コンセンサスアルゴリズムとは?ブロックチェーンで使われる代表的な種類を解説
コンセンサスアルゴリズムとは、暗号資産(仮想通貨)の基盤技術となるブロックチェーンがブロックを追加する際のルールとなるコンセンサス(合意)形成を行うアルゴリズム(方法)のことを指します。ビットコインでいうと、プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work、「PoW」と略されます)の仕組みがそれにあたりますが、コンセンサスアルゴリズムは暗号資産によってそれぞれ異なります。
ここでは、代表的なコンセンサスアルゴリズムの種類や仕組みについて詳しく解説します。
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0196/column_image_01.jpg)
暗号資産(仮想通貨)のコンセンサスアルゴリズムとは?
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0196/column_image_02.jpg)
ビットコインを始めとする多くの暗号資産は、ブロックチェーン技術を活用した分散型・非中央集権型のP2P(ピアツーピア)ネットワークにより取引を行います。暗号資産には、ブロックチェーン上の取引情報を管理する特定の中央管理者は存在せず、取引(暗号資産の送付)については、その取引が正しいかどうかを多数のネットワーク参加者(ノード)同士が検証し、合意を行っていく仕組みを採用しています。この仕組みをコンセンサスアルゴリズムといいます。
分散型ネットワークにおけるブロックチェーンの合意形成は、コンセンサスアルゴリズムのルールのもと、ネットワークに参加する者同士がルールに従い、参加者全員で不正な取引を監視し排除しながら、新規の取引の正当性について合意しあい、新たなブロックに正しい取引情報のみを記録していきます。
コンセンサスアルゴリズムにおいて、この不正な取引を監視し排除しながら正しい取引情報のみを記録する仕組みがとても重要になります。これは、ビザンチン将軍問題と呼ばれる、コンピュータ科学における重要な課題でした。
ビザンチン将軍問題のビザンチンとは、中世ヨーロッパ世界で権勢を誇ったビザンチン帝国を指します。この問題をかいつまんで解説をすると、ビザンチン帝国を包囲する敵国9人の将軍が攻撃計画について攻撃か撤退を多数決で決定する際に、必ず全将軍一致で攻撃をしないと計画は成功しないとした場合に、裏切り者の将軍(不正な取引)が1人でもいたら絶対に攻撃は成功しません。この状況をビザンチン障害といいます。
分散型ネットワークの合意形成においては、ネットワーク上に1台でも故障しているコンピュータが存在していたり、あるいは不正を働くものが混ざっていたりした場合に、いわゆるビザンチン障害が発生し、合意形成はおろかネットワーク自体が機能しなくなります。この状況を、コンピュータ科学ではビザンチン将軍問題と呼んでおり、中央管理者のいない分散型ネットワークでは、非常に大きな問題になります。
ブロックチェーンの分散型ネットワークでは、ネットワークに参加する各ノード(参加者)が同じデータを互いに持ち合いますが、そのデータの正当性を担保し不正取引を許さない仕組みを持ちます。このデータの正当性を担保しているのがコンセンサスアルゴリズムで、初めてビザンチン将軍問題の解決に成功したのが、ビットコインのコンセンサスアルゴリズムPoWです。
PoWは、ビットコインを始めイーサリアム(1.x)、ライトコイン、ビットコインキャッシュなど多数の暗号資産に用いられている代表的なコンセンサスアルゴリズムです。
代表的なコンセンサスアルゴリズム「PoW」とは
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0196/column_image_03.jpg)
ビットコインは、取引を承認するために膨大な計算によって合意形成を行います。計算に成功すると、取引データがブロックチェーンに追加されますが、この計算を最初に成功した人には、成功報酬として新たに発行されたビットコインが与えられます。このプロセスをマイニングと呼び、この大量計算による合意形成の方法(コンセンサスアルゴリズム)をPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼びます。また、計算をする人(ノード)をマイナーといいます。
わざわざ複雑な計算をしないと承認できない仕組みにすることで、PoWは不正を働くものを排除することに成功しています。仮にブロックチェーン内の取引データを改ざんしたいマイナーがいたとして、計算能力が他のマイナーよりも優れているコンピュータで計算し取引情報を改ざんしようとしても、約10分という短時間でブロックチェーン全体の半分以上を書き換えなければなりません。また、ブロックチェーンの各ブロックには次のブロックにも直前のブロックのデータの情報が組み込まれていることから、一つのブロックを改ざんしたければ、その後ないしそれ以前のデータについても改ざんしなければなりません。一つのブロックだけを書き換えても、その他のブロックとの間に関係性がなくなるため、不正ブロックは次の承認のタイミングで意味をなさなくなります。
また、同時に各ノード(参加者)が同じデータを互いに持ち合っているため、ノード同士がデータを照合し合うことで、不正を見抜くことが可能になります。この仕組みは、仮に故障したノードが発生した場合でも、他のノードのデータをコピーすることで補修することができるほか、正常なノードのみで動作が可能なため、ネットワーク全体がダウンすることもありません。
こうしてPoWでは、正当にマイニングを行って報酬を得たほうが不正を働くよりも効率がよいという環境を実現させることで、ビザンチン将軍問題を解決しました。
PoWの課題
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0196/column_image_04.jpg)
ただし、PoWにも問題はあります。
ビットコインのPoWは、約10分に1回の間隔でブロックが承認されるように自動で調整されています。そのため取引を処理する件数に限界があるため、送付遅延などの「スケーラビリティ問題」が起こります。現在のビットコインでは1秒間に5~10件程度の処理件数といわれています。この件数は、標準的なクレジットカードの1700件の処理件数と比べるとかなり少なく、長らくビットコインの課題とされています。
さらにPoWは、マイニングにて膨大な計算が必要なことから、大量の電力を消費するといった電力消費量の問題があります。ケンブリッジ大学のオルタナティブ金融センターのデータによると、ビットコインの電力消費量は現在、年間で59.03Twh(テラワット)とされ、ビットコインのマイニングに使われる電力量は小規模な国の電力消費量よりも多いといわれています。
また、PoWは「51%攻撃」という問題も抱えています。PoWは、ネットワークに参加するすべての計算力の半数以上、すなわち51%の計算力を持つことでネットワークを乗っ取ることができてしまいます。ビットコインのように大勢のユーザー(ノード)が参加するネットワークでは過半数の計算力を持つことは事実上難しいとされていますが、PoWを採用する参加者の少ない暗号資産では、悪意あるユーザーが51%以上の計算力を持つことで、過去のブロックを書き換えて、別のブロックチェーンを作ることが可能になってしまうというリスクが常にあります。
PoW以外のコンセンサスアルゴリズム
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0196/column_image_05.jpg)
こうしたPoWの問題が明らかになったことから、ビットコイン以降に誕生した暗号資産では、PoWが抱えている課題を解決すべく、コンセンサスアルゴリズムはさらなる発展を遂げ、現在は様々なコンセンサスアルゴリズムが登場しています。
PoS(Proof of Stake、プルーフ・オブ・ステーク)
PoWの問題を解決しようとビットコインの初期にPoWの代替として提案されたのが、プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake、「PoS」と略されます)です。PoSでは、電力を消費する膨大な計算ではなく、暗号資産の保有量に応じてブロックの承認率を決定します。一度マイニングに成功したマイナーは、次には承認率が下がるなどでマイニングのしやすさを調整します。ただし、資産を多く持つ人がブロックを承認しやすくなるため、中央集権化の課題が指摘されています。
PoSはイーサリアム2.0ほかで採用される予定のほか、すでにいくつかの暗号資産に使われています。
PoI(Proof of Importance、プルーフ・オブ・インポータンス)
暗号資産の保有量に応じて報酬をもらうことができるPoI(Proof of Importance、プルーフ・オブ・インポータンス)はPoSに似ていますが、PoSの課題である資産を多く持つ人が権限を得やすく、中央集権化する可能性があるという懸念を排除するために、PoIでは保有量のほかに取引回数等に鑑み、保有量と流動性を配慮した仕組みを設けています。
PoIを採用する代表的な暗号資産には、XEMがあります。
PoC(Proof of Consensus、プルーフ・オブ・コンセンサス)
リップル(Ripple)の暗号資産XRPに採用されているPoC(Proof of Consensus、プルーフ・オブ・コンセンサス)は、中央管理者のいない他のコンセンサスアルゴリズムとは異なり、リップル社(Ripple Inc.)という管理主体が存在する中央集権型のコンセンサスアルゴリズムです。リップル社が管理・認定するバリデーターと呼ばれる承認者による多数決によって合意されます。PoCは、ビットコインやイーサリアムのスケーラビリティ問題を解決し、コスト低減にも成功しています。
コンセンサス アルゴリズム |
特徴 | 代表的な暗号資産 |
---|---|---|
PoW | 大量の計算によって合意形成 | ビットコイン、ライトコイン |
PoS | 暗号資産の保有量に応じてブロックの承認率を決定 | イーサリアム2.0 |
PoI | 保有量の他に取引回数などを考慮 | XEM |
PoC | 管理主体がバリデーターを選び、このバリデーターの多数決によって合意形成 | XRP |
まとめ
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0196/column_image_06.jpg)
ここまで代表的なコンセンサスアルゴリズムを解説してきましたが、それぞれの特徴に見られるように、コンセンサスアルゴリズムはPoWを筆頭にして、その時点での課題を解決するために新たなコンセンサスアルゴリズムが誕生してきた経緯があります。
また、PoWを採用するビットコインも、その技術についての見直しや課題解決に向けた改善策が提案されては実装されるという発展を遂げていることから、それぞれに長所もあれば、改善によってまた新たな課題が発生してしまうなど短所もあります。すべてにいえるのは、完璧なコンセンサスアルゴリズムは存在しないということです。
どのコンセンサスアルゴリズムが優れているというよりも、暗号資産の目的や用途に応じて、それぞれに合ったコンセンサスアルゴリズムがあると考えたほうが良いでしょう。もちろん好みのコンセンサスアルゴリズムから暗号資産を選択することもあるでしょう。ですが、すべてにいえることは、コンセンサスアルゴリズムや暗号資産は今後も技術の発展とさらなるアイデアによって、新たな可能性として発展するほうが大きいと思われます。
暗号資産がより信頼性の高いものになり、安心安全に利用できるものになるためには、コンセンサスアルゴリズムの発展は必要不可欠な要素です。今後も、コンセンサスアルゴリズムの発展に注視していきましょう。
コンセンサスアルゴリズムのPoWについてより詳しくお知りになりたい方は「マイニングに使われるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは?意味や役割を解説」をご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
関連記事
-
価格変動にも影響する?ビットコインのマイニング難易度調整
ビットコイン(BTC)における価格変動への影響として、マイニング(採掘)の「難易度調整」があります。この記事では難易度調整の仕組みや頻度、価格への影響について解説します。
-
ラップドトークンとは?相互運用性を解決する技術として注目
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などのブロックチェーンにはそれぞれに相互運用性がないことが課題とされてきました。こうした課題に対して、ブロックチェーンに相互運用性を持たせるために考えられたのが「ラップドトークン」です。この記事ではラップドトークンが誕生した経緯や概要についてまとめていきます。
-
モジュラーブロックチェーンとは?スケーラビリティ問題を解決する注目の手法
既存のブロックチェーンに関する諸問題を解決する新たな方法として、ブロックチェーンの構成要素を分業で行う「モジュラーブロックチェーン」という手法が話題になっています。この記事では、モジュラーブロックチェーンの概要、特徴、将来性などについて解説します。
-
Web3の重要要素とされるDePIN(分散型物理インフラネットワーク)とは
近年、暗号資産(仮想通貨)をインセンティブ(報酬)として利用する次世代型ビジネスモデルの一つとして、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)と呼ばれるプロジェクトやサービスが注目されています。この記事では、その仕組みや具体的なユースケース、将来性について解説します。
-
オプティミスティック・ロールアップとは?スケーラビリティ改善に重要な技術
イーサリアム(ETH)のスケーラビリティ問題などの課題に対応した技術にレイヤー2と呼ばれる技術がいくつかありますが、そのうちの一つに「ロールアップ」があります。この記事では、オプティミスティック・ロールアップの仕組みや将来性、他のロールアップとの違いについて解説していきます。
-
イーサリアム仮想マシン(EVM)とは?仕組みや互換性を持つブロックチェーンも紹介
スマートコントラクトによるDAppsの開発が活発な暗号資産(仮想通貨)の分野では、イーサリアム(ETH)を中心に、スマートコントラクトが開発できる様々なブロックチェーンが台頭してきています。この記事では、EVMの概要や仕組み、対応するメリットや将来性などを解説します。
-
RWA(Real World Asset)とは?「現物資産のトークン化」について解説
日進月歩のブロックチェーン技術は、暗号資産(仮想通貨)以外にも実用化が進められています。その中の一つが「RWA(Real World Asset:現物資産)のトークン化」です。この記事ではRWAのトークン化とは何か、なぜ注目されているのか、その特徴や今後の将来性について詳しく解説します。
-
暗号資産(仮想通貨)取引に関わるガス代について解説
暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンの分野は、その複雑さと革新性で知られています。そうした中で、ガス代と呼ばれる手数料はこの分野を理解する上では必要不可欠な知識です。この記事ではガス代の概念を始め、それが暗号資産取引にどのような影響を与えるかなどについて詳しく解説します。
今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン