盛り上がりを見せる分散型金融(DeFi)とは?仕組みも紹介

DeFi
2022-09-07 更新

2020年頃から、管理者なしで金融サービスを提供する分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)とDeFi(ディーファイ)に関連する暗号資産(仮想通貨)が注目を集めています。DeFiは次世代のインターネットの概念である「ウェブ3」を構成する要素の一つといわれています。

本記事ではDeFiの全体像をまとめ、どのようなサービスが出ているのか考察します。また、DeFiの重要な仕組みである「イールドファーミング」と「流動性マイニング」についても説明します。

そもそもDeFiとは

DeFiは「分散型」という言葉の通り、中央集権的な管理者なしで金融サービスを提供する仕組みのことをいいます。従来の金融は、例えばお金の貸し借りでは銀行(管理者)が間に入って、貸す人と借りる人をつなぐサービスを提供しています。しかし、DeFiはプログラムによって、こうしたお金の貸し借りを始めとした金融サービスを、銀行などの管理者を介することなく可能にしています。銀行などの経営主体がないため、倒産リスクもありません。しかし銀行がないということで、資産の管理は自分自身でする必要があるほかに、ハッキングされるリスクは存在します。

また、仲介者なしにサービスを受けられるということだけが、DeFiの目指すものではありません。DeFiという言葉の発案者の一人であり、分散型P2Pレンディングマーケットを提供するDharmaのブレンダン・ファスターCEOは、「インターネットがニュースメディアにしたことを、DeFiが金融で行う」とDeFiが目指す世界観を話しています。これはつまり、インターネットが誰もが情報発信を可能にしたように、DeFiは誰もが金融サービスを提供したり、提供されたりすることを可能にするという世界を目指していることを指しています。

ただ、現在は管理主体や団体がいるサービスでもDeFiに分類されることもあります。広義の概念では、イーサリアム(ETH)などのスマートコントラクトで動作する金融サービスアプリケーション全般を指しています。

従来の金融サービスの問題

しかし、「中央集権的な管理者なしで金融サービスを提供する」というのは、なぜ必要で、人気を集めるようになったのでしょうか。

日本では金融サービスにアクセスできないということは少ないですが、海外ではそもそも銀行口座を持っていなかったり、米ドルの交換レートが決まっていたりと、金融サービスが自由にならない地域が多くあります。銀行口座が自由に開設できず、そのために身分が怪しまれたり、給与をもらえなかったりということが海外では起きています。しかしDeFiではインターネットにアクセスできる環境があれば、誰でも利用可能です。

さらに、金融サービスに管理者がいると、管理者の権限によって銀行口座が突如使えなくなり、お金を引き出せなくなるという事態も発生します。実際に2021年1月に米国のゲームストップ社の株(GME)が乱高下する中で、スマホ証券アプリを提供するロビンフッド社が一方的に取引を停止し、個人投資家らが取引できなくなったことが問題視されました。

この他にも従来の金融サービスでは営業時間が限られていることや、送金に時間がかかることなどの問題が挙げられます。

DeFiはこうした問題に対して、人々に自由なアクセスが可能になる世界を目指しています。

DeFiの種類

それではDeFiにはどのようなサービスがあるのでしょうか。

有名なものには、MakerDAOのようなステーブルコインプロジェクトがあります。前述したように、海外では銀行や金融サービスにアクセスできない人が多くいます。MakerDAOは、そうした人たちに米ドルと価値が紐づいているステーブルコインを発行し、自由にやり取りできる資産DAI(Multi Collateral DAI)やSAI(Single Collateral DAI)を提供しています。

そのほかに暗号資産交換業者(分散型取引所「DEX」と呼ばれます)やデリバティブ、レンディングが挙げられます。

DeFiの例 プロジェクト名
ステーブルコイン MakerDAO
暗号資産取引所 Uniswap
デリバティブ Synthetix、Opyn
レンディング Compound

DeFiに関するサービスをまとめているウェブサイトのDeFiprime.comによると、2022年6月末時点ではイーサリアムベースが最も多く、203のプロジェクトがあります。DeFiが注目されだした2020年夏ごろでは主要プロジェクトのほとんどがイーサリアムベースで作られていましたが、人気が高まることで取引量が増え、手数料が高騰したことから、ポリゴンやソラナといった異なるブロックチェーンで作られることが増えてきています。

DeFiprime.comによると、DeFiのカテゴリーは、「支払い」や「保険」、「資産のトークン化」など18のサービスが分類されています。

「イールドファーミング」と「流動性マイニング」

イールドファーミング

「金融アクセスを全ての人に届ける」という思想以外に、多くの人の興味関心を惹きつけているのは、DeFiには「イールドファーミング(Yield Farming)」と「流動性マイニング(Liquidity Mining)」という仕組みがあるためです。

イールドとは利回りのことです。イールドファーミングとは、ビットコインやイーサリアム、テザーなどの暗号資産(仮想通貨)をプラットフォームに預けることによって流動性を提供する見返りに、利息を獲得できる(ファーミング:収穫、農業)行為のことをいいます。
例えばDeFiの一つであるコンパウンド(Compound)という暗号資産レンディングプラットフォームでは、貸したい人がビットコインなどの暗号資産をプールしておき、借りたい人が賃借料を払って暗号資産を借りていく仕組みになっています。ここで借りた人が支払う金利手数料を、貸し手が利回りとして受け取ることができます。このように資産を預け入れることで利息を得ることができます。

従来の金融であれば、ここに管理主体がいて、金利は管理側が受け取るが、分散型金融ではこの利回りを管理者なしで受け取ることができることが新しい仕組みといえるでしょう。

流動性マイニング

「流動性マイニング」とは、DeFi利用者がプロトコルに参加する報酬として、利息の他にガバナンストークンを受け取る活動のことを指します。コンパウンドでいうと、暗号資産を貸し出している人が、利息以外にコンパウンドのガバナンストークンである「COMP」を受け取ることが「流動性マイニング」です。こうしたトークンは海外の暗号資産交換業者などが取り扱いを開始し、価格が急騰することがあります。
この仕組みによって高い年利を得る仕組みで資金が集まり、それとともにガバナンストークンの価値が上昇すると期待して、投資家が集まるようになっています。

注目のDeFiを知るにはTVLを参考にしよう

イールドファーミングといった仕組みで人気が高まっているDeFiですが、注目プロジェクトにはどんどんと多くのお金が集まっています。こうした注目プロジェクトを知るための指標が、「トータル・バリュー・ロックド(TVL)」です。

TVLは「スマートコントラクトにロック」された資金の総額のことをいいます。DeFiプロジェクトはイーサリアム・ブロックチェーン上で構築されているものがほとんどを占めていますが、こうしたプロジェクトでは前もって、そのブロックチェーンに資産を入れておかなければなりません。これを「スマートコントラクトにロックする」といい、注目のプロジェクトほど、ユーザーが多くの資金を入れているのかがわかります。

ロックされている対象資産の総額では2022年6月末頃には、ステーブルコインプロジェクトであるMakerDAOがトップとなっています。6月末時点でMakerDAOのTVLは約79億ドル(約1兆600億円)です。上位には分散型レンディングサービスを提供するプロジェクトや分散型取引所サービスなどが入ってきています。

ただ、TVLはあくまでDeFiプロトコルに預けられた暗号資産の合計額を示しているだけのため、DeFiトークンの価値全てを表しているわけではありません。上位にあるから安全であるとか、安心できるプロジェクトでは必ずしもないため、市場の注目度を図る参考程度にしておきましょう。

DeFiはバブル?最近の世界の動きは

日本ではまだDeFi自体の話題は有名ではないものの、海外ではすでにあまりの過熱ぶりから「バブルなのでは」との指摘も出ているほど人気になっています。

世界の動きをニュースから見てみましょう。

海外ではDeFiへの対応が続く

海外の暗号資産交換業者ではすでに、多くのDeFiトークンを取り扱う交換業者が出ているなど、急速に対応が進められています。2020年6月には米国の暗号資産交換業者がコンパウンド(COMP)を上場させたことが話題になりました。

さらに、暗号資産の対応だけでなく、DeFiへの対応を目的としたブロックチェーンの開発も行われています。海外の暗号資産交換業者ではスマートコントラクト機能やトークンごとのクロスチェーン送金(異なるブロックチェーン間での送金)機能を実装した新たなブロックチェーンを発表し、DeFiプロジェクトに対応しています。すでにレンディングマーケットであるAaveや各DEXの最適なレートを提供する1inchExchangeなどと連携して開発を進めているところもあります。

規制面での対応も検討されています。アメリカの証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は2022年4月、DeFi銘柄が証券に当たる可能性があるとして、暗号資産交換業者と同様に規制すべきとの見解を示しました。ただ、DeFiは「管理者がいない」という性格から、誰を規制すればいいのかが不透明です。ゲンスラー委員長も具体的な規制の方法については触れませんでした。

「キムチ」に「芋」、「ホットドッグ」...価格が一気に暴落するプロジェクトも

このように海外では続々と対応が進んでいるDeFiですが、必ずしも全てのプロジェクトが上手くいっているわけではありません。プロジェクトの中にはわずか数週間で暴落するトークンもあるため、注意が必要です。

暴落する原因の一つとして、開発に数週間しかかけずに、市場に出回るものが多いことが挙げられます。こうしたプロジェクトはセキュリティ監査を受けていないものが多く、問題が指摘されています。そのため、システムにバグが発見されることが相次いでおり、トークン価格がわずか5分で4000ドルから1ドルまで暴落するという事例も起きました。

DEXの一つであるIDEXのアレックス・ウェアンCEOは、「分散型金融についていえば、私はこの分野全体にいくらかのリスクがあると考える。定評あるプロジェクトだったとしても、比較的新しいものがあるため、そこに何のバグも含まれていないと確信することはできない」と話すなど、脆弱性があるとの指摘が業界関係者からも出ています。2020年の8〜9月にかけては、バグによって価格が暴落したプロジェクトが続出しました。

暴落したプロジェクトでは「Kimuchi」や「YAM(芋)」「Hotdog」など食べ物の名前を冠したものなどがあります。

さらに2022年5月には、米ドルと価値が連動するように設計されたステーブルコインである「テラUSD(現在はテラクラシックUSDに名称変更)」が一時8割ほども価値が暴落しました。テラUSDはアルゴリズムによって価値を1ドルに安定するように設計されていましたが、ビットコイン市場の下落による大量の資金流出によって価値が一気に下落しました。テラUSDは、裏付け資産であるテラ(LUNA)が一時暗号資産全体の時価総額ランキングで10位に入るなどしていたことで、注目を集めていたプロジェクトでした。なお、LUNAは現在テラクラシック(LUNC)に名称が変更されています。

上記のように時価総額が上位に入るプロジェクトでも暴落するリスクがあることは把握しておきましょう。

まとめ

分散型金融は管理者がいない非中央集権的な仕組みで金融サービスを提供します。

特に、イールドファーミングと流動性マイニングという仕組みによって金利やトークン収入が得られることから人気が高まっています。

ただ、バグの発見や市場の影響によって、価値が一気に0に暴落するプロジェクトも出ているほか、まだまだ日本語の情報は多くありません。また、資産を自分自身で管理する必要があり、操作ミスによって資産を失ってしまう可能性もあります。ハッキングによるリスクも存在します。そのため、サービスに参加するには十分な情報収集と注意が必要でしょう。

なお、DeFiの多くはイーサリアムのスマートコントラクト上で提供されていますが、イーサリアムの現在のコンセンサスアルゴリズムでは処理能力に限界があることがわかっています。DeFiの発展にとって欠かせない要素とされるイーサリアム2.0については「「合意レイヤー(旧称イーサリアム2.0)」とは 「マージ」後の開発段階も解説」をご覧ください。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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