NFT(ノンファンジブルトークン)とは?暗号資産(仮想通貨)との違いは?

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仮想通貨
2022-08-24 更新

2021年に入ってから突如としてNFT(ノンファンジブルトークン)という言葉を耳にするようになりました。ニュースでは、ゲームアイテムのNFTやアート作品のNFTが高額で取引されたといった話題もよく上がるようになり、暗号資産(仮想通貨)業界は、今後ますますNFTがブームになるともいわれています。しかし、それと同時に「NFTってなんだろう?」 という疑問の声も聞くようになりました。本稿では、NFTについての概要を解説します。

NFT(ノンファンジブルトークン)とは?

NFT(Non Fungible Token)は、日本語で代替不可トークンとも非代替性トークンとも訳されますが、一般的にはノンファンジブルトークンまたはNFT(エヌエフティー)と、そのままの呼称で呼ばれます。

では、代替不可とはどういうことでしょうか。代替が可能なものはファンジブルトークンと呼び、代替不可能なものをノンファンジブルトークンと呼びます。ブロックチェーン上で発行されるデジタル資産という点では、暗号資産(仮想通貨)と同じですが、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、ファンジブルトークンです。

代替可能なトークンというのは、同じトークンであれば他のトークンと取り替えても価値が変わらないということです。日本円でいうなれば、自分の持っている1万円札と他人の持っている1万円札の価値は変わりません。そのため、あなたの持っている1万円札は、他の人の1万円札と交換(代替)でき、交換しても価値は変わりません。そういったものをファンジブルといいます。ビットコインもこれと同様に、自分の1BTCも他人の1BTCも価値は同じです。これがファンジブルトークンです。

では、仮に自分で描いたこの世にたった1枚の絵は、どうでしょう?これは、価値はともかく、他の人が描いた絵と同じものとしては交換できません。こうした唯一無二の「一点物」で他の物とは交換できないものをノンファンジブルといいます。概念的にはやや難しいですが、こうしたノンファンジブルなものをトークン化したものがノンファンジブルトークン、すなわちNFTと呼ばれるものになります。

NFTは、アート作品やゲーム内のアイテムやキャラクター、音楽、トレーディングカード、動画などのデジタル作品や不動産、会員権など商品の所有権(※)をデジタル上で証明できます。またNFTは暗号資産と同様に価値の移転を行うことができ、NFTを転々流通させることで保有者の移転を行うことも可能です。

※NFTはデジタルトークンとして発行されるデータとして存在するにすぎず、所有権には含まれないと考えられていますが、このコラムでは、便宜上、所有権という言葉を使います。

暗号資産はファンジブルであるという点で、NFTと異なります。ただし、マーケットプレイスでNFTを入手・購入するには暗号資産が必要です。一般的にはイーサリアムで購入するものが多く販売されています。

NFTの仕組み

アート作品やゲームアイテムなどノンファンジブルなデジタルデータは、イーサリアムを始めとするNFTの発行が可能なブロックチェーンプラットフォームを活用することで、トークン化しNFTとして発行できます。

NFTは暗号資産(仮想通貨)と同様に価値の移転が可能になり、NFTに対応するウォレットで送受信したり、NFTマーケットプレイスなどで取引したりできるようになります。ブロックチェーン上で取引が行われ転々流通したNFTは、誰から誰に(ウォレットアドレスからウォレットアドレスに)所有が移ったのか、その来歴の管理も可能です。

2022年5月現在、最も有名かつ利用されているNFT発行プラットフォームは、イーサリアムです。イーサリアムには、ブロックチェーン上でデジタル資産を作り、取引しやすくするための規格「ERC(Ethereum Request for Comments)」が複数提案、定義されていますが、NFT向けの規格としてERC-721、ERC-1155という二つの規格があります。世の中のNFTの多くは、このERC-721またはERC-1155に準拠する規格で作られています。

ERC-721またはERC-1155規格で作られたNFTは、それらの規格に準拠するウォレットや取引所、マーケットプレイス、ソフトウェアと互換性があります。これは、たとえばあるブロックチェーンゲームのアイテムがERC-721またはERC-1155準拠のNFTとして発行されている場合、そのNFTアイテムをウォレットを介して他人に譲渡したり、あるいはマーケットプレイスやオークションに出品したり、NFTをデジタル資産として取引ができるようになることを意味します。また、ERC-721またはERC-1155に準拠し、かつ、異なるゲーム同士で対応を行なっていれば、NFTをひとつのアイテムとして異なるゲーム間で利用・交換できます。

これがゲームの分野においてNFTに期待される利用法です。

イーサリアムの規格には、ERC-721とERC-1155の他に有名な規格としてERC-20があります。ERC-20もブロックチェーン上でイーサリアムベースのトークンを発行することができます。こちらはファンジブルトークンとなっており、これを発展させてノンファンジブルトークンの規格にしたものがERC-721です。

ちなみにゲームでいえば、ゲーム内通貨や薬草など大量に利用するアイテムでそれぞれの価値に違いがないものはERC-20を使用し発行します。しかし、ゲーム内に一つしかない貴重なアイテムやキャラクターなどはERC-721を使用しNFTとして発行します。アイテムだけでなく、キャラクターもNFTとして発行できます。もう一つの規格ERC-1155は、ファンジブルとノンファンジブルの両方のトークンを管理できる規格です。ERC-721のトークンの場合、トークンを送るためにはトークン1つにつき1つのトランザクションが必要となりますが、ERC-1155では、複数のトークンをまとめて1回のトランザクションで承認できるため、取引の手数料を節約できます。そのため、特にアイテムの移動(入手や交換)や消費が多いゲーム分野での活用が盛んとなっています。

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話題のNFT、注目のNFT

NFTの応用例として最も早くから話題になったのは、ブロックチェーンゲームでした。

NFTの特徴を利用して、世界に一つしかないアイテム等を発行しブロックチェーンで管理するというのは、ゲームの世界に向いていました。ブロックチェーンゲームでは、NFTをいち早く遊びに応用できました。

たとえばゲームの世界では、アイテムを収集する状況においては希少性の高いものに価値が付き、バトルという状況においては勝負に有利なアイテムに価値が付きます。ゲーム内のNFTに価値を付けて、ブロックチェーン上で保有者の移転の記録をすることにより、ユーザー間でアイテムの交換や売買が成立する世界が作りやすかったのです。ブロックチェーンにより、ゲーム内のNFTアイテムをユーザー同士が取引することで、アイテムの交換、価値の移転をベースにした遊びが表現できました。

また、ゲーム内でモノが作れるようなゲームでは、そのモノをNFTにすることで、ユーザーが作ったアイテムやキャラクターを売ることができます。こういったゲームでは、モノを作る仮想の土地や土地の上に建つ建物までNFT化することができ、それぞれ取引が可能となります。これまでのゲームでは、アイテムやキャラクターなどゲーム内で購入したものはユーザーのものではなく、ゲーム提供者のものであったため、ゲーム自体がなくなってしまえば使えなくなり、ゲームから取り出したりすることもできませんでした。しかし、アイテム等をNFTにすることで、それらは完全にユーザーのものとして所有権をブロックチェーン上に記録できるため、ゲーム自体がなくなったとしてもそのトークンは残りますし、またそれを売買(保有者の移転)できるようになるわけです。

アートの世界

デジタルアートの世界でも作品のNFT化が話題になっています。アート作品の保有者であるという情報をNFT化し、その権利がトークンとして売買されています。発行されたトークンをブロックチェーン上で管理することで所有権を証明し、取引で移転した所有権の来歴を管理することができるほか、利用者間の二次流通を含め、売買金額の一部がアート作品の制作者に還元される仕組みなど、これまでになかったアート市場を作ることもできるといいます。

アート作品においては、実際の絵画や彫刻など物理的な作品を管理するサービスも考えられます。具体的には、実際のアート作品一つひとつにNFC(近距離無線通信)チップを添付し、その中に所有権やアート作品の情報等を記録したデジタル証明書をNFT化することで、ブロックチェーン上にて管理できます。

トレーディングカード

従来の物理的なトレーディングカード(トレカ)の世界も、NFT化されています。アメリカではNBAの選手のトレカがNFT化され、すでにたくさんのコレクターに集められたり、希少なカードは高額取引が行われていたりしています。日本でもカードゲームやアイドルの写真等のトレカのNFT化もスタートしています。まだまだ始まったばかりの市場ですが、確実にコレクターの輪は広がっています。

NFTマーケットプレイスの役割

こうしたNFTのやり取りは、NFTを取引できる「マーケットプレイス」で行われています。
売買やオークションのようにどちらか一方がNFTを購入するために暗号資産(仮想通貨)あるいは法定通貨で支払いが発生する場合は、支払いとNFTの保有者の移転を確実に行う必要があります。しかし、一対一の取引においてはそれを保障する仕組みがありません。

こうした支払いと保有者の移転を確実に実行できる仕組みを提供しているのがマーケットプレイスです。マーケットプレイスの分野もまた、今後期待される仕組みの一つとして考えられています。

NFTの将来性

NFTは、前述したようにブロックチェーンゲームへの利用が進められてきました。その流れから「GameFi」と呼ばれる分野が注目を集めています。さらにあらゆるデジタルデータをNFT化し、固有の所有権を証明することで、会員権として発行することでコミュニティの形成にも使われ出しているほか、SNSでの活用も始まっています。

GameFi

2022年5月現在、NFTに関して注目を集めているのが「GameFi(ゲームファイ)」です。Game(ゲーム)とFinance(金融)を合わせた造語であるGameFiは、ゲームをすることで収益が得られるプロックチェーンゲームを指します。

これまで説明してきたように、ゲームはNFTととても相性が良く、「Play-to-Earn(プレイして稼ぐ)」という新ジャンルのNFTゲームが生まれています。こうしたNFTゲームでは、プレイすることでトークンを獲得し、換金することで収益になります。

フィリピンでは新型コロナウイルスで仕事を失った人々が、Play-to-Earnのゲームによって1週間で約2万円以上を稼いだことが話題になりました。2022年3月時点で、マニラ首都圏の最低賃金は日給で約1,200円とされていることから、Play-to-Earnでの収入が大きいことがわかります。

2022年5月現在では大手ゲーム会社なども続々とNFTゲームに関心を示しており、今後ますます盛り上がっていく可能性があります。

コミュニティ形成

NFTの将来的な使われ方として、会員権としての利用が考えられます。2022年5月には、アメリカの資産運用会社がデジタル資産のリサーチやバーチャルイベントへの参加権としてNFTを発行しました。この企業はNFTを通じて投資家コミュニティを立ち上げようとしているようです。

バーチャルイベントだけでなく、物理的な実店舗でもNFTは会員券として使われています。2023年にNFTを会員券として、ニューヨークでレストランが開業する予定です。価格の異なるNFTを販売することで、入場できるエリアをコントロールするとされています。

SNS

2022年5月に写真共有SNSのInstagramがNFTの投稿や共有を可能にするテストを米国で開始することを発表しました。Facebookでも同様の機能が計画されています。

NFTは前述したNFTマーケットプレイスでの取引が主流です。そのために、ブロックチェーンへの理解や知識があるユーザー以外では取引しにくいのが現状です。しかしユーザー数が多いSNSプラットフォームでNFTが利用可能になることで、多くの人の目に触れ、NFTの利用機会が増えることやユーザーインターフェイスの向上が期待できます。

まとめ

このようにブロックチェーンとNFTを活用することで、資産管理が可能である世界が徐々に見えつつある時代になってきました。今後は、さらなるアイデアであらゆる資産のNFT化が進み、多くのビジネス領域で活用されることが予測されます。NFTによって、まったく新しい市場が生まれる可能性も出てきました。

しかし、資産のNFT化は、まだまだ課題を抱えていることも事実です。特に、ブロックチェーンを資産管理に活用するにあたっては、技術面のみならず、法律面においても考えていかなければなりません。資産のトークン化の先には、それぞれの資産に関係する法律があります。法律をデジタル化する上でどう扱っていくかについては、まだまだ多くの議論が必要です。

NFTそのものが独立して価値を有するため、その売買や交換により所得が生じた場合、どのような資産のNFT化なのかによってその税制や消費者保護に関する考え方も異なるはずです。今後は、ブロックチェーンとNFTの発展とともに、業界は暗号資産(仮想通貨)業界のみならず、あらゆる分野、業種を捲きこみ、さらなる有意義な議論が行われていくことでしょう。2022年からは自民党で「NFT政策検討プロジェクトチーム」が作成を進めていた「NFTホワイトペーパー」が公開されるなど、官民が連携した今後の動きに注目です。

NFTで多く使われるブロックチェーンであるイーサリアムについて詳しくは「イーサリアムとは?特徴や将来性をわかりやすく解説」をご覧ください。

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