2021年のリップル(XRP)はどうなる?2020年のまとめで振り返る
2020年の暗号資産(仮想通貨)リップル(XRP)はビジネス面や技術面、また長く続く証券論争で様々な発表や進展がありました。XRPを使った「オンデマンド流動性(ODL:On-Demand Liquidity 旧xRapid、xCurrent)」の対応地域も増加し、国際送金の機能の一部として使われるXRPの需要にも影響していきそうです。
本記事では2020年にXRP、リップル社に関わる内容をまとめ、2021年の注目トピックを考察します。

2020年のリップル(XRP)振り返り

2020年の価格動向振り返り
1〜2月のXRP価格は、急騰で始まりました。ビットコインやイーサリアム(ETH)などの他の主要通貨が1桁の伸びを示す一方で、XRPは2桁以上上昇。2019年7月ごろの強気相場時に記録した35円を回復しました。海外の暗号資産交換業者で先物取引の発表があったほか、メキシコなどの新興国で、国際送金の需要が高まり、取引高が上昇したことが要因とされました。
ただ、それでも年間を通じて、XRP価格の伸びは弱く、3月のコロナショックによる価格下落で15円近くまで下落、4月にはXRPの熱狂的ファンである「XRPアーミー」が減少しているとのレポートも出ました。こうした流れもあり、5月にはステーブルコインのテザー(USDT)に時価総額で抜かれました。
その後、低調な期間が続くも、7月に暗号資産相場全体の盛り上がりとともに上昇。2月以来、30円を回復しました。
10月にはリップル社の年次大型イベントであるSwellが開催されました。例年はこのSwell直前に価格が上昇するとされていましたが、2020年は大きな価格変動はありませんでした。
2020年は年間を通じて20〜30円ほどの狭いレンジで推移しました。

(2020年のXRP価格)
2020のリップル関連ニュースまとめ
リップル社はXRPによって国際送金の課題を解決しようと取り組んでいます。そのため、毎年ビジネスや技術面での様々な発表があります。ここでは2020年にあった関連ニュースを時系列に説明します。
ビジネス面での動き
1月早々に大きな話題となったのが、リップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOがウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、2020年中のIPO(新規公開株式)を示唆したことです。もしリップル社がIPOを行えば、多くの投資家を惹きつけ、XRPの利用拡大も見込めるとして、業界内から期待の声が上がりました。しかし、その後はIPOに関する動きは出ていません。
2月にはリップル関係者が重要視するODL(オンデマンド流動性)サービスの利用拡大に動きがありました。リップル社は、ナスダック上場で、アメリカからメキシコへの送金サービスを手がける最大のプロバイダーであるIntermexと提携。こうした報道を受けて、前述の通り2月の相場にも好影響を与えました。
4月にはスイスの暗号資産銀行であるシグナム銀行で、XRPの売買や保有が可能になったと発表されました。5月には、世界の金融機関同士のメッセージ国際規格であるISO20022にブロックチェーン関連企業として初めて参画したとリップル社が発表するなど、金融機関との連携強化を進めました。
ビジネス面に関しての大きな話題となったのは、リップル社が出資するマネーグラムに対して、アメリカの送金大手であるウエスタン・ユニオンが買収提案したという6月の報道です。ウエスタン・ユニオンは、2018年からxRapid(現在のODL)をテスト運用していました。その後、買収に関して報道や発表は出ていませんが、もし買収が実現すれば、世界的な送金企業連合が誕生するのではないかと話題になりました。
10月には日本の決済企業に出資を行ったとのことが発表されました。
技術・サービス面での動き
2月に話題になったのが、リップル社の分散型台帳であるXRPレジャー上でトークン発行機能を開発していると、リップル社の最高技術責任者(CTO)であるデービット・シュワルツ氏が明らかにしたことです。トークン発行機能については、これまでにも何度か話題になりました。今回新たに明らかになったのは、何らかの外部の価値に裏付けられたステーブルコインのようなトークン発行が第三者にも可能になるということです。
5月にはクラウド基盤の決済ソリューションである「リップルネット・クラウド」が発表されました。リップルネット上のすべての顧客がハードウェアを持つことなく共通のプラットフォームを利用して支払いの送受信を行うことが可能になりました。
6月にはリップル社が率いる企業連合が世界共通の支払い識別子「PayID」を立ち上げました。企業間の決済の非効率性を解決するため、リップル社を含む世界中の企業やNPO40社が参加しています。
10月にはリップル社の投資部門である「Xpring(スプリング)」が、ブランド名を「リップルX(RippleX)」に変更しました。また、以前はリップル・フォー・グッド(Ripple for Good)と呼ばれていた社会貢献活動の名称を「リップル・インパクト(Ripple Impact)」に変更。ブランド名変更に伴い、各種ロゴも統一されました。
さらにSwellで詳細が発表された「Line of Credit」があります。同サービスはリップル社の新たな融資サービスです。ODLを利用する企業を対象にXRPを貸し出します。通常の融資の審査では2〜3ヶ月かかる一方で、Line of Creditは24〜48時間と大幅に短縮されることがメリットとして挙げられました。
XRP証券論争
XRPに関しては、アメリカで2018年から続く未登録有価証券の販売及び法律違反をめぐる裁判が続いています。もし原告側が主張するように、XRPが有価証券として認められれば、規制上の問題からアメリカ国内の暗号資産交換業者で取り扱いができなくなる可能性が出てきます。そうなればXRP価格の急落は避けられないでしょう。
XRPが証券かどうかについては、2020年1月、商品先物取引委員会(CFTC)のトップがXRPを証券として分類できるかは「明確ではない」と発言しました。
一方で、2月には「有価証券であるとの可能性」が残る、原告側が有利となる判決がありました。
6月には原告側が「ガーリングハウス氏及び会社側が虚偽宣伝や不正競争違反にあたる不正があった」とする訴えを起こし、7月にはこれが「証明できないもの」としてリップル側が取り下げ主張しました。
2020年は引き続き証券論争に関して裁判は続いているものの、XRPが有価証券かどうかの結論は出ていません。
月日 | 出来事 |
---|---|
1月24日 | ガーリングハウスCEOがIPOに言及 |
2月4日 | 大手送金企業のIntermexと提携 |
2月26日 | XRP有価証券問題で、原告側に有利な判決 |
2月27日 | XRPレジャー上でのトークン発行機能開発をCTOが明らかに |
5月6日 | リップル社がISO20022に参画 |
5月27日 | リップルネット・クラウドを発表 |
6月〜7月 | 有価証券論争で、虚偽宣伝との原告訴えに、リップル側が取り下げ主張 |
6月2日 | マネーグラムにウエスタン・ユニオンが買収提案と報道 |
6月18日 | PayID立ち上げ |
10月5日 | Xpringが名称をRippleXに変更 |
10月14〜15日 | 年次カンファレンスSwell開催 |
12月22日 | 米国証券取引委員会(SEC)が、リップル社と同社関係者に対する訴訟内容を発表 |
2021年、リップル(XRP)の注目トピックは?

IPOはあるのか
来年注目の動きは、2020年1月にガーリングハウスCEOが発言した「1年以内にIPO」です。どうやら2020年中のIPOが実施される動きは見られないため、2021年に持ち越されそうです。
XRPの大口投資家であるセス・リム氏は「リップル社のIPOと実際の利用拡大で多くの投資家を惹きつけることができる」と期待するように、IPOはXRP価格やODLの普及に大きな影響があることが予想されます。
また、IPOを実施することで、財務的に安定することが期待できます。資金が集まることで、リップル社が毎月行っているXRPの配布も将来的に必要性がなくなることも想定されます。そうすれば、XRPの供給が減り、XRP価格の上昇要因につながるかもしれません。
もしIPOを行うとなれば、事前に役員会などで話題となるはずです。ガーリングハウスCEOが役員会前にインタビューで発言してしまったように、意向はあるものの、現在役員会で、IPOについて決定はされていないようです。
ODLが普及し、IPOした際にリップル社に良い影響が出ると判断されれば、IPOも現実味を帯びてくるでしょう。XRP価格がもう少し上昇し、世間に需要があると認識してもらえば、2021年での動きも期待できるかもしれません。
リップルの日本展開
10月にアメリカで開催されたブロックチェーンサミットで、リップル社共同創業者兼会長のクリス・ラーセン氏が米国外への拠点移転の可能性に言及しました。その後、ブラッド・ガーリングハウスCEOも移転の可能性がある国として日本とシンガポール、スイス、イギリス、アラブ首長国連邦(UAE)を挙げています。
リップル社は現在サンフランシスコを拠点としていますが、アメリカ国内での暗号資産規制の不透明さから、事業の継続性に不安を抱いていることがわかります。ガーリングハウスCEOは日本の環境について「非常に健全な市場が発展する環境」と話しています。日系企業ともパートナー関係にあるリップル社ですが、XRPは日本でも人気が高いことから、2021年から、この動きが本格化することもありうるでしょう。
そうした中で、リップル社の国際事業部門シニアディレクターである吉川絵美氏は2020年8月、日本において、個人や中小企業の海外送金やEコマース関連など「低額・高頻度の国際送金分野にフォーカス」していくと発言しました。
2020年12月現在では、すでに「リップルネット」を使った国際送金は行われていますが、暗号資産のXRPを使う「ODL」は利用されていません。吉川氏は「さらなる効率化」を求めて、ODLの日本市場のローンチに向けて取り組み中と明らかにしています。今後はXRPを活用した開発者向けプラットフォームである「Xpring(現リップルX)」の提携先開拓を進めるとしており、来年以降に日本での環境整備が期待できます。
リップル社が日本に移転するとなれば、日本市場にリップル社やXRP関係の技術やサービスがますます整備されることでしょう。
まとめ

2020年はXRPに関して大きな価格変動はなく、投資家向けにはやや物足りない1年でした。ただ、そうした中でもODLやリップルネットの稼働地域が拡大したり、Line of Creditといった新サービスが続々と発表されたりしました。
国際送金の課題解決を目指すリップル社とXRPにとって、利用拡大や、サービスの充実といった実需が伴うことで、今後の価格にも影響が出てくる可能性があると考えられます。
2021年にはIPOの実施や日本への本社移転が実際に行われるのかといった動きに注目です。
リップルの過去のニュースについては、「リップルニュースの注目点は?過去と最新情報からリップルの動向を探る」でも詳しく解説しておりますので、興味を持たれた方はご覧ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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