビットコインの信用やイメージも一時的に低下。マウントゴックス事件により市場から投資家が撤退し、一時期、価格は暴落しました。

当初は、ビットコインそのものの仕組みに問題があるのではないかという噂もありました。しかし問題は、交換業者側の管理体制の問題であることがわかると、ビットコインは再び元の価格に戻しています。

当時の主要交換業者も共同で声明を発表し、マウントゴックス事件は単なる顧客の信頼を裏切った同社の経営体制の問題であり、ビットコインを始めとする暗号資産の問題ではないことを強く訴えました。そうした業界が団結をする動きが生まれるなど、結果、ビットコインの信頼獲得に繋がったと言えるでしょう。それにより、ビットコインやブロックチェーンの堅牢性は逆に強固であることを理解する人々も増えました。

また、事件の解明とともに一方では、東京地裁の監督のもと、マウントゴックス社の財産管理処分権限を有する弁護士の小林信明氏が再生管財人に選任され、被害者救済のために活動しています。そのおかげで、マウントゴックス社はビットコイン14万1686BTCとビットコインキャッシュ14万2846BCHを保有していることがわかりました。

2017年頃からのビットコインを始めとする暗号資産の多くは高騰し、破産後のマウントゴックス社の保有資産が時価総額にして2000億円超となりました。そのため、2018年6月22日に破産手続きから、債権者がビットコインでも配当を受け取れる民事再生法手続きに移行することが東京地裁に認められました。それにより、マウントゴックス社は再生計画案提出へと進展し、現在も同社Webサイトを中心に財産管理、債権調査等の再生手続が遂行されています。

まとめ

マウントゴックス事件は、各国の規制当局や中央銀行が警告していたように、ビットコインや預り金に投資家保護のための公的規制がかかっていないリスクが如実に現れたといえるでしょう。

しかし、事件をきっかけに各国当局は法の整備が急務となり、結果、世界各国が真剣に暗号資産(仮想通貨)を捉えるようになりました。日本においては、2017年4月1日に、改正資金決済法が施行され、同法にて暗号資産も決済通貨の一つとして定められました。また、その後、暗号資産交換業は、国の登録が必要になり、消費者保護の観点からの規制が入るなど、さまざまな法律が整備されるようになりました。それにより、多くの人が暗号資産の安全性について考えるようにもなりました。

こうしてビットコインを始めとする暗号資産は、マウントゴックス事件をきっかけにして「怪しい」という誤解を払拭し、健全な金融商品の一つとして認知されるようになりました。

事件をきっかけに整備された改正資金決済法については「暗号資産(仮想通貨)の法律が変わる?2020年の法改正とは」をご参照ください。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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