暗号資産(仮想通貨)のステーキングとは?PoSの仕組みと併せて解説

ステーキング
2022-10-26 更新

ステーキングとは、対象となる暗号資産(仮想通貨)を保有し、ブロックチェーンP2Pネットワークに参加することで報酬を得ることができる仕組みです。ステーキングは、ビットコインのマイニング(採掘)にあたるプロセスで、暗号資産を形成するブロックチェーン技術のコンセンサス(合意形成)アルゴリズムに関連しています。

ステーキングが可能な暗号資産には、主にプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)またはPoSに類似するコンセンサスアルゴリズムが採用されています。

近年は、イーサリアム(ETH)がコンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)からPoSに変更したことや、環境問題の点からも注目されるようにもなりました。

では、ステーキングとは具体的にはどのようなものか?ここでは、注目のコンセンサスアルゴリズムPoSの仕組みと併せて解説します。

暗号資産(仮想通貨)のステーキングとは?

ステーキングとは、暗号資産(仮想通貨)を保有しブロックチェーンのP2Pネットワークに参加することで、新たに発行された暗号資産を報酬として得ることができる仕組みです。ステーキングはPoSに対応している暗号資産で可能です。PoSはイーサリアム(ETH)やカルダノ(ADA)、ポルカドット(DOT)などが採用しています。

PoWを採用するビットコインでは、電力を使うマイニングによってブロックチェーンネットワークで取引を検証し、安全性や信頼性が保たれています。一方のPoSは、保有している暗号資産をステーキング(預け入れ)することでバリデーター(承認者)になることができます。例えば、イーサリアムでは32ETHを預け入れます。

そして多くのバリデーターの中から一定のルールに従って選ばれたバリデーターが取引を検証し、ネットワークの安全性を担保しています。PoSでは保有量やネットワークへの貢献度などのルールに応じてバリデーターが選ばれるために計算競争が起きず、電力消費量をPoWに比べて約99%も削減できるとされています。そのためにステーキングはマイニングに比べて環境にやさしいことでも注目されています。

ステーキングでは他者の保有する暗号資産を預かり、代わりに運用するステーキングプールというサービスも誕生しています。ステーキングプールで多くの暗号資産をステークすることで、一者が承認者に選ばれやすくなり、有力なステーキングプールになればなるほど報酬を得やすく、他者に報酬を分配しやすくなるという手法です。ステーキングプールに参加することで、規定量を保有していなくてもステーキングが可能になります。ただし、委託した暗号資産の額によって報酬が異なるために、報酬額は低くなります。

レンディングサービスとの違い

また、ステーキングと似たようなサービスでレンディングサービスというものがあります。レンディングは貸暗号資産ともいいますが、基本的には自身の保有する暗号資産を暗号資産交換業者に一定期間貸し出し、利息を報酬として受け取るサービスです。レンディングは、銀行の仕組みに似ています。暗号資産を預かった暗号資産取引所は、それを第三者に貸し出すことで利益を生み出します。
レンディングとステーキングの違いは、第三者に貸し出すか、暗号資産のエコシステムの中で報酬を得るかの違いで、保有している暗号資産で利益を生み出すという意味においてはよく似たサービスといえるでしょう。

ステーキングのメリットとデメリット

ステーキングのメリットは、マイニング機器がいらないために参入障壁が低いことが挙げられます。ビットコインでマイニングするには高額なマイニング機器が必要ですが、ステーキングは該当の暗号資産(仮想通貨)を預け入れ、24時間インターネットに接続されたコンピューターがあるだけで可能です。

また、前述してきたように、暗号資産を預け入れることで、報酬が得られることもメリットです。取引を頻繁に行わずに長期保有している場合は、ステーキングすることで、報酬が得られます。プロジェクトによっては、ステーキングしたユーザーにネットワークの投票権ともなる「ガバナンストークン」を付与するものもあります。

一方のデメリットとしては、ステーキングで報酬を得るには最低額が定められているために、一定額を保有している必要があることです。暗号資産によって最低額は異なりますが、イーサリアムであれば32ETH必要です。さらに承認者に選出されなければ報酬が得られないため、報酬を安定的に取得することができません。

また、ステーキングすると、一定期間暗号資産を出金できなくなる「ロックアップ期間」が設定されるものがあります。その期間中は価格が変動していても出金ができません。さらにステーキングを続けるユーザーが多くいると、流動性が低下することもあるでしょう。

ステーキングで得た報酬に関しては、税金の計算が複雑になることもデメリットとして挙げられます。

プルーフ・オブ・ステーク(PoS)とは?

ステーキングを行うコンセンサスアルゴリズムのPoSは、暗号資産(仮想通貨)の保有量や保有期間の長さによって新しいブロックを生成できる権限が与えられる仕組みです。具体的には、決められた保有量の暗号資産を、決められた期間「ステーキング(預け入れ)」することで、ネットワーク貢献者となり、その対価として報酬が得られます。

PoSでは、より保有量や保有期間が長いステーキング参加者の中から、合意形成ルールに則って承認作業を行うことができる承認者(バリデーター)を決定します。

PoSは、計算競争を行わないために大量に電力を消費することがありません。そのため、マイニングコストも低く、手数料も安く抑えられるというメリットもあります。また、高度な計算を必要としないため、承認までの時間も少なくて済みます。PoWと比べると、個人でもマイナー(バリデーター)になることができる可能性も高いのが特徴です。

暗号資産によっては、ステーキングではなく、鋳造という意味を表すミンティングやフォージと呼ぶこともありますが、いずれも仕組みは同じようなものになっています。

PoSはPoWと同様に、承認者が報酬を得ることができます。PoSの承認者は、株式会社における株主のような存在で、報酬は配当金に近いものと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。ただし、PoSの承認によって得られる報酬はPoWのマイニング報酬と同様に雑所得になりますので、株式の配当金とは異なる点にご注意ください。

PoSは、ステーキング報酬がインセンティブとなってP2Pネットワーク参加者を多数確保し、PoSを採用するブロックチェーンネットワークを維持しています。それによって分散化された非中央集権型のエコシステムを形成できるためです。また、ステーキングによって対象となる暗号資産を保有する人が増えることは、暗号資産の長期保有者を増やすことにもなり、暗号資産自身の資産価値を高めることにもつながります。

参考コラム:
ビットコインマイニングに使われるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは、意味や役割を解説

ステーキングに参加する方法

PoSにおけるステーキングは、自分でノード(ネットワークに参加するコンピューター)を立ち上げてブロックチェーンネットワークに参加することを意味します。

つまり、ステーキングに参加するには技術的な知識と対象となる暗号資産(仮想通貨)のステーキングのルールを熟知する必要があります。ルールを把握した上で、ステーキングに必要な量の暗号資産を保有し、預け入れることになります。

ノードとして参加することで、新たなブロックを生成できる権限を得て、承認作業を行うことができる承認者に選ばれることにより、晴れて報酬が得られます。

ステーキングという言葉には、純粋にブロックチェーン上で暗号資産を保有(ロック、あるいは預け入れる状態)するPoSの仕組みに参加すること、またはその合意形成に自ら参加すること以外にも、もう一つ別の意味合いで使われることがあります。

それは、暗号資産を保有することで前述のステーキングプールに参加し、間接的に報酬の分配を受け取ることができるステーキングサービスがあり、ステーキングといった場合、そちらのサービスを指している場合もあります。

今後に注目のステーキングサービス

大きな電力を消費し環境への負荷が高いPoWに比べ、今後もPoSを採用する暗号資産(仮想通貨)が増えることが予想されます。イーサリアムがPoSに移行したことで注目度もますます高まっており、よりステーキングに参加しやすい環境が整うでしょう。

自らステーキングに参加するには、まだまだハードルは高いものですが、暗号資産を保有することで報酬が得られる可能性が高まれば、暗号資産のボラティリティ(価格変動率)に期待して投資・投機するよりも安定的に利益を得られる可能性が高くなります。また、それにより暗号資産の利用価値も高まります。ボラティリティを気にせずに投資ができる環境は、やがて暗号資産による決済ネットワークの本格的な実用につながることになるでしょう。
何よりも、大量の電力消費がなくなることは、暗号資産にとっても有益な環境です。

まとめ

ステーキングは、保有する暗号資産を預け入れることで報酬が得られると同時にネットワークの安全性に貢献する仕組みです。

ステーキングによってより報酬が得られ易くなるということは、暗号資産(仮想通貨)を保有したいという気運も高まるでしょう。マイニングよりも参入障壁が低いことも魅力です。

PoSがPoWと比べて環境に優しく持続可能性があることからも、今後より注目が高まるでしょう。

PoSを採用しているイーサリアムについて詳しくお知りになりたい方は「イーサリアムとは?特徴やこれまでの歴史をわかりやすく解説」をご参照ください。

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