リップルの国際会議Swellとは?XRP価格は今年も下落?
「Swell」は毎年10月〜11月ごろに開催される、リップル社が主催する年次の大型イベントです。2017年から始まり、2020年で4回目を迎えます。Swellでは毎年、2〜3日間に渡って送金や金融の未来の技術、関連企業の新しい発表が行われます。リップル社主催ということもあり、主に暗号資産(仮想通貨)であるXRP(リップル)に関わる最新情報に注目が集まります。XRPホルダーは必ずチェックしておきたいイベントです。
XRPや暗号資産(仮想通貨)だけでなく、送金や金融全般に関わる著名人が登場することで、毎年話題になるSwellですが、それ以上に毎年注目されるのは、イベントの前後でXRPの価格に影響を及ぼすとされていることです。
そのため、投資家にとって注目のイベントになっています。本記事ではそもそもSwellは過去にどういった発表がされてきたのか、なぜ価格に影響するとされているのかを解説します。また2020年は新型コロナウイルスの影響でバーチャル開催が発表されたほか、「Swell Regionals」として今年から新たな試みも始まりました。こうした2020年の新たな動きについても見ていきましょう。

著名人が続々登壇するSwell
Swellは2017年から毎年開催されている、XRP関係者にとって最も注目のイベントです。ただ、イベントに登壇するのはXRP関係者だけではありません。Swellウェブページに「Ripple Swellは支払いや金融サービス、ブロックチェーン技術、政策の分野で最も信頼されている声を集めて、現在のグローバルな環境を取り巻くお金の動き方を変革することに取り組んでいます」と、書かれているように、毎年広く金融や政治分野などを含めた数々の著名人が登壇することで知られています。
2017年の初開催時には元FRB議長のベン・バーナンキ氏やワールドワイドウェブ(WWW)の考案者であるティム・バーナーズ=リー氏が登壇しました。さらに2018年にはビル・クリントン元大統領が講演するなど、幅広い分野の人物が金融の未来について語ります。クリントン元大統領は当時、規制のあり方について提言し、「金の卵を産むガチョウ」を殺さないように気をつけるべきという見解を示しました。
これはブロックチェーン技術には大きな可能性があるものの、政治や金融政策によってダメにしてしまう可能性があることを比喩したものです。元大統領のブロックチェーンへの発言ということもあり、大きな注目を集めました。
2019年はアジアで初めて開催。シンガポールで開かれました。インド中央銀行の元総裁ラグラム・ラジャン氏や、米送金大手で、リップル社と戦略的提携を結んでいるマネーグラムのアレクサンダー・ホームズCEOなどが出席しました。
SWELLでの価格変動

前述のようにSwellはXRPに関わる新サービスなどが発表されることや、投資家の期待感などから、XRPの価格にも影響するとされています。しかし、この動きには毎年同じような現象が起きているのです。それが「開催前に価格が上がり、開催中に下がり続ける」という現象です。
いったいどういうことなのか、過去の事例を振り返ってみましょう。
2017年(10月16日〜18日)
2017年は10月16日から18日の3日間にかけて開催されました。開始前にはXRPを使う決済サービスであるxRapid(現On-Demand-Liquidity:ODL)を使った送金に世界で初めて成功したほか、リップルネットワーク拡大とユースケース拡大に向けた3億ドル規模のプログラムが発表されたこともあり、Swell当日も大きな発表があるのではないかと期待されました。
実際に初日にはビル&メリンダ・ゲイツ財団との提携を発表。新興国などで銀行口座を持てない「アンバンクト(Unbanked)」の人々でも決済が可能になるプラットフォームを構築することが明らかにされました。
ただ、これ以外に目立った発表はなく、開始直後に30円まで上昇しましたが、終了時には24円まで下落。期間中にマイナスとなり、その後もズルズルと値を下げる結果となりました。

2018年(10月1日〜2日)
2018年は10月1~2日に開催されました。2018年の重大ニュースは、xRapidの商用化が発表されたことです。ODLはXRPをブリッジ通貨として手数料を抑え、高速で海外送金を実現する技術です。暗号資産を使った実際のユースケースが拡大することで、XRPの需要が高まり、価格にも反映されるのではないかと期待されました。ODLの商用化についてはSwell開催前から示唆されていたこともあり、XRPの価格は、期待感から開催前の9月21日には一時81円まで急騰。しかし、SWELL直前は上昇したものの、SWELLが開始されると下落が始まり、その後もだらだらと下落を続けました。

2019年(11月7日〜8日)
2019年には「リップルネット・ホーム」が発表されました。リップルネットのハブとして開発されており、送金リクエストをすることでパートナー間の送金状況を即時に確認できるというものです。送金履歴などを管理、分析する機能も備えています。
例年通り、2019年もSwellが始まる前に価格が上昇。一時32.84円まで上昇しました。しかし2019年はブラッド・ガーリングハウスCEOがODLの利用拡大をアピールしたことにとどまり、1分間で一気に3%以上も下落。具体的な発表がないことがわかると、失望感からか、一気に上昇前の価格まで戻りました。そしてそのまま下落を続け、2日目に「リップルネット・ホーム」の発表以外には大きな変化がないことがわかると、価格は下落を続け、Swellが終了した8日には30円まで落ち込みました。
Swell期間中に毎年下落するXRP価格ですが、しかし、こうした傾向は単に投資家の失望感だけが下落の理由になっているのでしょうか。
仮想通貨アナリストのルーク・マーティン氏は、XRPはSwellが終わると売られる傾向があることから、「ニュースで売る(Sell the news)」タイプの会議になっていると指摘しています。
「ニュースで売る」とはプロの投資家の手口として知られる動きです。不安心理が主導する相場では噂が流れた時点で買いを入れ、ニュースとなった際には利確して売りのタイミングとなるというものです。Swellがこの売りのタイミングと投資家がみなしていることからXRP価格が下落しているのではないかと指摘されています。
2020年も同様に「ニュースで売る」という流れになるのでしょうか。Swellは価格動向にも注目です。

今年はバーチャル開催

注目の2020年ですが、新型コロナウイルスの影響で、今年はバーチャル開催であることが発表されました。開催日時は2020年10月14〜15日の2日間です。
また、2020年は地域ウェビナー「Swell Regionals」が開催された点もこれまでと異なります。7月29日に北アメリカ、8月13日には中東と北アフリカのミーナ(MENA)地域、8月26日にはAPAC、9月2日にはラテンアメリカ、欧州と全5回開催されました。「Swell Regionals」では、地域に焦点を当てた規制などのトピックや、リップルネットのプロダクトアップデートなどが紹介されるなど、昨年までにはなかった、より地域にフォーカスしたイベントが開催されました。
一方のグローバルではマクロな業界のトピックや地域を跨いだパートナーの発掘にフォーカスするなど、役割を分けて開催されます。2020年は新型コロナウイルスの影響を受けてバーチャル開催となりましたが、その分多くの視聴者が望めるでしょう。
グローバル版の内容について、記事執筆の8月時点では詳細は公表されていませんが、近く発表され、参加者登録が行われる予定です。今年も新サービスの発表などが期待です。
まとめ
Swellはただ新サービスが発表されるだけでなく、XRPの価格に影響を及ぼすことからもリップル関係者の一大イベントです。価格については前述の通り、過去の経験から、開催前に価格が上がり、開催中に下落するという現象が起きています。ただ、今年も同様の現象が起きるかはわかりません。しっかりとチャートの動きを自身で確認しましょう。
「Swell」というのは英語で「波のうねり」を意味します。「Ripple」が英語で「さざ波」という意味を持つことから、さざ波が大きな波となり、大きな変化を期待させるイベントを狙っているのでしょう。
そのため、価格の動きだけでなく、毎年著名人が金融の未来についてどんな講演をするのかも注目です。今年は各国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の調査・研究が本格化しており、デジタル通貨を使った送金がXRPの取り組みとどう差別化するのか、金融業界の大物からどのような発言があるのかも気になるところでしょう。
また、XRPを使う決済サービスであるODLが世界中で採用され、XRPの技術が地域の金融に変化をもたらしていることから、今年から始まったSWELL Regionalsの内容にも注目が集まります。今年のSwellでさらにリップル社が考える「グローバルな環境でのお金の動き方」の未来が示されることでしょう。
リップル(XRP)について興味を持たれた方は「「リップル」の特徴は?その仕組みやどこで買えるのかを解説」のコラムもご覧ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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