リップルの国際会議Swellとは?XRP価格との関係も解説
「Swell」は毎年10月〜11月ごろに開催される、リップル社が主催する年次の大型イベントです。2017年から始まり、毎年、2〜3日間に渡って送金や金融の未来の技術、関連企業の新しい発表が行われます。リップル社主催ということもあり、主に暗号資産(仮想通貨)であるXRP(リップル)に関わる最新情報に注目が集まります。XRPホルダーは必ずチェックしておきたいイベントです。
XRPや暗号資産だけでなく、送金や金融全般に関わる著名人が登場することで、毎年話題になるSwellですが、それ以上に毎年注目されるのは、イベントの前後でXRPの価格に影響を及ぼすとされていることです。
そのため、投資家にとっても注目のイベントになっています。本記事では過去にどういった発表がSwellでされてきたのか、なぜ価格に影響するとされているのかを解説します。
著名人が続々登壇するSwell
Swellは2017年から毎年開催されている、XRP関係者にとって最も注目のイベントです。ただ、イベントに登壇するのはXRP関係者だけではありません。Swellウェブページに「Ripple Swellは支払いや金融サービス、ブロックチェーン技術、政策の分野で最も信頼されている声を集めて、現在のグローバルな環境を取り巻くお金の動き方を変革することに取り組んでいます」と、書かれているように、毎年広く金融や政治分野などを含めた数々の著名人が登壇することで知られています。
2017年の初開催時には元FRB(連邦準備制度理事会)議長のベン・バーナンキ氏やワールドワイドウェブ(WWW)の考案者であるティム・バーナーズ=リー氏が登壇しました。さらに2018年にはビル・クリントン元大統領が講演するなど、幅広い分野の人物が金融の未来について語ります。クリントン元大統領は当時、規制のあり方について提言し、「金の卵を産むガチョウ」を殺さないように気をつけるべきという見解を示しました。
これはブロックチェーン技術には大きな可能性があるものの、政治や金融政策によってダメにしてしまう可能性があることを比喩したものです。元大統領のブロックチェーンへの発言ということもあり、大きな注目を集めました。
2019年はアジアで初めて開催。シンガポールで開かれました。インド中央銀行の元総裁ラグラム・ラジャン氏や、米送金大手で、リップル社と戦略的提携を結んでいた(2021年3月に提携解消)マネーグラムのアレクサンダー・ホームズCEOなどが出席しました。
2020年は新型コロナウイルスの影響でバーチャル開催となりました。2020年の基調講演は世界経済フォーラムで「ブロックチェーン・デジタル資産・データポリシー」責任者のシェイラ・ウォレン氏と世界銀行グループで「金融包摂・インフラ・アクセス」を担当するマヘシュ・ウッタムチャンダニ氏が務めました。
そして2021年からは、バーチャルとリアル会場のハイブリッド開催となりました。2021年には米国の商品先物取引委員会(CFTC)のブライアン・クインテンツ元委員が登壇しました。
2022年はロンドンで開催され、バーチャルでもその様子が放映されました。過去のような政府関係者や国際機関の代表者が登壇するというよりは、決済企業や伝統的な金融機関の関係者が目立ちました。
SWELLでの価格変動
前述のようにSwellはXRPに関わる新サービスなどが発表されることや、投資家の期待感などから、XRPの価格にも影響するとされています。この動きにはほぼ毎年同じような現象が起きているのです。それが「開催前に価格が上がり、開催中に下がり続ける」という現象です。
いったいどういうことなのか、過去の事例を振り返ってみましょう。
2017年(10月16日〜18日)
2017年は10月16日から18日の3日間にかけて開催されました。開始前にはXRPを使う決済サービスであるxRapid(現On-Demand-Liquidity:ODL)を使った送金に世界で初めて成功したほか、リップルネットワークとユースケースの拡大に向けた3億ドル規模のプログラムが発表されたこともあり、Swell当日も大きな発表があるのではないかと期待されました。
実際に初日にはビル&メリンダ・ゲイツ財団との提携を発表。新興国などで銀行口座を持てない「アンバンクト(Unbanked)」の人々でも決済が可能になるプラットフォームを構築することが明らかにされました。
ただ、これ以外に目立った発表はなく、開始直後に30円まで上昇しましたが、終了時には24円まで下落。期間中にマイナスとなり、その後もズルズルと値を下げる結果となりました。
(XRP/JPYチャート 2017年10月1日〜2017年11月1日)
2018年(10月1日〜2日)
2018年は10月1~2日に開催されました。2018年の重大ニュースは、ODL(On-Demand-Liquidity 旧xRapid)の商用化が発表されたことです。ODLはXRPをブリッジ通貨として手数料を抑え、高速で海外送金を実現する技術です。暗号資産を使った実際のユースケースが拡大することで、XRPの需要が高まり、価格にも反映されるのではないかと期待されました。ODLの商用化についてはSwell開催前から示唆されていたこともあり、XRPの価格は、期待感から開催前の9月21日には一時81円まで急騰。しかし、Swellが開始されると下落に転じることとなりました。
(XRP/JPYチャート 2018年9月15日〜2018年10月9日)
2019年(11月7日〜8日)
2019年には「RippleNet Home」が発表されました。リップルネットのハブとして開発されており、送金リクエストをすることでパートナー間の送金状況を即時に確認でき、さらには送金履歴などを管理、分析する機能も備えています。
例年通り、2019年もSwellが始まる前に価格が上昇。一時32.84円まで上昇しました。しかし、肝心の内容についてはブラッド・ガーリングハウスCEOがODL(On-Demand-Liquidity 旧xRapid)の利用拡大をアピールするにとどまり、1分間で一気に3%以上も下落。具体的な発表がないことがわかると、失望感からか、一気に上昇前の価格まで戻りました。そしてそのまま下落を続け、2日目に「リップルネット・ホーム」の発表以外には大きな変化がないことがわかると、価格はさらに下落、Swellが終了した8日には30円まで落ち込みました。
Swell期間中に毎年下落するXRP価格ですが、こうした傾向は単に投資家の失望感だけが下落の理由になっているのでしょうか。
暗号資産アナリストのルーク・マーティン氏は、XRPはSwellが終わると売られる傾向があることから、「ニュースで売る(Sell the news)」タイプの会議になっていると指摘しています。
「ニュースで売る」とはプロの投資家の手口として知られる動きです。不安心理が主導する相場では噂が流れた時点で買いを入れ、ニュースとなった際には利確して売りのタイミングとなるというものです。Swellがこの売りのタイミングと投資家がみなしていることからXRP価格が下落しているのではないかと指摘されています。
(XRP/JPYチャート 2019年10月31日〜2019年12月1日)
2020年(10月14日〜15日)
2020年は開催日に向けて直近安値から20%上昇し、開催後には下落しました。これまでと比べると、大きな発表はなく、投資家が売りを進めたと考えられます。価格変動も、過去と比べると、大きな動きとはいえませんでした。ただ、約1ヶ月後の11月中旬から急騰する動きを見せています。これはSwellといったイベントではなく、フレア・ネットワークがFlareトークン(FLR/旧Sparkトークン)をエアドロップすることへの期待感によるものであるでしょう。実際にエアドロップの権利が確定するスナップショット後に価格が急落しています。
2020年は大きな発表がなかったSwellですが、これまでとは異なり、各地域向けのウェビナーが開かれました。金融包摂を掲げるリップル社にとって、取り組みをより広い世界に向ける機会となったといえるでしょう。
(XRP/JPYチャート 2020年10月1日〜2020年10月31日)
2021年(11月9日〜10日)
2021年もSwellに向けて上昇し、開催後には1ヶ月かけて下落が続きました。2021年は企業向けの新ソリューションである「Ripple Liquidity Hub」などの発表がありました。このサービスは企業が暗号資産の流動性を確保するためのサービスで、従来の銀行やフィンテック企業が暗号資産業界への参入をしやすくすることを狙ったものでした。しかし、こうした発表も、2020年と同様、発表後に価格の下落が続きました。
(XRP/JPYチャート 2021年11月1日〜2019年11月30日)
2022年はアフリカ大陸への進出を発表
2022年の大きな発表としては、アフリカ大陸への進出が挙げられます。アフリカでモバイルウォレットを使った決済プラットフォームを提供するMFSアフリカ社と提携し、暗号資産(仮想通貨)を使った国際送金を実現するとのことです。
MFSアフリカ社はアフリカ大陸の35カ国で4億以上のモバイルウォレットを提供しています(2022年12月現在)。安価な手数料でリアルタイム送金が実現すれば、アフリカでの需要を取り込めるかもしれません。
アフリカは今後、人口が急増し、全世界で見た場合にメガシティ(人口1000万人以上の都市)の上位に多くのアフリカの都市が並ぶと予想されています。
しかし人口増加の一方で、銀行口座を持たない「アンバンクド」の人々が多いことが課題となっています。リップルが掲げる金融包摂に向けて、アフリカの送金需要に取り組んでいくようです。
そのほかにはXRPを活用することで国際送金を低コストで瞬時に実現するODL(On-Demand-Liquidity 旧xRapid)の適用国の拡大やXRPを使った流動性管理ソリューションのリップルネットに機械学習機能を追加しました。
まとめ
Swellは新サービスが発表されることや、XRPの価格に影響を及ぼすことからもXRP保有者やリップル社、リップル関連企業の一大イベントです。価格については前述のとおり、開催前に価格が上がり、開催中に下落するという現象が起きています。ただ、今後も同様の現象が起きるかはわかりません。チャートの動きを自身で確認しましょう。
「Swell」は英語で「波のうねり」を意味します。「Ripple」が英語で「さざ波」という意味を持つことから、さざ波が大きな波となり、大きな変化を期待させるイベントとなることを狙っているのでしょう。
大きな変化に関連するイベントであるため、価格の動きだけでなく、毎年著名人が金融の未来についてどのような講演をするのかも注目です。各国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の調査・研究が本格化しており、デジタル通貨を使った送金がXRPの取り組みとどう差別化されるのか、金融業界の大物からどのような発言があるのかも気になるところでしょう。
また、XRPを使う決済サービスであるODLが世界中で採用され、XRPの技術が地域の金融に変化をもたらしていることから、アフリカ地域など、世界中でどのようにリップル社の取り組みが採用されていくのかにも注目しておきましょう。
リップル(XRP)について興味を持たれた方は「「リップル」の特徴は?その仕組みやどこで買えるのかを解説」のコラムもご覧ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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