暗号資産(仮想通貨)のセカンドレイヤー(レイヤー2)とは
ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)は、ただ投資目的というだけでなく決済に用いられたり、分散型金融(DeFi)を構築したりするなど、多用途に使われます。
しかし、大量の取引が行われる際には送付遅延などの問題から、ブロックチェーン上で全ての取引を処理することが難しい場合があります。そうした問題を解決するために用いられるのが「セカンドレイヤー(レイヤー2とも呼ばれます)」技術です。
2020年には、DeFiの盛り上がりによって生じた、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するために、注目がさらに高まりました。
ビットコインだけでなく、イーサリアムでの利用を含めて、本稿ではセカンドレイヤー技術とは何かを解説します。
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_01_mv.jpg)
セカンドレイヤー(レイヤー2)とは?
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_02_mv.jpg)
セカンドレイヤーとは、メインのブロックチェーン以外で何らかの取引を実行する技術のことを言います。しかし、なぜわざわざメインのブロックチェーン外部で処理をする必要があるのでしょうか?
それは後述するように、ビットコインやイーサリアムには処理能力の制限によって起こる「スケーラビリティ問題」があるためです。
セカンドレイヤーのメリットは、ビットコインのブロックチェーンといったメインのブロックチェーン上で処理を行わないために、ブロックチェーン本体のシステムの処理に負荷がかからず、高速な処理ができることでスケーラビリティ問題を解決できることにあります。
このように、ブロックチェーン外部で取引を行うことを「オフチェーン」と呼びます。一方で、メインチェーンであるブロックチェーン上で処理することを「オンチェーン」と言います。
セカンドレイヤー技術にはこの「オフチェーン型」が主に開発されてきましたが、最近ではメインのブロックチェーンを応用した「オンチェーン型」も注目されています。
セカンドレイヤーとスケーラビリティ問題
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_03_mv.jpg)
ビットコインやイーサリアムは、1つのブロックの中にトランザクションデータを書き込める量が限られています。ブロック容量いっぱいにデータが書き込まれることで処理能力が追いつかなくなってしまい、送付遅延、手数料増加などの問題が発生します。これがスケーラビリティ問題です。
クレジットカードのVISAなどは世界で1秒あたり1700件の処理が行われているとされます。しかしビットコインは1秒間で5〜10件、イーサリアムでも15件ほどしか処理できません。
プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work「PoWと略されます」)を採用しているビットコインやイーサリアムでは、最終的な取引結果にたどり着くまでに多くの計算を必要とします。セカンドレイヤーはメインのブロックチェーンの外で一旦途中計算を処理し、最終的な取引結果だけをブロックチェーンに再び戻すことで、この処理能力の負担を軽減させる働きをします。
分散型金融台頭でイーサリアムのスケーラビリティ問題も
スケーラビリティ問題が注目されたのは、2017年12月の暗号資産バブル時にわずかな時間で価格が上下したことでビットコインをはじめ、イーサリアムなどの取引を早く処理してもらおうと手数料が高騰したことが発端です。
その後、価格が落ち着いたことで、手数料は下がりましたが、2020年にはDeFiがブームとなったことで、イーサリアムのスケーラビリティ問題が深刻になりました。2020年にブームになったDeFiプロジェクトのほとんどはイーサリアム基盤で作られたこともあり、トランザクションが膨大になるにつれて、手数料が高騰。再びセカンドレイヤー技術の必要性が高まりました。
なお、イーサリアムは2020年12月に次世代バージョンであるイーサリアム2.0に移行しました。全部で4段階ある移行段階の最初の段階のため、現在はPoWのままですが、2021年中に予定されている「フェーズ1.5」でプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake「PoSと略されます」)に移行することで、スケーラビリティ問題が解決できると期待されています。
代表的なセカンドレイヤー技術
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_04_mv.jpg)
セカンドレイヤーにはビットコインに使われている「ライトニングネットワーク」、イーサリアムに使われるライデンネットワークやPlasmaなどがあります。それぞれどういった特徴、技術なのかを見ていきましょう。
ライトニングネットワーク:
ライトニングネットワークはビットコインに使われ、セカンドレイヤーの中で最もポピュラーなものと言えます。
ライトニングネットワークでは、二者間でオフチェーン取引を行う仕組みである「双方向ペイメントチャネル」という仕組みを採用しています。この双方向ペイメントチャネルを複数経由することで、チャネルが繋がっていないもの同士でも高速で低コストな暗号資産の送付が可能となります。
ライトニングネットワークでは第三者(下図のCさん、Dさん)に暗号資産を預けるのではなく、取引相手同士(下図のAさん、Bさん)で管理します。そして取引相手同士が秘密鍵を管理するため、第三者に暗号資産が渡ることはありません
ライトニングネットワークによって、手数料を下げることで、少額決済(マイクロペイメント)に適しているとされています。
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_05_mv.jpg)
ライデンネットワーク
ライデンネットワークは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するための技術です。ライトニングネットワークと同じ仕組みをイーサリアム(ETH)やERC20に準拠したトークンを高速かつ安価に取引するために作られました。
「ステート・チャネル」という仕組みを使い、ノード間で暗号資産をやりとりします。ライデンネットワークでは、ステート・チャネルを決済用に使用しますが、ステート・チャネル自体は決済だけでなく、「頻繁に状態が変わる取引」に効果が発揮されます。例えば、サービスの手数料を5分ごとに支払わなければいけないものがあった場合や、将棋やチェスなどのゲームで、頻繁に状態が変わるもの(駒を動かすたびに承認が必要)です。
オフチェーンでの取引が公開されないために、プライバシーの強化も可能です。
ライデンネットワークは、ライトニングネットワーク同様に少額決済での利用が期待されています。一方で、あらかじめデポジットされた額での送付を行うため、大量の送付には不向き、かつスマートコントラクトが実行できないなどのデメリットがあります。
また、ライデンネットワークの大きな特徴は、独自トークンを発行してICOを行ったことです。トークンはライデンネットワーク内で、有料サービスを利用する際に手数料として使用できます。
2020年5月には改良版であるAlderaanのベータ版がリリースされました。このAlderaanではチャネルをクローズすることなくイーサリアムを引き出すことができ、ノードを立てる手順も簡略化されるなど、より利便性が向上しました。
Plasma
Plasmaはオンチェーン型のセカンドレイヤーです。イーサリアムの共同創業者であるヴィタリック・ブテリン氏と、ライトニングネットワークを考案したジョセフ・プーン氏によって始まりました。ブテリン氏が関わっているように、イーサリアムの中でも特にスマートコントラクトを使いながらスケーラビリティ問題を解決するために考案されました。
Plasmaでは、メインのブロックチェーンである「親チェーン」に繋げることができる「子チェーン」を作り、その「子チェーン」や「孫チェーン」に処理を行わせ、最終的なデータだけを親のブロックチェーンに保存するという方法をとります。この子チェーンやさらにその子チェーンに処理を行わせることでメインのブロックチェーンに負荷をかけることなく、送付遅延や手数料高騰といった問題に対処できます。
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_06_mv.jpg)
Plasmaはライトニングネットワークやライデンネットワークのようにブロックチェーンの外で処理するオフチェーンではなく、ブロックチェーン上で処理するオンチェーン型のセカンドレイヤーです。Plasmaの大きな特徴はオンチェーンで処理することでスマートコントラクトが実装できることです。
2020年に分散型金融がブームとなったように、イーサリアムでは今後、スマートコントラクトを活用した多くのサービスが開発されてくるでしょう。しかし取引量が膨大になるにつれて、スケーラビリティ問題も深刻化することも想定されます。
そうしたことから、スマートコントラクトが使えるPlasmaの需要はより高まってくると言えるでしょう。
セカンドレイヤー | 種類 | 主な用途 |
---|---|---|
ライトニングネットワーク | オフチェーン | ペイメント |
ライデンネットワーク | オフチェーン | ペイメント |
Plasma | オンチェーン | ペイメント、スマートコントラクト |
セカンドレイヤーの課題
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_07_mv.jpg)
ビットコインやイーサリアムのスケーラビリティ問題の解決にセカンドレイヤーは多くの利点がありますが、課題もあります。
例えば、オフチェーン型での処理は、セキュリティが脆弱なことが挙げられます。2020年7月には攻撃者が一斉にチャネルを閉じることでトランザクションを捌ききれなくし、債務を回収できなくする攻撃に関する論文が公開されました。この論文では、指定時間内に完了しないトランザクションから資金が盗まれる可能性が指摘されています。
また、オフチェーン型は途中の取引を外部で行うために、その途中の取引記録を確認することはできません、内容がわからないために取引の透明性の問題があります。
オンチェーン型のPlasmaにも課題があります。
Plasmaの親チェーン、子チェーンの運用は不特定多数に任されています。どこかで悪意のある者によって運営されたチェーンがあれば、資産が奪われてしまうリスクがあるため、ネットワーク参加者はPlasmaの子チェーン全てを監視し続ける必要があります。監視していなければ、どこで不正が起きたかわからなくなってしまいます。
監視するために、親チェーンにつながるブロックチェーンを全てダウンロードする必要があり、子チェーンの階層が深くなればなるほど利便性が悪化するという問題が指摘されています。
まとめ
![](https://bitcoin.dmm.com/_img/column/0193/column_image_08_mv.jpg)
セカンドレイヤーはビットコインを使った決済やイーサリアムで生じるスケーラビリティ問題解決にとって欠かせない技術です。
ビットコインのスケーラビリティ問題解決のためにライトニングネットワークが注目されてきましたが、2020年はDeFiブームによって、イーサリアムにも焦点が当たりました。
今後ますます多くのユーザーが暗号資産に注目するにつれて、処理能力に制限があるビットコインやイーサリアムに問題が発生することになります。そうした際にセカンドレイヤーの進展や技術を知っておくことで、今後どのように開発がされたり、サービスが便利になったりするのかを把握することにつながるでしょう。
スケーラビリティ問題について詳しくは暗号資産(仮想通貨)取引用語集ページにある「スケーラビリティ問題」をご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
関連記事
-
価格変動にも影響する?ビットコインのマイニング難易度調整
ビットコイン(BTC)における価格変動への影響として、マイニング(採掘)の「難易度調整」があります。この記事では難易度調整の仕組みや頻度、価格への影響について解説します。
-
ラップドトークンとは?相互運用性を解決する技術として注目
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などのブロックチェーンにはそれぞれに相互運用性がないことが課題とされてきました。こうした課題に対して、ブロックチェーンに相互運用性を持たせるために考えられたのが「ラップドトークン」です。この記事ではラップドトークンが誕生した経緯や概要についてまとめていきます。
-
モジュラーブロックチェーンとは?スケーラビリティ問題を解決する注目の手法
既存のブロックチェーンに関する諸問題を解決する新たな方法として、ブロックチェーンの構成要素を分業で行う「モジュラーブロックチェーン」という手法が話題になっています。この記事では、モジュラーブロックチェーンの概要、特徴、将来性などについて解説します。
-
Web3の重要要素とされるDePIN(分散型物理インフラネットワーク)とは
近年、暗号資産(仮想通貨)をインセンティブ(報酬)として利用する次世代型ビジネスモデルの一つとして、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)と呼ばれるプロジェクトやサービスが注目されています。この記事では、その仕組みや具体的なユースケース、将来性について解説します。
-
オプティミスティック・ロールアップとは?スケーラビリティ改善に重要な技術
イーサリアム(ETH)のスケーラビリティ問題などの課題に対応した技術にレイヤー2と呼ばれる技術がいくつかありますが、そのうちの一つに「ロールアップ」があります。この記事では、オプティミスティック・ロールアップの仕組みや将来性、他のロールアップとの違いについて解説していきます。
-
イーサリアム仮想マシン(EVM)とは?仕組みや互換性を持つブロックチェーンも紹介
スマートコントラクトによるDAppsの開発が活発な暗号資産(仮想通貨)の分野では、イーサリアム(ETH)を中心に、スマートコントラクトが開発できる様々なブロックチェーンが台頭してきています。この記事では、EVMの概要や仕組み、対応するメリットや将来性などを解説します。
-
RWA(Real World Asset)とは?「現物資産のトークン化」について解説
日進月歩のブロックチェーン技術は、暗号資産(仮想通貨)以外にも実用化が進められています。その中の一つが「RWA(Real World Asset:現物資産)のトークン化」です。この記事ではRWAのトークン化とは何か、なぜ注目されているのか、その特徴や今後の将来性について詳しく解説します。
-
暗号資産(仮想通貨)取引に関わるガス代について解説
暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンの分野は、その複雑さと革新性で知られています。そうした中で、ガス代と呼ばれる手数料はこの分野を理解する上では必要不可欠な知識です。この記事ではガス代の概念を始め、それが暗号資産取引にどのような影響を与えるかなどについて詳しく解説します。
今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン