暗号資産(仮想通貨)BATとは?概要や仕組み、Braveも解説

ベーシックアテンショントークン
仮想通貨
2021-01-13 更新

2020年に入って以降、国内の暗号資産交換業者でも新たな暗号資産(仮想通貨)が取り扱われるようになっています。今回紹介する「BAT」(ベーシックアテンショントークン)もそのひとつです。

本記事を読んでいる方の中には、「BATってどんな暗号資産なの?」と気になっていた方もいるかもしれません。そこで暗号資産BATの概要や仕組み、BATと深い関係のあるWEBブラウザ「Brave」について詳しく解説していきます。

暗号資産(仮想通貨)「BAT」(ベーシックアテンショントークン)とは?

まず、BATは「Basic Attention Token」の略であり、イーサリアムブロックチェーン上で発行されたユーティリティトークンです。イーサリアムに対応した標準的なウォレットであれば、世界中の人とBATをやり取りできます。トークンとはブロックチェーン上で発行された電子証票のことで、本記事を読む上では暗号資産(仮想通貨)と同じものだと捉えて問題ありません。

BAT自体は、現在はBraveというWEBブラウザに組み込まれている暗号資産です。ブラウザとは、WEBサイトを閲覧するためのソフトウェアのことで、「本などを拾い読みする」という意味で使われる“browse”が転じて、コンピューター用語として使われるようになりました。

なぜ、ブラウザであるBraveに暗号資産であるBATが組み込まれているのかというと、後述するとおりWEBの広告モデルを変えるために考案されているからです。

ブラウザ国内でも暗号資産(仮想通貨)BATの取り扱いが開始される

BATはこれまで国外で流通していましたが、2020年3月以降、国内の暗号資産交換業者でもBATの取り扱いが始まりました。これにより日本円やビットコイン(BTC)と交換できるようになっています。

BATの使い道とは?国外の事例も紹介!

BATの基本的な使い道としては、自分が応援したいパブリッシャー(アーティストやYouTuber、インフルエンサー、メディアなど)への支援に使うことができます。これはWEBページを通じて投げ銭が行えるイメージです。

2020年5月現在では、BATの投げ銭ができるWEBブラウザはBraveだけとなっています。しかし、将来的には他のWEBブラウザにBATを組み込む機能や、SNS上でBATを送る機能も追加される予定です。なお、すでにアマゾン傘下の動画配信サービス「Twitch」や、アメリカの人気SNSサイト「Reddit」などでは、BATの投げ銭機能が追加されています。

その他にも2020年3月には、Braveとアメリカのポイントリワードサービス「TAP Network」が連携し、AmazonやStarbucks、Uberといった大手ブランドのギフトカードとBATを交換できるサービスが始まりました。

さらに同月、海外の暗号資産交換業者と提携し、トレード機能の一部がBraveブラウザに統合されています。したがって、BATを獲得したユーザーは他の暗号資産とBATをシームレスに交換できるようになりました。ただし、同取引所は日本の暗号資産交換業者として登録していないため、日本国内ではBraveブラウザ内でBATの売買はできない状態です(2020年11月上旬現在)。

暗号資産(仮想通貨)BATが組み込まれた新しいWEBブラウザ「Brave」とは?

ここからはBrave自体のことや、開発企業Brave Softwareについて詳しく説明していきます。まず、Braveはプライバシーと安全性に配慮したWEBブラウザで、広告ブロック機能を標準搭載しているため過剰な通信量を削減できる上に、他のブラウザと比べてサイト表示が高速になるとされています。さらに、設定次第ではユーザーの個人情報や通信を高いレベルで保護することが可能としています。

一方で、ユーザーの設定次第で広告表示を許可できるので、広告が永久に表示されないという訳ではありません。また、通常のネットワーク広告の代わりにBrave Softwareが配信する広告を閲覧したユーザーは、報酬としてBATを獲得できる仕組みになっています。つまり、広告の表示・非表示をユーザーが主体的に選択できるのです。(ただし2020年12月1日現在、日本国内では広告閲覧によって暗号資産BATを受け取ることはできず、BATポイント(BAP)というポイントとして受け取ります。)

Braveはリリース以降、世界のユーザー数が右肩上がりで伸びています。2019年11月には月間アクティブユーザー数が全世界で1,000万人突破、2020年6月には1,500万人を突破しました。さらに、ユーザーなどからBATを受け取れるように登録したパブリッシャーの数も2019年11月約34万、2020年6月には約70万と増加しています。プロダクトの開発とユーザー・パブリッシャーの開拓は着実に進んでいるといえるでしょう。

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CEOはWEBに大きな貢献をした人物

実はBraveの開発企業の創業者は、現在のWEBに大きな貢献をしています。同社CEO兼共同創業者であるBrendan Eich氏は、WEBサイトやアプリで広く使われているプログラミング言語「JavaScript」の生みの親です。

Brendan Eich氏は、メジャーなWEBブラウザのひとつ「Mozilla Firefox」の基礎を築いた団体「Mozilla Foundation」の共同創業者でもあります。同団体を退社した後、2015年にBraveを設立、新しいWEBブラウザの開発に取り組んでいるのです。

ICOでBATを売り出し、資金調達を一瞬で完了

Brendan Eich氏が携わるプロジェクトということでBraveへの期待は高く、2017年にICOを行った結果、わずか30秒で3,500万ドルの調達に成功しています(2017年当時の交換レート)。あまりにも一瞬だったので、当時はテック系メディアで話題になったほどです。合計で15億BATが発行され、そのうち10億BATはICOで販売、残り5億BATは開発や採用、マーケティング費用に回されました。

なお、ICOとはトークンを発行して資金調達を行う手法のことです。2020年12月現在、日本国内でのICOは「資金決済法」によって規制されています。したがって、日本国内の居住者を対象としたICOに参加する場合は、法律を遵守しているかどうかを確認する必要がある点には注意が必要です。

日本国内ではBATポイントが流通(2020年12月現在)

2020年12月現在、日本でリリースされているBraveに組み込まれているのは、暗号資産のBATではなくBATポイントです。現状ではBATポイントとBATは交換できません。これは日本の資金決済法を遵守するための措置だといえるでしょう。

ただ、獲得したBATポイントはBATと同様に登録したクリエイターに送付できます。将来的には日本のユーザー向けのBraveにも、BATが組み込まれることを期待しましょう。

Braveと暗号資産(仮想通貨)BATはどんな課題を解決しているのか?

本記事の最後に、BraveとBATが焦点を当てている課題について触れておきましょう。前述した通り、BraveとBATは現在のWEB広告モデルを変えるために開発されています。

Braveや暗号資産(仮想通貨)BATが解決したい課題とは?

現在のWEB広告業界には多くの中間事業者が介在しているため、ユーザーや広告主、広告を掲載するWEBコンテンツを提供するパブリッシャーはそれぞれ不利益を被っているといわれています。ここでの中間事業者とは、広告代理店やアドネットワーク、SNSなどの事業者のことです。

ユーザーの不利益とセキュリティリスク

まず、ユーザーの主な不利益を挙げてみましょう。私たちはスマートフォンやパソコンなどで日常的に通信していますが、モバイルデータのうち最大50%が広告や個人情報の追跡に費やされているとされます。ユーザーにとっては、この通信によって毎月余計なコストが発生している状態です。

さらに、WEB広告の中にはマルバタイジング(クリックするだけでマルウェアに感染する悪質なウェブ広告のこと)も存在するため、ユーザーはWEB広告から不利益を被るリスクを抱えています。

パブリッシャーの不利益

次にパブリッシャーのダメージを考えてみましょう。世界最大級の広告事業者でもある「Google」と「Facebook」はWEB広告業界の総収益の73%を得ており、業界の成長分の99%はこの2社によるものだとされています。ほとんどのパブリッシャーは2社の巨大なプラットフォーム上でコンテンツを提供していますが、当然ながら広告収入の一部は手数料としてプラットフォーム側に支払われます。

さらに近年、WEB広告を表示させないアドブロックソフトを利用するユーザーが増えているため、パブリッシャーが広告収入を獲得する機会が減っているのです。価値あるコンテンツであっても収益化がしづらい状況だといえるでしょう。

広告主が直面している課題

最後に、広告主が直面している課題としては、広告主が何に対して広告料を支払っているのかが見えにくい状況が挙げられます。広告主が各ユーザーに適した広告を表示するためのターゲティングが適切に行えないと、ユーザーと広告表示のミスマッチが起こるため、ユーザーはますます広告を見なくなるという悪循環に陥るのです。

Braveのプライバシーとセキュリティ保護、BATによる広告モデルを提案

WEB広告業界の課題に対してBraveは、広告ブロック機能を標準搭載しつつ、暗号資産(仮想通貨)であるBATを通じて収益モデルを変化させて対応しようとしています。広告のブロックによって、悪質なマルウェアの被害を最小化し、通信量も削減可能です。

また、Braveが提供する広告の表示に同意したユーザーに対しては、安全な広告が表示されるようになります。Braveの広告を閲覧したユーザーには報酬としてBATが付与されます(日本ではBATポイントとなっており、BATは交換できません)。BATはユーザーが広告表示に同意するインセンティブとなっているのです。

そして、パブリッシャーに対しては、ユーザーのAttention(関心)の大きさに応じてBATが支払われます。なお、Attentionはユーザーが広告を表示した時間などを基に算出される指標です。良質なコンテンツ(広告)を制作したパブリッシャーほど、ユーザーのAttentionを集められるため、より多くのBATを受け取れる仕組みとなっています。さらに、ユーザーはパブリッシャーに対してBATを投げ銭できるため、パブリッシャーにとっては収益化の方法が増えるといえるでしょう。

広告のターゲティングについては、Braveに組み込まれ、プライバシーに配慮したAI(機械学習アルゴリズム)によって行われます。広告主は中間事業者や不正行為が削減され、ユーザーのAttentionに基づいたフィードバックを得られるため、費用対効果の向上が予想されるのです。

以上のように、BraveとBATは、プライバシーと安全性を考慮したWEBブラウザとBATを組み合わせて、WEB広告モデルの転換を図っています。Brave自体は順調に成長しているものの、BATを軸としたWEB広告モデルが本当に機能するかどうかは、市場によってこれから検証されていくことになるでしょう。ただ、Braveというプロダクトの完成度の高さから、BATとBraveは今後の発展に注目が集まる暗号資産(トークン)でありプロダクトだと考えられます。

暗号資産(仮想通貨)BATのまとめ

本記事でも紹介したように、BATはBraveというWEBブラウザに組み込まれたユーティリティトークンであり暗号資産です。2020年に入ってから国内の暗号資産交換業者でも取り扱われるようになりました。

現在のWEB広告業界の課題解決を図り、プライバシーと安全性の高いWEBブラウザと暗号資産による新たな収益モデルを提示する試みが10年後に成功しているかは未知数です。ただ、Braveが着実にユーザー数を伸ばしているデータからも、WEBブラウザとして好意的な評価を受けていることが分かるのではないでしょうか。

BATとBraveに興味を持った方は「暗号資産(仮想通貨)BATの今後と次世代ブラウザ「ブレイブ」」もご覧ください。

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