クアンタム(QTUM)とは?ビットコインとイーサリアムの複合型

クアンタム
2021-01-13 更新

2020年に入ってから、国内の暗号資産交換業者で相次いで新たな暗号資産(仮想通貨)が取引できるようになりました。本記事で紹介するクアンタム(単位はQTUM)もそのひとつです。

本記事を読んでいる方の中には、「クアンタムってどんな暗号資産?」と気になっている方もいるのではないでしょうか?そこで本記事では、暗号資産のクアンタムとその基盤であるクアンタムのブロックチェーンについて解説していきます。

クアンタム(QTUM)とはどんな暗号資産(仮想通貨)?

クアンタムは、ビットコインの残高管理方式「UTXO」(Unspent Transaction Output)と、スマートコントラクトの開発基盤というイーサリアムの利点を掛け合わせた暗号資産(仮想通貨)です。スマートコントラクトとは、条件に応じて自動執行されるプログラムのことで、支払いや手続きの自動化に活用されています。また、クアンタムとクアンタムのブロックチェーンの開発を主導するのは「Qtum Chain Foundation」という非営利組織です。

Qtumは2016年12月に発行が開始され、最初の5,000ブロックで1億QTUMが発行されました。加えて、ブロックが生成されるごとに、4QTUMが新規発行され、ブロック生成者に対する報酬となります。この報酬は4年ごとに半減していき、2045年までには新規発行分はゼロになる予定です。

なお、最初に発行された1億QTUMのうち51%は、ICO(Initial Coin Offering)によって個人投資家などに販売されました。ICOとは、トークンを販売することで行われる資金調達の総称です。また、トークンはブロックチェーン上で発行される電子的な証票のことであり、基本的には暗号資産のようなものと捉えて問題ありません。

外部から一定の評価を得ているプロジェクト

クアンタムのチームは、ICO以外にも、中国および北米の投資家やコロンビア大学からの資金調達に成功しており、調達額の合計は計1,700万ドルにも上ります。コロンビア大学からは、イーサリアムのようなスマートコントラクト用の新しいプログラミング言語の開発資金として、40万ドルの助成金を受け取っています。

この資金調達を踏まえると、クアンタムは一定の技術的な評価を得ているといえるでしょう。さらに、中国の国務院(日本の内閣に相当する機関)に属する「中華人民共和国工業情報化部」傘下のシンクタンク「電子情報産業発展研究院」(CCID)が発表している暗号資産のランキングにおいては、クアンタムが上位にランクインしています(2019年10月〜2020年4月はすべて15位以内)。

クアンタム(QTUM)は独自のブロックチェーンがベース

暗号資産(仮想通貨)クアンタムは、独自のクアンタムのブロックチェーンがベースとなっています。イーサリアムでスマートコントラクトを実行する仕組み(EVM:Ethereum Virtual Maschine)に変更を加えて、開発者がより使いやすい形にアップデートされています。簡単に書くと、より多くの開発者がクアンタム上でアプリを開発できるようになっているのです。

2020年12月現在、イーサリアムブロックチェーンでスマートコントラクトを書いたり、アプリを開発したりするには、「Solidity」という独自のプログラミング言語を覚えなければなりません。一方でクアンタムであれば、一般的なWebサービスなどでも使われている汎用言語でスマートコントラクトやアプリ開発が可能です。

また、パブリックブロックチェーンの大きなアップデートには、恒久的なチェーンの分岐であるハードフォークが伴うため、しばしば混乱を招きますが、クアンタムではこの課題に対しても対策が講じられています。アップデートの方向性をクアンタムの利用者が投票によって決めていく仕組み(Decentralized Governance Protocol)が採用されているため、予期しないハードフォークを避けられるのです。

さらに、コンセンサスアルゴリズムについても、変更が加えられています。ビットコインやイーサリアムとは異なり、クアンタムでは「Mutualized Proof of Stake」(MPoS)が採用されています。なお、コンセンサスアルゴリズムとは、ネットワークの参加者が正しいと見なす取引(ブロック)をただひとつに決定する仕組みのことです。

ビットコインやイーサリアムで採用されている「Proof of Work」(PoW)は、セキュリティが高く実績があるものの、大量の電力を消費する点が課題となっています。PoWの代替案として挙げられているのが「Proof of Stake」(PoS)であり、イーサリアムも将来的に移行する予定です。PoSは、暗号資産を多く保持する参加者ほど、ブロックを生成できる確率が高くなる仕組みであり、報酬を得られる確率も上がっていきます。

このPoSを改良したものがMPoSです。基本的にはPoWもPoSも、一番早く新しいブロックを生成できた参加者は、報酬である暗号資産をすぐに受け取れます。しかし、MPoSではブロックの生成と報酬の受け取りのタイミングに大きな差が発生するように設計されています。つまり、仮に不正にブロックが生成されたとしても、報酬を受け取る前に不正を発見し報酬の支払いを防ぐことができるため、大きなコストを費やして攻撃するインセンティブがなくなるように設計しています。

以上のようにクアンタムは、ビットコインやイーサリアムのような先行するブロックチェーンの長所と短所を学びながら、独自の変更を加えているチェーンだといえるでしょう。ただ、独自の変更が長期的に成功するかは、時間が経過しないと分からない点には注意です。

企業向けにアレンジしたブロックチェーン「Unita」も存在

クアンタムはパブリックブロックチェーンですが、セキュリティやプライバシー、処理能力を強化した企業向けバージョンの「Unita」(旧名称:Qtum Enterprise、QtumX)も開発されています。

Uniteはコンセンサスアルゴリズムがクアンタムと異なり、許可された参加者たちが取引を承認する役割を担う仕組みを採用しており、暗号資産(仮想通貨)がありません。暗号資産の有無とネットワークへの参加が許可制である点がパブリックチェーンであるクアンタムとの大きな違いです。

クアンタム(QTUM)の主な特徴とは?

ビットコインの特徴を備えつつ、スマートコントラクト開発が可能

前述したように、クアンタムはビットコインとイーサリアムの特徴を併せ持った暗号資産(仮想通貨)です。ビットコインで採用されている残高管理方式「UTXO」は、プライバシーに優れているという特徴があります。ただし、ビットコインのUTXOモデルはイーサリアムのような柔軟なスマートコントラクトには対応していません。

そこでクアンタムでは「アカウントアブストラクトレイヤー」(AAL:Account Abstract Layer)という独自の設計を組み込むことで、イーサリアムのような柔軟性の高いスマートコントラクトの開発を可能にしています。したがって、イーサリアムのように独自のトークンを発行したり、アプリを開発したりできるのです。

クアンタム(QTUM)はステーキングによる報酬が得られる

Proof of Stakeやその派生系を採用している暗号資産(仮想通貨)のウォレットには、ステーキングという機能が組み込まれています。これはクアンタムにおいても同様です。公式ウォレットである「Qtum Core」などに任意の数量のクアンタムを入れておき、ブロックを生成するステーキングノードとして参加すれば、報酬を獲得する機会を得られます。

GoogleやAmazonの子会社とパートナーシップを締結

クアンタムは世界トップレベルのIT企業とも提携しています。

まず、2018年10月にクアンタムは、Amazonの子会社でクラウド事業などを手掛ける「Amazon Web Services」(AWS)とのパートナーシップの締結を発表しました。この提携のおかげで、世界的に利用されているクラウドサービス「AWS」上で、クアンタムのブロックチェーンを容易に構築できるようになっています。

また、2019年5月には、Googleが提供するクラウドサービス「Google Cloud」との提携も発表しました。現在では、Google Cloud上でクアンタムのブロックチェーンを使ったアプリを効率的に開発可能です。

クアンタム上でアプリ開発を行う環境が整備されると、アプリ開発の工数が削減されるため、長期的にはクアンタムのエコシステムにポジティブな情報といえるでしょう。

注目技術の活用に意欲的なクアンタム(QTUM)

クアンタムは一部データ構造がビットコインと似ているため、ビットコイン関連の重要技術を積極的に取り込む姿勢が見られます。例えば2019年7月には、クアンタムベースのライトニングネットワークが開発されました。ライトニングネットワークは、即時決済を可能にする新技術です。主にビットコインやライトコインなどで開発が進められています。

ほとんどの暗号資産(仮想通貨)取引は、不正がないことを検証しなければならず、相手に届くまでに時間がかかってしまうため、即時決済には向いていません。これはクアンタムでも同様です。一方ライトニングネットワークを導入すれば、即時決済が可能になります。

また、同じく新技術であるアトミックスワップに関しても、ビットコインやビーム(BEAM)との交換に対応しています。なお、BEAMはプライバシー保護に配慮した暗号資産です(日本の暗号資産交換業者では取り扱っていません)。

アトミックスワップは、異なるブロックチェーン上の暗号資産を、第三者を介さずに個人間で直接トレードできるようにする技術です。したがって、クアンタムとビットコイン、クアンタムとBEAMのペアであれば、暗号資産交換業者を介さずに交換できることが技術的に検証されています。ただし、トレードの速度が遅い点がデメリットであり、改善が期待されています。

クアンタム(QTUM)今後の展開(ロードマップ)とは?

最後にクアンタムの開発ロードマップを紹介しておきましょう。2020年のクアンタムは、ステーキング、プライバシー強化、スマートコントラクト(具体的には仮想マシン)の3領域を重点的にアップデートすると公式に発表されています。

まず、高性能なコンピューターの用意や高度なセキュリティ対策を自分で行わなくても、ステーキング報酬を獲得できる機能「オフラインステーキング」が実装される予定です。オフラインステーキングは、ステーキングの権利を他のノードに委託して行われます。

また、取引のプライバシーが強化される予定です。従来、パブリックブロックチェーン上のクアンタムは、取引や当事者の情報が可視化されるため、企業が利用しづらい状態でした。アップデートによってプライバシーのレベルを設定できるようになるため、企業なども利用するようになるかもしれません。

最後に、スマートコントラクトを開発するための新たな基盤(x86 virtual machine)が、正式にリリースされる予定です。このリリースによって、より多くの開発者が自分の得意なプログラミング言語でクアンタムベースのアプリを開発できるようになります。

クアンタム(QTUM)まとめ

基本的に暗号資産やブロックチェーンは後発であるほど、先行事例の成功と失敗に学んでより良い設計となる場合があります。ビットコインとイーサリアムの良いところを取り入れたクアンタムは、まさに後発であるメリットを活かしているといえるでしょう。

また、大手企業との提携や新技術の導入にも意欲的で、外部からも一定の評価を得ているのがクアンタムの開発チームの特徴です。今後の開発ロードマップを考慮すると、企業を含めたより多くの参加者がクアンタムを活用できるような方向性で開発されています。

ただし、技術的な優位性や外部の評価、企業との提携自体が、クアンタムの価格に良い影響を与え続けるかは慎重に判断する必要があり、この点は他の暗号資産と同様です。クアンタムへの投資を検討する場合には最新情報をチェックしつつ、投資の際は余剰資産の範囲内に留めておくのが良いでしょう。

クアンタムについて興味を持たれた方は「暗号資産クアンタム(QTUM)の今後は?特徴や将来性を解説」もご覧ください。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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