2021年 暗号資産(仮想通貨)5大トピック

2021年の注目トピック
2021-01-13 更新

暗号資産(仮想通貨)業界にとって2021年は、常に何が起きるか身構えなければならない年になりそうです。2020年5月のビットコイン半減期のようにあらかじめ予定されているイベントは多くありません。しかし、新型コロナウイルスの動向や米中対立のように、いつ事態が急変するか分からない事柄を多く抱えています。

本コラムでは、2021年に暗号資産業界が注目すべき5大トピックについて紹介します。

アフターコロナ

2020年3月、新型コロナウイルスの蔓延による世界各地でのロックダウンや渡航禁止措置によって、株や債券、金、そして暗号資産のマーケットが暴落しました。第2波、第3波の新型コロナウイルス蔓延に対して各国政府は再びロックダウンするのか?ビジネス目的での渡航や海外旅行の解禁は進むのか?そしてワクチン開発はどうなるのか?2021年のビットコインの動向を占う上で、アフターコロナは引き続きキーワードになるでしょう。

本来は「デジタルゴールド」と言われるようにビットコインは安全資産の金と近いと考えられています。しかし、米機関投資家のポートフォリオにビットコインが組み込まれるに従って、短期的にはリスク資産である米ドルとの連動性が高まるのではないかという見方もあります。

例えば、ポートフォリオの1%をビットコイン投資と決めている機関投資家がいれば、主要資産である株価が上がれば、ポートフォリオの1%を維持するために、ビットコインを買い増すことで、ビットコインの価値は上がります。

一方、2020年3月の大暴落以降で急騰して過去最高値を更新したのは金です。2020年8月には1トロイオンスあたり2000ドルを突破しました。

2021年にビットコインは金の市場シェアを奪いにいく動きをするのか?それとも米大手企業や機関投資家参入の流れを受けて短期的に株と連動する動きを続けるのか?不透明な時代におけるビットコインの性質を見極める必要があるでしょう。

米国政府の規制

2020年10月にアメリカ司法省が暗号資産取り締まりに関する枠組みついて、レポートを発表しました。しかし、肝心の「暗号資産の定義」に関する箇所が欠落していたため、アメリカ政府の暗号資産に対する規制の不透明感に対する批判は高まっています。

拠点をアメリカ国外に移すことを検討している企業もあります。リップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOは、上記の司法省のレポートについて「70ページ以上からなる矛盾したレポートは規制の透明性を高めたとは言えない」と痛烈に批判しました。

つまるところ暗号資産は「証券」なのか、「暗号資産」なのか、「商品」なのか、それとも「財産」なのか。管轄する規制機関によって定義がバラバラであることに対してガーリングハウス氏は危機感を募らせています。

ちなみに米証券取引委員会(SEC)は、公式見解ではないとしつつも、委員長などを始めビットコインとイーサリアムは「証券ではない」という見解を出しました。トークンが証券と判定されれば米国証券法の規制対象になり、当然SECの管轄となります。

これについて2020年12月、SECはXRPに関しては証券とみなしました。リップル社がXRPを中央集権的に取り扱っている点などから、株式と同様の証券と判断したようです。XRPを証券としたことで、SECはリップル社とガーリングハウス氏、リップル社共同創業者のクリス・ラーセン氏を「XRPが未登録証券にも関わらず販売していた」として、投資家保護に違反したことを理由に提訴しました。この提訴によってXRP価格は4日間で60%以上も暴落しました。

ガーリングハウスCEOは、SECの提訴について「暗号資産業界と米国のイノベーションに対する攻撃だ」と非難しました。

同氏は米国がリップル社に厳しい姿勢を示す一方で規制が不当であると主張。規制が一貫していて透明性があることを理由に日本やイギリス、シンガポール、スイス、UAE(アラブ首長国連邦)にサンフランシスコの本社を移す可能性を持ち出しています。SECのリップル社提訴で、米国外への移転も現実味を持ってきています。

米誌フォーブスは「2020年米国で最も大きなフィンテック企業」の2位にリップルを選出。企業価値が100億ドル(約1兆500億円)と推定されました。暗号資産業界の巨大スタートアップがアメリカからいなくなる可能性について、今後の展開に注目です。

中国デジタル人民元発行

2020年10月、合計1000万元(約1億5700万円)分の中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元が中国の深センで試験的に配られました。日米欧の各国が未だに検討段階を抜けられない中、中国が中国全土、さらには「一帯一路」周辺国などでデジタル人民元の正式発行を開始するのか注目です。

デジタル人民元の狙いは米ドル覇権への挑戦という論調があります。米中対立が激しさを増す中で中国は人民元を中心にした経済システムの構築を進めるのではという見方です。米ドルが中心となるSWIFT(国際銀行間通信協会)から中国が締め出される可能性も浮上しています。

ただ、中国にとってはデジタル覇権を握ること自体は喫緊の課題ではないかもしれません。

アメリカなど海外への貿易依存を減らすことが優先される中、中国は外需と内需を循環させる双循環(デュアル・サーキュレーション)を意識しています。このため、まずデジタル人民元は、中国2大決済アプリのアリペイとウィーチャットペイとどのように共存・競争していくかが焦点になりそうです。

一方、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、中央銀行デジタル通貨について「早さ」より「正しさ」が重要と主張。サイバー攻撃やプライバシー問題への対応に加えて、そもそも「すでに安全で活発な国内の支払いシステムを改善するためにCBDCは必要なのか」検討する構えです。

ちなみに日銀は、10月9日、「現時点でCBDCを発行する計画はない」としつつも、来年度にもCBDCの実証実験を行う方針を明らかにしました。

米中対立

2020年は中国による香港国家安全維持法の施行によって米中関係が急激に悪化しました。ウィーチャットやTikTokの利用禁止問題は決着がついておらず、アメリカ大統領選が終わった2021年も新たな火種が生まれる可能性があります。米中対立の激化を嫌気した安全資産としてのビットコインへの投資が加速するのか、注目されます。

7月末、アメリカの国務長官であるマイク・ポンペオ氏は、習近平国家主席を「全体主義の信奉者」と断定し、自由主義諸国に対して一致団結して中国共産党に対抗するように呼びかけました。新疆ウイグル地区の人権問題や南シナ海での挑発行為、香港問題、ファーウェイやTikTokなど中国企業に対する締め付けなど米中は多くの火種を抱えています。

ここで注目されるのが中国の富裕層の動きです。人民元に対する信頼が揺らげばビットコインを使って海外に資産を移す流れが加速すると考えられます。

そんな中で気になる動きもあります。米ドルに連動するステーブルコインであるテザー(USDT)の躍進です。

暗号資産取引所での暗号資産と人民元の取引が禁止されている中国においてOTC(店頭)取引の要となっているのがテザーですが、新型コロナや米中対立の悪化の影響で米ドルの代わりにテザーを持つという投資家が増えているようです。

2020年には時価総額でリップル(XRP)を抜いて3位に浮上。2021年には時価総額2位のイーサリアム(ETH)を抜く可能性があるかもしれないと予想されています。

NFTブーム

2020年はDeFi(分散型金融)がブームとなりました。専門家の中にはDeFiブームの次はNFT(ノンファンジブルトークン)ブームが来るという見方が出ています。ゲームやアート分野などをはじめとして2021年にNFTが花開くのか注目です。

NFTは、非代替トークンです。非代替トークンとは、ビットコインなどの暗号資産と異なり、1つ1つのトークンが固有の価値を持っており代替が不可能なものを指します。NFT自体は長い間存在していますが、最近はゲームやアート業界を中心にNFT化の動きが広まっています。

例えば、アメリカの暗号資産投資会社モルガン・クリーク・デジタルによると、過去2、3年でアート市場の規模は約650億ドル(約6兆7000億円)に拡大しましたが、デジタルアートの市場規模に関しては1000万ドル(約10億円)に満たないといいます。

NFTを使ったデジタルアートは2、3のクリックで世界のどこにでも送ることが可能であるほか、ダメージに対する免疫、本物かどうかや起源を誰もが証明できる透明性があります。

NFTと融合したデジタルアート勢が、市場全体のパイをどれほど取れるのか注目です。

一方、NFT×ゲームの分野では日本が注目されています。NFTのマーケットプレイス最大手であるオープンシーが2020年に発表した「NFTの聖書」の中で「日本がNFTゲームをより発展させた」と評しました。

2020年後半にはすでにNFTブームの兆しが見えています。

ブロックチェーン分析企業メサーリによると、2020年第3四半期(7〜9月期)におけるオープンシーでのNFT取引高は200万ドル(約2億1000万ドル)を突破し、ユーザー数は2万5000人と共に過去最高を記録しました。

まとめ

以上のように2021年の暗号資産業界は、あらかじめ決まったイベントではなく、いつ飛び込んでくるかわからないブレーキングニュースに注視する必要があるでしょう。新型コロナの動向、米中が抱える対立の火種、米国による規制など、先読みが難しい情勢が続きます。各国による政治的な思惑が交錯する中、デジタル人民元が2022年の北京五輪より早く中国本土で本格的に導入されるのかも注目です。

一方、2021年はNFT元年となるのかも見ものでしょう。さらにフェイスブックのオキュラスシリーズなどVR機器が進化・普及する中で、バーチャル経済圏がどこまで拡大するかについても注意が必要です。バーチャル世界における家の建設や服のデザインなどでユーザーの貢献度が評価されて暗号資産で報酬をもらえる仕組みの構築が期待されていますが、要となるのは所有権をユーザーに与えるNFTです。

新しい技術によって、暗号資産の需要が刺激されることが期待できそうです。

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