暗号資産(仮想通貨)のトレンドを分析する「一目均衡表」とは
暗号資産(仮想通貨)の価格トレンドを分析する手法に、過去の価格推移を使って、将来の方向性や価格水準を予想する「テクニカル分析」があります。このテクニカル分析には様々な方法があります。
本稿ではテクニカル分析手法の中でも、世界中のトレーダーに使われている「一目均衡表」について解説します。日本発の一目均衡表を使うことで、今後どのように価格が動くのかの予想に役立ちます。また一目均衡表におけるビットコイン特有の現象やデメリットについても解説します。
日本産で世界的に人気のテクニカル分析手法
一目均衡表は、株式評論家の細田悟一(ペンネームを一目山人と言います)が、東京新聞の前身である都新聞在籍時に開発したテクニカル指標です。「買い方と売り方の優勢が一目でわかる」という特徴から名前が付けられています。ビットコインだけでなく、株式や商品、為替の分析法など、世界中のアナリストがテクニカル分析手法として取り入れています。海外ではチャートの中に描かれる「雲」から「Ichimoku Cloud」と呼ばれています。
暗号資産でも王道のテクニカル指標として知られており、海外のテクニカルトレーダーでも愛用している人が多くいます。
様々あるテクニカル分析の中でも、一目均衡表は「何日後に変化するのか」「いつ目標値が達成されるか」といった「時間」の概念を念頭に分析することが特徴で、トレンドの転換を読み解くことに長けています。ボラティリティが大きい暗号資産でトレンドの転換を読み解くことは非常に重要です。具体的にどのように示されるのかを見ていきましょう。
一目均衡表の見方
指標と用語について
一目均衡表はローソク足とともに5本の線で表現されます。5本の線とは次の式をプロットしたものです。
- 基準線=(26日間の最高値+26日間の最安値) / 2
- 転換線=(9日間の最高値+9日間の最安値) / 2
- 先行スパン1=(基準線+転換線) / 2を26日間先にしたもの
- 先行スパン2=(52日間の最高値+52日間の最安値)/ 2を26日先にしたもの
- 遅行スパン=当日の終値を26日前に遡って書いたもの
「基準線」が示しているものは中期相場の方向性です。一方で「転換線」は短期相場の方向性を、「先行スパン2」は長期的な方向性を示します。そして先行スパン1と先行スパン2の間で挟まれた部分を「雲」と呼びます。一目均衡表は基準線と転換線、そして雲に着目することが重要です。
基準線と転換線での見方
基準線は5本の線の中で最も重要です。傾きが水平な時は方向感がなく、正の傾きでは上昇トレンド、負の傾きの時は下落トレンドになっていくとされています。またローソク足が基準線の上側にあれば強気相場、下側であれば弱気相場とみなすことができます。さらに基準線が正の傾きの時に、転換線が基準線を下から上抜けた場合に「好転」という買いシグナルとなります。反対に基準線が負の傾きの時に転換線が基準線の上から下ぬけた場合を「逆転」となり売りシグナルとみなされます。
好転がゴールデンクロス、逆転はデッドクロスと呼ばれます。
先行スパンによる「雲」の見方
先行スパンに挟まれた部分である雲とローソク足(価格)の位置関係によって相場のトレンドを読むことができます。雲の見方はシンプルです。
ローソク足が雲より上にあれば上昇トレンドを示し、下にあれば下落トレンドです。ローソク足よりも雲が上にあれば、雲はレジスタンスとなり、下にある場合はサポートラインとなります。
また、ローソク足が雲に入った時はトレンド転換の目安です。雲の下から上にローソク足が入った際は上昇、反対に上から下に抜けると下落の兆候です。
雲の大きさ(厚さ)がレジスタンスとサポートの強さを示しており、大きいほど相場の転換が難しいことが表されます。先行スパン1と先行スパン2が交差する際は相場のトレンドに変化が起きやすくなるとされています。トレンドが転換するか、さらに加速する可能性が高まります。
遅行スパン
遅行スパンは26日後の損益状態を示しています。例えば、遅行スパンが26日前のローソク足を上回っていると、含み益となっていると捉えることができます。つまり買い方が優勢な強気相場です。一方で遅行スパンが価格を下回っていると含み損となり、弱気相場と捉えられます。
また遅行スパンがローソク足を上抜けると強気相場に、反対に下抜けると下落トレンド転換となります。
上昇トレンドに必要な3条件(三役好転)
上記に示してきた3つの強気の条件が揃うと、非常に強い買い売りシグナルとなります。3つの条件をまとめると以下のようになります。
- 「転換線が基準線を上回る」
- 「ローソク足が雲の上を抜ける」
- 「遅行スパンがローソク足の上にある」
条件が三つ揃うことを「三役好転」と言います。一方で、上記の条件が全て反対の場合は強い売りシグナル「三役逆転」となります。三役逆転は以下のような状態です。
- 転換線が基準線を下回る
- ローソク足が雲の下に抜ける
- 遅行スパンがローソク足の下にある
ビットコイン独特の現象とデメリット
遅行スパンからわかるビットコインの強気トレンド
一目均衡表の考案者である細田悟一氏自身は遅行スパンが最も重要だと指摘しています。それは実際に投資家が含み益を得ているのか、含み損となっているのかが分かるためです。
ビットコインでは過去のチャートから、遅行スパンが実際の価格(レンジ相場で横ばいになっている状況が多いです)に近づくにつれて、上方に反発する現象が起きています。
一方で前述したように、遅行スパンが下に抜けると弱気トレンドへの転換を示しています。しかし、ビットコインは長期の上昇トレンドにあることがチャートから示されており、明確な長期や中期の下落トレンドは一目均衡表では出てきていません。
また、三役逆転は一時的に現れたりはするものの、明確な下落トレンドは、ビットコインの一目均衡表では確認しにくくなっています。そのため三役逆転は参考にしにくいでしょう。
ビットコインチャート分析でのデメリット
上記を踏まえると、ビットコインで一目均衡表を使った場合に、下落局面で勝負することに一目均衡表はあまり万能ではありません。
これまでの下落相場は、長期的視点で見た場合のレンジ相場内での調整局面と捉えることができます。こうした状況では一目均衡表は万能ではなく、トレンドを明確に捉えることは難しいため、主に上昇相場の加速タイミングを図ることに使うのが良いでしょう。
まとめ
一目均衡表は日本のみならず、世界中で使われる重要なテクニカル分析手法です。現在の相場が上昇トレンドなのか、いつトレンドが反転するのかといったタイミングを図ることに役立ちます。
さらに一目均衡表を使うことでトレンドに敏感になり、リスク管理に生かすことができます。相場が逆に向くなどのトレンド変換を一目均衡表で敏感になることで、大きな損失回避につながります。
しかし、世界中のトレーダーが使っているからといって、一目均衡表は万能ではありません。ビットコインのレバレッジ取引などで、下落相場で勝負するには、一目均衡表だけではトレンドが掴みにくい場合もあります。
ファンダメンタル分析などその他の分析手法と組み合わせた上で、取り組んでみるのがいいでしょう。
分析手法について詳しく知りたい方は「ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析とは?」もご参照ください。
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